第四紀研究
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40 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 関口 千穂
    2001 年 40 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 2001/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    飯山盆地周辺山地における森林植生の変遷を明らかにするために,北ドブ湿原(標高1,550m),茶屋池湿原(標高1,100m),沼の原湿原(標高830m)においてボーリング調査を行い,得られた湿原堆積物について14C年代測定,テフラの同定,花粉分析を行った.笹ヶ峰(標高1,280m)では,露頭から採取した泥炭層の花粉分析を行った.湿原堆積物中には,多数の示標テフラが認められ,北ドブ湿原と沼の原湿原の堆積物は最終氷期の約18,000~17,000yrs BP以降,茶屋池湿原のそれは御岳潟町テフラ(On-Kt)が介在することから,最終氷期前半にさかのぼる堆積物であることが明らかになった.
    湿原堆積物と笹ヶ峰で採取した泥炭層の花粉分析結果から,飯山盆地周辺山地ではIB-I帯からIB-VI帯までの6地域花粉帯が設定される.本地域の植生変遷をこれらの地域花粉帯ごとにまとめると,IB-I帯:最終氷期前半の温帯性針葉樹と落葉広葉樹の混生する疎林期(約93,000~74,000yrs BP),IB-II帯:AT降下前の亜寒帯性針葉樹と落葉広葉樹の混生する疎林期(約26,000~25,000yrs BP),IB-III帯:最終氷期後半の亜寒帯性針葉樹とカバノキ属が混生する森林期(約18,000~14,000yrs BP),IB-IV帯:晩氷期のカバノキ属優占の落葉広葉樹林期(約14,000~10,000yrs BP),IB-V帯:後氷期の最温暖期を含むブナの優占する落葉広葉樹林期(約10,000~4,000yrs BP),IB-VI帯:ブナ優占の落葉広葉樹林が卓越するが,針葉樹林も生育地を拡大する時期(約4,000yrs BP以降)となる.
    飯山盆地周辺山地における約10,000yrs BP以降のブナの優占する落葉広葉樹林の発達は,ブナ林が急速に成立・拡大したことを示唆し,このブナ林の発達は,晩氷期以降に本地域が多雪地となったことに強く関連していると考えられる.
  • 渡邊 眞紀子, 小林 孝行
    2001 年 40 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2001/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    阿蘇4,阿多テフラを含む約10万年相当の南九州テフラ-土壌累積断面において,腐植酸緑色画分Pgの分布とテフラ年代を関連づけて検討したところ,酸素同位体比曲線とよく対応する周期的な変動が見られた.無機コロイド鉄を分析した結果,Pgはヘマタイト的鉄とではなく,ゲータイト的鉄もしくは非晶質鉄のフェリハイドライトとともに存在していることが明らかとなった.また,Pg吸収強度の強弱の振れと全分析によるシリカ・アルミナ比,アルミナ・可溶性塩類比との対応が見られた.これらのことから,Pgは強い表層風化作用,土壌化作用をうけた層位の下位層において移動・集積,もしくは外生菌根菌の代謝産物として根系付近で生成・残留した可能性があることを指摘した.生物の代謝産物を起源とし,テフラ土壌累積断面に残留する緑色色素の含量をPg吸収強度として検出することにより,溶脱作用の程度に反映された過去の気候環境を推定することができると考えられる.
  • 鈴木 毅彦
    2001 年 40 巻 1 号 p. 29-41
    発行日: 2001/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    妙高火山群の一つである飯縄火山を給源とする飯縄上樽テフラ群の記載を行い,分布・層位を示した.また,その年代と編年学的意義について論じた.同テフラ群は3枚の降下テフラ層からなり,そのうち最上位のIz-KT aが最も広く分布し,信越国境,群馬県北部,栃木県北部で見出された.Iz-KT aの認定には,斑晶鉱物組合せ,斜方輝石の形状,斜方輝石・ホルンブレンドの屈折率,チタン磁鉄鉱の主成分化学組成が指標となる.飯縄上樽テフラ群の年代を,それとの上下関係が知られているテフラ層や溶岩をもとに推定した結果,150ka以降125ka以前,すなわち海洋酸素同位体ステージ5と6の境界付近にあることが明らかにされた.本テフラは,ステージ6に形成された気候段丘の認定に役立ち,それによる内陸地域の隆起量の復元に手がかりを与える.また,火山噴火史構築の際に時間目盛りとして有効である.
  • 泥干潟における貝類の帯状分布
    佐藤 慎一
    2001 年 40 巻 1 号 p. 43-51
    発行日: 2001/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    1997年4月に潮止めされた有明海諫早湾奥部において,干上がった泥干潟上の貝類の分布パターンの調査を行った.干上がった潮間帯部分では,旧堤防(元の大潮平均高潮線付近)より地先約1kmから2kmまでの範囲に,ハイガイが極端に密集して帯状に分布していた.旧堤防より地先約0.5kmから1kmまでの範囲にはカワアイ・ササゲミミエガイ・テリザクラ等が,旧堤防付近から約0.5kmまでの範囲にはハナグモリが集中的に分布しており,おのおのの種が海岸線と平行に帯状の分布を示していた.これまで,泥干潟では底生生物の帯状分布はあまり明瞭ではないとされてきたが,少なくとも諫早湾奥部の泥干潟には貝類の明瞭な帯状分布が存在し,これらの帯状分布が底質よりも干出時間の長さと関係していたことが明らかになった.
  • 豊島 正幸, 早田 勉, 北村 繁, 新井 房夫
    2001 年 40 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2001/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    仙台地域における後期更新世の地形編年を,古赤色土(赤色風化殻)・テフラとの層位関係や花粉化石群集に関する既往研究に基づき再検討した.その結果,これまで最終間氷期に編年されてきた台ノ原段丘面は,その極相期より新しい亜間氷期(酸素同位体比層序のステージ5c)に対比された.
  • 長森 英明, 林 成多
    2001 年 40 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2001/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    新潟県十日町市田川において,下部更新統魚沼層のSK110とSK050の両火山灰層の間の層準(約1.6~1.2Ma)から長鼻類の足跡化石を発見した.産出層準からみてStegodon aurorae(Matsumoto)の足跡化石である可能性が高い.この化石は,魚沼層の陸生哺乳類相の貧困さを補う.足跡化石が形成された環境は,共産する化石から,湿地林や止水域を伴う湿地であったと推定される.今後も足跡化石が魚沼層の湿地堆積物から見つかる可能性がある.
  • 廣内 大助, 安江 健一
    2001 年 40 巻 1 号 p. 67-74
    発行日: 2001/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    筆者らは福井平野北東部地域において,ほぼ南北方向に走る延長4km以上の見当山断層を見出した.本断層は東側隆起の逆断層で,露頭において観察される変位量は,M2面で約12m以上,M3面で約3.1m以上であり,上下方向の平均変位速度は0.04~0.12m/ky以上と見積もられる.横ずれの有無については不明である.段丘堆積物の上位に見られる砂丘堆積物にも変位を与えており,変位の累積性も認められる.しかし,段丘面上の砂丘堆積物は層厚数十mに達するため,地表面において低断層崖などは認められない.
    本断層は,新第三系と上部第四系の地質境界をなすことから,福井平野東縁を走る断層群の北方延長部と考えられる.また,平野東縁では活断層の存在が指摘されながら,変位地形や断層露頭の報告はほとんどなく,今回新たな断層を発見し,変位量データなどを明らかにしたことは大きな意義がある.
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