第四紀研究
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55 巻, 5 号
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論説
  • 西澤 文勝, 鈴木 毅彦
    2016 年 55 巻 5 号 p. 211-222
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2016/12/16
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    熊本県南西部,二見盆地に分布する二見砂礫層中に挟在する火砕流堆積物を記載し,火山ガラスの主成分化学組成を含めた記載岩石学的特性に基づいて,中期更新世の広域テフラとの対比を試みた.その結果,二見砂礫層中には,計3枚の火砕流堆積物が挟在しており,下位から小林笠森テフラ(Kb-Ks, 530~520ka),加久藤テフラ(Kkt, 340~330ka),阿多鳥浜テフラ(Ata-Th, 240ka)にそれぞれ対比される.これまで後期鮮新世~前期更新世に遡ると考えられてきた二見砂礫層の堆積開始年代は, Kb-Ks噴出以前の中期更新世頃に見直される.

  • 長橋 良隆, 中澤 なおみ
    2016 年 55 巻 5 号 p. 223-236
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2016/12/16
    ジャーナル フリー
    J-STAGE Data

    走査型X線分析顕微鏡(SXAM)を用いた非破壊・連続測定による化学組成分析を猪苗代湖湖底堆積物に適用した.そのために,まず岩石標準試料と猪苗代湖湖底堆積物試料を加圧成形した粉末ペレットを用いて,SXAMと蛍光X線分光分析装置(XRF)による定量分析の結果を比較・評価した.SXAMによる岩石標準試料の定量分析は,TiO2, Al2O3, Fe2O3, MnO, K2Oの分析値と推奨値との間に系統的な差はなく,分析値を推奨値に近い値と評価できる.SiO2, MgO, CaO, SO3の分析値は,推奨値に対して系統誤差があるが,推奨値との相関は良く,系統誤差の傾向を把握したうえで利用できる.Na2OとP2O5は定量性を得られなかった.Asについては,猪苗代湖湖底堆積物のようにPb含有量が少なく,かつ大きな変化がない場合に相対変動を示す半定量的な値として利用できる.SXAMによる定量分析の各元素の相対誤差は,猪苗代湖湖底堆積物の場合,SiO2が2%未満,TiO2が7%未満,Al2O3が5%未満,Fe2O3が6%未満,MnOが12%未満,MgOが35%未満,CaOが8%未満,K2Oが10%未満 SO3が8%未満,Asが35%未満であった.このようにSXAMによる定量分析を評価した上で,猪苗代湖湖底堆積物に対してSXAMによる非破壊・連続化学組成分析を適用し,IN2.5-11コアの厚さ10cm部からFe2O3, MnOとSO3の極大値を11層準,IN2.5-09コアの厚さ12cm部からFe2O3の極大値を12層準見いだした.SXAMによるFe2O3, MnO, SO3, As含有量の鉛直変化(プロファイル)は,猪苗代湖湖底堆積物の縞状粘土の明暗部に対応して変化しており,縞状粘土の成因を検討する際の基礎資料となる.

短報
  • 苅谷 愛彦, 青木 かおり, 高岡 貞夫
    2016 年 55 巻 5 号 p. 237-246
    発行日: 2016/10/01
    公開日: 2016/12/16
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    福島県会津駒ヶ岳と山形県月山火山の山岳土壌に挟まれる完新世中期のガラス質テフラ(吾妻火山灰)について,主要元素組成分析を行った.その結果,両者は同一のテフラであることが確認された.また,十和田火山東麓において十和田中掫テフラ(6.0calkaBP)を構成する3部層(中掫軽石,金ヶ沢軽石,宇樽部火山灰)を対象に主要元素組成分析を行い,会津駒ヶ岳および月山火山の吾妻火山灰と比較した.その結果,会津駒ヶ岳と月山火山の吾妻火山灰は十和田中掫テフラに由来し,特に金ヶ沢軽石に対比されるテフラ粒子を主な起源とすることが判明した.現時点で十和田中掫テフラの分布は会津駒ヶ岳が南限となるが,さらに南へ展開するのは確実である.

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