第四紀研究
Online ISSN : 1881-8129
Print ISSN : 0418-2642
ISSN-L : 0418-2642
50 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
2009年度日本第四紀学会学術賞受賞記念論文
  • 小疇 尚
    2011 年 50 巻 3 号 p. 133-148
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2012/04/26
    ジャーナル フリー
    日本の氷河・周氷河地形に関しては1950年代までにかなりの研究が公にされていたが,構造土の成因については信頼できるものがなかった.そこで現地で観察を行い,凍上と融解沈下の反復によって,それが形成されることを確かめた.氷期に形成された後,テフラなどにおおわれて地下に痕跡をとどめる化石周氷河現象は古環境の指標になる.なかでも北海道で見出した化石氷楔は,過去の連続永久凍土環境を示すので重要である.これによって最終氷期の前半の方が後半よりも寒冷であったことが明らかになった.また,一つ前の氷期の方が寒かった可能性がある.第四紀に急速に隆起したと考えられている日本の山地は,氷期の雪線高度に達したのが遅く,氷河作用を受けた期間がアルプスなどに比べて短かった.日本の氷河地形がわかりにくい原因の一つは,そのことによる発達不良があげられる.しかし,圏谷地形が明瞭なのは残雪の少ない太平洋側の山地に限られ,白馬岳や谷川岳など日本海側の多雪山地にはほとんどなく,研究が遅れていた.再生氷河の地形に関する知識の欠如,氷河後退後の侵蝕が氷河作用の認定を妨げてきたと考えられる.日本では高山帯で放牧が行われたことがなく,世界の温帯山地のなかでは高山の自然景観が最もよく保存されている.
雑録
feedback
Top