第四紀研究
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34 巻, 5 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 石坂 信也, 岩崎 泰頴, 長谷 義隆, 渡辺 一徳, 岩内 明子, 田尻 雅則
    1995 年 34 巻 5 号 p. 335-344
    発行日: 1995/12/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    有明海周辺では,Aso-4火砕流堆積物の下位に最終間氷期の堆積物が存在することが報告されている.筆者らは,熊本平野の地下でAso-3火砕流堆積物とAso-4火砕流堆積物の間に,貝化石を産する細粒部を含む堆積物を見い出し,御幸層と命名した.御幸層の層相は,下部の砂礫層,中部の砂礫を含むシルト層,上部の砂礫層と変化している.また,御幸層は,Aso-3火砕流堆積物とAso-4火砕流堆積物の堆積時期から,12万年前から8万年前に堆積したと考えられ,最終間氷期で関東の小原台期にあたる.
    さらに,御幸層中部の上面深度と堆積時期から,最終間氷期以降の平均沈降速度が熊本平野の地域ごとに求められた.すなわち,沈降速度は熊本平野の東側にあたる御幸付近では0.45mm/年,海岸部近くでは0.90mm/年であり,平野西部へいくほど沈降速度が速くなっていることが明らかになった.
  • 吉永 秀一郎
    1995 年 34 巻 5 号 p. 345-358
    発行日: 1995/12/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    連続的な堆積物であるローム層の諸性質は,堆積時の環境条件を記録している可能性がある.そこで,十勝ローム層をとりあげ,最終間氷期以降のローム層の乾燥密度,粒径組成,シルト・粘土中の石英含有率,炭素含有率の変化と気候変動との関連を検討した.十勝ローム層の乾燥密度,シルト中の石英含有率,炭素含有率の最終間氷期以降の変化は,酸素同位体比の変化と類似した変動を示した.乾燥密度,シルト中の石英含有率は,寒冷なstage 2,4,5dないしはstage 6で高い値を示した.一方,炭素含有率は温暖なstage 3,5a,5cでやや高い値を示し,寒冷なstageでは低い値を示した.寒冷なstageにおける乾燥密度の増加は,広域風成塵起源の結晶質粘土鉱物ならびに微細石英の混入の増加の影響と考えられ,それは中国黄土高原で明らかにされた寒冷気候下での北西モンスーン強度の増大に連動するものと考えられる.一方,炭素含有率の変化は,土壌中への有機物の集積の変化を意味し,寒冷なstageで減少するのは,氷期の十勝平野における植被の減少を示していると推察された.このようにローム層の性質の変化は,中国黄土高原の黄土(レス)-古土壌シークエンスと同様に,第四紀後半の気候変動の指示者として有効である.
  • コロッツキー A.M., ラジィガエバ N.G., グレベンニコワ T.A., ガンゼイ L.A., モコーバ L.M., バザロワ V.B ...
    1995 年 34 巻 5 号 p. 359-375
    発行日: 1995/12/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    アトランチック,サブボレアル,サブアトランチック段丘を含む国後島の低位海成段丘群は,中・後期完新世の海水準変動を反映している.比高5~6mのアトランチック段丘はストームリッジ堆積物からなり,湖成シルト層とピート層に覆われる.
    この段丘の形成期は,花粉分析や珪藻分析,14C年代測定(5,450~6,070yrs BP)によって完新世オプティマムに比定される.この時期の初頭には,海水準は25m程度低下しており,北国後陸橋は繋がっていたが,その後の急激な海面上昇によって切断された.海面上昇は最高+2.5~3mに達し,太平洋側に広い湾が形成され,南千島地峡のオホーツク海側には大きな潟が出現した.このため,岸辺では急激な削剥が進行し,沖合に巨大なバリアーが形成された.植生は,現在より温暖な針葉樹広葉樹混淆林であった.
    アトランチック-サブボレアル移行期には,小規模な海退があり,汀線内の河川沿いには比高20m程度の砂丘が形成された.セルノボドスキー地峡とクルグロブスキー地峡には小規模な陸橋が再現した.サブボレアル期の比高2.5mの段丘堆積物からは,4,010~3,400yrs BPと2,950~2,620yrs BPの2回の小海進が認められる.この海進によって前期に形成された砂丘は侵食され,中南部の海岸沿いに再び小規模な湾と潟が出現した.この時期の植生は現在よりやや温暖な,わずかに広葉樹の混じる針葉樹林である.サブボレアル-サブアトランチック移行期(2,220~1,170yrs BP)には寒冷期の到来とともに,海退が進行し,砂丘や沼沢地が形成された.サブアトランチック期(1,170~820yrs BP)には比高2.5mの段丘が形成された.この時期の海水準は約+1mであった.その後,小氷期に入り,現在の砂丘の形成が行われた.
    これらの海成段丘の形成過程から,この地域では少なくとも完新世後半以降,顕著な構造運動は認められないことが明らかになった.
  • 池田 晃子, 奥野 充, 中村 俊夫, 筒井 正明, 小林 哲夫
    1995 年 34 巻 5 号 p. 377-379
    発行日: 1995/12/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
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