N-スクシンイミジルアリールアセテート (1a) によるタンパク質のアミノ基の化学修飾 (
N-アリールアセチル化) 反応をモデルタンパクとして牛血清アルブミン (BSA) を選び, 7.0≦pH≦9.0, 20℃で速度論的に検討した。
N-アリールアセチル化は (1a) の加水分解と競争的に起こり, 修飾速度はV=
k2 [BSAのアミノ基] [1a] で示すことができた。メタ置換 (1a) による修飾の二次速度定数,
k2, の対数値は相当する安息香酸の相対酸強度, log (
K/
K0), と良好な直線関係を示し, そのプロットの傾きは正であり, pHには無関係に一定であった。オルト置換体による修飾の速度は, 置換基の立体障害のため速度が遅くなることが認められた。BSAのアミノ基は等価でないため, pHプロフィルの傾きは1以下であった。速度比, 10
-3k2/
k1 [
k1は (1a) の加水分解速度を示す], はすべて1以上であり, pH8.5付近で最大値を示していた。 (1a) と
N-スクシンイミジルベンゾエート (1b) 及び
N-アシロキシスクシンイミド (1c) との反応性の違いを調べた。BSAと長鎖のアルキル基を有する (1c) との間には強い疎水性相互作用があり, 速度の上昇が認められたが, アリールアセチル基やアリール基はアルキル基と比べて疎水性が弱いため, (1a) (
p-Cl体以外) や (1b) では速度の上昇は認められなかった。
以上の結果から, (1a) がタンパク質のリシン残基や
N末端のアミノ基の化学修飾に利用できることが結論できた。また, 上記の結果及び化学化合物との反応性との比較から, 修飾反応のより詳細な機構についての考察を行った。
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