第四紀研究
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46 巻 , 6 号
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特集「津波堆積物と地震性タービダイド:防災・減災のための堆積物記録の理解」
  • 藤原 治, 後藤 和久, 平川 一臣, 池原 研, 今村 文彦
    2007 年 46 巻 6 号 p. 445-450
    発行日: 2007/12/01
    公開日: 2009/03/26
    ジャーナル フリー
    近年,海溝型の巨大地震や津波に対する防災・減災対策の重要性がますます高まっている.将来,どのような規模の地震や津波が発生し,その結果どのような災害が発生するかを予測することが,防災・減災対策の第一歩である.地形や地層から得られる過去の地震・津波の事例を詳しく解析することから,今後起こる地震や津波の特徴を想定することもできる.過去の履歴は時間的にも空間的にも不完全なので,さまざまな実験や数値シミュレーションを使って,これを補充することが求められる.一方,実験やシミュレーションの妥当性を,地層や地形の記録を用いて検証することも必要である.さらに,地震や津波に対する脆弱性は地域ごとに異なることから,その特徴を住民にわかりやすく伝え,また地域の特性に合った対策を考えることが,防災計画の有効性を高める.
  • 藤原 治
    2007 年 46 巻 6 号 p. 451-462
    発行日: 2007/12/01
    公開日: 2009/03/26
    ジャーナル フリー
    最近20年間に,津波堆積物の研究は地球科学と防災技術の両面で大きく進歩した.地球科学の面では,堆積学や古生物学などの研究から,津波堆積物の形成プロセスの理解が進んだ.また,シミュレーションや水路での津波による堆積過程の再現実験も進んでいる.防災面では,長期にわたる津波の履歴が解明されつつあり,北海道や相模湾周辺では過去7,000年から1万年,南海トラフ沿岸でも3,000年以上に渡るデータが蓄積された.また,津波堆積物が示す浸水範囲などを説明する津波シミュレーションを行うことで,津波を起こした断層モデルの推定や津波の浸水範囲の復元もされるようになった.
    しかし,見つかった津波堆積物の数はまだ少なく,ストーム堆積物などとの識別など課題も残る.今後は,信頼性の高い津波堆積物のデータを時間的にも空間的にも密に蓄積していくとともに,津波の波高,流速,遡上範囲などを津波堆積物から定量的に推定する基準を構築していくことが課題である.
    こうした成果を社会に還元するために,地質学,地形学,地震学,津波工学,社会学などの連携が必要である.
  • 後藤 和久, 今村 文彦
    2007 年 46 巻 6 号 p. 463-475
    発行日: 2007/12/01
    公開日: 2009/03/26
    ジャーナル フリー
    津波に伴う土砂移動現象は,海岸の地形変化や海洋・沿岸生態系の破壊などの重大な問題を引き起こす.本論では,海岸工学の分野で開発・改良されてきた津波による土砂,ブロック移動の数値モデルの現状と課題の整理を行い,堆積学的研究との連携について考察した.これらの数値モデルは,まだ課題は多いものの水槽実験結果を比較的良好に再現できており,実スケールの現象に適用できる段階に達しつつある.今後,混合粒径や複数岩塊移動などに対応できるようモデルを拡張すれば,津波堆積物や津波石を用いて,過去に発生した津波の流体力や流速などの水理量をより定量的に評価できるようになると考えられる.また,土砂移動モデルを利用することで,海底での侵食・堆積量を評価することが可能であり,津波堆積物を発見することを目的とした海底掘削地点の選定にも役立つと考えられる.
  • 池原 研, 宇佐見 和子
    2007 年 46 巻 6 号 p. 477-490
    発行日: 2007/12/01
    公開日: 2009/03/26
    ジャーナル フリー
    海域の斜面も大地震時にはその震動によって崩壊する.したがって,崩壊によって形成される深海底タービダイトは,過去の地震発生履歴の解明の道具の一つとなり得る.1993年北海道南西沖地震は,地震による海底の変動の詳細がよく調べられた地震の一つであり,この地震により斜面崩壊や崩壊堆積物の堆積があったことがわかっている.後志トラフと奥尻海盆から1999年に採取された海底堆積物コアには,この地震によると考えられるタービダイトが認められた.後志トラフのタービダイトは,タービダイト砂の上位に厚いタービダイト泥を有し,陸棚から海盆底までの広い水深範囲の底生有孔虫を含む.これに対して奥尻海盆のタービダイトのうち,タービダイト泥を持たないものは,含まれる底生有孔虫のほとんどが陸棚から上部斜面の種である.この海域では陸棚堆積物は泥分が少なく,斜面堆積物で泥分が増える.後志トラフと奥尻海盆でのタービダイトの堆積構造の違いは,両海盆でのタービダイトへの粒子供給域の違いを反映していると考えられる.
  • 今村 文彦, 後藤 和久
    2007 年 46 巻 6 号 p. 491-498
    発行日: 2007/12/01
    公開日: 2009/03/26
    ジャーナル フリー
    低頻度大災害の代表例である津波は,稀にしか起こらないために,その規模や挙動の詳細について知ることは容易ではないが,わが国には多くの史料が残されており,これらを検証することで過去の津波災害がどのような実態であったのか知ることができる.ただし,史実は断片的かつ定性的な内容であることがほとんどであり,何らかの科学的手法でそれを補う必要がある.史実に津波堆積物調査と数値解析から得られる情報を加えて,これら三者を連携させることにより,過去の津波像を紐解き復元することが可能であると考えられる.特に,津波堆積物には津波の流れや波力などのインパクトについての記録が保存されていると期待され,当時の詳細な津波来襲状況を知る手だてとなるため,将来の津波の災害像を予測(影響評価)する上で大変重要である.また,砂質の土砂移動だけでなく岩塊の移動も,過去の津波の解析に有効であり,本論では,石垣島での1771年明和地震津波の解析事例を紹介する.
  • 越村 俊一
    2007 年 46 巻 6 号 p. 499-508
    発行日: 2007/12/01
    公開日: 2009/03/26
    ジャーナル フリー
    巨大津波災害発生直後の激甚被災地を探索する技術として,沿岸の人口統計データと津波数値解析とを統合した津波曝露人口指標に基づく手法を提案した.2004年インド洋大津波災害を例として本手法のケーススタディを実施し,その評価手法の有効性と意義を議論した.また,近年発展が著しいリモートセンシング技術との融合による早期津波被災地の探索技術の発展について,2007年ソロモン諸島地震津波の解析例を踏まえてその展望を述べた.
  • 首藤 伸夫
    2007 年 46 巻 6 号 p. 509-516
    発行日: 2007/12/01
    公開日: 2009/03/26
    ジャーナル フリー
    津波によって過去に生じた地形変化例を,原因となる津波の大きさや流速の判明するものを重視して取りまとめた.観察された現象の裏づけをしようとする流体力学的な説明の試みを紹介し,その課題を明らかにする.
    砂州・トンボロ・砂嘴の切断は,津波によるだけでなく,開口後の潮汐の影響をも考慮する必要がある.水路での水深変化の最大値は約10mにも及んでいるが,これを再現する数値計算では,約5mとほぼ半分に止まっている.最大の問題は流速の再現性にある.堤防破壊条件を取りまとめると,流体力学的に見てもほぼ首肯しうる結果となっている.
    陸上での堆積厚のほぼ上限値を実例により示した.陸上での堆積作用に関しては,流体力学的解析に必要な諸関係式が整っていない.その手始めとして,堆積物運搬距離と津波諸元との間に満たされるべき関係を示した.
  • 佐々木 裕美, 入月 俊明, 阿部 恒平, 内田 淳一, 藤原 治
    2007 年 46 巻 6 号 p. 517-532
    発行日: 2007/12/01
    公開日: 2009/03/26
    ジャーナル フリー
    房総半島館山市の巴川には完新世の内湾堆積物が露出し,7層の津波堆積物が挟在する.それらのうち,T2とT2.1津波堆積物,および上下の静穏時堆積物を対象に,貝形虫化石の群集解析を行った.その結果,134試料より124種が得られ,調査地点は水深5mほどの閉鎖的内湾泥底から,水深約10~15mの内湾中央部になったと推定された.津波堆積物中の砂質試料では頑丈な殻を持つ外洋砂底種が多く,泥質試料では薄い殻を持つ内湾泥底種が多い.T2とT2.1津波堆積物中の群集を比較すると,外洋砂泥底種がT2津波堆積物により多く認められ,保存不良な中部陸棚以深の種も存在するが,量はきわめて少ない.一方,T2.1津波堆積物中の種はT2津波堆積物中の種に比べ,閉鎖的内湾泥底種が多く,T2津波襲来直前よりもT2.1津波襲来直前の方がこれらの種の密度が大きかったと推定された.津波襲来後,種数や種多様度が徐々に減少するが,これは古巴湾の水深増加と拡大,および生物攪乱作用の影響によると考えられる.
  • 内田 淳一, 阿部 恒平, 長谷川 四郎, 藤原 治
    2007 年 46 巻 6 号 p. 533-540
    発行日: 2007/12/01
    公開日: 2009/03/26
    ジャーナル フリー
    有孔虫殻はしばしば津波堆積物に含まれ,堆積物の供給源を推定するために重要な情報を提供する.有孔虫殻から推定される堆積物供給源の水深や供給源からの運搬距離は,津波堆積物の識別に有効な基準になるかもしれない.津波による掃流力は,堆積場の水深に反比例し,堆積物の水平方向への運搬距離は,津波の周期や振幅に応じて増大する.このため,堆積物の運搬を説明するためには,津波の周期や振幅に閾値が存在し,それはおもに堆積物粒子の大きさや堆積場の水深に依存している.
    いくつかの津波堆積物からは,100m以上の水深の海底から海岸まで数kmも運搬されたことを示唆する有孔虫殻が報告されており,周期と振幅が長い津波によるものと考えられる.しかし,この有孔虫殻の運搬を説明するには現実離れした巨大な津波が必要になる.このような有孔虫殻の供給源と,津波の伝播理論から推定される堆積物運搬との矛盾を引き起こす有力な原因として,海底谷などのローカルな地形によって津波水塊の動きが変化することが考えられる.
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