本稿では,微地形の認定が容易な濃尾平野北部の揖斐川旧河道沿いの氾濫原を対象に,地形・堆積学的手法を用いて,その形成過程を検討した.調査地の堆積環境は,3,200年前以降に三角州から氾濫原へと変化し,その後,600年前頃に破堤による砂質堆積物の堆積がみられるものの,2,000年近くにわたって後背低地の状態が継続した.しかし,約400年前に生じた揖斐川の流路変更(アバルション)に伴い,河道となった地点では流路侵食が,河道沿いとなった地点では自然堤防堆積物の急速な累重が起こった.さらに,この河道に沿って分布する輪中の一部が,この時期の自然堤防に起源を持つことが示唆された.10
2~10
3年オーダーの堆積速度は,後背低地および自然堤防でそれぞれ約1~2mm/yr, 10mm/yrと推定され,堆積環境による差が顕著であった.
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