日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
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ISSN-L : 0911-4300
39 巻, 4 号
第44回日本臨床免疫学会総会抄録集
選択された号の論文の209件中51~100を表示しています
ビギナーズセミナー
  • 齋藤 滋
    2016 年39 巻4 号 p. 336
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      胎児は母体にとり半異物(semiallograft)であるが,妊娠時には免疫トレランスが存在するため,胎児は拒絶されることなく妊娠が維持される.これらトレランスの誘導に重要な役割を果たすのが制御性T細胞(Treg)である.興味あることに精漿中に含まれる父親抗原により,着床前には子宮所属リンパ節中に父親抗原特異的Treg細胞が増加し,着床後には直ちに子宮で父親抗原特異的Tregが増加し妊娠が維持される.Tregには胸腺由来と胸腺外Tregが存在するが,胎盤を有する動物では胸腺外Tregが妊娠維持に重要である.また妊娠中に母体から少量の血液が胎児に流入し,ミクロキメリズムとなるが,母親由来のMHCに対して胎児は免疫寛容を獲得する.この母子間免疫寛容の破綻が自己免疫疾患の一因となる.母親のMHCと一致する男性との妊娠では,トレランスが生じやすい.一方,アロ妊娠で妊娠中にTregを除去すると流産が生じる(マウスの系).ヒトにおいても胎児染色体正常の流産例では妊娠子宮内でのTregが減少しeffector T細胞が増加している.また,胎児が完全異物である場合(卵子提供妊娠,胚提供妊娠)や精漿の暴露が少ないハネムーンベビーの場合,妊娠高血圧症候群の発症率が高くなり,精漿によるTregの誘導が不十分である事を示唆する.事実,妊娠高血圧腎症ではTregの数も機能も減少している.

  • 鳥越 俊彦
    2016 年39 巻4 号 p. 337
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      免疫チェックポイント阻害剤(Immune checkpoint blockade, ICB)の登場によって,がん免疫治療は第4の標準治療となった.国内では現在,悪性黒色腫と非小細胞肺がんに適応承認されているが,今後腎細胞がん,頭頸部がん,ホジキン病など,さまざまな種類のがんへの適応拡大が期待されている.しかしながら,大腸がんや膵臓がんなどでは効果が低く,一部の患者には重篤な自己免疫副作用も発生することが知られている.本セミナーでは,(1)ICBの作用機序からみた適応がん種について,(2)ICBの自己免疫・炎症副作用の特徴,の2点にしぼり,臨床免疫専門医が知っておくべきICBの基礎と臨床について講演する.

  • 小川 佳宏
    2016 年39 巻4 号 p. 338
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      糖尿病や動脈硬化性疾患に代表される生活習慣病は過栄養や運動不足などの生活習慣の乱れが原因となって発症するが,これらの発症時期は微生物感染症のように明確ではなく,臨床症状が顕在化するまでに長い時間を要するため,どのようにして発症・重症化するのか不明の点が多い.メタボリックシンドロームは多くの生活習慣病の前段階であり,内臓脂肪型肥満を背景として糖脂質代謝障害や血圧上昇が並行して進展し,動脈硬化症を中心に糖尿病,高血圧症,非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などの生活習慣病を発症するという流れを指摘したものである.一方,炎症は内外の有害なストレスに対する生体防御反応であり,生体の恒常性維持機構として不可欠なものであるが,様々な理由により炎症が慢性化すると臓器の機能障害がもたらされる.近年,脂肪組織や肝臓などの臓器局所において実質細胞(脂肪細胞や肝実質細胞など)と間質細胞(マクロファージやリンパ球など)の相互作用による精緻な恒常性維持機構の破綻により炎症が慢性化することが明らかになり,特にメタボリックシンドロームから生活習慣病が顕在化する過程では,肥満の脂肪組織局所において慢性化した炎症が複雑な臓器連関により全身の遠隔臓器に波及・拡大化するものと理解することができる.本講演では,最近の研究動向を踏まえて,慢性炎症からみたメタボリックシンドロームの病態に関する最新の知見を概説する.

  • 佐野 元昭
    2016 年39 巻4 号 p. 339
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      心臓はポンプとして全身に血液を送る働きをしている.その主たる役割を担っているのは心筋細胞である.心筋細胞は終末分化した細胞であり,生後まもなく細胞周期から逸脱して,心臓は臓器としては心筋細胞の細胞肥大によって成長する.心臓には幹細胞が存在しうるが,心筋細胞再生能力は極めて低く,心臓は臨床的には再生不能な臓器とみなされている.一方で,心臓の間質には様々な免疫細胞が存在しており,定常状態,病的ストレス下における恒常性維持や傷害が加わったときに損傷治癒機構に深くかかわっていることが近年明らかになりつつある.本セミナーでは,心臓病の臨床的問題点や話題を提供しながら,心臓における免疫細胞の役割について自分たちの実験結果も紹介しながら発表させていただく.

  • 熊ノ郷 淳
    2016 年39 巻4 号 p. 340
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      セマフォリンファミリーは,1990年初頭に発生過程における神経ガイダンス因子として同定されてきた分子群であるが,今ではその機能は神経系にとどまらず心臓,血管,免疫調節など多岐にわたることが明らかにされている.

      我々の研究グループは2000年に免疫細胞で発現するセマフォリンSema4Dの研究を通じてセマフォリンが免疫系において重要な役割を果たしていることを明らかにした.その後も次々と免疫で働くセマフォリンが発見され,免疫・炎症反応におけるセマフォリンの重要性が広く認識されるようになるとともに,現在免疫系において機能するセマフォリン分子群は「免疫セマフォリン分子群:immune semaphorins」の名称でも呼ばれている.

      免疫分野での一連の研究に触発され,アトピー性皮膚炎,喘息などのアレルギー疾患,関節リウマチ等の自己免疫疾患,多発性硬化症,骨粗鬆症,網膜色素変性症,心臓の突然死の原因,癌の転移・浸潤など,セマフォリン分子群が「ヒトの疾患の鍵分子」であることが国内外の研究グループから相次いで報告され,疾患治療の新しい創薬ターゲットとしても注目を集めている.今回のセミナーではこのようなセマフォリンの免疫疾患への関与を中心に紹介するとともに,その中で明らかとなってきた免疫代謝の病的意義についても紹介したい.

  • 河本 宏
    2016 年39 巻4 号 p. 341
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      iPS細胞は「自分」の体細胞からつくれることが大きな利点であり,当初は「自家移植」としての利用が想定されていた.しかし,現在は,iPS細胞を用いた再生医療は,iPS細胞ストック事業を中心として,「他家移植」を軸に進められている.iPS細胞ストック事業では,HLAハプロタイプのホモ接合型のiPS細胞が作製されている.ホモの再生組織をHLAハプロタイプヘテロの患者に移植した場合,アロのHLAに反応するT細胞による拒絶反応は起こりにくいと期待できる.しかし,他家移植ではマイナー組織適合抗原の不一致は避けられない.さらに,HLAホモ → ヘテロ移植の場合は,NK細胞による免疫反応が起こりうるという問題点もある.NK細胞は,HLA分子によって抑制されるシグナルを受けるレセプターを発現しており,ヘテロのレシピエントのNK細胞は,ホモの移植片が「一部のHLAが欠損している」ことを感知できるからである.これらの仕組みにより,他家移植の移植片は免疫抑制剤を使わない限りは拒絶される運命にある.生命に関わるような臓器の再生であれば免疫抑制剤の服用もやむを得ないといえるが,再生医療ではそうでもないケースも数多い.にもかかわらず,再生医療の領域では移植免疫学的な研究はあまり盛んではないように思われる.免疫抑制剤を使わずに免疫寛容を誘導するような方法の開発が望まれるところである.

  • 浅原 弘嗣
    2016 年39 巻4 号 p. 342
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      従来,遺伝子プログラムを書き換える手技としては,ES細胞やiPS細胞を用い,かつ,遺伝子組み換えの技術を応用したものがほとんど唯一の手法であったが,近年,TALENやCRISPRを用いた遺伝子編集技術の開発により,ノックアウトマウス・ラットやノックアウト細胞が簡便,安価,かつ正確に行うことができるようになったばかりか,今まで困難であったY染色体などの高度なリピート配列をもつ遺伝子の改変による機能解析が可能となりつつある.また,TALEN/CRISPRシステムは,究極の遺伝子治療を目指した医療にも応用されつつある.さらに,クロマチンのダイナミズムの解析やクロマチン修飾の誘導など,遺伝子編集に留まらず,種々の医学研究への応用が盛んに行われている.臨床免疫学にこれら技術がどう寄与するのか,現時点での遺伝子編集技術に関わる情報をアップデートし,今後の難病の病態研究と治療応用においてどのような展開が期待されるか議論したい.

  • 吉村 昭彦, 中司 寛子, 染谷 和江
    2016 年39 巻4 号 p. 343
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      坂口教授によって発見された制御性T細胞(Treg)は,現在では免疫寛容の誘導や維持に必須の細胞として確立している.Tregは末梢や試験管内でTGFβによって誘導されるpheripheral Treg(pTreg)もしくはinduced Treg(iTreg)と胸腺で発生するthymice Treg(tReg)(もしくはnatural occurring Treg(nTreg)とも呼ばれる)の2種類が知られておりともにFoxp3をマスター転写因子とする.我々はTGFβは転写因子Smad2/3を介してFoxp3を誘導することを示した.一方nTregの発生のメカニズムは十分理解されていない.nTregの発生には自己抗原を介した強いTCR刺激によるFoxp3の誘導の他,DNA脱メチル化などのepigeneticな修飾が必要とされる.我々は核内受容体NR4aファミリーが強いTCR刺激によって誘導されFoxp3の転写を直接活性化しnTregの誘導に必須の役割を果たすことを見いだした.またiTregではepigeneticな修飾が起こらないために不安定であると考えられてる.このようなnTregにおけるDNA脱メチル化にはTETと呼ばれる酵素が関与する.TETを欠損させることでDNAの脱メチル化が進行せずtTregは不安定化する.また逆にTETの酵素活性を強化することでiTregをnTreg並みに安定化させることも可能である.本講演ではTregのepigenetic modificationと安定性について議論したい.

  • 善本 知広
    2016 年39 巻4 号 p. 344
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      2016年は,石坂公成,照子博士によるIgE発見から50年目のアニバサリーイヤーにあたる.過去20年ほどの間にアレルギー研究は飛躍的に進展してきた.そこには免疫学の進歩が大きく貢献している.しかし,未だアレルギー発症機序には不明な点が多く,根本的な治療技術は確立されていない.その結果,国民の約40%がアレルギー性鼻炎の症状に悩み,食物アレルギーの児童が学校給食によって死に至る症例も後を絶たない.

      このような問題点が生じている理由として次の2つが考えられる.まず,アレルギー疾患の多様性・複雑性があげられる.アレルギー反応は抗原の種類や感作経路などによって多様な炎症像を呈する.2つめの理由として,動物モデルにおける知見とそれの患者への応用との間に大きな乖離が見られることがあげられる.モデルマウスを用いた研究成果は非常に有用であるが,マウスとヒトでの発症機序は必ずしも一致しない.そのため,マウスで得られた知見と患者で得られた情報とを相互にフィードバックしていくことが重要である.

      この様な問題点を克服すべくアレルギー研究は新たな展開を迎えている.本セミナーでは,「アレルゲン–IgE–マスト細胞–ヒスタミン」という従来からのアレルギー発症機序に加え,新たに登場した様々な細胞やサイトカインを紹介し,アレルギー疾患の多様性を解説する.さらに,アレルギー患者の病態を反映したモデルマウスを用いた研究成果を紹介したい.

  • 高柳 広
    2016 年39 巻4 号 p. 345
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      骨は,運動器の一部であるだけでなく,内分泌系により制御されミネラル代謝と密接に関わり,造血幹細胞を維持し必要に応じて末梢に動員する重要な免疫器官でもある.骨と免疫は全く異なった機能を持つが,制御機構は共通性が高く種々の相互作用を有する.骨代謝と免疫の境界領域である骨免疫学は,炎症性骨破壊疾患である関節リウマチの骨破壊の研究に端を発するが,免疫系ノックアウトマウスの解析や骨髄における造血幹細胞の研究など幅広く発展しつつある.

      関節リウマチに伴う骨破壊を引き起こすT細胞を探索する中で,Th17が破骨細胞誘導を介して組織破壊に直接関わることが明らかになった.骨免疫学な視点から関節炎病態の理解が進む中で,TNFやIL-6を標的とした抗体医薬が臨床応用され,さらに多くの分子が創薬標的となり開発が進んでいる.

      骨免疫学における近年の課題の一つは,骨髄内に存在する骨制御細胞(破骨細胞,骨芽細胞,骨細胞)および免疫系細胞の相互作用を司る分子機構の解明である.骨細胞特異的RANKLノックアウトマウスの解析によって,骨リモデリングにおける主要なRANKL発現細胞が骨細胞であることが証明された.神経系制御因子による骨の制御,γδT細胞の骨折治癒での役割や,敗血症における免疫不全における骨芽細胞の役割など最新の話題にも触れ,骨免疫学の歴史と現状を概説し,治療応用への展望を述べる.

ワークショップ
  • 中山田 真吾, 田中 良哉
    2016 年39 巻4 号 p. 346a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      基礎免疫学の進歩は,新たな分子標的の解明とその特異的阻害による革新的な治療戦略を創出した.関節リウマチ(RA)に対するTNF-αやIL-6などのサイトカイン,CTLA4-Igによる共刺激シグナルを阻害する生物学的製剤の成功はその好例である.さらに近年,JAKなどの細胞内シグナル分子を制御する低分子化合物によるRAへの優れた治療効果が示された.RAは患者ごとに臨床像や治療反応性が多様であるため,分子標的治療の需要はさらに拡大するものと思われる.一方,免疫系は感染防御や抗腫瘍作用などの生命現象に不可欠なシステムであり,免疫系を抑制することによって感染症や一部の悪性腫瘍などのリスクが上昇する.当科ではNIH/FOCISによるヒト免疫プロジェクトの標準化プロトコールに則り,RA患者末梢血における網羅的免疫細胞解析を実践してきた.その結果,作用機序の異なる分子標的療法は,その標的分子の違いによって自然免疫系および獲得免疫系の双方に多様な修飾を与えることが明らかとなった.このことは免疫制御治療による有効性のみならず,特定の分子制御で生ずる安全性を検証していくことの重要性を示唆している.以上のように,臨床免疫学に於いて,免疫制御治療の実践とエビデンスの蓄積が特定の分子の常態と病態における重要性を再認識する契機となっており,斯様な基礎研究と臨床研究のトランスレーションにより免疫制御治療の妥当性を検証していくことが求められる.

  • 保田 晋助
    2016 年39 巻4 号 p. 346b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      TNFα阻害薬(TNFi)はメトトレキサート(MTX)抵抗性関節リウマチ(RA)において選択すべき代表的な分子標的治療薬である.生物学的製剤を導入する際の選択肢としてはIL-6阻害薬であるトシリズマブ,共刺激阻害薬であるアバタセプトと同列に並ぶが,寛解導入のみならず,その後の減量・中止も含めてエビデンスの面ではTNFiに一日の長があり,製剤の選択肢も多い.さらに,RA治療ガイドラインでは現時点で推奨されてはいないが,疾患活動性が高く予後不良因子をもつ症例にMTXと同時にTNFiを開始する治療の有効性も示されている.TNFiの難点として,他の生物学的製剤と同様に高額な薬剤費および感染症の問題があげられるが,TNFi特有の問題点として,おもに初期の製剤における免疫原性の高さがある.これは製剤の二次無効とも関わる重要な臨床的問題であるが,充分量のMTXを併用し,増量可能な製剤については充分量を投与することである程度対応できる.一部の患者でDNA抗体の上昇やSLE様症状が報告されており注意は必要であるが,臨床上大きな問題となるケースは多くない.TNFiの利点と問題点をよく理解した上で治療に臨みたいが,減量・中止に関しては他の製剤と同様に,今後もエビデンスを構築してゆく必要がある.

  • 田中 真生
    2016 年39 巻4 号 p. 347a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      IL-6阻害薬であるトシリズマブ(TCZ)の関節リウマチ(RA)治療薬として歴史は,我が国での承認の2008年に始まり既に8年となる.現時点でTCZは唯一のIL-6阻害剤である.特徴としてTNF阻害薬無効例に効果が期待できること,単独投与でMTXにまさる有効性が証明され,MTX併用ではさらに有効であるがMTX使用不可症例にも投与できること,RA関連アミロイド―シスの治療に使用できること,若年性特発性関節炎にも有効で使用できることなどがあげられる.当施設ではRAでの貧血も改善する効果を認めている.以上の特徴はIL-6阻害に由来するものと考えられ,TCZの成功にならい複数の抗IL-6/抗IL-6受容体(IL-6R)抗体製剤が開発されている.すなわち低免疫原性のヒト抗IL-6R抗体(Sarilumab),ヒト抗IL-6抗体(Sirukumab),より高い親和力と半減期の長い抗IL-6抗体(Clazakizumab, MEDI5117),重鎖のみの抗IL-6Rナノボディ(ALX-0061)などが臨床試験中である.これらが実臨床に登場すれば,IL-6阻害薬もTNF阻害薬と同様に選択肢が増える.そしてSTAT3に至るIL-6シグナル伝達を阻害するJAK1阻害薬も含め,選択基準の考案が必要となるであろう.さらにMTX非併用でMTX関連リンパ増殖性疾患既往者での使用の是非も検討が望まれる.

  • 関口 昌弘, 松井 聖, 佐野 統
    2016 年39 巻4 号 p. 347b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      アバタセプト(ABT)はT細胞上のCD28と抗原提示細胞上のCD80/86との結合を阻害することでT細胞の活性化を制御する生物学的製剤である.自己免疫応答の上流に作用することから,RA以外の自己免疫疾患にも有益な効果を発揮するかと思われたが,現時点においてRAほどの明確な効果は実証されていない.RAにおけるABTの臨床効果は他の生物学的製剤とほぼ同等であり,安全性は比較的高いことから,高齢症例に使用されるケースも多い.更に血清反応陽性(抗CCP抗体陽性)症例では陰性症例に比べ,より優れた有効性や高い継続率が得られる可能性も近年報告されている.我々は生物学的製剤未投与RA患者を対象にABTの有効性・安全性評価を目的とした医師主導多施設共同試験(ABROAD-study)を実施,この試験で65歳以上の高齢群と未満の非高齢群で臨床効果を比較した.全277例中,高齢群は148例(53.4%)と半数以上であった.48週の臨床的寛解率(DAS28-CRP < 2.3)は高齢群と非高齢群で有意差はなかった.48週のABT治療継続かつ12週間以上の臨床的寛解維持を『持続的寛解』と定義し,これの達成に影響しうる予測因子を検討した.その結果,高齢群と非高齢群では予測因子が異なり,高齢群においてはACPA陽性が,非高齢群では低HAQ-DIがそれぞれ独立した『持続的寛解』達成の予測因子であった.1st-BioとしてのABTの有効性予測因子は年齢により異なる可能性が示され,ABT治療のBest useについて考察する.

  • 岩本 直樹, 右田 清志, 植木 幸孝, 川上 純
    2016 年39 巻4 号 p. 348
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      トファシチニブはJAK1/3を主として阻害するJAK阻害剤であり,種々のサイトカイン受容体のシグナル伝達を阻害することにより免疫制御機能を発揮する.我々はRA24例の市販後投与例において有効性および安全性を解析した.平均年齢は65歳,平均罹病期間は14.7年,21例に生物学的製剤投与の既往があり,MTXは12例に併用していた.平均DAS28-CRPは開始時4.68から1年後2.97と改善し,MTX併用/非併用にかかわらず有効性を認めた.中止は3例であり,すべて無効による中止であった.トファシチニブは種々の細胞への作用が明らかとなってきており,RAにおいてはT細胞への作用のみならず,滑膜線維芽細胞(RAFLS)においても間接的/直接的なサイトカイン産生抑制効果やシグナル伝達阻害効果を有している,我々の検討においても,RAFLSへのトファシチニブ添加によるmicroRNAの発現変化を認めた.このような有効性が明らかとなる一方,T細胞への作用の関与が示唆されている帯状疱疹や,NK細胞減少作用などによる悪性腫瘍発症の懸念など副作用についても関心が集まっている実情がある.我々の解析においても帯状疱疹は最多の有害事象であった.今回,実臨床におけるトファシチニブの関節リウマチに対する有効性および安全性と共にRAFLSやT細胞,血球分化に与える影響など現在明らかとなっている作用を報告する.

  • 鳥越 俊彦
    2016 年39 巻4 号 p. 349a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      免疫チェックポイント阻害剤(Immune checkpoint blockade, ICB)は国内で現在,悪性黒色腫と非小細胞肺がんに適応承認されているが,約5-10%の症例で重篤な自己免疫・炎症副作用が発生する.標的臓器は,(1)内分泌系,(2)消化器系,(3)呼吸器系,(4)心筋・骨格筋系,(5)皮膚,(6)神経系,(7)腎・泌尿器系,(8)造血系など,ほぼ全身臓器に及び,死亡例も多数報告されている.臨床免疫学会では,「免疫チェックポイント阻害療法小委員会」を組織し,多彩な副作用症例の情報を集積しているところである.本ワークショップでは,膠原病・自己免疫疾患と比較してICBの自己免疫副作用にはどのような特徴があるのか,最新の研究成果を報告するが,最初にICB副作用について概説する.

  • 門野 岳史
    2016 年39 巻4 号 p. 349b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      免疫チェックポイント阻害薬は,PD-1およびCLTA-4といった免疫を負に制御する分子を阻害することで,腫瘍免疫を増強させ,治療効果を発揮する.しかしながら,免疫チェックポイント阻害薬は腫瘍免疫のみを選択的に増強するわけではなく,免疫全般を過剰に活性化し,その結果,様々な自己免疫疾患を引き起こす.これらの副作用は免疫関連副作用(irAE: immune-related Adverse Events)と呼ばれ,下垂体炎,甲状腺機能低下症,大腸炎,肝障害,糖尿病,皮膚障害,腎障害,間質性肺疾患,末梢神経障害,重症筋無力症,眼障害,infusion reactionなど全身のありとあらゆる臓器に生じうる.本講演では主として抗PD-1抗体であるニボルマブによる免疫関連副作用について概説し,その機序や抗CTLA-4抗体であるイピリムマブとの副作用との違いについて考えていきたい.

  • 沖山 奈緒子
    2016 年39 巻4 号 p. 350a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      免疫チェックポイント阻害剤の登場後,当科ではニボルマブを悪性黒色腫22例に投与,3例がイピリブマブへ移行した.免疫性副反応は10例で認められた.そのうちニボルマブによる甲状腺炎2例,下垂体性副腎機能低下症1例,急性多発神経根障害1例,乾癬2例の症例を供覧する.症例1:69歳女,既往に橋本病.3クール施行後に甲状腺機能低下が顕在化,エコーにて破壊性甲状腺炎あり,甲状腺ホルモン補充療法を要した.症例2:80歳男.4クール施行後に甲状腺機能亢進症発症.症例3:72歳男.IFN-β局注療法と併用して7クール施行後にACTHとコルチゾールの著明な低下を認め,コルチゾール補充療法を要した.症例4:85歳女.2クール施行後に四肢感覚障害,筋力低下が発症,頸椎MRIで神経根異常増強効果あり,腓腹神経生検では,有髄線維脱落,リンパ球の神経束内浸潤を認めた.大量γグロブリン点滴療法,PSL 40mg内服にて加療.症例5:77歳男.IFN-β局注療法後に11クール施行後,全身に乾癬様皮疹が多発,レチノイド内服にて加療.症例6:67歳女,既往に関節症性乾癬.1クール施行後,乾癬の著明増悪あり,レチノイド・PSL 5 mg内服にて加療.ニボルマブ投与前後で血清サイトカインを測定したところ,乾癬が発症・増悪した症例5・6では血清IL-6値が上昇する特徴が見られた.

  • 岩間 信太郎, 有馬 寛
    2016 年39 巻4 号 p. 350b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      免疫チェックポイント阻害剤はT細胞の活性化を負に制御する分子に対するモノクローナル抗体で,細胞傷害性T細胞抗原(CTLA)4に対する抗体であるイピリムマブ(Ipi)とprogrammed cell death-1に対する抗体であるニボルマブが本邦でも近年使用開始された.これらの薬剤は,優れた抗腫瘍効果の一方で,自己免疫機序が想定される重篤な副作用を発症させ,特に,肝炎,腸炎,皮膚炎,内分泌障害が好発する.内分泌副作用として,下垂体炎,甲状腺機能異常症,副腎炎,1型糖尿病などが報告されており,薬剤によりその発症頻度は異なる.特に我々は,従来まれな疾患と考えられてきた下垂体炎が,Ipi使用者において約10%もの頻度で発症することに着目し,抗マウスCTLA4抗体をSJLマウスに連続投与することで下垂体に炎症細胞浸潤を呈する抗CTLA4抗体誘発下垂体炎マウスモデルを作成した.本マウスにおける病態解析を進め,抗CTLA4抗体は下垂体に発現するCTLA4に直接結合し,補体活性化を介したII型アレルギー反応により下垂体に炎症を誘発する可能性を報告した.さらに,Ipiにより下垂体炎を発症した患者血清中に抗下垂体抗体が存在することを明らかにし,臨床における抗下垂体抗体の診断的有用性を示した.本講演では抗CTLA4抗体による下垂体炎の発症メカニズムおよび実際の症例を紹介するとともに,現在名古屋大学で行っている臨床研究についても紹介したい.

  • 菊田 順一
    2016 年39 巻4 号 p. 351a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      関節リウマチ(RA)は,炎症滑膜の増殖と進行性の骨破壊を伴う自己免疫疾患である.また,RA患者の多くは,炎症,加齢,閉経,ステロイド薬など様々な原因で骨粗鬆症を合併する.RAにおける骨破壊と骨粗鬆症における骨密度の低下は,いずれも破骨細胞の機能亢進が関与する病態である.そのため,RAを治療するうえで,破骨細胞の機能をいかに制御するかということが大変重要となる.

      石灰質に囲まれた骨組織は,生体で最も硬い組織であるため,従来,生きたままでの観察が極めて困難であると考えられていたが,本演者らは,二光子励起顕微鏡を駆使して,個体を“生きたまま”で観察することにより,生体骨・関節組織内における“生きた”細胞動態を解析するライブイメージング系を確立した.本技術を用いて,骨表面上での“生きた”破骨細胞による骨破壊過程をリアルタイムで可視化することに成功し,破骨細胞による骨吸収制御メカニズムを解明するとともに,生体内において各種骨粗鬆症治療薬および生物学的製剤が破骨細胞に及ぼす効果を明らかにした.さらに最近,ライブイメージング技術を用いて,骨芽細胞と破骨細胞のクロストークの可視化とその動態解析にも取り組んでいる.

      本講演では,これらの研究成果について,最新のイメージング画像とともに紹介する.

  • 本田 哲也
    2016 年39 巻4 号 p. 351b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      皮膚では自然免疫系細胞,獲得免疫系細胞が複雑に絡み合って多彩な病態を形成する.獲得免疫反応において,皮膚樹状細胞とT細胞は中心的役割を果たす細胞集団である.皮膚樹状細胞は,皮膚に侵入した異物(抗原)を取り込み,皮膚局所に浸潤した抗原特異的T細胞に抗原を提示する.抗原刺激を受けたT細胞は,種々の炎症性サイトカインを産生し,炎症を惹起する.ここで,樹状細胞が抗原提示するためには,また樹状細胞とT細胞が遭遇するためには,それぞれの細胞は適切に皮膚組織を移動する必要がある.この破綻は,不十分な生体防御反応や,逆に過剰な防御反応を誘導する.すなわち,獲得免疫反応時における樹状細胞動態やT細胞動態がどのような制御メカニズムを受けているかを解明することは,炎症制御メカニズムを考える上で非常に重要である.我々は,生体イメージングの手法を用いて,獲得免疫反応における皮膚樹状細胞・T細胞の動態とその制御メカニズムについて解析を行ってきた.その過程で,皮膚でのT細胞の活性化と動態制御にProgrammed cell death-1(PD-1)を介したメカニズムが重要な役割を果たしていること,また皮膚樹状細胞が皮膚で抗原提示するために形成する組織構築や,その形成制御因子を見出した.本講演では,それらの結果について概説したい.

  • 久保田 義顕
    2016 年39 巻4 号 p. 352
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      組織マクロファージは免疫細胞の一つとして広く知られているが,血流が開始していない胎生初期から全身に存在する.また高度な免疫機能を持たないミジンコやホヤなどの下等生物にも存在し,免疫機能以外の生理的な役割,特に器官形成における役割ついて,近年精力的に解析が進められている.その中でわたしたちは,中枢神経系(脳,網膜など)における組織マクロファージに相当するミクログリアに焦点を当て,その血管発生における役割について取り組んできた.マウス網膜血管網は新生仔期に視神経乳頭から網膜辺縁部に向けて同心円状に発育し,その最先端の血管内皮細胞(Tip細胞)が糸状仮足を伸ばしつつ無血管野へと遊走し,後続の血管網をリードする.ミクログリアの網膜血管形成における役割として,Tip細胞とTip細胞が糸状仮足の連結により新たな分枝を作り出す際に,橋渡し(Bridging)の役割を果たすことで,血管の密度を調節することを見出した.さらには,血管が逆にミクログリアの活性を調節し,中枢神経系の恒常性維持に寄与することも見出した.本講演では,この血管とミクログリアとの両方向性の相互作用につき最新の知見を踏まえて議論したい.

  • 菰原 義弘, 大西 紘二, 藤原 章雄, 竹屋 元裕
    2016 年39 巻4 号 p. 353a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      ヒトの固形癌の進展において,多くの局面でマクロファージが関与すると考えられている.腫瘍内に浸潤したマクロファージは,TAM(tumor-associated macrophage)と呼ばれ,腫瘍の増殖や転移,浸潤,血管新生,免疫抑制に関与している.TAMの多くは血液単球に由来し,腫瘍細胞由来のCCL2(MCP1)やGM-CSF, M-CSFにより腫瘍局所へ遊走してくる.腫瘍局所では腫瘍由来因子や低酸素状態などによりマクロファージはM2寄りの活性化状態に誘導され,腫瘍の進展に寄与しているようである.そのためマクロファージを標的にした治療法の開発も試みられている.また,リンパ節は免疫反応に重要な役割を果たす臓器であり,多数の在住マクロファージが認められる.所属リンパ節におけるマクロファージは,癌病変部から流入する腫瘍抗原を取り込み,リンパ球に抗原提示することで抗腫瘍免疫の一翼を担っているようである.TAMやリンパ節マクロファージなどの役割や治療標的としての可能性について考察を加えたい.

  • 山本 朗仁, 石川 純
    2016 年39 巻4 号 p. 353b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      関節リウマチ(RA)は多発性関節炎を主徴とする原因不明の炎症性自己免疫疾患である.近年,生物学的製剤の登場によりRAの治療成績は劇的に改善したが,2~3割のRA患者では治療の奏功が認められない.我々はヒト歯髄幹細胞無血清培養上清(SHED-CM)に着目し,これまでにSHED-CMに含まれるケモカインMCP-1と分泌型レクチンSiglec-9が抗炎症性M2マクロファージ(mΦ)を誘導することを報告してきた.本研究では,関節炎モデルマウスに対するSHED-CMの治療効果の検討とそのメカニズムの解析を目的とした.抗Ⅱ型コラーゲン抗体を用いた関節炎モデルマウス(CAIA)にSHED-CMを関節炎発症後に単回経静脈的に投与した.SHED-CM投与群では対照群に比較して,関節炎スコア,組織破壊の程度が有意に改善した.定量的PCRで炎症性M1mΦマーカーの低下,抗炎症性M2mΦマーカーの上昇を認めた.また,SHED-CMから分泌型Siglec-9のみを除去したd-SHED-CM投与群では,SHED-CM投与でみられた関節炎スコアや組織破壊の改善効果が減弱していた.SHED-CMには様々なパラクライン因子が含まれていることがわかっており,RAに対して多面的に治療効果を示すと考えられるが,本研究結果から,その治療メカニズムには抗炎症性M2mΦの誘導が中心的な役割を果たしていることが示唆された.

  • 簗場 広一
    2016 年39 巻4 号 p. 354a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      B細胞は抗体産生やT細胞活性化を通して免疫反応に関与していることは古くから知られていたが,近年になり自己免疫や炎症反応の抑制に重要な役割を担うB細胞のサブセットが存在することが明らかになった.この制御性B細胞と呼ばれるサブセットのB細胞は,抑制性サイトカインであるインターロイキン10(IL-10)を産生することにより過剰な免疫反応をコントロールしている.当初は主にマウスの脾臓に存在する制御性B細胞を中心に研究が進められていたが,ヒトにも同様にIL-10を産生する制御性B細胞が存在することが明らかになり,さらには全身性エリテマトーデス,関節リウマチ,全身性強皮症,天疱瘡,乾癬といったさまざまな自己免疫・炎症性疾患の制御に重要であることが解明されてきている.

      本ワークショップでは,これまでに分かっている制御性B細胞の役割と,今後の制御性B細胞をターゲットとした治療戦略の可能性について解説する.

  • 紅林 泰, 坂元 亨宇
    2016 年39 巻4 号 p. 354b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      腫瘍間質に認められる多様な免疫細胞の浸潤パターンやその空間的多様性,腫瘍組織型との関係,ならびに予後規定因子としての意義に関しては,不明な点が多い.これらの課題を検討するため,肺腺癌をモデルとして腫瘍間質への免疫細胞浸潤を多重免疫染色を用いて網羅的に同定し,解析した.結果として,肥満細胞浸潤がlepidic patternにおいて多く認められ,T細胞,制御性T細胞,B細胞,形質細胞,マクロファージ,樹状細胞,形質細胞様樹状細胞,好中球はいずれもgrade 2以上のpapillary/acinar patternあるいはmicropapillary/solid patternにおいて浸潤数の増加を認めた.リンパ濾胞形成はgrade 2のpapillary/acinar patternで最も多く認められたが,組織学的悪性度が増すにつれて減少した.これらの免疫細胞浸潤は概ね組織型の多様性の分布に一致して認められることがわかった.クラスター分析により,腫瘍間質への免疫細胞浸潤は,特徴的な4つの免疫細胞浸潤パターン(Immunosubtype)に分類された.これらのうち形質細胞サブタイプと名付けた一群は独立した予後不良因子であった.腫瘍間質へのリンパ形質細胞浸潤は腫瘍に対する免疫応答の一環として生じると考えられるが,腫瘍間質中の形質細胞はIL-35の主要な産生細胞であることがわかり,局所的な腫瘍免疫抑制に関与している可能性が示唆された.

  • 佐藤 和貴郎
    2016 年39 巻4 号 p. 355a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      従来,中枢神経系は免疫学的特権部位と称され,血液脳関門のバリア機能の重要性が指摘され,プロフェッショナルな抗原提示細胞がなくリンパ組織やリンパ管も欠如した免疫学的にサイレントな組織と考えられていた.しかし最近になり血液脳関門は周囲の環境に応じて機能がダイナミックに変化するインターフェースとして捉える新たな見方が提案され,また2015年に脳内にリンパ管が存在することが複数の施設から報告されるなど,基本概念が変化している.臨床の現場で汎用される脳脊髄液検査から得られた髄液を用いて,フローサイトメーターにより数千個のリンパ球を解析することが可能である.髄液中のリンパ球のメジャーな分画はメモリーCD4陽性T細胞である.代表的な自己免疫疾患である多発性硬化症では,脳脊髄液中のリンパ球増加は通常認めないが,質的な変化については検討され,発症や再発のトリガーとなる「病原性T細胞」に関する知見が集積されてきた.私たちの研究部で行ってきたケモカイン受容体に着目したT細胞の解析も含め,髄液リンパ球研究の現状と将来について考える.

  • 内田 一茂, 岡崎 和一
    2016 年39 巻4 号 p. 355b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis; AIP)という疾患概念は,1995年にYoshidaらが提唱された疾患概念であり,2001年にHamanoらによって高IgG4血症がこの疾患に特異的であることが報告され,本疾患は世界的に注目される疾患となった.AIPは,IgG4の関与する1型と好中球病変が主体の2型に分類され,現在では1型AIPはIgG4関連疾患の膵病変と考えられている.IgG4の役割は不明であるが,その産生機序にはTh2サイトカイン,制御性T細胞などの獲得免疫,Toll-like receptor(TLR)やNOD-like receptor(NLR)に代表される自然免疫反応など様々な異常が関与している可能性が示唆されている.

      1型AIP特に限局型の診断には苦慮する例が存在する.EUS-FNAは膵疾患の診断を大きく変えたと考えるが,検体の採取量には限界があり診断が困難な理由の一つと考えられる.我々は,膵癌周囲にもIgG4陽性細胞が認められること,2型AIPは組織学的にはGranulocytic Epithelial Lesionを伴う好中球浸潤を特徴としているが小葉内膵管周囲の好中球浸潤については1型2型では差がないことを見出した.

      このようにAIPの診断には,多くの問題点が残されているのが現状であり,今後の更なる研究と症例の蓄積が必要と考えられる.

  • 山上 淳
    2016 年39 巻4 号 p. 356a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      天疱瘡は自己抗体によって粘膜および皮膚に水疱を形成する自己免疫疾患である.標的抗原は,表皮細胞間の接着に不可欠なデスモゾームを構成するデスモグレイン(desmoglein; Dsg)である.細胞接着を失った表皮細胞が壊死に陥ることなく水疱内に投げ出される棘融解(acantholysis)が,天疱瘡に特徴的な病理組織所見である.診断には,直接蛍光抗体法でIgGが患者皮膚の表皮細胞間に沈着していることを示す必要がある.臨床症状と病理組織所見から,尋常性天疱瘡,落葉状天疱瘡,その他の天疱瘡に分類されるが,免疫組織学的に特に興味深いのは,腫瘍随伴性天疱瘡(paraneoplastic pemphigus; PNP)であろう.その病変の組織像は,自己抗体によって生じる棘融解が見られると同時に,皮膚または粘膜の基底膜部に液状変性と真皮浅層のリンパ球浸潤を認め,薬疹や膠原病,GVHDの際に見られる苔癬型反応(interface dermatitis)を呈する.近年,天疱瘡モデルマウスを用いた研究で,Dsg3に反応するT細胞がinterface dermatitisを起こすことがわかってきた.PNPでは,Dsg3に対する液性の自己免疫による棘融解が生じていることを考えると,interface dermatitisについてもDsg3に対する細胞性の自己免疫機序で生じている可能性が示唆される.

  • 岩田 恭宜, 和田 隆志
    2016 年39 巻4 号 p. 356b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      小型血管炎を病因とする腎病変は,組織学的に糸球体への半月体形成を認めることが多く,臨床的に急速な腎機能低下を来す.他の腎炎症候群に比し予後が悪く,その病態の解明は重要な課題である.これまで,半月体形成性腎炎(Cres GN)を含めた腎炎症候群で浸潤マクロファージ(Mp)と腎予後,蛋白尿ならびにサイトカイン・ケモカインとの関連を示してきた.ことに,間質内のfoam cell浸潤は,腎予後との相関が認められた.さらに,最近診断したCres GNでは,以前の症例に比較し,診断時の半月体形成率,間質の炎症細胞浸潤は低下していた.以前に比し,早期に診断される症例が増加していると考えらえた.その中でも,半月体形成率が50%以下,Cr値が3.0 mg/dL以下の症例は,腎予後,生命予後とも改善が認められた.これらの結果は,その病態にMpなどの炎症が強く関与し,予後が悪いとされるCres GNにおいても,早期の診断・治療が,腎予後,生命予後を改善する可能性を示していた.一方で,Cres GNの疾患早期には,半月体および糸球体にCD163陽性免疫抑制型マクロファージが集簇していることが報告された.さらに,尿中可溶型CD163がCres GN症例に特異的に上昇し,疾患を早期診断しうることが示されている.本セッションにおいて,Cres GNの臨床的検討と,炎症・免疫に関する近年の知見について概説したい.

  • 中村 英樹
    2016 年39 巻4 号 p. 357
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      シェーグレン症候群(SS)小唾液腺内の浸潤単核球はCD4+Tリンパ球が主な役割を示すが,病期が進むとB細胞や形質細胞の浸潤も確認され,これらの単核球はCD40,CD40リガンドなどB細胞の生存に重要な分子発現を示し,さらにBcl-2などの細胞死を抑制する分子の強い発現を示す.CD40陽性単核球は,JNKやp38などMAP kinase発現も示すため,SS唾液腺の免疫反応に深く関与している.細胞死の観点からはCD4+Tリンパ球はFasリガンド発現を示し腺組織へTUNEL染色陽性のアポトーシスを誘導することが想定されるが,細胞死の程度は多くないことから前述のBcl-2 familyが細胞死制御に関わっていると想定される.また,抗HTLV-I抗体陰性例と陽性例との比較から,陰性例では異所性二次濾胞が10-20%程度に観察され,濾胞内に存在する濾胞性樹状細胞(FDC)や濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh細胞)が濾胞胚中心形成や高親和性B細胞選択や記憶B細胞分化に重要な役割を果たしている.一方,SS腺組織の生存調整には,上皮成長因子(EGF)およびその下流にあるPI3K/Akt経路が重要な役割を果たしている.SS患者由来培養唾液腺上皮細胞を抗Fas抗体やPI3Kインヒビターで処理すると細胞死が誘導されるが,EGFは濃度依存性にこれを抑制する.Toll-like receptor3リガンドであるpoly I:Cによる唾液腺上皮細胞死誘導もEGFは抑制し,広く唾液腺組織の免疫調整因子として働いていると予想される.

モーニングセミナー
  • 亀田 秀人
    2016 年39 巻4 号 p. 358
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      サイトカインは免疫関連細胞の主要なコミュニケーションツールとして,細胞間ネットワークの構築と維持に重要な役割を果たしている.そして,これらのサイトカインあるいはその受容体を標的とした生物学的製剤の開発がこれまでにない速さで進められている.現在の用法・用量での寛解導入率は,いずれの分子標的治療を早期から用いても,例えば関節リウマチなら50%程度にとどまる.しかし,サイトカイン発現における疾患や同一疾患の各患者に見られる多様性に合致した治療を行うことにより,治療成績は既存の治療薬でもさらに向上する可能性が示唆されている.その鍵となるのは,治療開始前の標的分子発現量の測定,および治療開始後の治療薬血中濃度のモンタリングである.前者はあくまでも事前予測であり,投与量決定の参考になるが,投与量の決定には体重など他の要因も考慮する必要がある.一方,後者は実際に得られた結果であり,用法や用量の調節に決定的なデータとなるため臨床的意義が大きい.以上のような臨床免疫学的・臨床薬理学的検討を,新薬開発の早い段階で十分に行うことが,より有用性の高い製剤開発につながると考えられる.

  • 三宅 幸子
    2016 年39 巻4 号 p. 359
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      免疫応答を調節する細胞として,自然リンパ球が注目されている.自然リンパ球は,組織に多く存在してサイトカイン産生能が高く,外部環境に対応して自然免疫系にも獲得免疫系にも影響をあたえることから,様々な免疫応答に関与する.抗原受容体を有しないInnate lymphoid cell(ILC)と,可変性の限られた抗原受容体を有するグループに大別される.後者に属するMucosal associated invariant T(MAIT)細胞は,多型性のないMHC class Ibに属するMR1に提示された抗原を認識することから,抗原を使った細胞の特異的制御が可能な点が免疫療法の標的として魅力的である.抗原としては,リボフラビン合成経路の中間代謝産物が知られており,その増殖には腸内細菌に依存することが報告されている.MAIT細胞はヒトで頻度が高く,自験データでは末梢血のαβT細胞の数%を占める.大腸粘膜ではT細胞の10%を超え,潰瘍性大腸炎の炎症の部位では3割にのぼる.MAIT細胞は,さまざまな病態にも関与することがわかってきているので,ヒト疾患や病態モデルでの結果を交えて紹介する.

ランチョンセミナー
  • 玉田 耕治
    2016 年39 巻4 号 p. 360
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      近年,がんに対する免疫療法は革新的な発展を遂げ,外科療法,化学療法,放射線療法に並ぶがんの標準療法としての立場を確立したと言っても過言ではない.その一つが免疫チェックポイント分子の阻害を目的とした抗体療法であり,これまでに抗CTLA-4抗体や抗PD-1/PD-L1抗体などが開発された.この治療法は進行性・難治性のがんに対して優れた治療効果を示すことが明らかとなり,悪性黒色腫や非小細胞肺がんなどで治療薬として承認され,その他多くの腫瘍において臨床試験が進んでいる.免疫チェックポイント阻害剤は腫瘍微小環境での免疫抑制機構を解除することで腫瘍反応性T細胞の活性化を誘導する治療法である.また別のがん免疫療法戦略として,腫瘍反応性リンパ球を人工的に作製するための遺伝子改変技術が進展している.具体的には,がん抗原ペプチドを認識するT細胞受容体(TCR)や,がん細胞の膜表面分子を認識すると同時にT細胞の活性化を誘導するキメラ抗原受容体(CAR)を末梢血T細胞に遺伝子導入し,がん患者に移入する治療法である.このような遺伝子改変T細胞療法では,「強力な傷害活性を有する腫瘍反応性T細胞を確実に誘導する」ことが可能となり,ある種のがんに対しては極めて優れた臨床効果が報告されている.本講演では,これらのがんに対する先進的免疫療法を紹介し,その特徴と問題点,将来展望について考察する.

  • 竹内 勤
    2016 年39 巻4 号 p. 361
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      現在,我々はRAに対し生物学的製剤を含めた抗リウマチ薬を用い,寛解を目指す治療を行っている.将来的には早期診断が進展し,予防医療,先制医療や個別化医療,精密医療が未来の治療戦略候補になるものの,現状は利用可能な薬剤を駆使して効果最大化に努める必要がある.

      これまでの治療戦略は,MTXをベースに効果不十分であればTNF阻害薬を加えてきた.これは我々の研究で,TNF阻害薬単独治療に比べTNF阻害薬併用治療が高い効果を発揮するという臨床データから分かってきた事である.

      一方,IL-6シグナルを遮断するTocilizumab(TCZ)を用いたSURPRISE studyは,MTX不応例にTCZ追加する群とTCZに切り替えた単剤群の2群の多施設前向き無作為化オープンラベル群間試験である.24週までは追加群で活動性改善が得られたが,52週では単剤群で同様の改善効果を認めた.この結果はMTX無効例に対しMTXとTCZにて治療介入し,治療効果が得られた後にMTXを減量していくという新たな治療戦略を示唆する興味深いものと言える.

      最新の研究では,pSTAT3とTCZの関係も分かってきた一方,Tregと疾患活動性の関係も明らかになっている.本講演ではClinical EvidenceとTranslational Researchを併せてIL-6シグナル抑制の意義を踏まえ,RA治療の最適化について解説する.

  • 吉崎 和幸
    2016 年39 巻4 号 p. 362
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      関節リウマチ(RA)治療においては,コンパニオン治療の分子標的治療薬が開発され,治療の革命が起こっている.しかし,開発が促進するあまり数多くの治療薬が使用可能となり,その結果,治療開始薬の選択が困難である.このため我々は,個々の患者に最良の治療薬を適応するため,治療結果を予測可能にするコンパニオン診断治療薬の開発を試みた.

      トシリズマブ(抗IL-6)およびエタネルセプト(抗TNF-a)治療を行ったRA患者の治療前血中のバイオマーカー31項目を,多項目同時測定法(マルチプレックスアッセイ)を用いて測定し,治療効果を予測できるマーカー群の同定を試みた.

      目的変数を16週後の実測DAS28-CRP scoreとして重回帰分析をしたところ,8項目のバイオマーカーの組合せで予後が予測できること,また,16週後のDAS28-CRPが2.3以下を寛解として多重ロジスティック解析を行ったところ,寛解予測マーカーとして4項目が抽出された.

      以上のように,多項目同時測定法(マルチプレックスアッセイ)はRA患者の治療効果を予測し,治療選択に有用なツールとなることが示唆された.即ち,RA治療分野においても個別化医療が可能になることが示された.

  • 中面 哲也
    2016 年39 巻4 号 p. 363
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      がん免疫療法は,手術,抗がん剤,放射線治療に続く第4の治療法として古くから期待されてきたが,これまではその期待に十分にこたえることができなかった.しかし,近年,抗CTLA-4抗体,抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体などのいわゆる免疫チェックポイント阻害抗体の登場により,その劇的かつ長く効く抗腫瘍効果は世界を驚かせ,さらには,CD19を標的としたCAR-T細胞療法はCD19陽性造血器腫瘍に対して極めて高い奏効率を示し,今や,がんに対する免疫の存在,それらの治療法の有効性について疑う者はいなくなった.また,それに伴い,腫瘍特異的変異抗原(ネオアンチゲン)が注目されており,今や,患者個別のネオアンチゲンを同定してのそれらを標的とした個別化ペプチドワクチン療法の臨床試験も欧米では始まっている.一方で,日本で本格的に取り組んできた共通自己抗原を標的としたペプチドワクチン療法は未だ承認されたものがなく,開発に苦戦している.本ランチョンセミナーでは,前半に,近年有効性が示されたがん免疫療法やネオアンチゲンについて概説し,後半は,特に日本におけるがんに対する免疫療法の開発状況を期待とともに紹介する.

  • 渥美 達也
    2016 年39 巻4 号 p. 364
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      早期診断・早期治療の実践と生物学的製剤を中心とした新たな治療法の導入により,関節リウマチ診療は劇的に進歩した.現在では,寛解や低疾患活動性及び関節破壊の進展阻止が現実的な目標となっている.関節リウマチ診療ガイドラインでは,関節リウマチ患者に対しては,可能な限り早期に診断し,早期に治療を開始すること,MTXを中心としたcsDMARDsにより治療を開始し,効果不十分な場合に予後不良因子があれば生物学的製剤を使用することが推奨されている.一方,MTXやcsDMARDsでは十分な効果が得られない患者を早期に見出すことができれば,生物学的製剤を用いてより積極的な治療を行うことが選択肢となりえる.予後不良因子を有する早期関節リウマチ患者を対象としたC-OPERA試験では,個々の患者における投与可能量のMTXを用いることにより,高い臨床的寛解率および関節破壊の非進行率が得られた.一方では,高用量のMTXを用いても十分に関節破壊を抑制できない患者も存在することが明らかとなった.治療開始前の疾患活動性が高い,身体機能障害が生じている,MMP-3が高値である,関節破壊がすでに生じている,などの条件を有する患者では十分量を用いてもMTXだけでは関節破壊の進行を抑制できない可能性があるが,そのような患者においてもセルトリズマブペゴル投与群では関節破壊の進行がほぼ抑制された.このような患者においては早期からより積極的な治療が必要かもしれない.

  • 桑名 正隆
    2016 年39 巻4 号 p. 365
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      関節リウマチ(RA)ではリウマトイド因子(RF)が高率に検出されることが知られてきたが,抗シトルリン化蛋白抗体(ACPA)が疾患特異自己抗体として同定され,環状シトルリン化ペプチドを用いた測定系が広く普及している.これら自己抗体は分類基準に含まれるが,感度は80%程度で,RA以外の疾患や健常人で陽性となる場合もあり慎重な解釈が求められる.一方,自己抗体はRA発症の10年以上前から陽性となることが報告され,遺伝素因に喫煙,歯周病,気道病変などの環境要因が加わってACPAが産生され,反応エピトープの拡大,抗体価上昇を経て滑膜炎の発症に至る自然経過が提唱されている.早期診断では他疾患の除外が重要で,特に全身性エリテマトーデスなど他の膠原病の鑑別に抗核抗体検査と染色パターンや抗体価に基づいた特異自己抗体検査が有用である.自己抗体は予後不良因子として挙げられ,ACPA陽性,特に高値陽性はその後の急速な関節破壊進行を予測する指標となる.また,自己抗体は治療薬の効果予測に有用な可能性が示されており,TNF阻害薬はACPAやRFの有無で一定の傾向はないのに対し,アバタセプトはACPA陽性,特に高値陽性例で治療効果が高いことが報告されている.RFは緩徐ながら疾患活動性と相関するが,ACPAは疾患活動性指標にならない.自己抗体検査の活用はRA診療の最適化にきわめて有用である.

スイーツセミナー
  • 田中 良哉
    2016 年39 巻4 号 p. 366
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      疾患制御を目的に生物学的製剤が導入されて以来,関節リウマチ治療は目覚ましく進歩してきた.しかし,生物学的製剤の使用は点滴か注射に限定されており,同様の有効性・安全性を発揮する内服可能な治療薬が,より患者のアンメットニーズを満たすものとして望まれていた.JAKをターゲットとした低分子標的薬のトファシチニブは,こうしたニーズを満たすものである.さらにトファシチニブはJAKを介した細胞内シグナル伝達を阻害することで複数の炎症性サイトカインに作用するマルチターゲット効果を持ち,生物学的製剤とは異なる作用機序,ベネフィットによって,関節リウマチ治療にさらなる変革をもたらす可能性を有している.本邦においてはトファシチニブに対して,投与全症例を対象とした特定使用成績調査が実施中であり,その有効性と安全性について実臨床使用データが徐々に蓄積されてきている.本講演では,実臨床におけるトファシチニブの適正使用について,基礎と臨床の両面から考察する.

  • 土橋 浩章
    2016 年39 巻4 号 p. 367
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      血管炎診療ではこの10年で大きな変遷が認められる.原発性血管炎の定義については,1994年に策定されたChapel Hill Consensus Conferenceの名称と定義(CHCC1994)が用いられてきたが2012年に続発性血管炎も含め,新たな名称と定義がCHCC2012として発表された.その定義の骨子はいずれも罹患血管の口径(キャリバー)を基軸としている.ついで定義に沿って疾患を区別するために分類基準が策定された.分類基準とは疫学研究などの目的で特定の患者を標準化されたカテゴリーに分類するための基準であり,ACRの分類基準やWattsらの分類アルゴリズムが用いられる.Wattsらの分類基準は原発性全身性血管炎の診断の元にEGPA, WG, MPAの順に分類し最後にPANが分類されるアルゴリズムである.診断のモダリティーにおいても大血管炎のおけるFDG-PETや超音波検査の有用性なども報告され,治療効果判定にも用いられつつある.また治療において中小型血管炎における寛解導入療法でのグルココルチコイドやシクロフォスファミドの重要性に加えてリツキシマブが保険適応となり,また新たな治療薬剤についても検討されている.本セミナーではこれら血管炎の診断および治療の現状と問題点について症例を交えながら考えてみたい.

  • 保田 晋助
    2016 年39 巻4 号 p. 368
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      ループス腎炎(LN)は,全身性エリテマトーデス患者の予後を規定する主要な臓器病変である.寛解導入療法においてはさまざまな免疫抑制治療に関するRCTが主に海外で行われ,多くのエビデンスが得られてきた.シクロホスファミド間欠静注療法(IVCY)の有効性が確立された時期に続いて,その毒性に対する認識の広がりからlow dose IVCYが考案され,またミコフェノール酸モフェチル(MMF)がIVCYに劣らない寛解導入効果と高い安全性が確認された.近年,中国からタクロリムス(TAC)がIVCYやMMFに見劣りしない寛解導入効果を示すことが示されている.また,MMFとTACの併用療法はIVCYに対して優位性があるものの有害事象がやや多いとの報告もなされた.

      本邦ではミゾリビン,TACに加えてIVCY,アザチオプリンの使用が認可されており,本年MMFもLNに対して適応追加された.日本リウマチ学会が行ったLNに対するMMFの使用実態調査では,ステロイド併用下における有効性と安全性が示され,約1/3の症例でTACが併用されていること,最大投与量は2 g/日程度であることなどが明らかになった.本邦でのLN治療のおかれた環境は,薬剤選択の面では恵まれているが,どの薬剤を単剤で,あるいは併用で用いてゆくか,維持療法への切り替えなど,今後エビデンスを構築してゆく必要がある.

  • 鈴木 勝也
    2016 年39 巻4 号 p. 369
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      免疫系は自己と非自己のタンパク質の立体構造のわずかな違いを認識できることが知られており,RA治療に用いられる生物学的製剤のタンパク質成分に対しても特異的な免疫応答が惹起され,しばしば臨床上問題となる.抗製剤抗体の発現には,製剤側の要因に加え,患者および疾患特性,併用薬,投与経路などの要因が複雑に関与している.抗製剤抗体のRA治療への影響については,1)有効性の低下(薬剤の効果減弱・消失,継続率の低下),2)治療効果維持のために薬剤の増量,免疫抑制薬の併用が必要となる例があること,3)有害事象の増加(投与時反応)などが知られており,依然として重要な課題である.有効性の低下の機序としては,1)中和抗体(抗製剤抗体が治療薬を中和し,標的分子への治療薬の結合を阻害)あるいは2)免疫複合体(製剤と抗製剤抗体が免疫複合体を形成し,免疫複合体が循環血液中から除去され治療薬の半減期が短縮)によることが想定されている.抗製剤抗体が臨床反応に及ぼす影響は治療薬によって異なり,その製剤選択にあたっては免疫原性も考慮する必要がある.

      本セミナーでは,免疫原性の概念およびその分子機序,抗製剤抗体に関する国内外の報告および自験例の解析結果を紹介し,免疫原性の観点からみたRA治療について考察する.

  • 大和田 高義
    2016 年39 巻4 号 p. 370
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      高齢者の関節リウマチは,社会全体の急速な高齢化と,治療の進歩による生命予後の改善によって増加している.関節リウマチの罹病率は米国の疫学研究にて65歳から74歳が最頂点と報告されており,日常診療においても高齢者の関節リウマチの診療機会が増え,その治療を選択することが今後も増加すると予想される.高齢者の関節リウマチは,高齢発症関節リウマチと高齢となった若年発症関節リウマチとに分けられる.前者は急性及び亜急性の経過と発症時の高疾患活動性の特徴を持つことより治療を必要十分に行うことが求められ,また後者は長期間罹患した関節リウマチによる身体機能低下や障害,そして合併症に注意しながら個々に応じて治療を行うことが必要となる.2010年以降,関節リウマチ治療はTreat-to-Target(T2T)を基本とした,治療のガイドラインやリコメンデーションが発表され,最近はB及びC型肝炎ウイルスや悪性腫瘍などの合併症に応じて,治療を選択することが推奨されている.しかし,高齢者の関節リウマチに対する治療に関しては,推奨される治療薬や治療目標がどのガイドライン・リコメンデーションにも現在のところ言及されていない.そこで,当院における高齢者の関節リウマチ治療の実臨床での状況とその結果を紹介し,高齢者の関節リウマチの治療を考察する.

  • 菊地 弘敏
    2016 年39 巻4 号 p. 371
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      ベーチェット病(BD)は,再発性口腔内アフタ,皮膚病変,外陰部潰瘍,眼病変を主症状とし,急性の炎症を繰り返しつつ遷延した経過をとる疾患である.主症状以外には関節炎や副睾丸炎,特殊病型とされる消化器病変,血管病変,中枢神経病変といった副症状が存在する.

      中枢神経病変は神経BDと呼ばれ,最も重篤な合併症の一つであり,BDの10~20%に合併する.その臨床的特徴から急性型と慢性進行型の2型に分けられる.前者は頭痛,発熱,局所神経症状を示し,中枢神経系の感染症を除外すれば髄液細胞数の増加が鑑別に有用である.一方,後者は認知機能障害や性格変化,体幹失調,構語障害が進行し,髄液IL-6の持続高値や脳幹部の萎縮所見が特徴的である.この2つの病型は予後も治療も異なることから,両者を鑑別し病型に応じた対応をとることが重要である.

      血管病変は血管BDと呼ばれ,その頻度はBDの約5~10%程度であり,中近東や欧米諸国よりも低い.しかし,本邦では深部静脈血栓症から肺血栓塞栓症の合併をしばしば経験するため,免疫抑制薬に加え抗血栓薬が頻用されている.BDの難治性眼病変や腸管病変,神経病変に対しては,インフリキシマブの有効性が明らかとなっており,血管BDでもケースレポートレベルではあるが有用性が報告されている.

      本公演ではBDについて概説し,さらに神経BDと血管BDの診断と治療について最近の情報を紹介したい.

  • 久松 理一
    2016 年39 巻4 号 p. 372
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      腸管型ベーチェット病はベーチェット病の中で特殊型に分類される.回盲部の類縁型,深掘れ潰瘍が典型的な病変で,突然の出血や穿孔により緊急手術が必要となることも珍しくない.また術後再発率も高く,ベーチェット病において消化管病変の合併は予後不良因子と考えられている.腸管型ベーチェット病の内科治療はリウマチ膠原病医あるいは消化器内科医の経験(膠原病治療や炎症性腸疾患治療)をもとに行われていた.そのため,副腎皮質ステロイド,コルヒチン,5-ASA,免疫調節薬などが行われてきたがエビデンスは不足していた.このような背景の中で,2001年にIFXが有効であった症例報告が2報報告され,これをきっかけに腸管型ベーチェット病に対する抗TNFα抗体製剤の有効性を示す報告が蓄積した.本邦ではアダリムマブが臨床試験ののち2013年に承認され,インフリキシマブが2015年に承認された.抗TNFα抗体は腸管型ベーチェット病の臨床症状を速やかに改善するのみでなく,内視鏡所見の改善においても優れた治療効果を示した.さらに計画的維持投与により,長期寛解維持に成功する症例も報告されるようになっている.抗TNFα抗体は今後,腸管型ベーチェット病の標準治療の一つとして位置づけられる薬剤であり,手術率の低下を含めた長期予後改善が期待される.

一般演題(ポスター)
  • 中野 和久, 河邊 明男, 山形 薫, 阪田 圭, 中山田 真吾, 田中 良哉
    2016 年39 巻4 号 p. 375a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【背景・目的】RAでは線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)は骨・軟骨破壊の重要な役割を担う.RA由来FLSは疾患特有なDNAメチル化プロファイルを有し攻撃的表現型と関連することが示唆されている.今回,能動的DNA脱メチル化酵素Tetの関節滑膜での役割をin vitro及びin vivoで評価した.【方法】関節手術で得た患者由来滑膜でTetの発現をqPCR,WB,免疫染色で,5hmC発現をDot blotで評価した.siRNAを用いTetノックダウン後,TNF刺激により,各種メディエーター分泌,表面抗原発現等を評価した.K/BxN血清惹起関節炎モデルマウスを用い,Tet3遺伝子改変の有無で,関節炎や組織像を比較評価した.【結果】FLSではTNF,IL-1,IL-17等の刺激により,Tet3のmRNA,蛋白発現,及び5hmC発現が促進された.Tet3をノックダウンしたFLSではTNF依存性のCCL2産生,ICAM-1発現,浸潤能が阻害された.K/BxN関節炎モデルでの検討では,野生型マウスに認められた顕著な骨破壊,軟骨破壊,滑膜炎症が,Tet3−/+マウスでは有意に抑制された.【考察】RA滑膜におけるTNF等の持続的な炎症性サイトカイン曝露は,FLSにTet3依存性に炎症記憶を付与することで,高い組織浸潤性や破骨細胞誘導等を有する攻撃的表現型を不可逆的に齎すことが示唆された.

  • 横田 和浩, 相崎 良美, 秋山 雄次, 三村 俊英
    2016 年39 巻4 号 p. 375b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【目的】自己免疫性疾患の一つである関節リウマチではIL-6等の炎症性サイトカインが病態の進展に重要な役割を演じている.この炎症性サイトカインは心血管疾患(CVD)発症に強く関与し,CVDの危険因子は血管石灰化である.血管石灰化は骨形成に類似した機序であり,血管組織に骨芽細胞様細胞が存在することが知られている.そこでヒト末梢血単核球を用いて,IL-6刺激による骨芽細胞様細胞への分化誘導・機能を解析した.【方法】末梢血は健常人より採取し,比重遠心法にて分離した単核球を象牙質上にIL-6またはRANKLで刺激・培養した.形成された石灰化構造物を電子顕微鏡で観察し,構成元素と濃度を調べた.培養単核球細胞におけるALPの活性を測定し,Runx2,Osterix mRNAの発現量をreal-time PCR法で解析した.【結果】末梢血単核球を象牙質上で培養し,IL-6で刺激すると石灰化構造物の形成を認め,構成元素の解析では,主にカルシウム,リンが含まれていた.IL-6で刺激された末梢血単核球は,ALPの活性およびRunx2,Osterix mRNAの発現量が無刺激・RANKL刺激と比較して有意に増加していた.【考察】末梢血単核球をIL-6で刺激すると石灰化構造物を形成する骨芽細胞様細胞が分化誘導された.このことはIL-6が血管石灰化に関与している可能性を示唆している.

  • 古賀 智裕, 梅田 雅孝, 佐藤 智仁, 福井 翔一, 岩本 直樹, 一瀬 邦弘, 川上 純
    2016 年39 巻4 号 p. 376a
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      【背景】関節リウマチ(RA)はT細胞のシグナル異常や破骨細胞の機能異常が病態に大きく関わっているが,Calcium/calmodulin-dependent protein kinase type IV(CaMK4)はCD4陽性T細胞の分化シグナルに重要な分子であるだけでなく,CaMK4の阻害はRANKLを介して破骨細胞の分化を抑制することが動物実験で報告されている.【目的】RA患者とRA動物モデルにおけるCaMK4の役割をT細胞および破骨細胞の両者にて明らかにし,RAにおける新規治療法としての可能性を模索する.【方法】RA患者におけるCD4陽性T細胞を単離し,CaMK4の発現を健常人と比較検討する.RA患者の滑膜組織におけるCaMK4の分布を明らかにする.コラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスにCaMK4阻害剤を投与し,臨床スコア,関節組織所見を解析する.【結果】RA患者では健常人と比較しCD4陽性T細胞のCaMK4が有意に高発現していた.CIAマウスにおいてCaMK4阻害剤の投与により臨床スコアを含めた有意な改善を認めた.【結論】CaMK4はRA患者およびCIAにおけるT細胞を介した炎症性サイトカインの産生と破骨細胞分化の両者において重要な分子であり,RAのマルチターゲット療法として有用であることが示唆される.

  • 岡野 隆一, 三枝 淳, 西村 啓介, 明石 健吾, 西田 美和, 高橋 宗史, 千藤 荘, 上田 洋, 大西 輝, 古形 芳則, 森信 暁 ...
    2016 年39 巻4 号 p. 376b
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/03
    ジャーナル フリー

      近年,Th17細胞,樹状細胞(DC)の分化成熟時には,通常では発現の低いhexokinase 2(HK2)の発現が増加し,解糖系代謝が亢進していることが報告されている.【目的】HK2特異的阻害剤3-ブロモピルビン酸(BrPA)のSKGマウス関節炎抑制効果を明らかにする.【方法】SKGマウスに関節炎を発症させ,BrPA(5 mg/kg)を連日皮下注射で投与して関節炎スコアや免疫担当細胞の増減を評価した.またin vitroで,CD4+ T細胞をTh17細胞に分化させる条件下,あるいは骨髄細胞をDCに分化させる条件下でBrPAを添加し,FACSで解析した.【結果】BrPA投与群では対象群と比べて関節炎スコアが有意に低下した.投与群では脾臓におけるTreg細胞の割合が有意に上昇していた.CD40+CD86+CD11b+CD11c+DC(activated DC)の割合は治療群で有意に減少していた.In vitroにおいてはBrPAはTregへの分化を促進し,Th17細胞への分化を抑制した.またBrPAは骨髄細胞のactivated DCへの成熟を抑制した.【結論】HK-2特異的阻害剤BrPAはマウス関節炎を抑制した.ヒト関節リウマチにおいても,解糖系代謝酵素阻害は有効な治療ターゲットとなり得ると考えられた.

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