第四紀研究
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58 巻 , 2 号
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「第四紀研究から防災・減災への多角的なアプローチ」 特集号
  • 奥野 充, 石原 与四郎, 遠田 晋次, 黒木 貴一, 井村 隆介, 北村 晃寿
    2019 年 58 巻 2 号 p. 85-89
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2019/06/04
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    公開シンポジウム「第四紀研究から防災・減災への多角的なアプローチ」では,現在進行形の自然災害に対する緊急調査や研究例,地形や堆積物,考古遺跡などに記録された過去の災害(またはハザード)の研究例を取り上げた.このように,第四紀研究は現在と過去の自然災害のどちらも研究対象とする特長があり,そこから未来に発生するハザードを精緻に予測するためにどのような貢献ができるかを考えたい.

  • 竹村 恵二
    2019 年 58 巻 2 号 p. 91-99
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2019/06/04
    ジャーナル 認証あり

    内陸の直下型地震は,大きな地震被害を生じさせるため,現在につながる第四紀テクトニクスと関連した観測・研究が重要である.2016年熊本地震は最大震度7を記録し,日奈久・布田川断層の分布が記載された場に右横ずれ断層を示す地表地震断層が出現した.本論文では,地震発生時までの九州中部のテクトニクスの研究や観測・調査を概観し,関連する課題についてまとめた.

  • 村上 哲, 平田 涼太郎, 坂本 龍太郎, 野見山 陽, 三輪 滋
    2019 年 58 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2019/06/04
    ジャーナル 認証あり

    平成28年熊本地震では熊本県内11市町村で液状化が確認された.特に熊本平野においては広範囲で液状化が生じた.今回の地震では前震と本震が短期間で発生した結果,大きな地震外力が複数回作用し大規模な液状化を引き起こした.また,白川から派生するように延びる帯状の液状化地帯も特徴的であった.噴砂の多くは火山灰質砂であり,この特徴的な土質の影響が液状化被害を甚大化した可能性も指摘できる.

  • 横田 修一郎, 鳥井 真之
    2019 年 58 巻 2 号 p. 109-119
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2019/06/04
    ジャーナル 認証あり

    阿蘇カルデラ内の高野尾羽根火山西麓の緩斜面上に,2016年熊本地震によって段差を伴う地割れが多数出現した.この緩斜面は厚さ約10mのローム層によって覆われている.現在は宅地となっているが,過去には耕作地やアイススケート場として利用されていた経緯もあり,それぞれ顕著な地形改変がなされてきた.地割れは最大20~30cmの水平変位を伴うこともあるが,1m以下の鉛直変位を主体としている.地割れの走向はE-W~ENE-WSWが卓越し,造成宅地中央部では北側沈下で長さ150m以上に達している.宅地内で変位を伴った地割れ群は,この顕著な地割れを境にして北側に多い.これらの顕著な地割れは,かつてのスケートリンク外周部に対応することから,テクトニックな地表地震断層ではなく,むしろ宅地造成時の盛土が地震動によって沈下または移動した可能性が高い.

  • 遠田 晋次, 石村 大輔
    2019 年 58 巻 2 号 p. 121-136
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2019/06/04
    ジャーナル 認証あり

    マグニチュード(M)7前後以上の内陸地殻内地震は必ずしも既知の活断層から発生しない.伏在活断層や短い活断層によっても生じ,その評価が課題となっている.2016年熊本地震では,震源となった日奈久断層北部,布田川断層だけではなく,その他の約200個所以上で小変位が検出された.既知の活断層も多数含まれる.これらは熊本地震の静的応力変化や地震動によって誘発されたと考えられる.また,余震を起こし地震発生層まで達した変位と表層付近だけのものなど,地震性・非地震性の観点からも多様である.同様の事例は干渉SARなどによって国内外で報告されている.これらのことから,短い活断層は必ずしも独自の大地震を起こすわけではなく受動的に変位することがわかる.これにより,地震動を生成させる短い活断層の総数は減るが,小規模ながら頻繁に地表変位を繰り返すという意味では断層変位ハザードは上昇する.

  • 黒木 貴一
    2019 年 58 巻 2 号 p. 137-148
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2019/06/04
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    2014年広島市の土砂災害範囲に関しハザードマップの地域区分と比較し,微地形や流域の地形情報と,地域防災単位を重ね合わせ表示する必要性を確認した.さらに雲仙の火山麓扇状地を対象に,土砂災害の注意を喚起できる地域区分を検討し,土砂災害ハザードマップ作成における第四紀学的な考え方をまとめ,以下の4項目に整理した.1)堆積と侵食の地形プロセスで構成される102オーダー年内の地形形成史は,土砂災害に対する地域区分の基礎資料になる.2)標高変化量を地形プロセスに読み替え,その結果を古い順に重ね合わせる空間解析は,地形形成史の理解に相当する.3)地形プロセスの組み合わせに読み替えた地理情報を,種類と規模と順序を考慮して再分類する空間解析は,微地形区分に相当する.4)雲仙のDEMによる地形解析では,微地形から場の安全性の違いを,流域から土砂や水の動きに注意すべき範囲を,理解しやすい.

  • 西山 賢一, 鳥井 真之, 横田 修一郎, 若月 強, 井上 弦, 中尾 賢一, 星出 和裕, 奥野 充
    2019 年 58 巻 2 号 p. 149-162
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2019/06/04
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    阿蘇カルデラを構成する急崖直下に広がる沖積錐には,安山岩・溶結凝灰岩・テフラ層のブロックなどを含む淘汰不良の堆積物が分布している.これらの堆積物の堆積時期を検討するため,5地区において,炭質物3点と古土壌4点のAMS 14C年代を測定した.その結果,過去約2.6万年前まで遡る年代値が得られた.これらの14C年代値とテフラから,この5地点では過去約2.6万年間に,崩壊起源の土砂堆積イベントが少なくとも15回程度あったことが推定された.阿蘇カルデラの急崖では,過去2.6万年において,およそ103年に1回のオーダーで,豪雨または強い地震動,あるいは両者の組み合わせを誘因とする崩壊堆積物が供給されてきたと推定できる.

  • 中西 利典, 木村 治夫, 松山 尚典, ホン ワン, 堀川 義之, 越後 智雄, 北田 奈緒子, 竹村 恵二
    2019 年 58 巻 2 号 p. 163-173
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2019/06/04
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    中央構造線活断層系の西端に位置する別府湾は,およそ5Maから沈降場にある.その南縁の府内断層は同堆積盆を構成する主要な正断層である.その活動性を評価するために,断層を挟んで掘削された7本のボーリングコア試料を用いて,堆積相解析,珪藻化石の群集組成解析,合計17試料の陸源植物片と4試料の海生炭酸塩の放射性炭素年代測定を実施した.それらの解析結果を基にして,デルタフロント相,デルタプレーン相,人工盛土相を認定した.これらの堆積構造と変形構造は地中レーダ探査によって可視化された.これらの結果,デルタプレーン相の最上部の泥層の堆積年代と珪藻化石群集を基にして800~400calBPの最新活動を認定した.デルタフロント相の泥層の上下変位量を基にして2,100calBP頃の活動も認定した.これらからおよそ1,700年の再来間隔が計算できる.

  • 石村 大輔
    2019 年 58 巻 2 号 p. 175-186
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2019/06/04
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    2011年東北地方太平洋沖地震以前は,三陸海岸の長期間にわたる津波履歴は十分に理解されていなかった.2011年以降,従来は古津波堆積物調査に適した地域ではないと考えられてきた三陸海岸において,2011年津波の記録や徹底した掘削調査により,古津波堆積物の数や分布が明らかにされてきた.特に歴史記録にある1611年慶長三陸津波や869年貞観津波によると考えられるイベント堆積物は三陸海岸の広い範囲で認められ,その被害の様子が捉えられてきた.加えて,より古い数千年間のイベント堆積物が津波起源と推定され,三陸海岸ではある年代に古津波堆積物の年代が集中することがわかってきた.今後,各地点における古津波堆積物の対比方法の確立や詳細な古津波堆積物研究が,過去に起きた津波の規模・波源の理解に繋がるものと考えられる.

  • 菅原 大助
    2019 年 58 巻 2 号 p. 187-194
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2019/06/04
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    津波土砂移動数値解析は,津波による侵食・堆積現象を理解するための強力なツールであり,今後,古津波の規模や波源推定などに適用が進むと期待される.古津波の土砂移動数値解析では,現世の津波の事例にも増して,入力データ(初期条件)による不確実性に注意する必要がある.不確実性は,解析結果と津波堆積物データとの比較を困難にする.津波土砂移動解析の初期条件は,地形,植生,堆積物,海面高の4つに区分できる.古津波の場合,これらの初期条件について確実な推定を行うことは極めて難しい.古津波の研究に土砂移動数値解析を有効に活用していくには,不確実性評価の枠組みを整理するとともに,長期的な地形発達や環境変化や,海流や気象の年・季節変動による海浜地形の変化,さらには人為的な地形改変の履歴などについてより多くの情報を蓄積し,可能な限り不確実性を縮減する必要があると考えられる.

  • 吉村 和久, 石原 与四郎, 山内 平三郎, 島袋 綾野, 片桐 千亜紀, 能登 征美, 天日 美薫
    2019 年 58 巻 2 号 p. 195-209
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2019/06/04
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    鍾乳洞の天井から滴下する地下水は溶存しているCO2が脱ガスすることで,方解石からなる鍾乳石を形成する.このうち,石筍は年10~100µmの速度で上方に成長する.石筍の詳細な分析からは,アジア・モンスーンの活動や地表植生等の様々な長期間の古環境記録が得られるほか,これらが破損した時代からは地震などのイベントも読み取れる可能性がある.鍾乳石の数値年代は,U-Th法や蛍光年縞を用いる方法によって得られてきた.本稿では,大規模な地震や津波が鍾乳洞に残し得る記録について概説し,沖縄県石垣市白保海岸から近い白保竿根田原洞穴遺跡を胚胎する洞窟から得られた石筍の最近約500年間のMg/Ca比,δ13C, Sr/Ca比と大規模津波との関連について紹介する.

  • 成尾 英仁, 中摩 浩太郎, 渡部 徹也, 鎌田 洋昭, 西牟田 瑛子, 松崎 大嗣
    2019 年 58 巻 2 号 p. 211-228
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2019/06/04
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    薩摩半島南東端に位置する開聞岳(924m)では,平安時代の貞観十六年(AD 874)と仁和元年(AD 885)に噴火が発生した.開聞岳東方の指宿市街地に位置する敷領遺跡・橋牟礼川遺跡では,貞観十六年テフラに対比されるKm12a3~4(紫コラ)下位から,噴火で被災した遺構・遺物が発見されており,噴火災害の様相と当時の人々の対応が明らかになってきた.本論では,遺跡内外でのKm12a3~4の堆積状況と「日本三代実録」の記録とを対比し,居住地域や耕作地が埋没するなどの災害が生じたこと,噴火途中で降雨によるラハールが発生したことなど,記録と発掘結果が整合することを示した.Km12a3~4が厚く堆積した地域では,噴火後に復旧作業を実施しなかったか,途中で断念し集落を完全に放棄した.一方,分布主軸からはずれた地域では復旧がなされ,噴火後の政治・経済の中心となったと推定される.

  • 山田 圭太郎
    2019 年 58 巻 2 号 p. 229-236
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2019/06/04
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    近年,低頻度ながらも大規模な災害をもたらしうる地震や噴火などのイベントに社会の注目が集まっている.このような低頻度イベントの周期などの実態解明には,長期間のイベント史の復元が可能なイベント堆積物が大きな鍵となる.1980年代に活断層研究から始まった別府湾のイベント堆積物研究は,多くの研究者とその視点から分析がなされてきた.これらの研究は別府湾のイベント史を明らかにする一方で,その複雑な記録過程も明らかにしつつある.今後,イベント堆積物に基づく記録だけでなく,古環境情報,古文書記録,シミュレーションなどによる総合的な記録過程全体の理解こそが,イベント堆積物解析の発展に向けて重要である.

  • 佐々木 華, 大西 由梨, 石原 与四郎
    2019 年 58 巻 2 号 p. 237-249
    発行日: 2019/04/01
    公開日: 2019/06/04
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    更新統蒜山原層の湖成年縞堆積物の研究から,堆積過程の側方変化に基づく「洪水性イベント重力流堆積物」と「崩壊性イベント重力流堆積物」の識別方法が確立された.すなわち,洪水性イベント堆積物は側方への連続性が良い一方,崩壊性イベント堆積物は側方変化が大きく,層厚も層相も大きく変化する.この識別方法を更新統塩原層群宮島層のイベント層の解釈に適用した.その結果,識別方法は妥当でありかつ,ハイパーピクナイトとハイポピクナイトもしくはホモピクナイトと推定される洪水性イベント堆積物の識別にも,堆積過程の側方変化を考慮すれば良いことがわかった.すなわち,ハイパーピクナイトは下位層への侵食を示し,層相は比較的側方に変化するが,層厚の側方変化は僅かである.一方,ハイポピクナイトもしくはホモピクナイトは下位層を侵食せず,層厚や層相は側方に数km追ってもほぼ変化しない.

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