第四紀研究
Online ISSN : 1881-8129
Print ISSN : 0418-2642
ISSN-L : 0418-2642
36 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 久保 純子
    1997 年 36 巻 3 号 p. 147-163
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    相模川下流平野には,最終間氷期以降の河成段丘が何段も発達し,それらのうち相模原段丘群(S3~S5),中津原段丘(N),田名原段丘群(T-1,T-2),陽原段丘群(M)は下流部では沖積面に埋没している.これらの段丘面および堆積物の形成期は,テフラを用いた編年によりそれぞれ,S3~S5段丘は80~70ka(酸素同位体ステージ5a/4),NおよびT-1段丘は50~25ka(酸素同位体ステージ3),M段丘は17~14ka(酸素同位体ステージ2)に対比された.
    ボーリング資料の解析により,下流部の沖積低地地下に埋没している段丘を検出し,それらの上流側の段丘との対比を試みた.その結果に基づき,S3段丘面形成期(酸素同位体ステージ5a)以降の地形変化を復元した.さらに,最下流部における埋没段丘面や堆積物の高度をもとに,海水準変化の考察を行った.
    相模川下流平野の最下流部において推定された各時期の海水準は,地殻運動による変位を差し引いて,酸素同位体ステージ5a:-30~-40m,酸素同位体ステージ4:-95~-110m,酸素同位体ステージ3:-80~-90m,酸素同位体ステージ2:-100~-110mとなった.既往の研究と比べて,とくに酸素同位体ステージ4の海水準低下量が酸素同位体ステージ2のそれに匹敵すること,酸素同位体ステージ3の時期に海水準が相対的に低いまま長期間持続したことが注目される.
  • 大嶋 秀明, 徳永 重元, 下川 浩一, 水野 清秀, 山崎 晴雄
    1997 年 36 巻 3 号 p. 165-182
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    長野県諏訪湖湖底堆積物(GS400,63Bボーリングコア)は,御岳起源のPm-I'~Pm-IIIや九州からのAso-4,ATに対比される火山灰層を挾んでおり,この堆積物のAT層準以深について花粉分析を行い,火山灰層序に基づいて検討を行った.
    その結果,諏訪湖堆積物は下位よりSUWA-I(a,b亜帯),SUWA-II,III(a,b,c亜帯),SUWA-IV,V(a,b亜帯),SUWA-VI,VII(a,b亜帯),SUWA-VIII,IX(a,b,c亜帯),SUWA-X帯の花粉化石群集帯と亜帯に分帯された.SUWA-I,IV,VI,VIII,IXa,IXc,X帯および亜帯では亜寒帯針葉樹が優占し,SUWA-II・III,V,VII帯とIXb亜帯では温帯針葉樹や落葉広葉樹からなる温帯要素が優占または増加する.これは相対的に5回の低温(寒冷)期と4回の高温(温暖)期のサイクリックな繰り返しである.
    この寒暖の時期は,火山灰層序・年代により更新世中期末から後期末の酸素同位体比(δ18O)層序と比較すると,下位より最下部のSUWA-I帯はステージ6に対応し,それに引き続いてSUWA-II・III:ステージ5e,SUWA-IV:ステージ5d,SUWA-V:ステージ5c,SUWA-VI:ステージ5b,SUWA-VIIIステージ5a,SUWA-VIII:ステージ4,SUWA-IX:ステージ3,SUWA-X:ステージ2のようにそれぞれ対応する.
    さらに,諏訪湖堆積物の花粉化石群集帯とその変遷は,同時代に相当する長野県野尻湖湖底堆積物,滋賀県琵琶湖湖底堆積物などの更新世中期末以降の長野県下および各地のおもな花粉化石群集とほぼ対比される.
  • 白井 正明, 多田 隆治, 藤岡 換太郎
    1997 年 36 巻 3 号 p. 183-196
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    秋田県男鹿半島安田海岸の上部第四系には,4枚の広域テフラ(Aso-4,Toya,Aso-3,B-Og)が報告されている.ただし,Aso-3については,各地での分布を考慮すると同定に疑問が残る.また,B-Ogについては,男鹿半島以外では発見されておらず,年代も不詳である.そこで,これら4枚のテフラについて主要元素組成を測定し,改めて同定を試みた.さらに,酸素同位体層序との対比が確立しているODP797,ODP794両コア中に挾在される600ka以降のテフラの火山ガラスについても,主要元素組成と屈折率を測定し,安田海岸で従来Aso-3とされていたテフラおよび,B-Ogに対比可能なものを見出し,その層位を検討した.その結果,安田海岸で従来Aso-3とされていたテフラはAso-1であり,年代は約255ka(酸素同位体サブステージ8b)と推定されること,またB-Ogの年代は約448ka(酸素同位体サブステージ12b)である可能性が高いことが判明した.これらの結果に基づくと,安田海岸の鮪川層基底の年代は,従来珪藻化石層序に基づき推定されていた年代より古く,約450ka以前となる.また,ステージ5に形成されたと考えられていた鮪川層と潟西層(従来の安田層)の境界の不整合の形成時期は,ToyaとAso-1の間(100~250ka)と判明した.
  • 中国北部の様相解明を中心として
    加藤 真二
    1997 年 36 巻 3 号 p. 197-206
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    中国北部地域の旧石器文化を対象として,その石刃技術の成立期の様相を提示するとともに,朝鮮半島・日本列島の該期の様相との比較を行い,東アジアの石刃技術成立期の特徴の把握を試みた.その結果,中国北部では石刃技術の成立とその石器文化への組み込みをめぐって,北アジアのムスチエ文化の系統を引く文化の流入によるものと,在地の中期旧石器文化の自律的な発展によるもの,という2つの状況を確認できた.
    また,朝鮮半島・日本列島との比較では,各地域で約3.5万から3万年前に石刃技術が成立し,石器製作技術へ導入されたことが判明した.その状況は,技術や伝統を異にするいくつかの在地的な中期旧石器文化を基礎とし,各地域での自律的な技術発展の結果,石刃技術が成立し,石器製作技術へ組み込まれていったと想定できるものであった.仮に,地域間に石刃技術の伝播が存在していたとしても,それは限定されたものと考えられる.
  • アカガシ亜属の減少とイネ属の増加
    岡田 俊子
    1997 年 36 巻 3 号 p. 207-213
    発行日: 1997/07/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    京都盆地に分布した巨椋池の堆積物について,花粉化石組成の変化における人為的影響のあらわれかた,およびその層準について検討した.その結果,マツ属が漸増するなかで,イネ属が増加し,アカガシ亜属が急激に減少する層準が明らかになった.京都盆地付近における従来の報告と合わせると,イネ属の増加は弥生時代後期頃,アカガシ亜属の急激な減少は平安時代以降鎌倉時代までを示す可能性が示唆される.このことは,火山灰や14C年代測定用の試料などが得にくい状況では,花粉化石組成に人為的影響の出現し始める層準が,歴史時代の相対的な時間軸の一つとして利用できる可能性を示している.
feedback
Top