第四紀研究
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36 巻 , 2 号
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  • 藤原 治, 増田 富士雄, 酒井 哲弥, 布施 圭介, 齊藤 晃
    1997 年 36 巻 2 号 p. 73-86
    発行日: 1997/05/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    相模湾周辺では,完新世を通じて巨大地震が繰り返し発生したことが,完新世の海成段丘や歴史地震の研究から知られている.しかし,完新世の地震を示す津波堆積物などの地質学的な証拠は,ほとんど知られていない.
    完新世の3回の地震隆起に対応する津波堆積物を,房総半島南部の館山市周辺に分布する内湾堆積物から初めて見いだした.これらの津波堆積物は,館山市周辺で広域に追跡できる.津波堆積物は,基底が侵食面を示し上方へ細粒化する砂層や砂礫層からなり,貝化石片や木片を多量に含む.貝化石は,内湾泥底と沿岸の砂底や礫底に住む種が混合しており,海底の侵食と再堆積が生じたことを示す.また,陸側と海側への両方の古流向が堆積構造から推定される.
    3枚の津波堆積物は,それぞれ約6,300~6,000yrs BP,4,800~4,700yrs BP,4,500~4,400yrs BPに堆積したことが貝化石の14C年代値から明らかになった.最下位の津波堆積物は,沼I段丘,野比I段丘の離水と年代が一致する.また,中位と上位の津波堆積物は,それぞれ野比II段丘,沼II段丘の離水と年代が一致する.調査地域では,上述の津波堆積物と類似した堆積相を示す砂層や砂礫層が,約7,400~3,600yrs BPの間に100~200年に1枚の割で堆積している.これらの砂層や砂礫層の一部は,沼段丘上に分布する離水波食棚群(茅根・吉川,1986)に対応する津波堆積物の可能性がある.
  • 幡谷 竜太, 田中 和広, 齋藤 裕二, 橋本 哲夫, 志村 聡
    1997 年 36 巻 2 号 p. 87-96
    発行日: 1997/05/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    光ブリーチング仮説に基づく,石英粒子を用いた電子スピン共鳴(ESR)ならびに熱ルミネッセンス(TL)年代測定法の堆積物の年代測定への適用性を検討するために,複数の光源を用いた光曝実験と年代既知試料のESR・TL年代測定を実施した.ESRのTi信号はE'1信号・Al信号よりも光に対して消えやすく,光曝により解消されるが,Ti信号から得られる海成段丘堆積物の年代は,地質学的に見積られた年代よりも古い.一方,TLは光に対して消えやすい成分と消えにくい成分があり,光に対して消えやすい成分を用いて得られた年代は,地質学的に見積られた年代と調和的である.したがって,海成段丘堆積物の年代測定では,Ti信号を用いたESR年代測定法は適用が難しいが,光に対して消えやすい成分を用いたTL法は有望であると考えられる.
  • 内山 高, 兵頭 政幸, 吉川 周作
    1997 年 36 巻 2 号 p. 97-111
    発行日: 1997/05/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    大阪府下には,古墳時代以降歴史時代に築造された数多くの溜池が分布する.今回,溜池の改修工事に伴い,大阪狭山市の狭山池と柏原市の畑大池で,溜池堆積物の断面が現れた.この堆積物について,詳細な堆積残留磁化の測定を行った結果,時間分解能の高い地磁気永年変化が見いだされた.考古地磁気や湖底堆積物の古地磁気から出されているデータとの対比により,狭山池堆積物には過去500年間の地磁気方位変化が,畑大池堆積物には過去約400年間の地磁気方位変化が記録されていることが明らかになった.さらに,AD1500年~1800年の300年間の地磁気永年変化には細かい挙動も見つかった.狭山池堆積物中には液状化跡・洪水等の事変を示す層準(S-1~S-12)が挾在する.S-9層準はAD1500年~1530年,S-12層準はAD1600年~1630年の年代を得た.また,狭山池では液状化跡を示すS-9から最下部までの,厚さ250cmにわたる堆積物がほぼ一定の古地磁気方向を示している.この堆積物では,S-9層準の液状化を引き起こした地震により磁性粒子の再配列が起こった可能性が高い.
  • 加 三千宣, 吉川 周作, 井内 美郎
    1997 年 36 巻 2 号 p. 113-122
    発行日: 1997/05/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    琵琶湖の湖底下には過去40万年間の連続した泥質堆積物が厚く発達している.この堆積物は,珪藻化石を比較的豊富に産出し,その保存状態も良好である.
    本研究では,詳細な火山灰層序学的研究が行われ,堆積物の年代が明確にされている高島沖ボーリングコアについて,珪藻殻数(殻数/g)の高い時間分解能での分析と珪藻化石群集解析を行い,約40万年間の琵琶湖の水域環境の変遷,珪藻殻数変化と気候変化との関連を議論した.その結果,(1)珪藻殻数の増減の変化は琵琶湖北湖沖合い域で広域に生じている.このため,殻数の増減変化は鍵層準となり,琵琶湖(北湖)の堆積物の詳細な層序区分に使えること,(2)過去40万年間の珪藻殻数変化は深海底の酸素同位体比変化と良く対応する.すなわち,殻数の多い層準は温暖な時期,殻数の少ない層準は寒冷な時期に対応し,琵琶湖の珪藻殻数の変化は地球規模の気候変化(ミランコビッチサイクル)と密接に関連していること,を明らかにした.
    本研究の結果は比較的均質な細粒堆積物であれば,陸水成堆積物の気候変化の研究が珪藻分析によってより詳細に解明できることを示している.また,深海底堆積物を用いて活発に研究が進められている高解像度気候変化についても,堆積速度の非常に速い陸水成堆積物でより高い時間分解能で解明できることを示している.
  • 大塚 富男, 高浜 信行, 中里 裕臣, 野村 哲
    1997 年 36 巻 2 号 p. 123-136
    発行日: 1997/05/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    群馬県烏川中流域における更新世末~完新世に降下した厚いテフラ層中で,約2万年前以降に計4回の液状化跡を確認した.それらは新しい順に,1108年以後1783年以前,1万年前より新しい時期,約1.7万年前,2.1万年前から1.7万年前の間である.最も新しい1108年以後の液状化跡に対応する古地震の文書記録は確認されていない.液状化した物質はローム層と黒色土壌層で,それぞれ上位の浅間起源の軽石層に貫入している.
    液状化による変形には,地震時・液状化層の間隙水圧上昇(液状化発生~主段階)による吹きあげにともなうものと,震動後・液状化層の減圧(液状化終息段階)による引きこみにともなうものが明確に識別できる.これまで,引きこみ現象を明確に認識した報告はみられない.しかし,野外で観察できる液状化跡は,その最終形態である.したがって,液状化の認定には吹きあげ-引きこみ現象を総合的に観察することが重要である.
    テフラ層中には,本報告で記述した液状化をはじめ,多様で豊富な地質情報が記録されている.テフラ層の時間面指標としての有効性を積極的に活用した,さまざまな地質情報の読みとりが,第四紀学の内容をより豊富なものにするであろう.
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