宮崎平野においては, 後期新生界及び, 段丘地形の発達が良好である. 1930年代以降, 宮崎平野の地形及び地質の研究が行なわれてきたが, 従前の研究においては, 中新世後期から鮮新世前期の宮崎層群を切る谷を埋め, 段丘堆積物に不整合に覆われる堆積物 [大塚 (1930, 32) の通山浜層, 竹山 (1934) の仲間原泥層, Endo (1968) の川南層群が存在すると考えられてきた.
一方, 筆者の調査によると, 宮崎平野の段丘面は次の様に分けられる. 即ち, 上位から, 先茶臼原面, 茶臼原面, 三財原面, 新田原面, 川南原高位面, 川南原低位面群, 日向シラス面, 三日月原面群である.
本論文においては, いわゆる通山浜層と, 段丘面の海面の相対的変動に関連した発達史の問題点に就いて述べたい.
いわゆる通山浜層については, その層相や, 段丘堆積物との関係, 及び, 川南原高位面下における, いわゆる通山浜層から産出した木片の
14C年代測定結果からみて, 茶臼原面下のもの, 三財原面及び新田原面下のもの, 川南原高位面のもの, と三分される.
川南原高位面は, 面を作る堆積物の層相と地形的特徴とからみて, 海成面であろうと思われる. 三財原面も, その分布上の特徴や, 堆積物の層相からみて海成面である. これら二つの面下に存在するいわゆる通山浜層は, それぞれ, これらの面の形成にかかわった海進時の堆積物であると考えられる. 川南原高位面を構成している堆積物 (川南原層: 本論文中で, いわゆる段丘堆積物といわゆる通山浜層とを併せたものとして定義する。) 中の砂質シルト層中に産出した木片の
14C年代測定の結果, 26,100年±900年B.P. (GaK-3326) という年代が得られた. この絶対年代からみて, 川南原高位面は最終氷期中の亜間氷期に形成された可能性がある. 三財原面は海退過程で完成されたと思われる. 新田原面はその海退の後の海水準安定期に形成されたのであろう. 日向シラス面は川南原高位面形成後の海退時に, 大淀川流域に流入したシラス (入戸火砕流) の作る面である. シラスの絶対年代に関しては, 次のC
14年代を得た. 即ち, シラス直下の暗色腐植質泥土層の29,600
+1800 -1400年B.P.(GaK-2621) とシラス直上の軽石層 (第2オレンジ軽石層) 中の木片の25,600±1300年B.P.とである. 三日月原面群は最終氷期の最大海退時の産物であろう.
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