第四紀研究
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33 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • それらの海面・地殻変動史への意義
    大村 明雄, 児玉 京子, 渡辺 将美, 鈴木 淳, 太田 陽子
    1994 年 33 巻 4 号 p. 213-231
    発行日: 1994/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    ウラン系列年代測定 (α-spectrometric 230Th/234U) 法による更新世サンゴ礁段丘の形成年代と各段丘旧汀線高度から, 琉球列島南西端与那国島の過去数10万年間における海面・地殻変動史の解明を試みた. 本島は活断層によって境される多数の小地塊に分けられ, それぞれの地塊ごとに垂直変位量が異なっている. 例えば, 北部海岸に沿う地塊間で, 最近13万年間の隆起量に2倍もの差(最大24m, 最小12m) が認められる. また, 海溝に近い喜界島や波照間島では背弧海盆側への傾動がみられるのに対し, ほとんどの地塊が南方の海溝側に傾動していることが本島の構造上の特徴といえる.
    岩相解析および最終間氷期のサンゴ石灰岩との層位関係から, 与那国島では, 段丘III面を構成する酸素同位体ステージ7に対比される礁複合体がもっとも発達するが, その一部が急速な海面上昇に成長が追いつけなかった“give-up 型のサンゴ礁 (Neumann and MacIntyre, 1985)”として形成されたことが明確になった. それに対し, 最低位の段丘IV面をなす最終間氷期最盛期 (ステージ5e相当) の礁複合体は, ステージ7の礁性堆積物を薄く被覆する形で分布し, その量は決して多くない.
  • 鈴木 毅彦, 早田 勉
    1994 年 33 巻 4 号 p. 233-242
    発行日: 1994/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    沼沢火山は, 福島県奥会津に位置する小規模なカルデラ火山である. 同火山から噴出した新たなテフラを認定した. このテフラを沼沢-金山テフラ (Nm-KN) と命名し, その産状・特性・分布・各地での層位について記述した. さらに, 噴出年代・テフラの体積・カルデラ地形との関係について考察した. Nm-KNは, おもにプリニアン軽石堆積物, 火砕流堆積物, 降下火山灰からなる. いずれも普通角閃石・カミングトン閃石・黒雲母を含み, 特徴的なテフラである. 降下テフラは, 沼沢火山から東方に分布し, 会津盆地周辺, 磐梯・吾妻・安達太良火山などの山麓で見出された. 大山倉吉テフラ (DKP) およびAso-4との層位関係から, Nm-KNの噴出年代を50~55kaの間にあると推定した. 降下テフラと火砕流堆積物の体積は, それぞれ1.4km3, 1.5km3と算出し, それらの噴出源は現在の沼沢湖にあたると推定した.
  • とくに西縁の活断層に関連して
    太田 陽子, 佐藤 賢, 渡島半島活断層研究グループ
    1994 年 33 巻 4 号 p. 243-259
    発行日: 1994/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    北海道南部の函館平野の東西両側には, 段丘地形 (1~5面) が発達する. それらの大部分は河成段丘であるが, 1面および2面のうち南部のものは海成段丘である. 2面は Toya 火山灰をのせており, 最終間氷期最盛期に形成された. その旧汀線高度は西側で約80m, 東側で約50mである. 沖積低地は, 25mまたはそれ以上の厚さの海成沖積層からなり, 海成堆積物の上限の年代は平野東部で約6,000yrs BP, 高度は0.6~2.1m, 海岸付近では-0.8mで, 函館平野が過去約6,000年比較的安定した状態にあったことを示唆する. 函館平野の西縁には, 南北方向に走る二つの活断層群 (北部の渡島大野断層, 南部の富川断層) があるが, 東縁には活断層は存在しない. 西側の二つの断層群は, 西の前期更新統からなる丘陵や, 中・後期更新世の段丘群と, 東の沖積低地を境する境界断層で, 段丘面を変位させる撓曲崖をなし, 地下の逆断層の活動に基づくものと推定される. 撓曲崖の背後には逆向き低断層崖を伴う. 前者の平均上下変位速度は0.2~0.9m/ka, 後者のそれは0.05~0.1m/kaで, ともに変位の累積性が認められる. 海成前期更新統の厚さは丘陵部では180mにすぎないが, 平野西部では600mに達する. したがって, 函館平野付近は第四紀以降圧縮の場におかれ, 前期にはおもに波状変形の形をとったが, 中期以降は逆断層運動に転じ, 函館平野は西縁を逆断層によって画された断層角盆地として形成された.
  • 久留米市山川町前田遺跡でのトレンチ発掘
    千田 昇, 松村 一良, 寒川 旭, 松田 時彦
    1994 年 33 巻 4 号 p. 261-267
    発行日: 1994/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    福岡県久留米市で行われたこれまでの考古学的発掘により, 地割れ群や液状化の跡が数多く発見され,『日本書紀』に記述された678(天武7)年の筑紫地震による可能性が示された. 山川前田遺跡の発掘に伴うトレンチ掘削により断層露頭が現われ, そこでの多数の地割れ跡を検討した結果, 地割れは新期よりイベント1~イベント4の4回の時期 (イベント) に分けられた. それらの時期について, イベント4はAT堆積前, イベント3はAT堆積後, イベント2は(4)層の土石流堆積物の堆積前, イベント1は(2)層の遺物包含層, 特に6世紀の土師器包含層以後, 13~14世紀の遺物包含層以前の時期であり, イベント1を7世紀後半の678(天武7)年筑紫地震によると考えることに矛盾はない. また, この地点での地割れは地震活動に伴うもので, 水縄断層系・追分断層の活動による可能性が大きいと考えられる. したがって, AT堆積 (約2.5万年前) 以後に水縄断層系の活動による3回の地震があり, それにより地割れが発生したことになる.
  • 苅谷 愛彦
    1994 年 33 巻 4 号 p. 269-276
    発行日: 1994/10/31
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    山形県月山の亜高山帯に分布する埋没黒泥層の基底から9,630±350yrs BPおよび9,030±280yrs BPの14C年代値を得た. また埋没黒泥層やその上位の土層から, 鬼界アカホヤ (6.3ka), 吾妻(5.5ka) および十和田a (1.1ka) の各テフラ層を見いだし, 埋没黒泥層下位のシルト層から, 浅間草津テフラまたは浅間板鼻黄色テフラ (いずれも13~14ka) に対比できると思われる火山ガラスの密集帯を検出した. 以上の結果にもとづき, 月山の亜高山帯における埋没黒泥層の生成過程を次のように推定した. 晩氷期 (14~13ka) に黒泥層が存在しなかった可能性は高いが, 完新世初頭(10~9ka) に一部の斜面で黒泥の生成が始まり, 完新世中頃 (6~5ka) までに広範囲に拡大した. その後, 完新世後半 (5~1ka) に黒泥の生成が終了した斜面は多く, 黒泥層は埋没土層となった.
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