浜名湖畔 (静岡県浜名郡雄踏町) および浜名湖底 (主湖最深部, 庄内湖) で得られた完新世堆積物の花粉化石群集にもとづき, 浜名湖周辺地域の古植生を復元した. この地域では, 暖帯落葉樹林期, 照葉樹林期, マツ林期の3つの森林期を設定することができた.
しかしながら照葉樹林の発達様式は北部と南部で異なっていた. 主湖最深部への花粉の供給源となる都田川流域の位置する北部では, 照葉樹林はシイとカシで形成され, その繁栄期は約5,000年前以降であった. 一方, 雄踏町および庄内湖の位置する南部では, 約7,500年前にシイ林が成立し, カシ類の分布拡大は6,000年前頃にみられた.
こうした事実は, 浜名湖南部地域が太平洋に面し, 海洋の影響, とくに黒潮による気候緩和作用を受けた結果と考えられる.
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