第四紀研究
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54 巻 , 2 号
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論説
  • 山田 桂, 増馬 鉄朗, 瀬戸 浩二
    2015 年 54 巻 2 号 p. 53-68
    発行日: 2015/04/01
    公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
    過去1,700年間を対象に,中海湖心部のコアから産出した貝形虫群集の変化を検討した.139試料から20属34種の貝形虫が産出した.優占種から,中海は総じて水深5〜10mの内湾あるいは汽水湖であったことが示された.また,Qモードクラスター分析に基づく貝形虫相の時間変化から以下の環境変遷が読み取れた.300〜1100年には塩分25〜30の内湾が存在した.1100年頃に塩分20〜30の汽水湖になり,この汽水湖は現在まで続いている.また,1800〜1900年は一時的に外洋水の流入量が増加したこと,過去100年間は湖心の底層は多くの貝形虫が生息できない貧酸素環境であったことが推察された.古文書の記録と比較すると,弓ケ浜半島先端部が島(夜見島)を形成していた環境は400年以前に始まり,1100年頃に終了したと考えられる.1100年の内湾から汽水湖への変化の時期は,東アジアの気候変動の時期と一致しないことから,汽水湖に至った変化は弓ケ浜先端部の砂州の発達によって引き起こされたと考えられる.
  • 叶内 敦子, 河合 小百合, 公文 富士夫
    2015 年 54 巻 2 号 p. 69-86
    発行日: 2015/04/01
    公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
    長野市信更町高野に分布する湖成の高野層で採取された長さ53.88mのボーリングコア試料(TKN2004)には21層の指標テフラが同定されており,同コア試料はMIS 6からMIS 3前半頃に対比されている.TKN2004コアの下半部では1,200年,上半部では500年間隔で花粉分析を行い,下位からI〜XII帯の12の地域花粉帯を設定した.I帯(158.0〜149.3ka),II帯(149.3〜141.4ka)およびIII帯(141.4〜130.2ka)の花粉組成から復元される古植生は,トウヒ属が優占する亜寒帯針葉樹林であり,その年代はMIS 6の氷期に対応する.IV帯(130.2〜117.4ka)の花粉組成は,ブナ属が優占する冷温帯落葉広葉樹林を示し,その年代はMIS 5eの最終間氷期にあたる.V帯(117.4〜107.1ka)では亜寒帯下部の,スギ属を伴い,マツ科が優占する針葉樹林が広がり,その年代はMIS 5dに相当する.VI帯(107.1〜98.8ka)の花粉組成からは冷温帯の針広混交林が復元され,その年代はMIS 5cに,VII帯(98.8〜85.6ka)の花粉組成からはマツ科針葉樹にスギ属とヒノキ科を伴う亜寒帯下部の植生が復元され,その年代はMIS 5bに,VIII帯(85.6〜75.6ka)の花粉組成からは冷温帯落葉広葉樹とスギ属,マツ属単維管束亜属からなる針広混交林が復元され,その年代はMIS 5aに,それぞれ対応する.IX帯(75.6〜60.9ka)の花粉組成からはトウヒ属の卓越する亜寒帯針葉樹林が復元され,その年代はMIS 4に相当する.X帯(60.9〜53.3ka)の花粉組成からはマツ属単維管束亜属の優勢な針葉樹林が,XI帯(53.3〜48.5ka)の花粉組成からはブナ属,コナラ亜属のやや優勢な針広混交林が,XII帯(48.5〜37.6ka)の花粉組成からはマツ属単維管束亜属とトウヒ属が優占する亜寒帯針葉樹林を多く伴う針広混交林が復元される.
    これらの結果から,中部地方の植生も汎地球的な気候変動に強く影響を受け,数千年程度よりも短い期間の気候変動にも応答して植生が変遷してきたことが再確認された.これらの花粉帯はこれまでよりも連続的で,かつ高い時間分解能をもち,指標テフラを鍵として,中部地方各地の花粉帯とも広い範囲で対比することができるので,有用な古気候資料となる.
短報
  • 田代 崇, Mario B. Collado, 渡邊 眞紀子, 森島 済
    2015 年 54 巻 2 号 p. 87-95
    発行日: 2015/04/01
    公開日: 2015/09/25
    ジャーナル フリー
    フィリピン・ルソン島中央平原北部に位置するパイタン湖において採取した約9,400calBP以降の年代を示す湖底堆積物を用いて,粒度組成と古植生との関連を議論した.粒度分析の結果,湖岸からの距離が遠くなるほど,中央粒径は小さく,淘汰度は良くなることなどが示唆された.クラスター分析によって粒度組成を4つのタイプに分類し,これらのタイプとコゴン型および木本型の植物珪酸体の出現率との関係について考察した.この結果,粒度組成のタイプと植物珪酸体の出現率とは密接な関係があり,乾燥期を示唆する湖岸環境の粒度組成タイプではコゴン型の植物珪酸体が,湿潤期を示唆する湖心環境では木本型の植物珪酸体が多く出現することが明らかになった.粒度組成の変化は,降水量の増減に対応した湖水位変動(湖岸からの距離)を示しており,この乾湿に呼応して植生変化が生じていたと考えられる.
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