南九州の各種テフラの同定を, その中に含まれる強磁性鉱物の磁気的性質を検討することによって行なおうとしているが, その第一段階として, 都城市横市のガラス質火山灰 (アカホヤ) と, 都城市福平の御池軽石を供試して, (1) テフラの原粒径差が磁気的性質に影響を及ぼすか否か, (2) アカホヤの同一降下単層中の灰部分と軽石部分で差異があるか否か, (3) アカホヤと御池軽石の差異はどの程度か, などについて検討した.
実験項目は, 熱磁気分析によるキュリー温度 (Tc℃) の測定, 磁化の履歴分析による磁気的諸パラメーターの測定, X線回折による格子定数 (aÅ) の測定, 化学分析などで, 実験には, アカホヤは灰部分, 軽石部分共, 風乾原試料を<0.1, 0.1-0.25, 0.25-0.5, 0.5mm<の4フラクション, 御池軽石は<2, 2-4, 4mm<の3フラクションに分け, それぞれを粉砕, 磁選して得た強磁性鉱物を供試した.
その結果, アカホヤでは原粒径が小さくなると, 化学組成の上ではFe
2O
3が増加し, 僅かながら酸化を受けていることが示されたが, それは磁気的諸性質に差異をもたらす程ではなく, 原粒径, 灰部分, 軽石部分のちがいにかかわらず, 磁気的諸パラメーターの平均値は, a=8.434Å, Tc=320, 500℃, Jr/Js=0.06, Hc=50Oe, 御池軽石も, 原粒径が異なっても, a=8.442Å, Tc=270, 510℃, Jr/Js=0.12, Hc=80Oeと求められた.
すなわち, (1) 強磁性鉱物の磁気的性質は両試料共, 粒径による差異はなく, 分級作用の影響は認められない. (2) アカホヤの灰部分, 軽石部分間で粒径組成, 塩基状態などの理化学的性質は異なるにもかかわらず, 強磁性鉱物の性質には差異がない, (3) アカホヤと御池軽石から分離した強磁性鉱物の性質には顕著な差異があると認められた.
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