日本臨床免疫学会会誌
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39 巻, 4 号
第44回日本臨床免疫学会総会抄録集
選択された号の論文の209件中101~150を表示しています
一般演題(ポスター)
  • 向井 知之, 藤田 俊一, 三戸 崇史, 長洲 晶子, 平野 紘康, 守田 吉孝
    2016 年39 巻4 号 p. 377a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】Tankyraseは,poly(ADP-ribose)polymeraseとして機能し,標的蛋白の分解を誘導する.Axinを介するWnt経路調節作用以外に,近年アダプター蛋白であるSH3BP2の分解にも関与することが報告された.SH3BP2は免疫系細胞に広く発現する細胞内蛋白で,我々はSH3BP2機能亢進マウスで,RANKL誘導性の破骨細胞分化が亢進することを報告してきた.Tankyraseの骨代謝における役割は十分に解明されておらず,本研究では,Tankyrase阻害薬を用いて,Tankyraseの破骨細胞分化に及ぼす影響について検討した.【方法】マウス前破骨細胞株RAW264.7細胞および野生型マウス骨髄由来マクロファージを,Tankyrase阻害薬存在下にRANKLで刺激し,破骨細胞分化・機能を評価した.Western blot法にてSH3BP2,NFATc1発現を解析した.【結果】RAW264.7細胞および骨髄由来マクロファージ培養系ともに,Tankyrase阻害薬によりRANKL誘導性破骨細胞形成が亢進し,破骨細胞関連遺伝子発現および骨吸収活性も有意に増強した.この作用はWnt阻害薬では認めなかった.Tankyrase阻害薬により,細胞内SH3BP2は有意に増加し,核におけるNFATc1発現は有意に増加していた.NFATc1阻害薬(FK506)により,Tankyrase阻害薬による破骨細胞形成促進作用が抑制された.【結論】Tankyrase阻害薬は,SH3BP2蛋白発現を亢進し,NFATc1核移行亢進を介して,破骨細胞分化を増強した.Tankyraseは破骨細胞分化の新規調節因子と考えられる.

  • 松尾 崇史, 橋本 求, 疋田 正喜, 坂井 薫, 横井 秀基, 伊藤 能永, 森 将人, 藤井 隆夫, 坂口 志文, 三森 経世
    2016 年39 巻4 号 p. 377b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】全身性エリテマトーデス(SLE)は,過去にT cell receptor(TCR)signalの異常が報告されているが,どのように病態に関わっているかは明らかではない.TCR signalの低下をおこすskg遺伝子は,Balb/cバックグラウンド(SKG/b)でリウマチモデルとなる関節炎をおこし,バックグラウンドをかえると疾患の表現型が変わる.我々はC57BL/6にskg mutationをいれ(B6SKG),主に環境因子としてPoly(I;C)を持続投与し,B6SKGマウスでループスがおきるか実験した.【方法】ループスは,抗dsDNA抗体IgGのELISA,腎臓の免疫染色(IgG, C3)で評価した.Flow cytometryで,脾臓中の濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)をCD4+CXCR5+Bcl-6+PD-1highで,胚中心B細胞(GC B cells)をB220+AA4.1−FAS+GL-7+で測定した.脾臓の免疫染色で,胚中心をPNA+GL-7+CD38−で確認した.mRNAの発現は,Taqman real-time PCRで調べた.【結果】Poly(I;C)を持続投与でB6SKGは,Balb/c,SKG/b,C57BL/6と比べ,血清中の抗dsDNA抗体IgGの抗体価が上昇し,腎臓の糸球体にIgG,C3の沈着を認め,ループス様の腎炎を発症した.Tfhの割合が他のマウスより高く(4-6%),Poly(I;C)刺激後に増加した(7-10%).CD4 T cellsのmRNAでは,IL-21とBcl-6が高発現していた.【結論】skgによるTCR signalの異常は,SLEの危険因子になりうる.B6SKGはTfh分化を特徴とし,T細胞がどのようにループスに関わっているかを検証する良いモデルマウスである.

  • 高橋 令子, 積山 賢, 塩沢 俊一
    2016 年39 巻4 号 p. 378a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      我々は,マウスへの外来抗原の繰り返し刺激によって,CD4陽性T細胞は自己抗体産生を誘導し,CD8陽性T細胞はcytotoxic T lymphocyteに分化し腎炎などの組織障害を惹起して,SLEを発症することを発見した(Tsumiyama K PLoS One 2009).この自己抗体産生誘導性CD4陽性T細胞は,マウスへの細胞移入実験によってCD45RBlowPD-1+の分画であることを解明した.しかし,PD-1は負の免疫制御に重要な分子であり,この分画のCD25陽性にはFoxp3陽性制御性T細胞(Treg)が含まれ,CD25陰性にはIL-10産生LAG3陽性Tregが含まれる.よって,自己抗体産生誘導性CD4+CD45RBlowPD-1+ T細胞の病原性を解析した.この細胞集団はCXCR5やICOSの発現が上昇し,IL-21を産生する事から,follicular helper T細胞の性質を持つ事が解明された.加えて,Foxp3陽性Tregを除いてこれら細胞集団を採取しCD3/CD28刺激下で5日間培養すると,IFNγの産生が亢進しIL-2の産生が低下する事から,cell senescenceの特徴も有する事が解明された.この細胞集団の中のFoxp3陽性Tregに関しては,CD3/CD28刺激下で3日間培養すると,Foxp3+IFNγ+細胞を認め,サイトカイン産生細胞に変換するTregの可塑性の亢進が示唆された.これらの結果から,繰り返し抗原刺激後CD4+CD45RBlowPD-1+ T細胞は,自己抗体産生に適した機能を有している事が解明された.この細胞集団の分化,PD-1の発現機序を解析中である.

  • 村山 豪, 千葉 麻子, 山路 健, 田村 直人, 三宅 幸子
    2016 年39 巻4 号 p. 378b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】Mucosal-Associated Invariant T細胞(MAIT細胞)は腸管に多く存在する自然リンパ球として知られていたが,近年ヒトの末梢血T細胞の5%を占めることが明らかとなり免疫応答に重要な生理的役割を担うことが示唆されている.全身性エリテマトーデス(SLE)患者において疾患活動性とMAIT細胞の活性化状態が相関することをこれまで我々は報告してきた.本研究は,動物モデルを用いてMAIT細胞がループス病態に与える影響を解明することを目的とする.【方法】ループスモデルマウス(FcγRIIB−/−Yaaマウス)とMAIT細胞を欠損するMR1欠損(MR1KO)マウスを交配し,MAIT細胞を欠損するMR1欠損ループスモデルマウス(MR1KO −/−FcγRIIB−/−Yaa)作成し,MAIT細胞のループス病態への影響を検討した.腎炎(尿中微量アルブミン定量,糸球体腎炎病理スコア),皮膚炎(皮膚炎病理スコア),自己抗体価(ELISA法で抗DNA抗体価測定)について比較した.【結果】FcγRIIB−/−Yaaマウスに対してFcγRIIB−/−Yaa MR1KOマウスでは腎炎や自己抗体産生が軽減される傾向を示した一方,皮膚において高度の炎症を認めた.皮膚の病理組織でもFcγRIIB−/−Yaa MR1KOマウスで炎症所見が見られ,皮膚炎スコアで有意な差を認めた.【考察】MAIT細胞がループス皮膚炎の抑制に働くことが示唆された.MAIT細胞がどのような機序でループス皮膚炎を抑えているのか,さらなる検証が必要である.

  • 花田 徳大, 庄田 宏文, 駒井 俊彦, 岡村 僚久, 鈴木 亜香里, 藤尾 圭志, 山本 一彦
    2016 年39 巻4 号 p. 379a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】SLE病態におけるNeutrophil extracellular traps(NETs)の重要性が知られている.PAD4はクロマチンの脱凝集に関与しNET産生に必須である.PAD阻害によるSLE治療効果の検討の為,Imiquimod(IMQ)誘発ループスモデルマウスを用いて検討した.【方法】8週齢Balb/c雌の耳朶にIMQクリームの隔日塗布を行い,同時にPBSまたはPAD阻害薬であるCl-amidineを連日腹腔内投与した.治療4,8週後に,蛋白尿,抗Ds-DNA抗体価,脾細胞Plasmacytoid dendritic cell(pDC)/Follicular B helper T cell(Tfh)/Plasmablast(PB)割合,骨髄Type I IFN signatureを評価した.【結果】IMQ塗布群では無治療群と比較し,蛋白尿増加,抗Ds-DNA抗体価上昇,脾細胞pDC減少,Tfh/PB増加,骨髄細胞Type I IFN signature亢進を認めた.IMQ塗布4週後,Cl-amidine投与群では,有意に蛋白尿減少,脾細胞pDC増加,PB減少,骨髄Type I IFN signature低下(OAS1a)を認めた.【結語】IMQ誘発ループスモデルマウスにおいてPAD阻害によるループス様病態の改善を認めた.NETの関与についての更なる検討を要する.

  • 知野 剛直, 徳力 篤, 宇都宮 慧, Luong Vu Huy, 尾山 徳孝, 東 清史, 斎藤 幸一, 長谷川 稔
    2016 年39 巻4 号 p. 379b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      乾癬は,表皮の過増殖や角化異常により,厚い鱗屑をつけた紅色局面を呈する難治性の皮膚炎症性疾患である.Dermokine β/γ(DMKN-β/γ)は,表皮上層に恒常的に発現する約50kDaの分泌蛋白であり,乾癬などの炎症を伴う皮膚に高発現する.これまでの我々の検討結果からは,表皮細胞の増殖を制御して恒常性維持に重要な役割を有すると推測される.DMKN-β/γ遺伝子欠損型マウスを独自に作成したところ,生後数日まで皮膚に軽度の鱗屑を生じたが,成長とともに消失し,皮膚バリア機能には異常がみられなかった.そこで,イミキモドを7日間連日塗布して乾癬様皮膚炎を誘導し,DMKN-β/γの乾癬の病態における役割を検討した.その結果,DMKN-β/γ欠損マウスでは,野生型に比べて有意に強い乾癬様皮膚炎が認められ,病変部でのIL-17の発現が亢進していた.フローサイトメトリーや組織学的な検討で,DMKN-β/γの欠損により,病変部皮膚のTh17細胞に有意な影響はみられなかったが,好中球数は有意に増加していた.In vitroの検討では,イミキモドによる表皮角化細胞でのELR+CXCケモカインの発現が,DMKN-β/γ欠損により上昇していた.これらの結果より,DMKN-β/γがELR+CXCケモカイン産生とそれによる好中球浸潤を抑制することにより,乾癬の病態を制御する可能性が示唆された.

  • 廣田 智哉, 坪井 洋人, 高橋 広行, 浅島 弘充, 横澤 将宏, 若佐 雄也, 松本 功, 高岩 文雄, 住田 孝之
    2016 年39 巻4 号 p. 380a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】Glucose-6-Phosphate Isomerase(GPI)のAltered Peptide Ligand(APL)を米穀に発現させ,GPIペプチド誘導関節炎(pGIA)に対する抑制効果を明らかにする.【方法】1)GPIペプチドのT細胞エピトープのアミノ酸配列の一部が置換されたAPLコンストラクトをキヌアカ米に遺伝子導入してAPL発現米を作成した.予防的にAPL発現米または非導入米を7日間経口投与し,pGIAにおける2)関節炎の重症度および足関節の組織所見,3)脾臓・所属リンパ節のIL-17産生および血清抗GPI IgG抗体産生,4)脾臓のmRNA発現,5)脾臓のFoxp3陽性Treg細胞における分子発現を評価した.【結果】1)GPIのAPLコンストラクトを遺伝子導入したキヌアカ米でAPLペプチドの発現が確認された.2)APL群では関節炎の重症度,足関節の炎症細胞浸潤が有意に抑制された.3)APL群では脾臓と所属リンパ節細胞のIL-17産生,血清抗pGPI IgG抗体産生が有意に抑制された.4)APL群では脾臓のCD4陽性T細胞でGITR mRNA発現が有意に上昇していた.5)APL群では脾臓のFoxp3陽性Treg細胞でFoxp3発現およびGITR発現が有意に上昇していた.【結論】GPIのAPL発現米の経口予防投与によるpGIAの抑制効果が示唆された.

  • 高木 綾子, 有信 洋二郎, 入野 健佑, 猪口 翔一朗, 押領司 大助, 大田 友里, 久本 仁美, 綾野 雅宏, 木本 泰孝, 三苫 弘 ...
    2016 年39 巻4 号 p. 380b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      抗原特異的な受容体を持たず,自然免疫に働くリンパ球,innate lymphoid cells(ILCs)が注目されている.ILCsは,ヘルパーT細胞サブセット(Th1, 2, 17)に対応した3つのサブセット(ILC1, 2, 3)に分類され,それぞれに特異的なサイトカイン産生パターンを有する.ILCsは感染防御に働く一方,慢性炎症性疾患の増悪因子になる.アレルギー性疾患や自己免疫性疾患で,罹患組織や末梢血においてILCsが増加し,疾患活動性と相関すると報告された.ILC3は,IL-17やIL-22などのTh17サイトカインを産生するが,乾癬性関節炎や強直性脊椎炎では,患者の末梢血や関節液において,CCR6陽性ILC3やNKp44陽性ILC3が増加している.関節リウマチにおいても,これらのILCがTh17サイトカイン産生を介して,病態の形成に関与している可能性が考えられる.

      我々はコラーゲン誘導関節炎(CIA)モデルマウスにおいて骨髄,脾臓,末梢血,リンパ節,及び関節など局所におけるILCを同定し,その機能解析を行った.関節炎発症マウスの末梢血や関節液では,CCR6陽性ILC3が増加しTh17サイトカインの発現が高かった.一方,NKp46陽性細胞はそのほとんどがILC1のマーカーであるNK1.1陽性であり,Th1サイトカイン発現が高かった.また,関節リウマチ患者と変形性関節症患者の滑液中のILC分画に関しても検討を行っている.

      関節炎モデルにおけるILCの動態とヒト検体での検討結果について,文献的考察を加え報告する.

  • 松尾 祐介, 溝口 史高, 齋藤 鉄也, 川畑 仁人, 宮坂 信之, 上阪 等
    2016 年39 巻4 号 p. 381a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】関節リウマチ(RA)において滑膜線維芽細胞(SF)が増多する機序は,有効性と安全性に問題をもつ既存治療が標的とする炎症とは異なる標的となりうる.線維芽細胞が増多する機序として,腎線維症や創傷治癒のモデルにおいて外部由来細胞が流入することが示されてきたが,関節炎では明らかでない.本研究では,SFの増多は関節外からの流入に因るか,局所での増殖に因るかを明らかにすることを目的とした.【方法】SFのレポーターマウスであるI型コラーゲン(Col1)-GFPマウスから野生型マウス(WT)へ骨髄移植,およびCol1-GFPマウスとWTにて併体結合後,コラーゲン抗体誘導関節炎(CAIA)やコラーゲン誘導関節炎(CIA)を誘導した.また,Col1-GFPマウスおよび細胞周期のS,G2,M期にAzami-Greenを発現する細胞周期インディケーター(Fucci)マウスの増生滑膜組織において,各々Ki67とvimentinの発現を評価した.滑膜組織は組織学的に評価した.【結果】Col1-GFPマウスから骨髄移植を受けたWT,およびCol1-GFPマウスと併体結合したWTの増生滑膜組織にGFP陽性細胞を認めなかった.正常と比べ増生滑膜組織では,Ki67陽性SFやFucciマウスでS/G2/M期を示すSFの増多を認めた.【結論】RAモデルマウスにおいて,SFは関節外に由来せず局所で増殖する.

  • 山下 尚志, 浅野 善英, 赤股 要, 宮川 卓也, 平林 恵, 中村 洸樹, 三浦 俊介, 三枝 良輔, 市村 洋平, 高橋 岳浩, 遠山 ...
    2016 年39 巻4 号 p. 381b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      全身性強皮症は免疫異常,血管障害,線維化を主要3病態とする原因不明の膠原病である.本症の病態理解・治療開発が遅れている理由の一つとして,その病態を忠実に再現した動物モデルが存在しなかったことが挙げられるが,最近我々は転写因子Fli1の恒常的発現低下により線維芽細胞,血管内皮細胞,マクロファージにおいて強皮症特有の形質が誘導できることを示し,さらに血管内皮細胞特異的Fli1欠失(Fli1 ECKO)マウスでは強皮症の血管障害に特徴的な血管の構造異常と機能異常が再現できることを明らかにした.強皮症の血管障害に対しては肺動脈性肺高血圧症治療薬が有用であり,特にボセンタン(エンドセリン受容体拮抗薬)は皮膚潰瘍の新規発症を予防する効果が2つの良質な臨床試験により証明されている.また,明確なエビデンスはないが,bFGF製剤は強皮症に伴う難治性皮膚潰瘍の治療に有用であり,実臨床において広く使用されている.しかしながら,これらの薬剤が強皮症の血管障害に及ぼす影響とその分子メカニズムは未だ不明な点が多い.そこで今回我々は,Fli1 ECKOマウスの創傷治癒異常の分子メカニズム,およびボセンタンとbFGFがその異常に及ぼす影響について検討した.一連の研究結果により,Fli1 ECKOマウスにおける創傷治癒異常の分子メカニズム,およびボセンタンとbFGFがFli1欠失血管内皮細胞の動態に及ぼす影響が明らかとなったので,その詳細を報告する.

  • Olga Amengual, 奥 健志, 杉浦 真弓, 村島 温子, 渥美 達也
    2016 年39 巻4 号 p. 382a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      Phosphatidylserine-dependent antiprothrombin antibodies (aPS/PT) are strongly correlated with lupus anticoagulant. We evaluated the value of IgG aPS/PT for diagnosing antiphospholipid syndrome (APS). Methods: We performed an initial cross-sectional multi-centre study involving 8 centres/7 countries. Clinical and laboratory data were retrospectively collected. Specimens were blinded,and IgG aPS/PT determinations performed at Inova Diagnostics (USA, Inova) using 2 ELISA kits: MBL (Japan) and Inova. A validation study was carried out (5 centres/5 countries). Results: In the initial study (n = 247), IgG aPS/PT titers were concordant between the two ELISA tests (r = 0.827, p < 0.001). In samples with concordant results (n = 204), IgG aPS/PT were more prevalent in APS patients (51%) than in patients without APS (9%) (OR: 10.8 [95%CI 4-29], p < 0.0001). In the validation study (n = 214), there was as well a good concordance between IgG aPS/PT titers obtained by both ELISAs (r = 0.803, p < 0.001) , and IgG aPS/PT were more frequently found in APS patients. Conclusions: Performance of IgG aPS/PT is reliable. IgG aPS/PT detection is an easily performed laboratory parameter that may help in APS diagnosis.

  • 石崎 淳, 松本 卓也, 末盛 浩一郎, 安川 正貴, 長谷川 均
    2016 年39 巻4 号 p. 382b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】血清プロテオーム定量解析によりANCA関連血管炎の活動性,臓器障害マーカーを探索する.【方法】RemIT-JAV-RPGN登録患者および当院患者(計169例,MPA 105例,GPA 36例,EGPA 25例,分類不能3例)の血清試料(治療前,6ヶ月後)を用いた.<プロトコール#1>MSMS解析(N = 7)で390種の血清タンパク質を同定した.血管炎と関連しうる62種を選択し,3連四重極型MSを用いたSelected reaction monitoring(SRM)法で定量解析した(N = 29).<プロトコール#2>遺伝子・タンパク質データベースから血管内皮細胞に関連するタンパク質88種を選出しSRM定量解析を行った(N = 37).同定マーカーは多検体試料でELISA解析した.【結果】治療前後で有意に変動するマーカー候補としてP#1より20種,P#2より13種を同定した.ELISA解析による治療前/6ヶ月後(寛解期)の比較におけるROC曲線下面積0.85以上の活動性マーカーとしてCRP, TIMP1, LRG1, TNC, S100A8/A9が見出された.TIMP1は6ヶ月後の非寛解例では寛解例より有意に高値であった(P = 0.013).治療前BVASスコアとの相関分析で,TIMP1, TNC, S100A8/A9, CD93, TKTはCRPより相関係数が高値であった.CD93,TKTは腎病変あり群(BVAS項目)で高値であり(P < 0.0001, P = 0.0002),6ヶ月間に腎死あり群は治療前CD93,TKT値が高値であった(P < 0.00001, P < 0.0001).【結論】最も有用な活動性マーカーとしてTIMP1,腎病変マーカーとしてCD93, TKTを見出している.

  • 久保 智史, 中山田 真吾, 中野 和久, 好川 真以子, 宮崎 祐介, 佐藤 友梨恵, 轟 泰幸, 平田 信太郎, 岩田 慈, 齋藤 和義 ...
    2016 年39 巻4 号 p. 383a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】強皮症の病態は「自己免疫,炎症,線維化,血管障害」の複合的要因で形成され,症例ごとの病態評価を困難とする.NVCを用いた病期評価を免疫細胞サブセットの網羅的評価と組み合わせ強皮症の病態評価への有用性を検討した.【方法】対象は当科に通院する強皮症患者76名.NVCによる爪郭部毛細血管異常,NIH/FOCISのHuman Immunology Project Consortiumに基づく8カラーFACS解析を評価し,臓器障害との比較を行った.【結果】爪郭部毛細血管を正常,早期,活動期,晩期に分類するとその進行は罹病期間とは関連せず,皮膚硬化の程度および消化管病変,腎障害,血管障害(皮膚潰瘍)の程度と相関していた.また,RNA polymerase III陽性症例ではNVC進行例が多かった.一方で末梢血リンパ球サブセットでは,活性化T細胞およびTh1,switched memory B cellの割合が血管障害(皮膚潰瘍)の程度と相関し,plasmablastの割合が皮膚硬化の程度,腎機能障害,心機能障害,肺高血圧症の程度と相関していた.さらに,毛細血管異常が晩期の症例ではplasmablastの増加が認められた.【結語】NVCによる病期分類は臓器障害を反映した.またNVCの進行は罹病期間とは相関しない一方で,自己抗体やB細胞の分化異常がその進行に関連していた.すなわち,強皮症患者において,病期および臓器障害の出現は一様ではなく,NVCの病期評価に基づいた強皮症患者のサブグループ分けによる治療応用が考えられた.

  • 中村 香代, 神人 正寿, 福島 聡, 尹 浩信
    2016 年39 巻4 号 p. 383b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      エキソソームは様々な細胞から細胞外環境へ放出される50~1,000 nmの小胞である.血液などあらゆる体液中に存在し,内部に蛋白や脂質,そしてmRNAやmicroRNAなどの核酸を有しているため,近年は細胞間コミュニケーションツールとして注目されている.我々の研究の目的は全身性強皮症(SSc)におけるエキソソームの発現異常やその役割を解析することである.SSc皮膚由来の線維芽細胞においては,健常人由来の線維芽細胞と比較してエキソソームの主要マーカーであるCD9,CD63およびCD81の発現が増加していた.また,SSc患者由来線維芽細胞の培養液中のエキソソームは健常人由来線維芽細胞において,I型コラーゲンの発現を増加させた.一方,SSc患者血清でのエキソソーム量は健常人と比較して低下しており,特に皮膚潰瘍など血管病変との相関がみられた.これらの結果より,SSc皮膚ではエキソソームの量と質が変化している可能性と,microangiopathyによりエキソソームの組織中から血管内への移行が妨げられた結果,血清エキソソーム量が低下している可能性があると考えられた.

  • 古川 哲也, 松井 聖, 北野 将康, 横山 雄一, 東 直人, 佐野 統
    2016 年39 巻4 号 p. 384a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】SScは皮膚及び諸臓器の線維化を起こす難治性結合組織疾患でIPやPAHの合併は予後に影響する.キチナーゼ様蛋白のYKL-40は炎症や組織リモデリングへの関与が知られ,腫瘍領域で免疫組織染色(IHC)が報告され,本邦でもSSc患者血中での上昇が当科の検討で判明し詳細に検討した.【対象】2014年8月~2016年3月に当科を受診したSSc患者で合併症のない51例(1群),IPを合併した21例(2群),PAHを合併した4例(3群),IP・PAHを合併した13例(4群),コントロールとして健常人16例.【方法】正常とSSc皮膚保存検体でIHCを行い,対象の血清YKL-40値(ng/ml)をELISA法で測定し,爪郭毛細血管をダーモスコピーで評価した.【結果】IHCでは正常皮膚は染色されず,SSc皮膚で皮下の血管内皮が著明に染色された.また,血清YKL-40値を比較し,1群:78.6±50.3,2群:122.1±89.0,3群:183.5±120.4,4群:225.9±161.0は健常人38.1±18.1と比べ有意に上昇し,2,3,4群でより上昇した.特に,1群と4群でROC解析を行い,SScに感度85.7%,特異度70.6%でIP・PAH合併を診断可能だった.ダーモスコピー所見で1群はearly/active/late pattern:17/23/6例:69.2±43.7/88.0±58.5/90.2±44.8,4群は3/5/6例:128.7±42.6/190.9±177.2/303.7±65.7で,4群のactive/late patternで有意に上昇した.それを合わせることで感度90.9%とSScにおけるIP・PAH合併にYKL-40とダーモスコピーを併用することで合併症の有無を早期に診断できる可能性が示唆された.

  • 安藤 誠一郎, 浅井 悠貴, 天野 浩文, 山路 健, 田村 直人, 高崎 芳成
    2016 年39 巻4 号 p. 384b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】酸化ストレスとは「生体の酸化反応と抗酸化反応のバランスが崩れ,前者に傾き,生体にとって好ましくない状態」とされる.近年SLEの病態形成においてNETsが重要な役割を担うと言われている.NETsの形成は活性酸素種(ROS)に依存する一方,酸化ストレスの原因となるすべての化学物質は大きくはこのROSに分類されるため,酸化ストレスがNETs形成に関与していると考えられる.今回我々は酸化ストレスの指標としてd-ROMsテストを用いてSLE患者の活動性が高い時期と寛解の時期,および健常人との比較を行いその意義を検討する.【方法】当院にて加療中のSLE患者のうち寛解状態にある40例の保存血清検体を用Dacron製F.R.E.E.(Free Radical Elective Evaluator)を用いて酸化ストレス度(Reactive Oxygen Metabolites,d-ROMsと抗酸化力(Biological Antioxidant Potential,BAP)を測定した.40例のうち20例では疾患活動期の保存血清を用いて測定・評価が可能であった.健常対照10例も同様に測定を行い,それぞれの群間で比較検討を行った.【結果】SLEの活動期・寛解期・健常対照の各群のd-ROMs,BAP,およびその比を用いて算出するOSI(酸化ストレス比)いずれの指標においてもSLE群と健常対照群に有意差が見られた.【結論】SLE患者の活動期,寛解期いづれも健常対照と比較してより酸化ストレス状態であることが示され,NETsの形成を介したSLEの病態形成への関与が考えられた.

  • 竹島 雄介, 岩崎 由希子, 太田 峰人, 白井 晴己, 夏本 文輝, 花田 徳大, 石垣 和慶, 住友 秀次, 鈴木 亜香里, 高地 雄太 ...
    2016 年39 巻4 号 p. 385a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      全身性エリテマトーデス(SLE)は全身性自己免疫疾患であり,自己反応性B細胞や制御性T細胞の病態形成における重要性がこれまでの研究より示唆されているが,病態の全容は不明である.我々は,末梢血免疫担当細胞のサブセット毎のトランスクリプトーム解析を行うことにより,SLEの病因・病態に迫ることを試みている.当院当科外来通院中のSLE50例と健常人30例の末梢血から計21サブセットをFACSにてソーティングを行いRNA-seqを用いた次世代シークエンス(NGS)解析を進めている.各サブセットの存在比としては,SLEのT細胞分画ではTfhは減少し,B細胞分画ではplasma blastが増加していた.RNA-seqにより,細胞種によらずinterferon signatureの増強を認めるが,細胞種によりDEGs(differential expression genes)が異なることが示された.また,遺伝子共発現ネットワーク解析(WGCNA: Weighted Gene Co-expression Network Analysis)を行うことで,SLEのB細胞において臨床パラメーターと自己抗体産生に繋がる分子群の発現が関連していることが示唆された.我々の検討において細胞数5000程度から安定してLibraryを作成しNGS解析を行うことは可能であり,かつ,ネットワーク解析の手法を通じて臨床パラメーターと関連のある遺伝子群を同定することで,サブセット毎のRNA-seqからSLEの詳細な病態解明に繋がる知見を得ることが期待される.今後,症例を蓄積して解析を進めることが重要と考えている.

  • 大村 一将, 奥 健志, 渡邊 俊之, 谷村 瞬, 柴田 悠平, 河野 通大, 久田 諒, 菅原 恵理, 中村 浩之, 神田 真聡, 嶋村 ...
    2016 年39 巻4 号 p. 385b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】骨塩量減少と動脈硬化との関連が指摘されている(Ye C et al. PLoS One 2016).全身性エリテマトーデス(SLE)における動脈硬化の進展因子を検討する.【方法】2012年1月から2016年4月に当科外来を受診した全SLE患者のうち,経時的に動脈硬化性病変を評価した連続84(女性74)例を対象とした.動脈硬化性病変は,頚部血管エコー検査により頚動脈プラーク,内膜中膜複合体厚(IMT)を評価し,骨塩定量は腰椎(L2-4)においてDual-Energy X-ray Absorptiometry法で測定した.動脈硬化進展を平均最大IMTの10%以上の増加かつプラークスコア(頚動脈プラーク径の総和)の増加と定義し,初回検査時の患者背景,臨床検査所見,骨塩量および治療薬との関連を後ろ向きに解析した.【結果】対象の年齢,罹病期間,SLEDAI-2Kの中央値[四分位範囲]は,43[36-54]歳,10[3-21]年,2[2-4]で,腰椎骨塩量(g/m2)は,0.98±0.15であった.頚部血管エコー検査は,26[23-29]ヶ月間隔で施行され,プラークスコアは,34例(41%)で増加し,平均最大IMTの変化率は6.5±18.3%であった.動脈硬化進展は12例(14%)に認められ,動脈硬化進展に関連する因子として,頚動脈プラークの存在(p = 0.001),リンパ球数(p = 0.01),骨塩減少(p = 0.01),抗リン脂質抗体陽性(p = 0.03)が抽出された.【結語】SLEにおける動脈硬化進展は,疾患特異的なリスク因子とともに骨塩量との関連が示唆された.

  • 河野 通大, 保田 晋助, 尾形 裕介, 阿部 早和子, 大西 直樹, 土井 基嗣, 谷村 瞬, 柴田 悠平, 中村 浩之, 菅原 恵理, ...
    2016 年39 巻4 号 p. 386a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】ループス腎炎(LN)に対する寛解導入期におけるミコフェノール酸モフェチル(MMF)の短期的治療効果を検討する.【方法】当院で寛解導入治療としてMMFを投与されたLN患者の治療成績について後向きに解析した.完全寛解(CR)を尿蛋白0.5g/gCre未満かつ正常GFRもしくは正常GFR下限から90%以内への改善,部分寛解(PR)を尿蛋白3.5g/gCre未満への半減,かつ正常GFRもしくは正常GFR下限から90%以内への改善と定義した.【結果】全24例(女性20例)のうち,13例が前治療不応例もしくは再燃例であり,11例は初回寛解導入例であった.全例の治療開始1,3,6ヶ月後のCR達成率は,それぞれ17%(4/24),33%(8/24),43%(10/23)であった.初回寛解導入例の1,3,6ヶ月後のCR達成率はそれぞれ27%(3/11),64%(7/11),80%(8/10)であり,PR達成率は1,3,6ヶ月で45%(5/11),91%(10/11),100%(9/9)であった.6ヶ月時点での治療抵抗性に関連する因子として尿蛋白 ≥ 3.5g/g・Cr(p = 0.019),CH50低値(p = 0.046),SLEDAI-2K高値(p = 0.023),V型を含む腎生検所見の既往(p = 0.040),前治療不応(p = 0.003)が挙げられた.【結語】LNの初回寛解導入治療としてMMFの治療成績は良好であり,再発・難治例に対してもMMFが有効である症例が存在する.また初回寛解導入例ではMMF治療開始後,比較的早期から効果発現が期待できる.

  • 辻村 静代, 齋藤 和義, 田中 良哉
    2016 年39 巻4 号 p. 386b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】SLEの疾患活動性上昇に伴ってリンパ球上に発現するP糖蛋白質(P-gp)は,薬剤細胞外排出にて治療抵抗性を齎すが,P-gp発現リンパ球の組織侵襲への関与は不明である.P-gpおよびTh1ケモカイン受容体発現と組織侵襲との関連を解析した.【方法】標的分子を末梢血CD4+cellはフローサイトメーターで,組織浸潤CD4+cellは免疫組織染色で評価した.【結果】SLEでは健常人に比してCCR5発現は有意差なく,CXCR3は有意に発現増強し,P-gpはCXCR3+CD4+cell上に優位に発現した.P-gp+CXCR3+CD4+cell比率は臓器障害の有無で有意差なく,活動性LNと活動性NPSLE(ANPSLE)で上昇傾向あり,活動性増殖性ループス腎炎(APLN)で有意に上昇し,APLNとANPSLE併発例で更に上昇した.APLNの腎間質にP-gp+CD4+cell集簇を認めた.PLNとNPSLEでCD4+cell上CXCR3とP-gp発現は有意に正相関した.APLN,ANPSLEで末梢血P-gp+CXCR3+CD4+cell増加を認め,IVCY等にて消失するとともに疾患活動性は低下した.【結論】P-gp+CXCR3+CD4+cellはPLNとNPSLEに優位に出現して神経・腎臓障害を齎し,その制御が治療抵抗性克服に重要である.

  • 森 雅亮, 松井 利浩
    2016 年39 巻4 号 p. 387a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【背景】若年性特発性関節炎(JIA)で本邦にて承認されている生物学的製剤は,2016年5月現在トシリズマブ,エタネルセプト,アダリムマブの3剤しか存在しない.このため,難治性JIAでこれら3剤が無効な症例はしばしば当面の治療が難渋し,複数の他の疾患修飾性抗リウマチ薬の併用を余儀なくされる.【目的】抗TNF製剤のうち負荷量投与が可能なセルトリズマブペゴル(CZP)が,難治性JIAに有効かつ安全に投与できるか,また患者のQOLを保つことが可能かを検討した.【対象と方法】対象は,複数の生物学的製剤が無効で,本剤にスイッチした16歳以上の移行期JIA患者5例(22.0±3.7歳).投与開始時から52週までの,圧痛・腫脹関節数,患者VAS,医師VAS,血液検査所見(CRP,赤沈値,MMP-3等),併用薬(プレドニゾロン,メトトレキサート,他の疾患修飾性抗リウマチ薬)の使用量の変化について経時的に観察した.【結果】全例とも,投与開始12週までに上記症状,諸血液検査所見が軽快し,併用薬も一定量の減量を図ることが出来た.また,重篤な有害事象も発生せず,QOLの改善が認められた.【結論】CZPは小児適応を取得していないため,16歳未満のJIA症例には使用できないが,難治性移行期症例には有効かつ安全な薬剤であることが示唆された.今後も使用症例を増加して,移行期症例の本剤の知見を蓄積していきたい.

  • 平野 史生, 松本 拓実, 杉原 毅彦, 長坂 憲治, 副島 誠, 野々村 美紀, 萩山 裕之, 宮崎 泰成, 松井 利浩, 森 雅亮, 針 ...
    2016 年39 巻4 号 p. 387b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【背景】関節リウマチ(RA)に伴う間質性肺炎(RA-IP)の治療には副腎皮質ステロイド(GC)や免疫抑制薬が使用されるが,GCの用量・減量方法や免疫抑制薬の選択について十分なエビデンスは存在しない.【目的】RA-IPに対する中等量GCとタクロリムス併用療法の有効性を検討する.【方法】20歳以上のRAのうち高解像度CTにて通常型間質性肺炎(UIP),または非特異的間質性肺炎(NSIP)のパターンを示すRA-IPの新規発症例もしくは増悪例を対象とし,体重あたり0.5mg/kg/日のプレドニゾロンとタクロリムスによる治療を行った.プレドニゾロンは治療開始6ヶ月で0.2mg/kgまで減量するプロトコールとした.タクロリムスは3 mg/日を上限とし,効果が不十分と判断される場合は血中濃度をモニターの上,3 mg/日超使用可とした.主要評価項目は6ヶ月後の努力性肺活量(FVC)の改善(FVC 10%以上の改善あるいは200ml以上の改善と定義)の有無とした.【結果】登録症例6例(UIP 3例,NSIP 3例,年齢54-77歳)中,5例は6ヶ月後までにプロトコールどおりステロイドが減量でき,治療変更を要さなかった.5例のうち呼吸機能検査が施行できた4例では2例がFVC改善,2例が不変であった.間質性肺炎増悪のため1例が治療強化を要し,ステロイドパルス療法,プレドニゾロンの増量,免疫抑制薬の変更が必要であった.【考察】UIPもしくはNSIPパターンのRA-IPにおいて中等量GCとタクロリムス併用療法が短期的に有効である可能性が示唆された.

  • 石井 泰子, 天野 宏一, 川口 修, Rooney Terence, Li Xie, Schlichting Douglas, Genov ...
    2016 年39 巻4 号 p. 388a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】腫瘍壊死因子(TNF)阻害剤に対して効果不十分な中等度から重度の活動性を有する関節リウマチ(RA)患者を対象にバリシチニブ(bari)を投与したときの有効性及び安全性をプラセボ(PBO)と比較検討する.【方法】無作為化二重盲検多施設共同試験を実施した.解析対象例は527例(日本人被験者20例)だった.bari2mg(2mg),bari4mg(4mg)又はPBOを1日1回24週にわたり経口投与した.【成績】主要評価項目である投与12週時のACR20改善率は2mg群49%,4mg群55%,PBO群27%であり,PBO群と比べて4mg群で統計学的に有意に高く(p ≤ 0.001),この改善は投与1週時から認められた.投与24週時までの有害事象の発現割合は2mg群71%,4mg群77%,PBO群64%だった.重篤な有害事象の発現割合は2mg群4%,4mg群10%,PBO群7%,治験薬投与中止に至った有害事象の発現割合は2mg群5%,4mg群9%,PBO群5%だった.有効性及び安全性の結果について,全体集団と日本人集団の間に顕著な違いは認められなかった.【結論】TNF阻害剤に対して効果不十分な活動性RA患者におけるACR20改善率について,PBO群と比べて4mg群で早期から安定した改善が認められた.安全性プロファイルは許容可能であり,良好な忍容性が確認された.

  • 菊池 潤, 柴田 明子, 酒井 亮太, 千野 健太郎, 近藤 恒夫, 奥山 あゆみ, 武井 博文, 天野 宏一
    2016 年39 巻4 号 p. 388b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】寛解維持関節リウマチ(RA)患者におけるトシリズマブ(TCZ)の6週投与間隔延長の有効性と忍容性を明らかにすること.【方法】2013年12月から2015年8月に当院通院中で,6回以上TCZを投与されており,3か月以上寛解を維持しているRA患者を対象とした.同意を得て投与間隔を6週間に延長した.【結果】対象患者は23例,平均年齢54.0歳,86.4%が女性,平均罹病期間11.8年,メトトレキサートおよびステロイド使用率はそれぞれ31.8%と9.1%,生物学的製剤の使用歴は63.6%であった.TCZ開始から投与間隔延長までの期間は平均41.5か月であった.延長開始24週後で21例(91.3%)が試験を継続した.延長開始時の平均DAS28-ESRは0.97±0.55であったが,24週後は2.10±1.10であり(p < 0.001),16例(72.7%)が寛解,2例(9.1%)が低疾患活動性を維持した.罹病期間,延長開始後6週までのDAS28-ESR, ESR, CRPの変化量が24週後のDAS28-ESR変化量と正の相関を示した(ρ = 0.41,p = 0.059,ρ = 0.58,p = 0.005,ρ = 0.49,p = 0.020,ρ = 0.51,p = 0.016).経過中に1例は18週で再燃,1例は5週でリンパ増殖性疾患の再燃で離脱した.有害事象は6例(27.3%)に認め,上気道炎が2例,リンパ増殖性疾患の再燃,転倒による脛骨骨折,鬱滞性皮膚炎,尿路結石症がそれぞれ1例であった.【結論】TCZ投与中寛解維持RA患者において投与間隔を6週間に延長することが有用である可能性が示唆された.

  • 三嶋 耕司, 新納 宏昭, 井上 靖, 吉澤 誠司, 吉澤 滋, 永野 修司, 西坂 浩明, 澤部 琢哉, 押領司 健介, 多田 芳史, 三 ...
    2016 年39 巻4 号 p. 389a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】関節リウマチ(RA)に対する治療は,生物学的製剤の台頭によって大きく進歩した.アバタセプト(ABA)はRAの滑膜炎や関節破壊を抑制するが,本疾患の免疫異常に対する作用については不明な部分が多い.本研究では,ABA治療後のリンパ球サブセットと自己抗体価の変化を通じて,RAの免疫異常を経時的に解析した.【方法】生物学的製剤未使用のRA患者25例を対象にABAを投与し,疾患活動性の評価に並行し,フローサイトメトリー法による末梢血リンパ球サブセット解析や自己抗体価測定を経時的に行った.【結果】RA患者のABA治療後,疾患活動性の低下とともにTfh,central memory CD4+T細胞,effector memory CD4+T細胞は減少,一方でnaive CD4+T細胞の増加を認め,T細胞活性化は早期より全般的に低下していた.加えて,制御性T細胞の減少も認めた.これらのT細胞サブセットの変化に比して,抗CCP抗体,リウマトイド因子(RF)などの自己抗体価,B細胞サブセット,CD8+T細胞サブセットは変化に乏しかった.疾患活動性,RFとTfhの変化量に相関を認めた.【結論】RAに対するABA治療によって疾患活動性が低下するとともにCD4+T細胞サブセット,RFなどの免疫異常も変化し,本疾患の免疫学的異常が一部是正されている可能性が強く示唆された.

  • 篠田 紘司, グザリアイ ママティジャン, 中村 優理, 佐藤 眞也, 眞崎 勝久, 松下 拓也, 山崎 亮, 吉開 泰信, 吉良 潤一
    2016 年39 巻4 号 p. 389b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【背景】我々は最近,日本人多発性硬化症(multiple sclerosis, MS)と視神経脊髄炎において,T細胞受容体(TCR)遺伝子領域の欠失型copy number variation(CNV)が,その疾患感受性を大きく高めることを報告した.しかし,欠失型CNVの臨床免疫学的な意義は明らかでなかった.【目的】MS患者における,欠失型CNVの免疫学的意義を検討する.【方法】TCRα及び/またはδ鎖領域の欠失型CNVを有する66名,有さない155名のMS患者で臨床像を比較した.寛解期のMS患者で,当該CNVを有する8名と有さない7名の末梢血単核細胞を採取し,8カラーフローサイトメトリーによりリンパ球サブセット解析を行った.【結果】欠失型CNVを有するMS患者は,progression indexが有意に高値であった(P = 0.0453).欠失型CNVを有するMS患者は,有さない患者に比し,HLA-DRを発現する活性化CD8 T細胞が多く(P = 0.039),セントラルメモリーCD8 T細胞が少なかった(P = 0.013).【結論】欠失型CNVを有するMS患者では,有さない患者より障害の進行が速いことが示され,免疫学的にはCD8 T細胞サブセットの偏倚を反映している可能性が考えられた.

  • 木村 公俊, 北條 浩彦, 福岡 聖之, 佐藤 和貴郎, 高橋 良輔, 山村 隆
    2016 年39 巻4 号 p. 390a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      エクソソーム(exosome)は細胞間情報伝達に関わる微小胞で,miRNA等を内包している.miRNAはT細胞分化を含めた免疫機構に深く関わっており,多発性硬化症(MS)等の自己免疫疾患においてexosomeの関与が推察される.本研究では,血漿中exosomeに含有されるmiRNAを解析し,健常人に比してMS患者において発現が亢進しているmiRNA 4種(miR-A, B, C, D)を同定した.また,T細胞にMS患者由来のexosomeを添加・培養すると,健常人由来のexosome群に比して制御性T細胞の頻度が低下した.制御性T細胞の頻度は,添加されたexosome中のmiR-Aの量と逆相関していた.また,T細胞へのmiR-Aの導入で,同様に制御性T細胞が減少した.さらに,naive CD4 T細胞から制御性T細胞への分化誘導時にも,miR-Aの導入で頻度が低下したことから,miR-Aは制御性T細胞の分化を阻害すると推察された.次に,制御性T細胞の減少に関与すると考えられる,miR-Aのターゲット遺伝子候補を検討し,miR-A導入によるprotein-Aの発現低下を確認した.また,protein-A発現をsiRNAで阻害すると,制御性T細胞が減少することを確認した.実際に,MS患者の末梢血CD4 T細胞において,protein-Aの発現低下を認めた.さらに,MS患者では制御性T細胞が減少しており,その頻度とnaive CD4 T細胞のprotein-Aの発現量に正の相関を認めた.本研究により,miRNAと制御性T細胞の分化抑制を介した,exosomeによる新たな疾患メカニズムが示唆された.

  • 山本 元久, 櫻井 のどか, 鈴木 知佐子, 高橋 裕樹
    2016 年39 巻4 号 p. 390b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】IL-32は,TNFαとともに炎症の慢性化に関連するサイトカインとして注目されている.今世紀に疾患概念が確立された新規疾患,IgG4関連疾患も,全身性慢性炎症疾患の一つであり,ステロイド休薬寛解が難しい疾患で知られている.今回,私たちは,IgG4関連疾患の病因におけるIL-32の意義について,唾液および組織解析により検討した.【方法】当科通院中のIgG4関連唾液腺炎20名の唾液と15名(休薬寛解5例,維持療法必要群10例)の顎下腺標本を対象とした.コントロールとしてシェーグレン症候群20名の唾液と5名の小唾液腺標本を用いた.各疾患症例の唾液を採取し,唾液中IL-32濃度をELISA法で測定した.次に各疾患の唾液腺標本を用い,IgG,IgG4,CD68,IL-32,TNFα発現を免疫染色にて解析した.【結果】唾液中のIL-32は,シェーグレン症候群に比較し,IgG4関連唾液腺炎の方が高値を呈したが,有意差は認めなかった(P = 0.06).しかし組織においてはIgG4関連唾液腺炎維持療法必要群において,IgG4関連唾液腺炎休薬寛解群,シェーグレン症候群群に比較しIgG4,IL-32,TNFα陽性細胞数が有意に多かった.他は差を認めなかった.【結論】IgG4関連唾液腺炎の炎症の慢性化にIL-32が関与する可能性が示唆された.

  • 秋山 光浩, 安岡 秀剛, 山岡 邦宏, 鈴木 勝也, 金子 祐子, 近藤 晴美, 葛西 義明, 古賀 敬子, 宮崎 宇広, 森田 林平, ...
    2016 年39 巻4 号 p. 391a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】IgG4-RDは末梢血IgG4産生形質芽細胞増加を特徴とする.B細胞の形質芽細胞への分化と抗体産生能獲得にT濾胞ヘルパー細胞の補助が重要であり,我々は本疾患でT濾胞ヘルパー2型細胞(Tfh2)が増加し,形質芽細胞数および血清IgG4値と相関することを報告してきた.本研究ではIgG4-RDにおけるTfh2の機能的証明および疾患活動性との関連を解明することを目的とした.【方法】未治療のIgG4-RD17例,コントロール群に原発性シェーグレン症候群(pSS)20例,多中心性キャッスルマン病(MCD)5例,健常人(HC)12例を用いた.in vitroでTfhサブセットとnaive B細胞を共培養し,形質芽細胞への分化およびIgG4産生誘導能を検討した.また,Tfh2の活性化状態を解析し,疾患活動性および障害臓器数との相関と治療前後での経時的変化を評価した.【結果】共培養でIgG4-RDのTfh2はTfh1およびTfh17と比較し有意にnaive B細胞を形質芽細胞へ分化誘導した.また,Tfh2のみがB細胞のIgG4産生を誘導し,IgG4-RDで健常人と比較し有意にIgG4産生量が高値であった.また,活性化Tfh2の比率はIgG4-RDでpSS,MCDおよびHCと比較し有意に高く,疾患活動性および障害臓器数と正の相関を示した.ステロイド治療により疾患活動性が低下すると,形質芽細胞数と血清IgG4値と共に活性化Tfh2の比率も減少した.【結論】IgG4-RDでは疾患活動期にTfh2が活性化状態にあり,B細胞を形質芽細胞へと分化させIgG4産生を誘導している.

  • 渡邉 幹夫, 香川 朋也, 井上 直哉, 大津 裕, 佐伯 みのり, 勝又 由佳, 田久世 友希奈, 岩谷 良則
    2016 年39 巻4 号 p. 391b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【背景】橋本病は細胞傷害免疫により甲状腺に炎症が惹起される自己免疫疾患であり,様々なサイトカインがその病態形成に関わっていると考えられ,IL-10もその一つである.MicroRNAは非コードRNAであり,本研究では,そのうちの一つであるlet-7eがIL-10産生の制御因子として自己免疫性甲状腺疾患の病態形成に関わっている可能性を検証した.【対象と方法】11名の健常人サンプルを用いて,末梢血単核球におけるlet-7eの発現とIL-10産生の関連を調べた.IL-10産生についてはrealtime-PCR法を用いて解析したIL-10 mRNA発現量と,フローサイトメトリーを用いた細胞内IL-10陽性細胞比率の双方によって評価した.また,バセドウ病患者50名,橋本病患者42名,健常人28名において末梢血単核球のlet-7e発現を解析した.【結果】(1)let-7e発現量とIL-10 mRNA発現量は健常人において負の相関を示した.(r = −0.44, p = 0.0267)(2)let-7e発現量と刺激下でのIL-10産生細胞比率は健常人において負の相関を示した.(r = −0.49, p = 0.0166)(3)let-7eはバセドウ病患者や健常人に比べ,橋本病患者で有意に高発現であった.(p = 0.0003, 0.0011)【結語】let-7eはIL-10産生制御を介して橋本病の病因に関係している可能性がある.

  • 神宿 元, 塚本 信夫, 河上 裕
    2016 年39 巻4 号 p. 392a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      近年,がん免疫療法の治療効果が臨床試験で確認されたが,さらなる抗腫瘍効果の改善,特にPD-1/PD-L1阻害による免疫チェックポイント阻害療法の効果を増強できる免疫調節剤の開発が期待されている.我々は,天然化合物・既存薬など各種低分子化合物ライブラリーのスクリーニングにより,複数のがん免疫調節性低分子化合物の同定に成功している.そのうちの一つ,ベルベリンは,抗菌・抗炎症などの作用をもつ既存薬であるが,最近,MAPKシグナル阻害やAMPK活性化などを介した抗がん作用も報告されている.ベルベリンが直接的な抗腫瘍作用を示さないマウス腫瘍モデルにおいて,その腹腔内投与は,センチネルリンパ節でのメモリーT細胞の増加,および腫瘍組織内での,抗アポトーシスタンパク質Bcl2やBat3の発現上昇を伴う腫瘍抗原特異的CD8+T細胞の生存促進作用により,CD8+T細胞依存性の抗腫瘍効果を示すことを見いだした.ベルベリン投与は,樹状細胞,骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC),制御性T細胞に対する作用を示さず,直接,T細胞に作用している可能性が示唆された.さらに,ベルベリンと抗PD-L1阻害抗体との併用により抗腫瘍効果が増強された.以上の結果から,ベルベリンは既存薬であることからも,今後,PD-1/PD-L1阻害薬との併用による複合がん免疫療法の開発が期待される.

  • 久保田 恵吾, 森山 雅文, 古川 祥子, Rafiul Haque ASM, 丸瀬 靖之, 石黒 乃理子, 坂本 瑞樹, 川野 真太郎, ...
    2016 年39 巻4 号 p. 392b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】腫瘍随伴性マクロファージ(TAM)は,悪性腫瘍に対する免疫応答を抑制することが報告されているが,口腔扁平上皮癌(OSCC)におけるTAMの局在や機能については不明である.そこで本研究では,OSCCにおけるTAMの免疫抑制機構について検討を行った.【対象と方法】未治療のOSCC患者40例の切除標本を用いて免疫組織化学染色法(IHC)にてTAM(CD163,CD204),活性化リンパ球(CD25),免疫抑制分子(IL-10,PD-L1)の発現と局在を検索した.さらにOSCC患者のPBMCをPMAとイオノマイシンで刺激し,FACSにて各TAM細胞分画(CD163+CD204−,CD163−CD204+,CD163+CD204+)におけるIL-10およびPD-L1の発現を検討した.【結果】IHCではCD163およびCD204はOSCCの腫瘍辺縁部に著明な浸潤を認めさらに,CD204は腫瘍実質内にも浸潤を認めた.二重蛍光染色法にてTAMの分布を検討したところ,CD163−CD204+とCD163+CD204+が腫瘍浸潤先端部と腫瘍内部に広く局在を認め,CD163+CD204−は主に腫瘍周囲の間質に局在を認めた.さらにFACSではCD163+CD204+の細胞分画が他の分画と比べ,最もIL-10およびPD-L1を発現していた.さらにCD163+CD204+陽性細胞数のみCD25陽性細胞数と負の相関を示した.【結論】これらの結果から,TAMの中でもCD163+CD204+TAMが最も免疫抑制能が高く,OSCCの浸潤・転移に関与していることが示唆された.

  • 淺沼 広子, 廣橋 良彦, 長谷川 匡, 鳥越 俊彦
    2016 年39 巻4 号 p. 393a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      PD-L1は免疫チェックポイント分子PD-1のリガンドであり,主に抗原提示細胞や悪性黒色腫,肺がん等の様々な癌組織に発現している.その発現は,癌細胞の免疫逃避に関与していることが知られており,近年,抗PD-1抗体が免疫チェックポイント阻害薬として製剤化された.癌幹細胞は主要な治療標的であるが,その免疫逃避機序については不明の点が多い.私たちは乳癌幹細胞におけるPD-L1の発現とその制御機構について解析した.免疫組織染色及びフローサイトメーター解析の結果,MCF7およびMDA-MB-469乳癌細胞のSpheroid形成細胞でPD-L1の発現増強が認められた.この発現はAKT阻害剤によって抑制されることから,PI3K/AKT pathwayの関与が示唆された.また,乳癌原発巣70症例およびリンパ節転移巣30症例に関して,PD-1, PD-L1の発現を解析した.その結果,PD-L1の発現は,原発巣よりもリンパ節転移巣において頻度が高いこと,PD-L1陽性転移巣周囲には,PD-1陽性T細胞の浸潤頻度が高いことが判明した.乳癌幹細胞の免疫逃避およびリンパ節転移にはPD-L1の発現が関与している可能性が示唆された.

  • 宮内 翼, 谷口 智憲, 藤田 知信, 河上 裕
    2016 年39 巻4 号 p. 393b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      ヒト大腸癌では,腫瘍内へのCD8陽性T細胞浸潤が予後良好因子となる事,MSI(microsatellite instability)陽性症例では抗PD-1抗体が劇的に奏功する事などが報告されており,一部の症例では,抗腫瘍免疫応答が認められることが示唆されている.しかし,大腸癌の大半を占めるMSI陰性症例では,抗PD-1抗体などの免疫チェックポイント阻害薬を含めた免疫療法に対して不応例が多く,大腸癌に特異的な免疫抑制メカニズムの解明と克服が重要である.本研究で,我々は,30個の細胞表面CD抗原の発現を,ヒト大腸癌細胞株で解析し,抗腫瘍細胞傷害性T細胞(CTL)に対して耐性となる分画の同定を試みた.その結果,大腸癌は同一細胞株内でも,10種類以上の表面抗原に関して,その発現強度が異なる亜集団を含むことが分かった.さらに,それらの表面抗原の陽性・陰性によって細胞亜集団を分離し,抗腫瘍CTLへの感受性の違いを評価したところ,CD44などの3つのCD抗原に関しては,陰性分画と,陽性分画で,抗腫瘍CTLに対する抵抗性が異なっていた.さらに,TCGA(The cancer genome atlas)のRNAシーケンスのデータベースを解析すると,MSI陽性のヒト大腸癌組織では,CD44発現とCD8発現に負の相関を認めた.以上の結果より,ヒト大腸癌で,CD44などのCD抗原で定義出来る亜集団は,抗腫瘍CTLに対して耐性分画をふくみ,免疫療法耐性の原因となっている可能性があること,これらCD抗原の発現は免疫療法の効果を予測するマーカーになる可能性があることが示唆された.

  • 櫻井 恵一, 石垣 和慶, 庄田 宏文, 土田 優美, 永渕 泰雄, 鈴木 亜香里, 高地 雄太, 藤尾 圭志, 山本 一彦
    2016 年39 巻4 号 p. 394a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】関節リウマチ(RA)ではCD4陽性T細胞のT細胞受容体(TCR)レパトアの異常が指摘されている.次世代シークエンサーによるレパトア解析パイプラインの構築とともに,レパトア異常と病態との関連を検討する.【方法】RA患者18名と健常人コントロール21名の末梢血中naive, memory CD4+ T細胞のTCR-β鎖のCDR3配列を次世代シークエンサーで解析した.T細胞受容体レパトアの多様性はRenyiエントロピーにより俯瞰的に評価し,疾患活動性や血清サイトカイン濃度などの臨床情報との相関を求めた.【結果】高疾患活動性RA患者ではnaive, memory CD4+T細胞の双方で健常人群と比して有意にTCRレパトア多様性の減少を認めた.TCRレパトア多様性減少は疾患活動性と相関し,T細胞増殖によるclonalの偏りが病態と関与することを示唆した.また,HLA risk allele数とTCRレパトア多様性減少は相関し,shared epitopeを有するHLAに提示される自己抗原の関与を示唆した.一方,血清炎症性サイトカイン濃度はTCRレパトア多様性減少と有意な相関を示さず,偏ったclonalな増殖への関与は明らかではなかった.【結論】RAにおいて,CD4陽性T細胞の抗原特異的増殖によるレパトア異常が病態と関連している可能性が示唆された.

  • 宮崎 佑介, 中山田 真吾, 久保 智史, 阪田 圭, 山形 薫, 中野 和久, 岩田 慈, 宮川 一平, 好川 真以子, 河邉 明男, 齋 ...
    2016 年39 巻4 号 p. 394b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】RA病態におけるTh22細胞の意義は不明である.今回,RA患者末梢血及び滑膜組織におけるTh22細胞の分布と病態の関連を解析した.【方法】活動期RA患者80例と健常人(HC)14例の末梢血ヘルパーT細胞サブセットをフローサイトメトリーにて検出し,臨床兆候や検査所見との関連を解析した.bDMARDs導入24週後のRA患者48例における治療前後のT細胞サブセットを比較した.RA,変形性関節症(OA)患者関節滑膜を用いてTh22細胞とTh22細胞が発現するケモカイン受容体のリガンド(CCL17,CCL20,CCL28)の局在を比較した.【結果】RA患者末梢血ではHCと比しTh1,Th17,Treg細胞は差が無かったが,CCR4+CCR6+CCR10+Th22細胞の割合は減少し,Th22細胞の割合のみ疾患活動性と負に相関した.bDMARDs導入24週後,RA患者の疾患活動性は改善したが,Th1,Th17,Tfh,Treg細胞の変化がなく,Th22細胞の割合のみ増加した.OA滑膜にTh22細胞とリガンドはほとんど存在しなかった.RA滑膜にはTh22細胞が多く浸潤し,リガンドの高発現を認め,共に高疾患活動性の症例で顕著であった.【結論】Th22細胞は活動期RA患者において末梢血で減少し滑膜組織により多く浸潤していた.末梢血Th22細胞の割合はbDMARDs療法による疾患活動性改善に伴い正常に復した.Th22細胞がCCR4,CCR6,CCR10を発現することで,CCL20等のリガンドを高発現する活動期RA患者の滑膜組織へ集積し,炎症病態形成に関与している可能性を示唆した.

  • 住友 秀次, 永渕 泰雄, 石垣 和慶, 仲地 真一郎, 土田 優美, 土屋 遥香, 太田 峰人, 加藤 里佳, 櫻井 恵一, 花田 徳大, ...
    2016 年39 巻4 号 p. 395a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】関節リウマチ(RA)において,へルパーT細胞,CD25制御性T細胞を含むCD4+T細胞は多様な機能を担う.我々は,CD4+T細胞亜分画の遺伝子発現解析を行い,RA患者と健常人との比較,また同一RA患者のアバタセプト(ABT)投与前後の比較解析を行った.【方法】健常人9名,RA患者12名の末梢血CD4+T細胞7亜分画(ナイーブT細胞・濾胞性ヘルパーT細胞・Th1・Th2・Th17・Th17.1・CD25制御性T細胞)をFACSで分取し,RNA-Seq解析を行った.RA患者のうち3名では,ABT投与前と投与6か月後のサンプルを解析した.【結果】外れ値を除いた142サンプルのPCA解析では,RAと健常人は明らかに分けられ,またABT投与後群はPCA1上で健常人に近い位置に集団を形成した.健常人を対照としたRAのCD4+亜分画の発現変動遺伝子(DEG)は,亜分画間の差は明確ではなかった.しかし,ABT投与前後の比較を全サブセットをまとめて行うと,著しい発現変動を認めた.WGCNAによって発現傾向が類似した遺伝子集団を分画したところ,ABT投与とDAS28-CRPと強く相関する遺伝子群が同定された.本遺伝子群の上位10遺伝子にはJAK3,ZAP70が含まれており,ABT投与はTCRシグナル下流遺伝子を強く抑制することが示唆された.【結論】RAと健常人の末梢血CD4+T細胞は明確な遺伝子発現の差を認めた.ABTによる治療は各サブセットすべてに強い遺伝子発現の変動を与え,特にTCRシグナル下流の遺伝子が著明に抑制されていた.

  • 清水 正樹, 井上 なつみ, 水田 麻雄, 谷内江 昭宏
    2016 年39 巻4 号 p. 395b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【はじめに】近年ネフローゼ症候群(NS)に対して抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブ(RTX)の有効性が報告されたが,その機序については不明である.また一部の症例では,B細胞の再出現とともにNSの再発を認める.今回我々は当科でRTX治療を行った小児NS症例の臨床的免疫学的検討を行った.【対象および方法】対象は当科でRTX治療(375mg/m2,1週毎4回)を行った小児ステロイド依存性ネフローゼ症候群7例(平均年齢19.6歳,性別:男性6例,女性1例).RTX治療前から治療後にかけ経時的にフローサイトメトリー法で末梢血リンパ球亜群解析を行い,臨床像と比較検討した.【結果】RTX開始後6例でステロイド薬を中止できた.B細胞の再出現を3例に認め,1例は再出現後にNSの再発を認めた.再発を認めなかった2例は無投薬で寛解を維持できている.RTX治療開始1週後には全例で末梢血B細胞は < 0.1%となったが,2例においてRTX2回目投与時に再発を認めた.T細胞数やCD4/8比,NK細胞数の治療後の推移については症例間のばらつきが大きく,一定の傾向は認められなかった.またB細胞再出現時のnaive B細胞,mature B細胞,memory B細胞の割合についても,寛解例,再発例において差を認めなかった.【結語】NSにおいてリンパ球亜群の割合は症例によりばらつきが大きく,一定の傾向を認めなかった.今後新たな指標の確立,NSの病態理解に向け多数例での免疫学的検討が望まれる.

  • 江波戸 孝輔, 緒方 昌平, 野元 けいこ, 竹内 恵美子, 扇原 義人, 石井 正浩
    2016 年39 巻4 号 p. 396a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【背景・目的】川崎病(KD)は小児期特有の原因不明の中小動脈血管炎である.炎症の主体は自然免疫応答であることが知られているが,獲得免疫応答との関連は不明な点が多い.我々は,獲得免疫応答の未熟性伴う自然免疫制御不全がKD発症に関与している可能性を考え,末梢血単核細胞(PBMC)subsetの網羅的解析を行い,KDにおける免疫制御機構の解明を目的とした.【対象・方法】2015年4月から2016年4月でKD50例(定型例)を対象とした.診断時と治療後の末梢血を採取しNIHが提唱するヒト免疫細胞subset標準化プロトコールを参考に,FACS解析を行った.対照として熱性疾患患者25例,健常児25例を用いた.【結果】KD群では熱性疾患群と比較しT細胞のmemory,effector分画ともに活性化細胞の割合が低値であった.B細胞では,memory優位患者群とnaive優位患者群に明確に二分されKDの中に二つのphenotypeが存在することがわかった.いずれの場合もKDではplasma細胞が少なかった.【考察】KDには獲得免疫の関与が乏しいといわれているが,IVIG療法が著効することなどから,獲得免疫応答の発動は炎症抑制的に働く可能性がある.本解析結果はKD罹患児の免疫記憶の未熟性を示唆している可能性があり,今後はTfh細胞と抗体産生性などにも焦点を当てさらに解析を進める所存である.

  • 猪口 翔一朗, 三苫 弘喜, 中野 翔太, 三嶋 耕司, 中山 剛志, 高木 綾子, 中川 仁, 村上 哲晋, 大田 友里, 押領司 大助, ...
    2016 年39 巻4 号 p. 396b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      Deoxynuclease 1-like-3(DNase1L3)はDNase1 family分子の一つであり,上皮細胞ではアポトーシス細胞の核の断片化に寄与している.ループスモデルマウスや常染色体劣性遺伝形式を示す全身性エリテマトーデス(SLE)の数家系でDNase1L3の機能欠失型変異が報告されている.機能欠失によるSLE発症の機序は未だ不明であり,今回我々はヒト免疫担当細胞におけるDNase1L3の発現と機能の検討を行った.DNase1L3の白血球各分画における発現量をreal-time PCR法で比較検討したところ,白血球全般に発現が認められ形質細胞様樹状細胞(pDC)で最も高発現であった.各種刺激後の発現量を解析したところ,pDC,単球,単球由来樹状細胞,単球由来マクロファージにおいてToll-like receptors刺激,IL-4刺激でDNase1L3の発現亢進を認めた.ウェスタンブロッティング法でDNase1L3タンパクの局在を解析した結果,主として細胞質に分布しており,細胞外にも分泌されることが明らかとなった.分泌された培養上清中のDNase1L3蛋白はDNase活性を維持していた.以上よりDNase1L3は免疫担当細胞から分泌され,炎症局所で細胞外に放出された核酸の処理を担うことにより,組織のホメオスターシスを維持する役割を担っていることが推察された.

  • 好川 真以子, 中山田 真吾, 久保 智史, 岩田 慈, 阪田 圭, 宮崎 佑介, 鳥越 正隆, 齋藤 和義, 田中 良哉
    2016 年39 巻4 号 p. 397a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】SLE末梢血ではメモリーB細胞が増加するが質的異常の詳細が不明である.今回,ケモカイン受容体発現によるB細胞の亜分類を試み,その誘導機構と病態との関連を検討した.【方法】健常人(HD)8例,関節リウマチ(RA)31例,SLE 56例の末梢血よりPBMCを分離,T・B細胞表面抗原,分化マーカー,ケモカイン受容体(CXCR3, CXCR5)を染色後,8 color FACSで解析した.また,HDから分離したB細胞を各種サイトカインで刺激し,ケモカイン受容体および転写因子発現の変化を8 color FACSで評価した.【結果】1)SLE末梢血B細胞ではHD,RAと比べ,エフェクターメモリー(EM; IgDCD27)B細胞が有意に増加した(p < 0.01).2)SLE末梢血B細胞ではHD,RAと比べ,CXCR5およびCXCR3+の亜集団が有意に増加し,特にEM B細胞で顕著であった(p < 0.01).3)HDから分離したB細胞はIFNγ刺激でCXCR3発現が増強し,IFNβ刺激でCXCR5発現が減弱した(p < 0.05).4)HDから分離したB細胞はIFNγ刺激でT-bet発現が亢進した(p < 0.01).【考察】SLEではエフェクターB細胞が増加するのみならず,Type I IFNを介したCXCR5減弱,Type II IFNを介したT-bet発現誘導とCXCR3増強の両者を伴う質的異常が齎され,B細胞の病変組織への浸潤と炎症病態の形成に寄与する可能性が示唆された.

  • 夏本 文輝, 庄田 宏文, 林 煥庭, 望月 慎史, 石垣 和慶, 高地 雄太, 藤尾 圭志, 大津 真, 山本 一彦
    2016 年39 巻4 号 p. 397b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【背景】全身性エリテマトーデス(SLE)の病態では樹状細胞(DC)による炎症性サイトカイン産生,自己抗原提示が重要な役割を果たしている.TLR7, STAT4, IRF5, HLAなどDCに関連する遺伝子群がSLEのリスク遺伝子として同定されていることもこれを支持する.SLEの遺伝的背景がDCの分化・機能,およびSLE病態に与える影響を解明するため,疾患特異的iPS細胞は有効な手法と考えられる.【方法】姉妹SLE患者2人の末梢血幹細胞よりiPS細胞を樹立した.SLE-iPS細胞2株およびhealthy-iPS細胞1株を10T1/2細胞,GM-CSF,IL-4などを用い27日間培養し,単球系細胞へと分化させた.またSLE患者2人及び健常人末梢血由来のMonocyte-derived DC(MoDC)を分化培養した.これらの細胞の表現型,遺伝子発現をFACS, NGSを用いて解析した.【結果】iPS樹立過程においてSLE-iPSとhealthy-iPS細胞に,効率および特性において差を認めなかった.iPS由来DCはCD14陽性, CD80, CD86及びHLA-DR強陽性を示した.iPS-CD14+DCの遺伝子発現はヒトCD14+DCとの類似を認めた.【結論】CD14+DCはヒトの皮膚,炎症組織に存在し組織の炎症に関与している.iPS-CD14+DCは,SLE病態に関与するDCの研究,病態解明,新規薬剤スクリーニングに有用なツールとなりうると考えた.

  • 尾崎-本田 富美子, 中畑 龍俊, 金澤 伸雄, 斎藤 潤
    2016 年39 巻4 号 p. 398a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      中條 西村症候群(NNS)は,弛張熱や凍瘡様皮疹などの慢性再発性炎症と進行性の筋脂肪萎縮が症状の特徴であり,誘導型免疫プロテアソームサブユニットをコードするPSMB8遺伝子が変異することによって発症するプロテアソーム病である.本疾患では,プロテアソーム機能不全のためにユビキチン化タンパク質や酸化タンパク質が蓄積することによって,IL-6などの炎症性サイトカインやケモカインが過剰に産生されることが示唆されている.本疾患の問題点として,炎症と萎縮の発生メカニズムについて未だ不明な部分が残っていること,有効な特異的治療法が存在せず,対症療法で症状を軽減するのみであることがあげられる.今回我々は,NNSの病態解明と治療法開発のため,NNS-iPS細胞を樹立した.さらに,CRISPR/Cas9システムを用いて,NNS-iPS細胞のPSMB8変異箇所の遺伝子修復と健常ES細胞への変異遺伝子導入を行い,それぞれとisogenicな細胞を作製した.NNS-iPS細胞から分化させた単球では,IFNγ+TNFα刺激後のプロテアソーム活性が健常細胞に比して低く,また炎症性サイトカイン,ケモカインの産生が上昇していた.NNS患者抹消血由来単球でも同様の結果であることから,NNS-iPS細胞を用いた病態再現に成功していると言える.現在,NNS-iPS細胞から分化させた単球を用いたハイスループット系で,疾患の表現型を回復させる創薬スクリーニングを実施している.

  • 長谷川 久紀, 川畑 仁人, 頼 貞儀, 大津 真, 上阪 等
    2016 年39 巻4 号 p. 398b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      多発性筋炎(PM)モデルを用い,我々は,再生筋線維が炎症性サイトカインを産生して筋局所の自然免疫活性化を担い,自己反応性キラーT細胞と協調して自己免疫性筋炎を発症させることを示した.そして,PM/皮膚筋炎(DM)患者では,遺伝的に筋局所の自然免疫が健常人より活性化しやすいと考え,まず,ヒト人工多能性幹細胞(hiPS細胞)クローンに筋原生転写因子MyoDを強制発現させたサブクローンが筋細胞へと分化する際,再生筋線維と同様のサイトカインを産生することを示した.MyoDのゲノムへの導入箇所や数は細胞変化に影響しうるため,MyoD-hiPS細胞を用いて多因子疾患のPM/DMと健常人との遺伝的特性の差を評価するには,無数のサブクローンから成るバルクが最適と考え,MyoD-hiPS細胞バルクの樹立と筋細胞分化を目指した.

      hiPS細胞を培地Aと培養基質Bで培養中に,Fugene HDを用いてMyoDを含むドキシサイクリン(Dox)誘導性ベクターとネオマイシン耐性遺伝子を導入し,既存のエレクトロポレーション法の時より数十倍以上のネオマイシン耐性MyoD-hiPS細胞サブクローンから成るバルクを得た.従来の筋分化条件と異なり,Dox誘導翌日にMyoD-hiPS細胞バルクのMyoD強発現分画をFACSで回収し,その細胞集団をDox入り筋分化培地で培養したところ筋細胞へと分化した.トランスフェクション試薬の低い細胞毒性により目的のMyoD-hiPS細胞バルクを樹立でき,筋分化条件の改良で筋細胞への分化に成功した.

  • 坪内 康則, 磯田 有
    2016 年39 巻4 号 p. 399a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【症例】77歳男性.肩,臀部痛が持続するため近医で診断未確定のまま2014年4月下旬PSL30mg内服開始され5月7日当院紹介受診.肩造影MRIで両側肩鎖関節周囲,肩関節周囲に軽度の炎症を認めたことからリウマチ性多発筋痛症が疑われた.軽度肝機能障害を認めHBc抗体陽性であったため5月27日入院となる.HBV-DNA陰性であったが6月5日AST281 U/I,ALT383 U/I,γ-GTP551 U/Iと肝酵素およびアミラーゼ466 U/I,リパーゼ286 U/I,エラスターゼ1 618ng/dlと膵酵素上昇を認めた.腹部症状なく,腹部エコー,CTで異常所見を認めなかった.頻尿に対し自己購入していたノコギリヤシを国産から安価な外国産に変更していたため中止したところすみやかに改善し6月26日退院となった.その後,タムスロシン塩酸塩服用で肝・膵酵素上昇は認めない.【臨床的意義】ノコギリヤシは特徴的なノコギリ状の葉を持つ北米南東部のヤシ科の植物であるが薬用部位は実で,中国では古くから泌尿器疾病の治療薬として利用されている.抗血液凝固薬や抗血小板薬,経口避妊薬やホルモン療法などとの相互作用が報告されており,ドイツのコミッションEはノコギリヤシを摂取する場合,医師の定期的な診断を受けるべきであると指摘している.本症例では動脈硬化を背景とした血栓予防目的でアスピリンが投与されていた.B型肝炎ウィルスキャリアで肝酵素上昇を認めた場合,ウィルス性肝炎以外の原因も考慮すべきである.

  • 岡林 慎二, 小林 拓, 尾崎 良, 梅田 智子, 豊永 貴彦, 齊藤 詠子, 中野 雅, 田中 淳一, 日比 紀文, 森永 正二郎
    2016 年39 巻4 号 p. 399b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【症例】54歳,女性【主訴】全身の筋肉痛【現病歴】201X年6月に上腹部痛を認め,近医受診し胃薬で加療した.7月初旬から左下腿・上腕の痛みが出現し,次第に全身に及ぶ筋肉痛と両足関節・膝関節の痛みとなり疼痛制御目的に7月中旬入院した.全身の筋肉痛・関節痛以外に症状はなく,炎症反応も正常範囲内であった.線維筋痛症と考えプレガバリン内服で疼痛は軽減し7月末に退院した.8月1日より両眼の充血・疼痛が出現し両側ぶどう膜炎と診断された.8月末から腹痛と下痢,発熱が新たに出現しCT検査で全結腸の炎症所見を認めたため精査加療目的に再入院した.入院後,8月27日に施行した内視鏡検査で全大腸に渡って縦走潰瘍が多発し,生検組織から非乾酪性肉芽腫が確認されクローン病(CD)大腸型の診断に至った.ステロイド剤で加療し,腸管症状だけでなく全身の筋肉痛・関節痛およびぶどう膜炎の症状も消失し寛解した.【考察】炎症性腸疾患に線維筋痛症が合併することは稀にあるが,CDの典型症状より先行して線維筋痛症,ぶどう膜炎の症状が顕著に出る例は調べ得た限り報告例はなかった.炎症性腸疾患に伴う腸管外合併症は一般的に腸管の炎症活動度と相関して現れると考えられているが,本症例は消化器症状が出る前から腸管外症状としての繊維筋痛症様症状が顕著に出た非典型の臨床経過を呈した.時系列でみた臨床経過と診断過程,画像検査結果を加えて報告する.

  • 花井 俊一朗, 武田 伶, 中込 大樹, 北村 健一郎
    2016 年39 巻4 号 p. 400a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【症例】38歳の女性【主訴】発熱,右難聴・耳鳴【現病歴】X-10年に潰瘍性大腸炎(UC)と診断され,メサラジンを内服していた.X-6年から右耳閉感,耳痛を自覚し,耳鼻科を受診した.原因は特定されず,経過観察となったが,次第に右難聴,耳鳴を伴うようになった.難聴は感音性であり,遷延したためプレドニゾロン(PSL)25mg/日内服を行ったところ改善し,漸減中止となった.PSL中止後,難聴が徐々に再燃したが,軽微であったため経過観察となった.X-4年7月に発熱し,CRP 17mg/dLまで上昇した.造影CTで弓部大動脈や総頚動脈などに著明な壁肥厚を認め,当科に紹介となった.高安動脈炎(TAK)と診断し,PSL 25mg/日内服を開始,発熱やCRPは改善した.難聴や耳鳴も改善し,X-2年にはPSL 5mg/日まで減量した.X-1年4月より徐々に右難聴と耳鳴が悪化し,耳鼻科でPSLを短期的に増減したが,改善と増悪を繰り返した.内耳症状はTAKによるものと判断し,8月にPSL 20mg/日へ増量したところ,聴力は改善した.現在,PSL 11mg/日,MTX 8mg/週で治療継続中であるが,内耳症状の再燃は見られていない.【考察】難聴を伴うTAKの報告はあるものの,少数である.本例はTAK診断前に難聴が先行した.CRP上昇を伴う感音性難聴ではTAKの可能性も考慮する必要がある.また,近年UCはTAKの主要な合併症であると報告され,HLA-B 52との関連が示唆されている.UCに難聴を合併する場合もTAKを念頭に置く必要がある.

  • 内田 智久, 清水 俊匡, 福井 翔一, 岩本 直樹, 川上 純
    2016 年39 巻4 号 p. 400b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【症例1】85歳女性【主訴】咀嚼のしにくさ【現病歴】X年2月下旬より顎跛行,右側頭部痛,両下腿浮腫や下肢の異常感覚が出現した.3月下旬に,新たに出現した右側頭部痛に加え,右側頭動脈の圧痛も認め,50歳以上であることから巨細胞性動脈炎の診断基準を満たしていたが,MPO-ANCAとPR3-ANCAが共に陽性で尿中変形赤血球も認め,下肢の異常感覚が多発単神経炎として矛盾せず,顕微鏡的多発血管炎と診断した.プレドニゾロン55mg/日で治療を開始し,シクロフォスファミドパルス療法も追加し,下肢の異常感覚以外の症状はすべて改善した.【症例2】61歳女性【主訴】発熱,頭痛【現病歴】X年9月末より眼痛と結膜充血,10月より頭痛と微熱が出現した.11月上旬に,新たな頭痛の出現と側頭動脈の圧痛に加え,顎跛行もみられ,50歳以上であることから巨細胞性動脈炎の診断基準を満たしていたが,MPO-ANCA陽性で,間質性肺疾患や強膜炎も伴っていたため,顕微鏡的多発血管炎の疑い例と診断した.ステロイドパルスを2回施行し,プレドニゾロン40mg/日による治療で,頭痛,顎跛行は消失し,MPO-ANCA titerは低下した.【考察】顎跛行は巨細胞性動脈炎の最も陽性尤度比の高い所見であるが,巨細胞性動脈炎とANCA関連血管炎の合併例が過去にも報告されている.シクロフォスファミドの追加治療の要否に影響するため,鑑別が肝要と考えられた.

  • 梅田 雅孝, 古賀 智裕, 一瀬 邦弘, 來留島 章太, 高谷 亜由子, 清水 俊匡, 福井 翔一, 西野 文子, 川尻 慎也, 岩本 直樹 ...
    2016 年39 巻4 号 p. 401a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【症例】68歳女性.【主訴】呼吸困難.【現病歴】2014年12月より労作時呼吸困難あり4月上旬に間質性肺炎を指摘され前医入院.ステロイドパルス,経口プレドニゾロン(PSL)30mg/日,シクロスポリン(CyA)150mg/日で加療行うも呼吸不全が進行し6月上旬に当院転院となった.筋症状を欠くがGottron徴候,Vネックサイン,ショールサインを認めClinically amyopathic dermatomyositis(CADM)と診断した.胸部CTでは短期間で進行する非特異性間質性肺炎パターンを呈し,急速進行性間質性肺炎(RPILD)の合併を認めた.抗MDA5抗体陽性,フェリチン1556ng/mlと予後不良因子を有したため,シクロフォスファミド静注療法,ステロイドパルス,CyA200mg/日行うも転院19日目に肺胞出血が出現し,人工呼吸器管理となった.転院24日目には貧血,血小板低下,Cr上昇の進行に加え,ハプトグロビン低下,破砕赤血球出現あり血栓性微小血管障害(TMA)と診断した.TMAに対し,血漿交換療法を追加し多臓器不全に対して集学的加療行うも呼吸不全が進行し転院36日目に死亡退院となった.【考察】肺胞出血やTMAはまれながら皮膚筋炎に合併することが報告されている.本症例は血清フェリチン高値に加えトロンボモジュリン高値を認めており,自然免疫異常を介した血管内皮障害が肺胞出血やTMAの病態形成に関与した可能性が示唆された.CADM合併のRPILDにおいては加療中の肺胞出血やTMAにも注意を払う必要があると考えられた.

  • 満尾 晶子, 田口 学, 上村 光弘
    2016 年39 巻4 号 p. 401b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【症例1】73歳男性.2012年5月に間質性肺炎,2013年12月に関節リウマチと診断.プレドニゾロン(PSL)10mgとタクロリムス2mgを内服するも呼吸困難が増悪し,ステロイドパルス療法後PSL 40mgから漸減.糖尿病を発症しシタグリプチン50mg内服.PSL 29mg内服時に両側足背の浮腫が出現し,シタグリプチンによるRS3PE症候群の可能性を考え同薬剤中止,浮腫は数日で改善.【症例2】79歳女性.2007年に糖尿病を発症,シタグリプチン50mgからリナグリプチン12.5mgに変更し内服.2015年11月に両肩関節痛および両側手背浮腫が出現.リナグリプチンを中止しPSL 15mg内服にて,関節痛および浮腫は改善.【症例3】81歳女性.2015年11月に両肩関節痛および両上腕部筋痛が出現.2016年1月に糖尿病と診断されシタグリプチン12.5mg内服開始.2月にリウマチ性多発筋痛症と診断,PSL 15mg内服にて関節痛や筋痛は改善.PSL 10mg減量後に両側足背浮腫が出現し,PSL 15mgに増量およびシタグリプチン中止にて浮腫は改善.【考察】DPP4阻害薬は糖尿病治療薬であるが,内服中にRS3PE症候群を発症した報告が相次いでいる.しかしリナグリプチン内服中の報告は今までない.DPP4はT細胞活性化抗原のCD26分子と同じことが知られており,同症候群の病態には同分子が関与している可能性が示唆される.【結論】DPP4阻害薬内服中にRS3PE症候群様の圧痕性浮腫を認めた場合は,内服中止を検討することが望ましい.

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