第四紀研究
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41 巻, 1 号
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  • Marina V. Cherepanova, Vladimir S. Pushkar, Nadya Razjigaeva, 熊井 久雄, 小 ...
    2002 年 41 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2002/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    房総半島の上総層群国本層は,太平洋地域における前期/中期更新世の模式境界の候補地として考えられているので,さまざまな地質情報を集約する必要がある.古地磁気層序のC1r(松山逆磁極期)/C1n(ブリュンヌ正磁極期)境界は,国本層中部の火山灰鍵層“シラオ”基底にある.養老川沿いの大田代層,梅ヶ瀬層,国本層,柿ノ木台層,長南層の珪藻群集は,汽水性Paralia sulcata (Ehrenberg) Kützingを優占種とする沿岸ないし浅海性種群から構成されている.北西太平洋の中緯度域における7つの珪藻基準面(生層準)が見いだされ,そのうち4つの基準面は国本層中部の前期/中期更新世境界の上下に2つずつ存在する.下位から,Actinocyclus oculatus Jouséの最終出現,Rhizosolenia matuyamai Burckleの最終出現,Nitzschia fossilis (Frenguelli) Kanayaの最終出現,Nitzshia reinholdii Kanayaの最終出現である.海退が,大田代層のC1r.1n(ハラミヨ事件)基底と国本層のC1r/C1n(前期/中期更新世)境界に生じている.珪藻生層序からみて,国本層は太平洋地域における前期/中期更新世の境界模式地として適当であると判断される.
  • 中村 有吾, 片山 美紀, 平川 一臣
    2002 年 41 巻 1 号 p. 11-22
    発行日: 2002/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    完新世テフラ中の火山ガラスの屈折率は,不完全な水和によって大きくばらつくことが指摘されていた.樽前aテフラ(Ta-a:西暦1739年),樽前bテフラ(Ta-b:西暦1667年),樽前cテフラ(Ta-c:約3千年前)について検討した結果,これらの火山ガラスには水和部分と未水和部分からなる二重構造が認められた.また,いずれのテフラでも,火山ガラスの屈折率はばらつきが大きく(標準偏差s=0.0033-0.0036),しかも試料ごとに測定値が異なる場合があった.このため,火山ガラス屈折率によって,完新世テフラを同定する際には注意が必要である.
    不完全水和火山ガラスの脱水は,400℃で12時間加熱すること(400℃12時間法)により可能である.400℃12時間法を適用したTa-a,Ta-b,Ta-c火山ガラスの測定結果にもとづけば,脱水ガラス屈折率の最頻値は未処理の不完全水和ガラス屈折率よりも0.006~0.014低い.脱水ガラス屈折率の標準偏差はs=0.0014-0.0018であり,不完全水和ガラスのばらつきと比べて十分に小さく,脱水ガラス屈折率はテフラ同定の示標となる.完新世テフラの同定には,脱水ガラス屈折率を用いることが望ましい.
    400℃12時間法を用いて,北海道の主要完新世テフラの脱水ガラス屈折率を測定した.多くのテフラは,それぞれ特徴的な値を示す.脱水ガラス屈折率に注目し,そのほかの岩石学的特徴(火山ガラス形態,重鉱物組合せなど)を補助的に測定すれば,北海道の多くの完新世テフラを同定することが可能である.
  • 于 革, 薛 濱, 王 蘇民
    2002 年 41 巻 1 号 p. 23-33
    発行日: 2002/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    湖沼水位および花粉データを用いて,中国における完新世中期,最終氷期最盛期,酸素同位体比ステージ3後期における古気候が復元された.3~4万年前には,現在より30~200m高い湖水位を持つ多くの淡水湖が,チベット高原や北部中国砂漠に存在した.これらは,チベットの寒冷混交林が現在の西方限界を超えて400~800kmも広がっていた花粉の証拠と対応している.Guliya氷冠に残されたδ18Oの高い値は,この期間が現在より暖かかったことを示している.これらの記録から,西中国の気候がステージ3後半で例外的に暖かく湿潤で,強い夏のモンスーンが生じていたことが復元される.最終氷期最盛期には,チベットや西中国Xinjiangでは,3万年前よりは低いけれども現在より高い水位であった.一方,東中国での乾燥を示す湖水位は,夏の雨量の少なさを推定させる.これは,夏のアジアモンスーンの弱体化による.一方,西中国の湿潤状況は蒸発の減少,雨量の増加を意味している.
    完新世中期の湖沼記録は,北東中国,北中国,Xinjiang盆地,チベット高原を含む中国全土で現在より湿潤であったことを示している.花粉に基づいた6千年前の植生復元では森林帯が系統的に北方ヘシフトし,チベットのツンドラ地域が大きく減少し,ステップ植生へ置き換わったことを示している.湖沼水位と花粉データは,6千年前における増大する夏のモンスーンと弱くなる冬のモンスーンを推定させる.
    中国における湖沼水位と植生記録の統合から,過去4万年間におけるアジアモンスーンの変遷に対する日照(太陽エネルギー),氷河作用,地表の変化への対応の気候シグナルを復元できる.古記録と古気候シミュレーションの間の矛盾は,気候変化のメカニズムをよりよく理解するために,古気候シミュレーションを改良する基礎となった.
  • 岡本 孝則, 松本 英二, 川幡 穂高
    2002 年 41 巻 1 号 p. 35-44
    発行日: 2002/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    北西太平洋域には,大陸を起源とする風成塵が大量に降下している.本論文では,中央北太平洋から得られた過去約20万年間を記録する深海底コアNGC59中の風成塵起源の石英の解析を行った.これまでは,複数起源の鉱物からなる海底堆積物から風成塵を正確に抽出することは困難であった.本研究では,風成塵の主要鉱物である石英に注目し,石英の粒度分布と含有量を測定した.海底コア表層の石英の粒度分布は,標準偏差1.28φの対数正規分布を示し,この標準偏差の値は中国のレス堆積物中の石英の値とほぼ同じであった.この結果に基づいて,深海底堆積物中の石英から風成塵石英を分離した.過去約20万年間における風成塵石英の沈積流量は,氷期には間氷期の1.5~2倍に達し,風成塵の起源である中国内陸部で氷期には乾燥化が進んでいたことが示唆された.一方,風成塵を運ぶ偏西風の強さの指標となる中央粒径値は,氷期-間氷期サイクルにおいて有意な変動が見られず,偏西風は大きく変化しなかったことが示唆された.
  • チョイ タッドジェイムズ, 高浜 信行, 卜部 厚志
    2002 年 41 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2002/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    本研究では,新潟盆地東縁部に位置する破間川流域の柿木から須原地域における約5万年以降の侵食段丘の火山灰編年を行った.
    破間川流域では,ロームおよび黒土から約5万年以降に降下した4層(Ab-t1,Ab-t2,Ab-t3,Ab-t4)の火山灰を同定し,これらの対比と地形面区分から6面の段丘(Ab-I,Ab-II,Ab-III,Ab-IV,Ab-V,Ab-VI)を区分した.火山ガラスや輝石の化学組成分析にもとづいて,4層の火山灰層のうちAb-t4はDKP(大山倉吉,50ka),Ab-t3はAT(姶良丹沢,25ka),Ab-t2は広域テフラのAs-K(浅間草津,13ka)にそれぞれ対比ができる.
    破間川上流域のAb-II段丘には,段丘堆積物中に層厚3~5mの不淘汰な泥層を含む.これらは,層相とその上位のロームの編年から,東野名巨大地すべり(50ka)の初生的活動によって破間川がせき止められて形成した湖沼堆積物であると考えられる.
  • 薛 濱, 于 革, 王 蘇民
    2002 年 41 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2002/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    中国の湖沼環境についての豊富な地質学的データから,第四紀後期の中国湖沼状況データベース(CLSDB)をまとめることができる.この論文は,汎地球的湖沼状態データベースと対応したCLSDBの構築について記述するとともに,中国国内および周辺地域からより多くのデータを集めることも目的とする.CLSDBは,東アジア地域の古気候を復元する研究や,地域的~汎地球的規模の気候モデルシミュレーションを確認する研究に,重要な役割を果たす.
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