第四紀研究
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46 巻, 1 号
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論説
  • 山川 千代美, 此松 昌彦, 八尋 克郎, 里口 保文, 石田 志朗
    2007 年 46 巻 1 号 p. 1-18
    発行日: 2007/02/01
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    伊吹山南麓に位置する滋賀県米原市(旧伊吹町)寺林地域には,寺林I火山灰層および寺林II火山灰層を挟在する中部更新統の寺林層が分布する.寺林I火山灰層と寺林II火山灰層は,高島沖ボーリングコア中のBT60,BT59に対比されており,寺林層の堆積期は酸素同位体比曲線のステージ8の寒冷期から7の温暖期にあたる.
    本層からは,チョウセンゴヨウPinus koraiensis, コメツガTsuga diversifolia, ウラジロモミAbies homolepisや,ダケカンバBetula ermanii, シラカンバB. platyphylla, ミズメB. grossa, ズミMalus toringo, キイチゴ属Rubusなどの冷温帯~亜寒帯のマツ科常緑針葉樹とカバノキ属・バラ科落葉広葉樹を主体とする大型植物化石とともに花粉化石,昆虫化石が産出する.これらに基づく古環境は,水生植物ホソバミズヒキモPotamogeton octandrusが生育し,それらに依存するノグチアオゴミムシLithochlaenius noguchiiやミズギワゴミムシ属Bembidionが生息する小規模な沼沢と,ハンノキAlnus japonica, キイチゴ属,カヤツリグサ属Cyperus, スゲ属Carex, タデ属Polygonum, ネコノメソウ属Chrysospleniumが生育し,ミズクサハムシ属Plateumarisが共生する湿地が分布していた.また,ヤハズソウKummerovia striata, ヨモギ属Artemisiaなど陽生の草本類が生え,ウラジロモミ,シラカンバ,ミズメの林が広がっていた.主として北側の山地下部では,尾根筋や崩壊斜面にコメツガ,緩傾斜面にウラジロモミ,ハシバミCorylus heterophylla, ズミ,キハダPhellodendron amurense, 谷筋にはサワグルミPterocarya rhoifolia, オニグルミJuglans mandshurica var. sachalinensisが生育していた.林床には草本類のカラマツソウ属Thalictrum, ツリフネソウImpatiens textoriなどが生え,オサムシ属Carabusが生息する環境が存在した.さらに山地上部ではチョウセンゴヨウ,コメツガ,ダケカンバなどが混生する森林環境が復元できた.
    また,寺林層最下部層~中部層下部の植物化石群は,冷温帯上部から亜寒帯に相当するやや乾燥した気候を示す.中部層上部では花粉化石においてモミ属,ツガ属,トウヒ属,カバノキ属の減少とブナ属とコナラ亜属の増加がみられ,より湿潤で温暖な気候への変化が示唆される.
  • 松浦 旅人, 吉岡 敏和, 古澤 明
    2007 年 46 巻 1 号 p. 19-36
    発行日: 2007/02/01
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    富山県東部魚津断層帯の第四紀後期活動性を把握するために,空中写真判読による活構造抽出および段丘面分類,地表踏査・ボーリングによる段丘構成層・レスの試料採取および火山灰分析・初期磁化率測定を行った.河成段丘面は,古い方から高位面(H1~H4面),中位面(M1面),低位面(LH1面,LL1面,最低位段丘面群)に区分される.これら段丘面上にのるレスは,AT, DKP, K-Tz, U-1などのクリプトテフラ(cryptotephra)を含む.レスの基底年代は,レスの層厚を,テフラ降下年代から推定した堆積速度で除して算出された.その結果,H2,H3,M1,およびLH1面にのるレスの基底年代はそれぞれ280~310ka, 240~260ka, 155~165ka, および60kaにさかのぼると推定された.これらレスの基底年代を段丘面形成年代とみなし,段丘面に生じた魚津断層帯の鉛直変位量を除して求められた平均鉛直変位速度は,最速で0.24~0.44m/ky以上と算出され,既報値(1m/ky以上)の1/2~1/3以下に修正される.
  • 川澄 隆明
    2007 年 46 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2007/02/01
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    中部日本の飛騨山脈立山(3,015m)とその西側に隣接する立山火山において,3段のモレーンと火山噴出物との層序的関係から,最終氷期後半の亜氷期における氷河前進と火山活動のタイミングを明らかにした.最終氷期後半の亜氷期は,立山期I(29cal ka直前),II(18~20 10Be ka),III(10~11 10Be ka)に細分される.立山期の氷河は立山期Iに最も前進し,その後順次後退した.飛騨山脈の高山では,最終氷期後半の亜氷期における氷河最前進がMIS 3の29cal ka直前に同時に起きた.立山火山は,立山期IとIIの間に水蒸気爆発を起こして類質溶岩片を放出したが,この溶岩片の降下は立山の氷河が後退・前進を開始する原因ではなかった.
  • 立石 良, 沢田 順弘, 永井 淳也, 酒井 哲弥
    2007 年 46 巻 1 号 p. 47-61
    発行日: 2007/02/01
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    島根県中西部に分布する鮮新—更新統江津層群中のテフラを7地点から採取し,火山ガラスと構成鉱物の特徴を明らかにした.火山ガラスは4地点のテフラに含まれ,いずれも流紋岩質(SiO2=77.0-79.8wt.%)である.いずれのテフラにも普通角閃石,ジルコンが含まれるが,随伴する有色鉱物種によって(1)かんらん石,(2)斜方輝石・黒雲母,(3)カミングトン閃石・黒雲母,(4)カミングトン閃石を含む4つのグループに分けられる.これらの苦鉄質鉱物の化学組成と既存のジルコンのフィッション・トラック(FT)年代から,(2)のうち1.7±0.2Ma,1.7±0.1Maの2試料,(3)のうち1.1±0.1Maの2試料の対比が可能である.また,(3)のテフラは大江高山火山起源と考えられる.江津層群中のテフラの諸特徴を明らかにすることは,今後の西南日本の鮮新—更新統の対比にとって有効と考えられる.
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