長野県諏訪湖湖底堆積物(GS400,63Bボーリングコア)は,御岳起源のPm-I'~Pm-IIIや九州からのAso-4,ATに対比される火山灰層を挾んでおり,この堆積物のAT層準以深について花粉分析を行い,火山灰層序に基づいて検討を行った.
その結果,諏訪湖堆積物は下位よりSUWA-I(a,b亜帯),SUWA-II,III(a,b,c亜帯),SUWA-IV,V(a,b亜帯),SUWA-VI,VII(a,b亜帯),SUWA-VIII,IX(a,b,c亜帯),SUWA-X帯の花粉化石群集帯と亜帯に分帯された.SUWA-I,IV,VI,VIII,IXa,IXc,X帯および亜帯では亜寒帯針葉樹が優占し,SUWA-II・III,V,VII帯とIXb亜帯では温帯針葉樹や落葉広葉樹からなる温帯要素が優占または増加する.これは相対的に5回の低温(寒冷)期と4回の高温(温暖)期のサイクリックな繰り返しである.
この寒暖の時期は,火山灰層序・年代により更新世中期末から後期末の酸素同位体比(δ
18O)層序と比較すると,下位より最下部のSUWA-I帯はステージ6に対応し,それに引き続いてSUWA-II・III:ステージ5e,SUWA-IV:ステージ5d,SUWA-V:ステージ5c,SUWA-VI:ステージ5b,SUWA-VIIIステージ5a,SUWA-VIII:ステージ4,SUWA-IX:ステージ3,SUWA-X:ステージ2のようにそれぞれ対応する.
さらに,諏訪湖堆積物の花粉化石群集帯とその変遷は,同時代に相当する長野県野尻湖湖底堆積物,滋賀県琵琶湖湖底堆積物などの更新世中期末以降の長野県下および各地のおもな花粉化石群集とほぼ対比される.
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