第四紀研究
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42 巻, 4 号
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  • 谷野 喜久子, 細野 衛, 鈴木 正章, 渡邊 眞紀子, 青木 久美子
    2003 年 42 巻 4 号 p. 231-245
    発行日: 2003/08/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    渡島半島江差における大間段丘(海抜50~65m)上に分布する江差砂丘には,シルト画分と砂画分に明瞭な二つの粒度ピーク(bi-modal)が認められ,砂丘構成粒子の給源が複数あることを示唆する.活性アルミニウムに富む(pH(NaF)≥9.5)こと,H2O2処理後の色特性(a*,b*値)が褐色ローム層と同一水準の黄色系を示すことから,同砂丘には風化テフラ物質の混入が予想される.また,鉱物組成(63~125μm)は単斜輝石,斜方輝石,角閃石,火山ガラスなどを含む.他方,砂丘下位の段丘面上を覆う陣屋ローム層は主として粘土・シルトからなり,一部の層準を除きpH(NaF)≥9.5である.また,少量含有する砂画分粒子の鉱物組成は江差砂丘砂と同じである.これより同層は一次・二次テフラを主体とし,さらに周辺域の地層・岩石から侵食・風化作用を受けて生成された物質が加わった堆積物と考えられる.以上のように,江差砂丘と陣屋ローム層は類似した化学・鉱物特性を持つことから,同砂丘の構成粒子のうち,シルト画分を中心とした多くは同ローム層の再堆積物である可能性が高い.このように,主として二次的なテフラ物質の混入が認められ,その化学的性状を持ちあわせた砂丘を「テフリックレスデューン」と呼びたい.加えて,同砂丘中のクロスナ層は黒ぼく土層と同様な化学特性(pH(NaF)≥9.5)と腐植特性(MI≤1.7)を持ち,かつ砂画分が多いことから,「黒ぼく砂層」とするのが適当であろう.
  • 表層花粉組成と現生マングローブ植生との関係
    毛 礼米, 王 開発, 〓 華
    2003 年 42 巻 4 号 p. 247-264
    発行日: 2003/08/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    中国海南島北部に位置する東塞(Dongzhai)と清瀾(Qinglan)に分布する海岸マングローブ潟の表層から採取した堆積物を花粉分析し,完新世におけるマングローブの変遷史を復元するための基礎資料を得たので報告する.
    これらの地域のマングローブが繁茂する潮間帯に,陸域から沖合に向けて6測線(Transects 1-6)の地形と植生の断面を作成し,この場所におけるマングローブの種構成による分帯を試みた.さらに,このうち4測線(Transects 1,3,5,6)について表層堆積物中の花粉分析を行った.その結果から,表層花粉組成と現生マングローブの構成種の関係を考察した.潮間帯におけるマングローブ内の堆積環境とマングローブ種ならびに付随する構成種の分帯の関係を特徴づけるために,表層試料から得たすべてのパリノモルフを同定,集計した.その中には花粉はもちろん,羊歯胞子や識別不能の有機物(おそらくマングローブの生産物)が含まれていた.特にRhizophora,Avicennia,Ceriops,Bruguieraは高率であり,Excoecaria,Aegiceras,Kandelia,Xylocarpusは低率であることから,卓越する花粉組成は現地性のマングローブやそれに付随する植生からのものであり,後背地の植生からのものをわずかにともなうと判断される.測線を通じて,現生の分帯によく似た帯状配列の傾向が読みとれる.したがって,表層の花粉組成はごく限られた範囲のマングローブの影響が強く反映されているものと考えられる.これらのことに加えて,マングローブを構成する種ごとの花粉の出現率を変化させうる要因についても議論した.
  • 長橋 良隆, 吉田 武義, 中井 聡子, 奥平 敬元
    2003 年 42 巻 4 号 p. 265-277
    発行日: 2003/08/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    デイサイトから流紋岩組成のテフラ(B-Og,Aso-1,Km4,Oga,ATの各テフラと池月凝灰岩)について,火山ガラスの主要成分化学組成を蛍光X線(XRF)分析およびエネルギー分散型X線マイクロアナライザー(EDS)分析により求めた.各分析成分について濃度低下に伴う測定精度(再現性)の低下を図示することによって,EDS分析値の測定誤差を評価した.また,XRF分析値とEDS分析値との比較を行い,両手法間の系統的な差とEDS分析値の正確度を評価した.今回行ったXRF分析の結果は,すでに公表されている同一テフラのEPMA分析結果とおおむね一致している.そこで本論では,XRF分析値を基準としてEDS分析値を補正する方法を提案し,その結果について評価した.補正したEDS分析値は,生のEDS分析値を補正係数(各成分ごとに,XRF分析値に対するEDS分析値の散布図を作成し,それに最小二乗法による回帰直線を引いたときの一次関数の係数)を用いて得た.補正後のEDS分析結果はXRF分析結果とよく一致しており,これはXRF分析値とEDS分析値とが高い相関性をもつためである.また,補正後のEDS分析結果は,同じ方法を用いて補正した他機関のEDS分析結果と比較すると,EDSシステムの分析装置および分析条件が異なるにもかかわらずよく一致している.これらのことから,われわれが提案するEDS分析値の補正方法は,テフラの同定や対比に広く利用できるものである.
  • 呉我礫層・仲尾次砂層の層位学的位置について
    山本 和幸, 井龍 康文, 中川 洋, 佐藤 時幸, 松田 博貴
    2003 年 42 巻 4 号 p. 279-294
    発行日: 2003/08/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    沖縄本島北部,本部半島基部には,上部鮮新統-下部更新統の砕屑岩が分布する.本研究により,これらの堆積物は下位の礫岩を主体とする呉我層(Guga Formation)と,上位のシルト岩,砂岩,石灰質シルト岩,石灰質砂岩を主体とする仲尾次層(Nakoshi Formation)に区分された.そして,呉我層の上部と仲尾次層は,本部半島北部-西部に広く分布するサンゴ礁複合体堆積物(琉球層群)と同時異相の関係にあることが判明した.このサンゴ礁複合体堆積物および仲尾次層最下部から得られた石灰質ナンノ化石による生層序年代は1.45~1.65Maで,これまで報告されている琉球層群の中で最も古い.本部半島周辺では更新世初期に,サンゴ礁が形成されはじめ,同時に基盤地形が複雑であった半島基部では,陸源性砕屑物の堆積が活発に進行していたことが明らかとなった.これに対して,当時,島棚外縁-島棚斜面であったと想定される沖縄本島中南部ではサンゴ礁は形成されず,砂質の陸源性砕屑物および炭酸塩砕屑物の堆積が支配的であった.
  • 中村 有吾, 平川 一臣
    2003 年 42 巻 4 号 p. 295-302
    発行日: 2003/08/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    恵庭aテフラ(En-a,17ka BP)の火山ガラス屈折率は,試料採取地点によって異なることがある.その原因は,En-aはフォールユニットごとに火山ガラス屈折率が異なるからである.石狩低地帯南部では,En-aに少なくとも3つのフォールユニットが認められる.火山ガラス屈折率は,上位フォールユニットで高い値(n=1.510-1.514),中~下位フォールユニットで低い値(n=1.505-1.510)を示す.また,単一のフォールユニット内であっても,火山ガラス屈折率は層準によって若干異なる.なお,斜方輝石屈折率については,最下位層準でやや高い値(γ=1.713-1.716)を示すほかは,全層準を通じてほぼ一定の値(γ=1.710-1.715)であった.これまで,火山学やテフロクロノロジーの分野では,岩石記載学的特徴が単一のテフラ内で変化する事例がいくつか知られているが,テフラ同定の際にはこのことが必ずしも考慮されなかった.今後,重要な広域示標テフラについては,給源に近い露頭において岩石記載学的特徴をユニットごとに記載する必要がある.日高山脈に分布するEn-aの火山ガラス屈折率は,他地域での値に比べて低く,ばらつきが大きい.これは,火山ガラスの水和の程度にばらつきがあることに由来する可能性が高い.このような試料を400℃12時間法で脱水し,脱水ガラス屈折率を測定した結果,測定値は一定のレンジに収まった.
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