第四紀研究
Online ISSN : 1881-8129
Print ISSN : 0418-2642
ISSN-L : 0418-2642
43 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 稲田 晃, 齋藤 岳由, 大浜 和子, 金子 静子, 島村 健二, 志水 里美, 夏秋 満里子
    2004 年 43 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2004/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    関東平野南東部,八千代市勝田の新川低地で得られたボーリングコアの珪藻分析および花粉分析によって,この地域における約4,500年前以降の古環境変遷を以下のとおり明らかにした.
    台地および段丘崖の植生変遷史は,古い順にコナラ属(コナラ亜属)を主とする落葉広葉樹林期(KaP-I),スギ林拡大期(KaP-II),マツ属(複維管束亜属)林期(KaP-III)に区分される.KaP-IとIIとの境界は約3,400年前,IIとIIIとの境界は早くとも約1,400年前である.一方,低地の環境は,(1)恒常的な水域が存在せず,イネ科とキク科草原の広がった時期(KaD-ib,KaP-IA),(2)ごく浅い水域が出現し,そこにカヤツリグサ科,イネ科などの挺水性群落の生育する時期(KaD-ic,KaP-IB),(3)地下水位の低下によって水域が狭まり,トネリコ属とハンノキ属の湿地林の成立した時期(KaD-iia,KaP-IC),(4)地下水位の低下が進行し,ニレ属-ケヤキ属林の広がった時期(KaD-iibおよびKaP-IIA,C),(5)再びカヤツリグサ科,イネ科などの挺水性群落を伴う池沼が広がった時期(KaD-iiia,KaP-IID)などを経た後,(6)水田となって(KaD-iiia,bおよびKaP-III)現在に至った.
    さらに,ほぼ3,000年前のKaP-IIB亜帯において,少量のソバ属花粉が産出し,マツ属とイネ科花粉も急増する.同一層準からはイネ起源の植物珪酸体も産出し,オモダカ属,イボクサ属,ミズアオイ属などの水田雑草を含む分類群の花粉を伴う.このことは,縄文時代後晩期における畑作とマツ二次林の成立,および低地での水田稲作を示唆している.
  • EDS分析による火山ガラス片の主要成分化学組成
    長橋 良隆, 吉川 周作, 宮川 ちひろ, 内山 高, 井内 美郎
    2004 年 43 巻 1 号 p. 15-35
    発行日: 2004/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    Energy dispersive Xray Spectrometry (EDS) was applied to measure the major element composition of volcanic glass shards. One hundred three analytical tephra samples were collected from the Takashima-oki drilling core sample on Lake Biwa, as well as some representative drilling core samples in the Osaka coastal area and Middle Pleistocene tephra layers at the foot of the Yatsugatake Mountains. The ages of the principal tephra layers were estimated from the correlation between the biostratigraphic horizons from the core samples and the oxygen isotope stratigraphy. The estimated ages of the Kg, K-Ah, U-Oki, AT, Aso-4, K-Tz, Aso-3, BT44, BT51, Ata-Th, Aso-1, Ng-1, Kkt and BT72 tephra layers are 3.1ka, 7.3ka, 10.7ka, 29ka, 87ka, 91ka, 133ka, 203ka, 216ka, 238ka, 249ka, 294ka, 334ka, and 349ka, respectively. These principal tephra ages provide the estimated ages of other tephra layers using the sediment accumulation rates in the Takashima-oki core. Consequently, this study has reconstructed the tephrostratigraphy and chronology during the past 430ky. Furthermore, it is pointed out that caldera forming eruptions have occurred at low sea level periods just before the maximum high sea level.
  • 高倉 純, 出穂 雅実
    2004 年 43 巻 1 号 p. 37-48
    発行日: 2004/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    石器を形成した剥離方法(剥離法および剥離具)を同定するために,その形態形成の機構が関数として把握されているフラクチャー・ウィングを解析対象として措定する.フラクチャー・ウィングを解析対象とした剥離方法の同定研究を,亀裂速度の算出とその剥離方法との対応関係から成り立っていると措定すれば,亀裂速度の算出は破壊力学の問題系に属し,剥離方法の同定は亀裂速度と剥離方法の対応関係を取り扱う問題系とすることができる.亀裂速度は,フラクチャー・ウィングの角度計測値から,破壊力学のモデルにもとづいて算出される.亀裂速度と剥離方法間の対応関係は,強い相関関係を示すマトリクスとして把握できる.実験の実施によって,グループI:押圧剥離法(金属・角),グループII:間接打撃法(石・金属・角・木)と直接打撃法(角・木),グループIII:直接打撃法(石・金属),という3グループの剥離方法の同定が可能であることを明らかにする.
  • 魏 光飆, 河村 善也, 金 昌柱
    2004 年 43 巻 1 号 p. 49-62
    発行日: 2004/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    中国安徽省にある人字洞の前期更新世の堆積物から産出した多数のタケネズミ化石を系統・分類学的に記載した.形態の特徴から,これらの化石はRhizomys属の新種で,R.fanchangensisと命名された.Rhizomysは現生属であるが,この新種は絶滅種と考えられ,小型で低歯冠の臼歯をもつという原始的な特徴が見られる.この新種は,Rhizomys属の祖先と考えられるBrachyrhizomys属の種のうち鮮新世の種と,これまでに知られている第四紀のRhizomys属の種との中間の時代のもので,形態的にも中間的な特徴が見られるため,それらの関係を明らかにする上で重要である.なお,本論文では,鮮新世と更新世の境界を,中国で一般に用いられているように,松山クロンとガウスクロンの境界(2.58Ma)と考えている.
  • 北村 晃寿, 坂口 佳孝
    2004 年 43 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2004/02/01
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    函館湾で採取した堆積物コア試料から,小球状ガラス物質(直径0.5~2.0mm)と石炭粒子を含む級化層理の発達した細礫~砂層を見つけた.函館湾周辺には石炭層が露出していないことと,形態的特徴から小球状ガラス物質は熔融した物質が急冷固結したものと推定されることから,我々は小球状ガラス物質と石炭粒子を1945年の函館空襲による大型船舶の被弾・大破炎上時に放出されたものと考えた.そして級化層は,それらが1954年の洞爺丸台風時の暴浪によって再移動と淘汰を受け,類似した水理特性を持つほかの砂粒子とともに再堆積したものと解釈した.このストーム堆積物は,函館湾の堆積物から過去数百年間の気候・環境変動を解読するために重要な年代マーカーとなりうる.
feedback
Top