1) 羊蹄第3軽石・スコリア層 (Yo. Ps-3), 羊蹄第2軽石・スコリア層 (Yo. Ps-2), 羊蹄第1軽石・スコリア層 (Yo. Ps-1) は, 支笏軽石流堆積物 (Spfl) と恵庭a降下軽石層 (En-a) の両層準の間にあり, とくにYo. Ps-1,-3は羊蹄山東麓から札幌-苫小牧低地帯におよぶ広い分布を示す.
2) 札幌-苫小牧低地帯の周辺では, Yo. Ps-1とYo. Ps-3は, 従来恵庭火山起源のものと考えられてきたが, Yo. Ps-1,-2,-3はいずれも羊蹄火山起源であることをあきらかにすることができた.
3) Yo. Ps-3の分布は, 羊蹄火山を西端とする長楕円形で分布軸の方向はほぼ真東であり, 75km以遠におよぶ. 20km以遠では, 下位より軽石層-スコリア層という一連の堆積を示すことが多い.
4) Yo. Ps-2の分布は, 羊蹄火山を西端とする扇形で, 分布軸の方向はほぼ真東から10度南よりであり, 40km以遠に達する. 一般的には, 軽石とスコリアのまじった層であるが, 20km以遠では軽石層からなることが多い.
5) Yo. Ps-1の分布は, 羊蹄火山を西端とする長楕円形で分布軸の方向はほぼ真東から10度北よりであり, 85km以遠に達する. 30km以遠では下位より粗粒火山灰層-軽石層-スコリア層という一連の堆積を示す.
6) Yo. Ps-2,-3の軽石粒は, 普通輝石・しそ輝石安山岩質であるが, Yo. Ps-1の軽石粒は, 角閃石・普通輝石・しそ輝石安山岩質である.
7) Yo. Ps-2, -3の降下年代は, およそ25,000~30.000y.B.P., Yo. Ps-1はおよそ15,000y.B.P. と推定される.
8) Yo. Ps-3の下位には, 角閃石に富む降下軽石層がみられる. 今後の調査・研究により, これらがテフラ示準層となり羊蹄火山の活動がこれらの層準にまでさかのぼる可能性がある.
9) Yo. Ps-1の上位には, 下位から第2黒色粗粒火山灰帯 (Ba-2), 第1黒色粗粒火山灰帯 (Ba-1) さらに北岡軽石・スコリア層 (K-Ps) がみられる. これらのテフラと羊蹄火山の溶岩流および段丘堆積物との層位関係についての調査は, 山体の形成史とこの地域の地形発達史をあきらかにするための重要な手がかりとなるであろう.
抄録全体を表示