第四紀研究
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52 巻, 6 号
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論説
  • 卜部 厚志, 片岡 香子
    2013 年 52 巻 6 号 p. 241-254
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/10/24
    ジャーナル フリー
    苗場山山頂の湿原堆積物に挟在するテフラ層の層相,鉱物組成,火山ガラスの形状・屈折率・化学組成を検討した.また泥炭質な湿原堆積物から14C年代値を得た.その結果,湿原堆積物は完新世に堆積した肉眼で確認できるテフラ層12層(NB1〜12)を記録しており,下位から,NB3は鬼界アカホヤテフラ(K-Ah)と妙高赤倉テフラ(My-A)との混在層,NB8は草津白根熊倉軽石層(KS-Ku),NB10は草津sp1-3テフラ層,NB11は妙高大田切川テフラ層(My-Ot),NB12は高谷池火山灰層グループc(KGc)にそれぞれ同定・対比した.それらテフラ層の間に浅間・草津白根・妙高・新潟焼山火山起源の可能性があるテフラ層が挟在する.苗場山はこれらテフラの供給源となる北関東・信越と日本海側の沖積平野との中間地点に位置するため,本研究による結果は,地域的ではあるが,周辺地域の層序や編年に参考となるテフラ層序を提供する.また,山頂での湿原環境下では,肉眼で観察できるテフラ層でも,その構成物が複数起源に由来するテフラの混在や再堆積によるものが含まれることが明らかとなった.
短報
  • 姉崎 智子, 本郷 一美, 黒澤 弥悦
    2013 年 52 巻 6 号 p. 255-264
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2014/10/24
    ジャーナル フリー
    現生リュウキュウイノシシの骨形態変異について分析を行った.使用した試料は,奄美大島,加計呂麻島,徳之島,沖縄島,石垣島,西表島より得られたものである.推定年齢群IV-V段階の雌雄について,下顎骨の大きさと,下顎第3大臼歯の長さを比較した.また,第3,第4小臼歯,第1,第2大臼歯の頬舌径に基づき,LSI法を用いて,臼歯の大きさを比較した.さらに,ノンメトリック形質7項目について,島嶼間で比較を行った.
    その結果,イノシシの下顎骨の大きさの分析結果と,歯の大きさの分析結果では異なる傾向が確認された.とくに,石垣島で結果の異なりが認められ,下顎骨の大きさでは石垣島のイノシシが奄美大島,沖縄島,西表島のイノシシに比べて大きい傾向が確認されたが,歯については小さい傾向が確認された.ノンメトリック形質については,第1小臼歯をもち,第3大臼歯のヘプタプレコニュリッドをもつ石垣島,西表島,九州のグループと,第1小臼歯がなく,第3大臼歯のヘプタプレコニュリッドが失われた奄美大島,沖縄島,本州のグループとにわけられた.
    下顎骨,臼歯サイズ,ノンメトリック形質の結果から,奄美大島および沖縄島のリュウキュウイノシシの骨形質は,石垣島および西表島とは異なることが示された.また,奄美大島のリュウキュウイノシシは,沖縄島,徳之島,加計呂麻島のイノシシと形態が異なっていることが示された.このことから,奄美大島のリュウキュウイノシシは,沖縄島,西表島,石垣島などと比較してより長い時間,島嶼隔離の影響を受けた可能性が示唆された.一方で,加計呂麻島と徳之島のイノシシについては,大きさと形態が距離的に近い奄美大島よりも,沖縄本島と類似していることが明らかとなった.このことから,現在リュウキュウイノシシが生息する一部の島嶼部においては,イノシシが人為的に移入された可能性が示唆された.
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