第四紀研究
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40 巻 , 4 号
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  • 田村 糸子, 鈴木 毅彦
    2001 年 40 巻 4 号 p. 295-305
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    Ng-1火山灰層(Ng-1:0.30Ma)は,飛騨山脈の火山が給源と推定され,東海から近畿・四国に分布する中期更新世の広域テフラである.しかし,給源近傍ではその存在が確認されず,情報に乏しい.一方,飛騨山脈に近い高山盆地周辺に分布している高山軽石層(Tky)は,鉱物構成などから大町APmテフラ群(APms:0.33~0.40Ma)と対比され,また白山火山周辺から噴出したという見解が示されたことがあったが,その詳細は不明であった.
    本研究では,Ng-1とTkyとが対比されることを明らかにした.その根拠は,1)鉱物組合わせ,斑晶鉱物の屈折率,チタン磁鉄鉱の主成分化学組成などの記載岩石学的特徴が一致すること,2)ともに飛騨山脈南西部が噴出源と推定され,そこから日本のテフラとしては稀な南西方向を主軸として分布すること,である.
    この結果,Tkyの噴出年代がおよそ0.30Maであることが明らかとなり,年代指標の少なかった高山盆地の中期更新世編年に貴重な時間軸が求められた.
  • 井上 弦, 米山 忠克, 杉山 真二, 岡田 英樹, 長友 由隆
    2001 年 40 巻 4 号 p. 307-318
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    ca.24.5ka以降に,南九州都城盆地の成層シラス台地上に発達した累積性黒ボク土断面の連続試料について,炭素・窒素安定同位体自然存在比(δ13C値,δ15N値)を測定し,その時系列変化を既報の植物珪酸体分析の結果などをもとに考察した.その結果,土壌のδ13C値から算出したC3およびC4植物起源炭素の比率と,植物珪酸体分析の結果から算出したC3およびC4植物の比率は,一部の試料を除いてC3植物>C4植物の傾向を示し,おおむね類似した.C3植物起源炭素の比率が優勢なアカホヤ(ca.6.5ka)上位のクロニガ(埋没腐植層:4A)および御池テフラ(ca.4.2ka)上位のクロニガ(埋没腐植層:2A)を含む第5~4層および第3~2層は,それぞれメダケ属(メダケ節・ネザサ節)と相関が高い(R2=0.917,0.806).そして,クロニガ(埋没腐植層)における土壌有機物の給源植物種は,C3植物のメダケ属が主体であると推定された.δ15N値は,一部を除いて既往研究により,乾燥した環境と推定される層準で高く(最高値10.0‰),湿潤な環境で低く(最低値2.9‰)なる傾向を示した.それは,激しい気候の変動(乾湿変動)や土壌条件によって変化する可能性を示唆する.
  • 青木 久美子, 渡邊 眞紀子, 坂上 寛一
    2001 年 40 巻 4 号 p. 319-330
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    陸成の土壌の炭素含量を用いて過去の気候環境を推定する場合,埋没腐植層に対する埋没後の変質も考慮しなければならない.過去の腐植集積量を推定する方法の一つとして,時間を変数とする腐植集積モデルがある.Jenkinsonの腐植集積モデルに対して求められたWadaの腐植分解係数rは日本の火山灰土壌の表土への適用であり,このrをJenkinson逆モデルを用いて埋没土に適用させた場合,炭素含有量がWadaの初期条件である200g・kg-1を超えてしまうという問題点が生じた.そこで本研究では,分解係数rの修正を試み,その上で腐植集積逆モデルを用いてテフラ-土壌累積断面によって求められた炭素含有量による完新世気候変化の推定についての有効性を検討した.その手順としてまず,選択溶解による無機コロイド成分の分析結果から,本モデルは腐植-アルミニウム複合体が存在する期間内で適用できると考えた.またrの修正にあたり,気候環境を考慮し,阿蘇,愛鷹,十和田地域のテフラ-土壌累積断面を対象にKiraの乾湿示数(K)で求あられる現在の気候条件と表土の炭素含量の関係に基づいてrの修正方向を考えた.つぎに,炭素含有量が漸近値250g・kg-1を超えないという仮定のもとで,rを増減させることにより修正rを決定した.この修正分解係数rをJenkinson逆モデルに適用し,阿蘇,愛鷹,十和田における完新世テフラ-土壌累積断面中の炭素含量の変動から,埋没土における腐植集積平衡値(Cmax)の変動を求あた.Cmaxの時系列曲線には約3ka,6ka,8~9kaにピークが認められ,これは他の古環境代用データの時系列曲線と類似しており,修正rの適用の有効性が示された.Cmaxは植物生産活動の背景としての過去の太陽放射強度を反映するものと考えられる.
  • 森江 孝志, 小澤 大成, 奥村 清
    2001 年 40 巻 4 号 p. 331-336
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    徳島県の吉野川北岸の中央構造線活断層系に沿った中位段丘堆積物中より,褐色~灰白色を呈する砂~シルトサイズで斑晶に富む火山灰を発見した.この火山灰を長手テフラと命名し,岩石記載的特徴,火山ガラスの屈折率および鉱物の主成分化学組成などをもとに,阿蘇4(Aso-4)テフラに対比した.
    四国の中央構造線に沿う地域において,地形面の形成年代を知る手がかりは従来姶良Tn(AT)や鬼界アカホヤ(K-Ah)テフラ以外みつかっていない.今回の阿蘇4テフラに対比される長手テフラの発見により,長手テフラを含む中位段丘2が7~9万年前に形成されたことが明らかになった.このことは,中央構造線活断層系の活動時期の解明に重要な資料を提供すると考えられる.
  • 高地 セリア好美, 近藤 錬三, 筒木 潔
    2001 年 40 巻 4 号 p. 337-344
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    現状における植物珪酸体分析法では,過去の環境の正確な再現はまだ困難である.本論文では,植物珪酸体組成と植物生体量の関係について研究した.葉身を各種の比率で混合することによって,いくつかのイネ科草本および樹種の植物珪酸体生産性の差異を検討した.すべての植物は植物珪酸体の生産性にいくらかの変動を示したが,特に機動細胞珪酸体の生産性の偏差は大きかった.本研究の結果によれば,ブナの葉身によって生産されるジグソーパズル型珪酸体の量と比べて,チシマザサの葉身は23倍も多くのファン型珪酸体と27倍も多くのタケ型珪酸体を生産した.一般に,土壌中で樹木起源および草本起源珪酸体の量が等しくなるためには,樹木の葉量は草本の葉量の10倍以上必要である.供試植物種について得られた明瞭な結果から,各植物種の間で珪酸体の量比を求めることが植物の生体量を推定し,ひいては過去の植生をより正確に復元するための良い手段となることを示した.
  • 小野 映介, 海津 正倫, 川瀬 久美子
    2001 年 40 巻 4 号 p. 345-352
    発行日: 2001/08/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    濃尾平野北東部において,典型的な埋積浅谷が発達する門間沼遺跡・馬引横手遺跡を対象として,地層断面の観察および記載,堆積物の14C年代値の測定を行い,埋積浅谷の発達過程を明らかにした.その結果,濃尾平野北東部では,浅谷が約3,000~2,400年前に形成され,約2,400~2,200年前に埋積されたことが明らかとなった.さらに,周辺遺跡の地形・地質データを加えて,浅谷形成と周辺地域の地形変遷の関係について検討した.濃尾平野北東部では,約3,000年前以前には洪水による堆積が活発に行われたが,約3,000年前以降は洪水の影響が少ない安定した環境へと変化し,浅谷はこのような堆積環境の移行過程で形成されたことが明らかとなった.
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