北海道南部の函館平野の東西両側には, 段丘地形 (1~5面) が発達する. それらの大部分は河成段丘であるが, 1面および2面のうち南部のものは海成段丘である. 2面は Toya 火山灰をのせており, 最終間氷期最盛期に形成された. その旧汀線高度は西側で約80m, 東側で約50mである. 沖積低地は, 25mまたはそれ以上の厚さの海成沖積層からなり, 海成堆積物の上限の年代は平野東部で約6,000yrs BP, 高度は0.6~2.1m, 海岸付近では-0.8mで, 函館平野が過去約6,000年比較的安定した状態にあったことを示唆する. 函館平野の西縁には, 南北方向に走る二つの活断層群 (北部の渡島大野断層, 南部の富川断層) があるが, 東縁には活断層は存在しない. 西側の二つの断層群は, 西の前期更新統からなる丘陵や, 中・後期更新世の段丘群と, 東の沖積低地を境する境界断層で, 段丘面を変位させる撓曲崖をなし, 地下の逆断層の活動に基づくものと推定される. 撓曲崖の背後には逆向き低断層崖を伴う. 前者の平均上下変位速度は0.2~0.9m/ka, 後者のそれは0.05~0.1m/kaで, ともに変位の累積性が認められる. 海成前期更新統の厚さは丘陵部では180mにすぎないが, 平野西部では600mに達する. したがって, 函館平野付近は第四紀以降圧縮の場におかれ, 前期にはおもに波状変形の形をとったが, 中期以降は逆断層運動に転じ, 函館平野は西縁を逆断層によって画された断層角盆地として形成された.
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