第四紀研究
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45 巻, 2 号
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原著論文
  • 鴨井 幸彦, 田中 里志, 安井 賢
    2006 年 45 巻 2 号 p. 67-80
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    砂丘の形成年代は, 砂丘砂層や砂丘間凹地の腐植土, および砂丘の基盤層中に含まれる有機物の年代から決めることができる. 新しい年代値とともに, これまでの多くの年代測定値をまとめて整理し, 越後平野における砂丘の形成年代と形成過程を明らかにした. 約8,000年前に縄文海進とともに海水面が上昇すると, 越後平野の内陸部でラグーンを伴ったバリア島システムが成立した. 約6,000年前の海水準高頂期後, 海水準が安定するか, やや低下すると, 信濃川などの流入河川によって堆積物が豊富に供給され, 沖積平野は急速に拡大した. 海岸砂丘の発達は, 海岸線の前進と停止に呼応して断続的に進み, 10列の砂丘が形成された. 砂丘の形成年代は, 新砂丘I-1が約6,000年前, 新砂丘I-2が6,000~5,500年前, 新砂丘I-3が5,000年前, 新砂丘I-4が約4,500年前, 新砂丘II-1が約4,000年前, 新砂丘II-2が約3,500年前, 新砂丘II-3約3,000年前, 新砂丘II-4が2,000~1,700年前, 新砂丘III-1が1,700~1,100年前, 新砂丘III-2が約1,100年前である.
  • 植木 岳雪
    2006 年 45 巻 2 号 p. 81-97
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    関東平野西縁の上鹿山面, 狭山面は, 58~69万年前に噴出した貝塩上宝テフラ (KMT) に覆われる河成段丘である. それらの編年精度の向上のために, 上鹿山面構成層 (上鹿山礫層) 最上部のフラッドローム層とそれを覆う風成ローム層, および狭山面構成層 (芋窪礫層) を覆う風成ローム層とそれに狹まれるKMTの古地磁気測定, 岩石磁気実験を行った. その結果, 上鹿山面, 狭山面の試料はすべて正の古地磁気極性を持ち, それらの安定な残留磁化は, おもにチタノマグネタイトによって担われていることが明らかになった. 上鹿山面, 狭山面の形成時期は Brunhes Chron の初期と見積もられる.
  • 酒井 哲弥, 高川 智博, ガジュレル アナンタ, 田端 英雄, 大井 信夫, ウプレティ ビシャール
    2006 年 45 巻 2 号 p. 99-112
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    カトマンズ盆地の更新統, ゴカルナ層から急速な湖水準の低下を示す堆積物が見つかった. その堆積物は, ゴカルナ層中に広く追跡可能な侵食面に沿って認められ, 次のような堆積物の特徴をもつ. (1) 低角の平板型斜交層理 (傾斜およそ10°) が見られ, 他のものに比べて粗粒な堆積物からなるデルタフロント堆積物で, そのトップの高さが前進方向に向かって低くなる. (2) アンティデューン斜交葉理の見られる砂層が, デルタフロント堆積物の前進が停止した部分で, 指交関係になっている. (3) 上記の堆積物が見られた地点のさらに盆地の中心方向で, 深さおよそ5mの下位層の削り込みが認められ, その内部をコンボリュート葉理の発達した砂層が埋積している.
    上記の (1) の堆積は, 湖水準の低下の初期に, 河川が下位の堆積物を削ることで堆積物運搬量が増加, 速いデルタフロントの前進が引き起こされることで形成されたと解釈される. さらなる湖水準の低下にともなって, このデルタは地表に露出した. アンティデューン斜交葉理の存在から, このデルタフロント部分からさらに水位が下がるときには, 流速条件が大きかったことが読める. そして, これ以前のデルタが累積することで, すでに水中に存在していた地形的な高まりのトップよりも, さらに水位が低下するときに削り込みが形成され, その直後にこの削り込みは堆積物によって埋積された.
    この急速な湖水準の低下は, 盆地からの唯一の河川の流出口の峡谷付近で, 湖の形成に寄与していた地滑りなどによって形成されたプラグが崩壊することで起きたものと解釈される. 段丘堆積物の累積を引き起こした湖の水位の上昇は, このプラグが形成されたことにともなうものと推測される.
  • 中尾 賢一
    2006 年 45 巻 2 号 p. 113-121
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    長崎県島原半島南部に分布する口之津層群加津佐層 (下部更新統) の堆積相と貝化石を調査した. 南島原市加津佐町津波見では, 湾央~潮間帯下部から干潟を経て塩水湿地に陸化する過程が観察された. 最下部の粘土層からはシズクガイを主とするシズクガイ群集が, その上位の泥質砂層からはナミマガシワ, アワジチヒロ, サルボウ, チリメンユキガイからなるサルボウ-アワジチヒロ群集が検出された. これらの群集の構成種はすべて現生種である. アワジチヒロとチリメンユキガイは国内最古の大陸沿岸系遺存種 (有明海準特産種) の化石記録であり, 更新世前期に大陸沿岸系遺存種の一部がすでに日本列島で地域的に出現していたことを示している.
短報
  • 吉田 英嗣, 須貝 俊彦, 大森 博雄
    2006 年 45 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    浅間火山において約2.4万年前に発生した大規模山体崩壊を起源とする堆積物は, 岩屑なだれとして全域にもたらされたと考えられている.
    浅間火山からの距離が異なる中之条盆地から関東平野北西部に至る3露頭において, 岩屑なだれ堆積物とその下位層であるイベント前の河床堆積物をそれぞれ系統的に採取し, 蛍光X線分析によってそれらの化学組成を調べた.
    岩屑なだれ堆積物のSiO2濃度は, 浅間火山からの距離に関わらず低く, 給源とされる黒斑山の岩石の組成と調和的である. 一方, イベント前の河床堆積物は, SiO2濃度が高く, 岩屑なだれ堆積物とは明瞭に異なる. 最下部を除いて, 岩屑なだれブロックと岩屑なだれマトリクスとの組成の差異は, ともに認めがたい. 一方, 岩屑なだれ堆積物の最下部の試料は, イベント前の河床堆積物に類似した組成を有す. これらのことから, 最下部を除く岩屑なだれの大部分は, おもに給源火山体の岩石からなる「プラグ」部に相当すると解釈される. また, 岩屑なだれ堆積物の最下部では, 岩屑なだれの流下に伴って強いせん断応力が働き, 岩屑なだれ堆積物と河床堆積物とが顕著に混合する状態が生じていたと考えられる. すなわち, 岩屑なだれ基底部には, 「層流境界層」が形成されていたと解釈される.
    以上により, 浅間火山における大規模山体崩壊によって生じた土砂は, 大局的には90km以上の距離にわたり, プラグフローとしての性質を保持した高速の岩屑なだれであったと考えられる.
  • 大上 隆史, 須貝 俊彦
    2006 年 45 巻 2 号 p. 131-139
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/27
    ジャーナル フリー
    簡易ボーリング調査, 既存ボーリング資料の収集・解析, 14C年代測定, 地形測量にもとづき, 四日市断層の撓曲崖の地下構造とその成長過程を明らかにし, 四日市断層と養老・桑名断層の関係を検討した. 過去10,000年間における四日市断層の平均上下変位速度は1.2~1.8mm/yrであり, 桑名断層の活動度と同程度である. また, 過去7,000年間における断層変位の累積パターンは, 桑名断層のそれと一致する. さらに, 四日市断層の最近3回の活動時期と各断層イベントの上下変位量は, 桑名断層の最近3回の値とほぼ等しいと考えて矛盾しない. これらのことは, 四日市断層が少なくとも過去10,000年間, 桑名断層と同一の活動セグメントをなしているとの考えを支持する.
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