リノール酸メチル (ML), サフラワー油, あまに油からの1, 4-シクロヘキサジエン (CHD) の生成が, WCl
6-SnBun4系触媒を用いた無溶媒下及びクロロベンゼン中でのオレフィンメタセシス反応において, 検討された。WCl
6を主触媒としたMLの反応において, 助触媒の活性は, 最適条件下でSnBun
4>SnMe
4>AlEt
3>SnEt
4の順であった。80℃, 3hの反応において, 最適反応条件下のオレフィン/WCl
6比は約30, SnBun
4/WCl
6比は6~8と, ほぼみなしうる。最適条件下におけるオレフィン/触媒比がこのように低いことは, 油脂のエステル基が触媒の活性を低下させていることを示唆している。CHDの存在はオレイン酸メチルの自己メタセシスにおける平衡には影響を及ぼさなかった。このことから, CHDは一度生成すると, もはやメタセシス反応を受けず, 他の生成物間の平衡には関与しないと推定される。最適条件下におけるCHDの収率は, MLの無溶媒下での反応では17%, MLのクロロベンゼン中の反応では24%, サフラワー油の無溶媒下での反応では22%, あまに油の無溶媒下での反応では44%, あまに油のクロロベンゼン中での反応では56%であった。この結果はリノレン酸残基は, リノール酸残基よりも, CHDを与えやすいことを示している。MLの反応で, 触媒を一度に加えず段階的に加えることは, CHDの収率を向上させることが確かめられた。
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