本総説では2018年時点での国内外におけるテフラ研究の現状と動向について,テフラ研究の根幹をなすテフラの同定法,噴火年代の決定,古気候変動研究への応用,分布の広域性,テフラ標準試料の整備に関して言及した.テフラ同定法については現在主流である火山ガラスのEPMA分析におけるラボ間測定差の問題とその解決にむけた動き,最新の分析方法であるLA-ICP-MSの現状を取り上げた.噴火年代の決定については最近の放射測定法から氷床コア年代モデルによる年代決定,古気候変動研究への応用を取り上げた.とくにグリーンランド氷床コアから検出されつつある大陸間規模のテフラ対比の現状やそれに関わる問題について触れた.またテフラ研究を支えるテフラ標準試料の整備について関連機関の事例について述べた.
中部日本における前期更新世末~中期更新世全体を含む資料の地域花粉帯と海洋酸素同位体層序との対応を整理し,花粉生層序層準の認定および森林古植生の組み合わせから5つの花粉超帯を設定した.中部日本における森林古植生の枠組みは,海洋酸素同位体層序のターミネーションとほぼ同時期に変革があり,MIS 21の下限より下位のQuercus-Metasequoia超帯では,Metasequoiaなど新第三紀型植物群を伴う暖温帯落葉広葉樹林,MIS 21~MIS 15の下限までのFagus-Quercus超帯では,温帯針葉樹を伴う暖温帯落葉広葉樹林,MIS 15~MIS 11下限のCryptomeria-Fagus超帯では,温帯の針葉樹を伴うQurecusの少ない暖温帯落葉広葉樹林,MIS 11~MIS 9下限のCyclobalanopsis-Cupressaceae超帯では,温帯の針葉樹を伴う暖温帯常緑広葉樹林,MIS 9~MIS 5下限のPinaceae-Cryptomeria超帯では,マツ科針葉樹が多く落葉広葉樹林を伴う温帯針葉樹林へと段階的に変遷した.
本稿では最近約10年間の光ルミネッセンス(OSL)年代測定の測定手法の発展のうち,長石の年代測定法と礫や岩石表面を対象とした年代測定法について紹介する.長石の年代測定法は,長年の問題であったフェーディングを少なくする測定技術の開発により著しく発展したが,フェーディング補正が必要な場合も多い.そこで従来から用いられていた補正法とともに,新しい物理モデルに基づく補正法についても解説する.また,最近砂やシルトサイズの粒子だけではなく,岩石や礫の表面の露出および埋没年代も測定できるようになった.これについても紹介する.