南西諸島の表層に発達した赤黄色土壌群中の微細石英の酸素同位体比 (δ
18O) は, 南西諸島周辺海域の海底堆積物中に含まれる石英のδ
18O値に近似した. この値は中国黄土, 日本, 韓国における風成塵や土壌中の石英のδ
18O値よりもやや高く, むしろ中国大陸の長江 (揚子江) 流域からの堆積物中に含まれる石英のδ
18O値に近い. 一方, 本地域に広く分布する琉球石灰岩が微量に含む石英のδ
18O値は, 上位の土層中のものとも類似し, 炭酸塩の溶解残渣を母材として土壌が生成したとも解釈できる. しかし, 共存する白雲母および方解石の酸素同位体平衡分別式より, 石灰岩中の石英と白雲母は, 方解石とは非平衡下で生成されたもの, すなわちサンゴ礁の形成期に混入した風成塵起源である可能性がある. したがって, 南西諸島のこれら母岩上に発達した土壌は基盤岩の直接の残積土ではなく, 広域風成塵が土壌の主要母材として堆積して形成された風積起源と考えるのが妥当である. すなわち, 氷期の海面低下期に東シナ海大陸棚が離水した時, 中国内陸部乾燥地帯から長距離輸送された風成塵に加えて, 陸化した東シナ海大陸棚堆積物起源の風成塵が南西諸島の丘陵, 台地および段丘上に堆積し, 赤黄色土壌群の母材となったと解釈した.
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