打製石器は先史時代の遺跡から出土する考古資料の主体を占める資料の一つである.その石材における「剥離しやすさ」は,当時の人類の資源利用の実態を理解する上で重要な要素と位置付けられる.この「剥離しやすさ」を先行研究では剥離予測性と呼称している.石器石材である岩石の破壊力学的な挙動,あるいは岩石表面あるいは内部構造の把握によって剥離予測性を検証する研究が進められている.これらの手法は考古学だけでなく,破壊力学・地質学・材料工学の知見を取り入れた学際的なものである.本論文では,この剥離予測性の概念とその検証する手法を力学的あるいは構造的な属性に分類して,これまでの研究をレビューした.剥離予測性の高い石材に共通する属性を整理し,その分析手法をまとめた.また,剥離予測性の違いは石器を剥離するのに必要な応力波の速度に影響を及ぼす可能性を指摘した.