群馬県域における水田遺跡の発掘調査で検出された火山噴火前後における人の行動の痕跡と,それを被覆するテフラおよびこれに起因する火山泥流の層位から,従来不明であった6世紀代における榛名二ツ岳渋川テフラ(Hr-FA),榛名二ツ岳伊香保テフラ(Hr-FP)を構成する個々のテフラ層と,これに起因する火山泥流の堆積に要した時間と季節を考察した.
前橋市元総社北川遺跡における水田に給水するための用水路の分岐作業と,未完に終わった水田の畦作り作業の状況から,Hr-FAを構成するテフラであるS
1~S
7 の堆積までは数日以内に起きたものと推定した.さらに,噴火から火山泥流の発生までが稲の作付け時期である初夏の範疇で,長くみても1ヵ月以内の間に起きたものと推定した.
また,元総社北川遺跡における水田の畦作りと田起しの作業,および榛名火山東方域の遺跡における畦作り作業の進捗状況との比較から,Hr-FPを構成するテフラのI
1~I
19 の堆積までが1日~1週間ほどの間に起き,噴火から火山泥流の発生まで含めても初夏の範疇で,数日から数週間のうちに起きたものと推定した.
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