第四紀研究
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36 巻 , 4 号
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  • 滝谷 美香, 萩原 法子
    1997 年 36 巻 4 号 p. 217-234
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    北海道南西部の横津岳(標高1,167m)山系において,3地点の花粉分析を行い,過去約1万5千年間の植生を復元した.その結果,約12,000年前以前には,トウヒ属を主とする亜寒帯林が成立しており,横津岳の中腹(標高600m付近)には,寒冷な気候を示すコケスギランSelaginella selaginoidesが生育していた.この時期のコナラ属の連続産出は,現在の北海道の冷温帯林の主要構成要素のミズナラが亜寒帯林中に散在して生育していたことを示す.アレレード(Alleröd)期には,ミズナラ,ブナなどを主とする冷温帯林要素が増加したが,ヤンガードリアス(Younger Dryas)期には,再び亜寒帯林要素が増加し,晩氷期の気候変動に対応した森林植生の変化が認められた.氷期が終了した10,000年前には,亜寒帯林は完全に消滅した.10,000~5/6,000年前には,ミズナラを主とする森林が成立し,ヤンガードリアス期には減少していたブナが再び増加した.ブナを主とする森林(ブナ林)は,約6,000年前には標高600mよりも低標高地にも侵入し,ミズナラを主とする森林を置き換えて優勢となり,現在に至った.ブナはこれまで6,000年前頃渡道したと考えられていたが,本研究の結果,最終氷期に横津岳周辺の逃避地に生育し,温暖化に伴い分布を拡大したと考えられる.
  • 閻 順, 穆 桂金, Yingqing Xiu, Zhenghong Zhao, 遠藤 邦彦
    1997 年 36 巻 4 号 p. 235-248
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    タリム盆地の東端に位置するロプヌール低地において,K1ボーリング・コアを採取し,主として花粉分析に基づいて当地域の第四紀環境変化を明らかにした.約100mのコアは,前期更新世以来のおもに泥質堆積物からなり,深度66.2mに前期および中期更新世を分ける不整合が存在する.前期更新世のこの地域は森林-草原の環境下にあったが,中期更新世以後,砂漠-草原と砂漠環境が繰り返す環境に置き代わった.湖沼の発達はおそらく更新世初期の頃まで遡るものと考えられる.トウヒ属花粉および総樹木花粉数が前期更新世に高い出現率を示すことは,当時ロプヌール地域は比較的湿潤で,近くに森林が存在していたことを示唆する.乾燥環境は中期更新世のはじめ頃に始まり,完新世にはきわめて乾燥した条件が支配的となった.
  • 池田 明洋
    1997 年 36 巻 4 号 p. 249-261
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    ODP807A孔(オントン・ジャバ海台)の珪藻群集の解析によって得られた赤道太平洋西部における過去66万年間の海洋環境史は,ブリュンヌ後期の気候イベント(MBCE)に呼応した珪藻殻数の漸増と,地球軌道要素に駆動された数万年オーダーの周期性とで特徴づけられる.前者に関しては,溶解ならびに希釈量の変動は認められず,極域との海洋循環の強化に伴う生産性の向上を示唆する.後者に関しては,過去40万年間の珪藻群集の主成分分析によって考察を進めた.とくに,珪藻殻の溶解量の変動は,気候歳差の周期ときわめて良い一致を示しており,全球的な海洋循環様式の変動よりは歳差運動の影響を強く受けた赤道域内部における東西方向の循環様式の変化と考えられる.本研究では,この結果と粒子フラックスに関する新知見から,赤道域において珪藻殻の溶解を制限する要因について考察した.
  • 片岡 香子, 吉川 周作
    1997 年 36 巻 4 号 p. 263-276
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    西日本の四国・近畿・東海地方などの火山灰稀産地域の段丘では,火山灰層の発見は稀で,しかもそれを連続的に追跡することが困難である.そのため,火山灰に注目した層序・編年学的研究は露頭あるいは狭い地域に限定されたものとならざるを得ず,一般的な調査・研究法とはなっていない.このため,火山灰稀産地域における段丘の層序・編年は,火山灰多産地域に比べ精度が悪い.三重県鈴鹿川流域の段丘もまた,このような火山灰稀産地域に属している.そこで,筆者らは従来の地形・地質学的方法に加え,段丘構成層の上位に発達する細粒堆積物に注目して,この堆積物中に極微量に含まれる火山ガラスから火山灰降下の痕跡を見いだした.そして,これらから段丘の層序を検討し,編年を行った.本研究の結果,次のことが明らかとなった.(1)調査地域の段丘面(段丘構成層)は,高位のものから大谷池面(大谷池段丘層)・丸岡池面(丸岡池段丘層)・神戸面(神戸段丘層)・関面(関段丘層)・古廐面(古廐段丘層)に区分され,さらに神戸面および関面は,高位のものから神戸1面・神戸2面・神戸3面,関1面・関2面に細分できる.(2)各段丘構成層の上位にのる細粒堆積物の層相とそれらに含まれる火山ガラスの性質・含有量の特徴,関段丘層に挾まれる姶良Tn火山灰層(25~21ka),神戸段丘層中の海成粘土層などから,大谷池段丘層・丸岡池段丘層は最終間氷期以前に,神戸段丘層は最終間氷期に,関段丘層は最終氷期に,古廐段丘層は最終氷期以降にそれぞれ形成されたと考えられる.
    今回行った段丘構成層の上位にのる細粒堆積物に極微量に含まれる火山ガラスを用いた層序・編年の試みは,今後,火山灰稀産地域でのより広域な段丘の対比・編年の可能性を示唆する.
  • 斉藤 勝, 佃 栄吉, 岡田 篤正, 古澤 明
    1997 年 36 巻 4 号 p. 277-280
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    和歌山県和歌山市から那賀郡打田町にかけての和泉山脈南麓域には,紀ノ川の支流によって形成された扇状地面が開析され,数段に区分される段丘面が広く分布している.これらの段丘面は,低位段丘(1面,2面),中位段丘(1面,2面)に分類・対比されている(寒川,1977;岡田・寒川,1978;水野ほか,1994).今回の野外調査により,低位段丘2面堆積物中に火山灰層が見いだされたが,この火山灰層は岩石記載学的特徴から,姶良Tn火山灰であることが判明した.姶良Tn火山灰層が挾在することから,和泉山脈南麓域に分布する低位段丘2面は最終氷期極大期頃に形成されたことが判った.
    低位段丘2面は,中央構造線活断層系に属する根来断層により変位を受けている.根来断層の運動様式は右ずれで,おおむね北側の相対的隆起である.低位段丘2面の離水時期を約2万年とすれば,段丘面や段丘崖の変位量から根来断層の平均変位速度が求められる.これによれば,右ずれは1.8~3.5m/1,000年程度,上下方向は0.3~0.5m/1,000年程度であり,岡田・寒川(1978)が推算した値をほぼ支持する.
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