日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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61 巻, 4 号
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  • 高見 博, 池田 佳史
    2000 年 61 巻 4 号 p. 837-840
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    バセドウ病に対する甲状腺手術を,最近開発された超音波駆動メス(ハーモニック・スカルペル®,ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル社)を用いて行い(ハーモニック法),従来の鉗子で圧挫しながら鋏で切離するコッヘル法と,その臨床的有用性を比較した.バセドウ病に対し,甲状腺機能を正常化させた状態でハーモニック法(31例),コッヘル法(14例)で甲状腺亜全摘術を施行した.両群ともに,甲状腺切除重量を統計学的にマッチさせた.ハーモニック法は手術時間が短く,甲状腺組織の残置量が少なく,術後のドレーン抜去日は早かった.特に,術中出血量,術後総出血量はハーモニック法ではそれぞれ58±61ml, 50±42mlであり,コッヘル法の144±108ml, 137±118mlより有意に (p=0.0121, p=0.0237) 少なかった.術後合併症は両群で認められなかった.以上より,ハーモニック・スカルペルを用いた甲状腺亜全摘術は臨床的に有用な手技と考えられた.
  • 加藤 貴史, 村上 雅彦, 亀山 眞一郎, 大塚 耕司, 斉藤 肇, 普光江 嘉広, 草野 満夫
    2000 年 61 巻 4 号 p. 841-845
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1997年4月から1999年3月の間に施行した腹腔鏡下虫垂切除術 (laparoscopic appendectomy, 以下LA) 27例と,開腹虫垂切除術 (open appendectomy, 以下OA) 30例を比較し, LAの有用性を検討した.その結果,手術時間に有意差はみられず, LAでは出血量は有意に少量で,ドレーン留置期間,術後入院期間は有意に短縮し,術後の鎮痛剤投与を必要とした症例は有意に少数であった.また,術後合併症では,症例数に有意差はみられないものの, LAでは腹腔内膿瘍,創感染などの合併症はなかった.一方,保険請求点数の比較では,手術点数はLAで有意に高額であったが,総請求点数としては入院期間の短縮に相殺されて有意差はみられなかった.以上より, LAはOAに比して,医療費の面では差がみられないが,術後のquality of lifeの点で優れており,患者にとっての福音と成り得ると思われた.
  • 川崎 浩資, 豊田 昌夫, 奥田 準二, 渡辺 一三, 山本 哲久, 田中 慶太朗, 天上 俊之, 谷川 允彦
    2000 年 61 巻 4 号 p. 846-851
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    右結腸癌と左結腸癌の臨床病理学的差異を知ることを目的に,多発癌を除く初発結腸癌手術症例620例を対象に検討を行った。対象のうち右結腸癌は269例,左結腸癌は351例であった。左結腸癌と右結腸癌を比較すると,右結腸癌には腫瘍径が大きいもの,組織学的には低分化腺癌,粘液癌,印環細胞癌などの分化度の低い癌が多く,また3群以遠のリンパ節転移,腹膜播種が高率を認められた.以上のような癌の生物学的特徴の違いを認めたが,組織学的病期,遠隔成績からみると,右結腸癌と左結腸癌との間には統計学的な有意差を認めなかった.
  • 長谷川 誠, 和田 信昭, 井上 孝志, 安原 洋, 仲 秀司, 黒田 敏彦, 野尻 亨, 新川 弘樹, 藤田 尚久, 古谷 嘉隆
    2000 年 61 巻 4 号 p. 852-857
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1986年5月から1999年6月までの14年1ヵ月間に,当院に来院した経肛門的直腸内異物症9例と,本邦報告例55例について臨床的検討を加えた.
    患者年齢は最小年齢15歳から最高年齢43歳で,平均年齢は29.6歳,性別では男性が7人,女性が2人であった.主訴では異物が7人,腹痛が2人で,来院する患者の中には異物挿入の事実を隠している場合もしばしば認められた.原因としては性的行為に関係している症例が8例と最も多かった.そのため患者は羞恥心から夜間当直帯に来院することが多かった.また繰り返し経肛門的直腸内異物で来院する症例も2例認められた.摘出は穿孔性腹膜炎を発生していた1例を除き経肛門的に摘出された.異物の種類ではスプレー缶2例,ハンガー・針金2例,試験管1例,瓶1例,バイブレーター1例,キセル1例,鉛筆1例,お菓子の容器1例となっていた.
  • 稲吉 厚, 小城 左明, 澤田 俊彦, 村本 一浩, 守安 真佐也, 有田 哲正, 八木 泰志
    2000 年 61 巻 4 号 p. 858-861
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    PTCD時における術者のX線被曝を軽減する目的で,目盛粗面加工付きの,カテーテル付き21ゲージ穿刺針(以下,新穿刺用針)を用いたエコーガイドPTCDを190例に施行し,本法の適応と問題点について検討した.新穿刺用針は外套がflexibleであるため,胆道造影やガイドワイヤー,カテーテルの挿入操作が照射野外から可能であり,術者のX線被曝を軽減できると考えられた.当院において本法を用いて190例, 214回のPTCDを施行し,胆管穿刺は全例で成功したが,ドレナージチューブ留置に成功したのは202回であった.ドレナージが不成功であった原因は,胆管径が5mm末満と拡張不十分であったことと,胆管壁の硬化であった.以上の結果より,本法によるPTCDは,胆管径が5mm以上が適応と考えられ,胆管の穿刺角度や使用するカテーテルを工夫することにより成功率が改善されるものと考えられた.合併症としては,胆道出血2例,カテーテル逸脱4例,重篤なショック1例であった.
  • 黒木 保, 黒田 豊, 本郷 碩, 中安 清, 倉田 悟, 縄田 純彦, 永島 浩, 岩崎 一臣
    2000 年 61 巻 4 号 p. 862-866
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1969年から1998年までに経験した膵損傷27例について検討を行った.日本外傷学会膵損傷分類はI型11例, II型7例, IIIa型6例, IIIb型3例であった.複数の臓器損傷を伴うものが多く22例は2臓器以上の腹腔内臓器損傷を伴っており, 4臓器以上の損傷を認めた4例中3例は死亡例であった.手術方法はドレナージ術8例,膵授動兼膵床ドレナージ術7例,膵尾側切除術6例,膵頭十二指腸切除術5例, Letton & Wilson法1例であった.ドレナージ術を施行した4例に外傷性膵炎を認めた.一方,膵授動兼膵床ドレナージ術を施行した症例では外傷性膵炎を認めたのは1例のみであった.挫滅組織の充分な除去とドレナージを徹底させるための膵授動兼膵床ドレナージ術が重要と考えられた.また,膵管損傷例において膵尾側切除あるいは膵頭十二指腸切除術は重篤な合併症は認められず安全な術式であった.
  • 塩谷 猛, 須田 雍夫, 桑島 良夫, 内田 健二, 田中 洋一
    2000 年 61 巻 4 号 p. 867-872
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃癌を含む3臓器以上の重複癌18例を対象とし,胃癌を中心に他臓器とのthymidylate synthase (TS)発現関係を免疫組織学的に検討した.胃癌の進行度はstage I:9, II:5, III:2, IV:2例で,全臓器癌同時あるいは異時発生はそれぞれ3例であった.胃癌のTS発現は全体では38.9%,他臓器癌との発生時相からは胃癌先行群12.5%,同時発生群37.5%,胃癌後発群50.0%であった.結・直腸癌の併存の多い他臓器癌のTS発現は76.0%であった. pTNM分類で各臓器癌の病期をみると病期の低い群でTSの発現率が低かった.
    3臓器癌のすべてを検索できた10症例では3臓器TS(+)は2例, 2臓器TS(+): 5例, 1臓器TS(+): 3例で, 3臓器ともTS(-)例はなかった. 2臓器以上TS(+)の群は1臓器(+)群と比較して予後が悪かった.以上より3重複癌における各臓器癌のTS発現はそれぞれを組み合わせることにより,一層患者の予後予測に役立つと思われた.
  • 正木 久男, 稲田 洋, 森田 一郎, 田淵 篤, 石田 敦久, 三宅 隆, 菊川 大樹, 遠藤 浩一, 武本 麻美, 藤原 魏
    2000 年 61 巻 4 号 p. 873-876
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1976年1月から1998年7月までに経験した閉塞性動脈硬化症(ASO) 1000例を対象に1990年までを前期, 1990年以降を後期にわけ時代の変遷とともに病態や背景因子がどのように移り変わっているのか,さらに外科治療成績が向上したかを検討した.
    1) 後期では,高齢者が増加するも,来院時の重症の虚血肢は少なくなり,診断技術の向上が見られた.
    2) 後期のほうが,動脈危険因子や併存症が多く認められ,特に糖尿病や腎機能不全が増加していた.
    3) 後期のほうが,血行再建例の開存成績の向上や手術死亡率の低下傾向はみられるも,有意の差はなく,多くは2)で述べた動脈硬化性危険因子の増加や内膜肥厚がいまだに防止できないことが大きく関与していると考えられ,遺伝子治療を含めた新たな治療の開発や綿密な管理が必要である.
  • 永田 浩一, 飯田 富雄, 芳賀 駿介, 蒲谷 尭, 梶原 哲郎
    2000 年 61 巻 4 号 p. 877-880
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    MRSAによる腸腰筋膿瘍は稀な疾患である.われわれは慢性血液透析患者に発症したMRSAシャントカテーテル敗血症が原因と思われる腸腰筋膿瘍,肺化膿症を経験したので報告する.症例は41歳女性の血液透析患者.主訴は発熱および左腰部痛.入院後,骨盤,胸部CTを施行し,左腸腰筋膿瘍,肺化膿症と診断し,切開排膿ドレナージ術を施行した.入院時動脈血培養からMRSAが検出され,またドレーン排液および喀痰からも同様にMRSAが検出されたため, VCM投与を行った.ドレーン抜去後,膿の再貯留を認めたため術後8日目に再度切開排膿術を施行した.初回術後約7週で解熱,膿瘍が骨盤,胸部CT上著明に縮小し,初回術後第13週で軽快退院した. MRSAによる腸腰筋膿瘍の本邦報告例6例の内3例が死亡しており,早期にドレナージをつけ適当な薬物療法を行うことが重要であると思われた.
  • 小池 英介, 山下 弘幸, 大島 章, 渡辺 紳, 内野 眞也, 高津 圭介, 山下 裕人, 志村 英生, 野口 志郎
    2000 年 61 巻 4 号 p. 881-885
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    重症筋無力症に様々な自己免疫疾患,特にバセドウ病の合併が多いことはよく知られている.従来の治療法では甲状腺亜全摘後,甲状腺機能の安定化を待ってから二期的に胸腺を摘出する方法がよく用いられてきた.しかし近年,術前管理の進歩で術後に甲状腺クリーゼをおこす危険が極めて低くなったこと,また低侵襲でかつ美容的にも優れた内視鏡下手術により胸腺を摘出できるようになったことなどを考慮すると,一期的な手術も十分可能と考えられる.今回われわれは,バセドウ病と重症筋無力症を合併した27歳の女性に対して,一期的に甲状腺亜全摘術と内視鏡下胸腺摘出術を行った.検索し得た限りでは,内視鏡下で胸腺を摘出した一期的手術の報告はなかった.今後,この術式は治療法の選択肢の一つになり得ると考えられたため報告する.
  • 国末 浩範, 田中 克浩, 園尾 博司, 紅林 淳一, 下妻 晃二郎, 三上 芳喜
    2000 年 61 巻 4 号 p. 886-889
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    患者は63歳の女性.平成7年12月に当科で甲状腺分化癌,多発骨転移のため甲状腺全摘術を施行した.術後はTSH抑制療法と131Iによる内照射を計3回施行した.平成11年2月3日,外来受診時に食欲不振,口渇,軽度意識障害を認めたため入院となった.入院時血液・生化学検査で炎症所見と高カルシウム血症を認めた.胸部X線で多発肺転移を認めた.67Gaシンチでは両側中下肺野と左腸骨部に淡い集積を認めた.左腸骨の骨転移部の組織診断では未分化癌に矛盾しない所見であった.入院後の経過では肺転移が急激に増大し,呼吸状態が悪化し,平成11年3月12日死亡した.血清中のG-CSF, PTHrPなどの各種サイトカインの上昇を認め,このことが白血球増多を含む炎症所見,高カルシウム血症の原因であると考えられた.
  • 杉浦 博, 宮本 正樹, 加地 苗人, 奥芝 俊一, 近藤 哲, 加藤 紘之
    2000 年 61 巻 4 号 p. 890-893
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は21歳女性で,右乳房のしこりを主訴に来院.右C領域に境界明瞭で,弾性硬な5cm大の腫瘤を触知.超音波検査で隔壁構造を有する縦横比0.31,後方エコーの増強を伴う低エコー域を認めた.エコー下の穿刺吸引細胞診はClassIIであった.腫瘤摘出術を施行し,病理組織学的に腺上皮細胞と筋上皮細胞の2つの型の腫瘍細胞が増生する腺筋上皮腫と診断された.細胞異型や核分裂像はなく,また浸潤所見もないことから追加切除はせずに経過観察とした.術後4年8ヵ月経過した現在,再発や転移を認めていない.乳腺原発の腺筋上皮腫の報告例は今だ少なく,本邦報告例は本症例を含め19例である.本症例は過去の報告例の中でも最も若年発症の1例であった.
  • 花城 徳一, 石川 正志, 西岡 将規, 菊辻 徹, 柏木 豊, 三木 久嗣
    2000 年 61 巻 4 号 p. 894-897
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳腺良性疾患のうち管状腺腫は稀な疾患であり,若年女性に発生しやすい.今回われわれは乳癌と鑑別が困難であった乳腺管状腺腫の1例を経験したので報告する.症例は71歳,女性子供は3人.平成10年9月初旬より左乳房に腫瘤を触知したため当院を受診した.乳頭からの異常分泌物はなく疼痛も認められなかった.腫瘤は硬く左乳房CD領域に存在した.超音波検査上,腫瘤は2.5×2.5×2.4cm,辺縁はほぼ平滑,内部不均一であった.マンモグラフィーでは石灰化は見られないが,一部spiculaと思われる像を認めた.吸引細胞診ではclassV, adenocarcinomaであった.以上の所見より,左乳癌の診断で非定型的乳房切除術を施行した.病理組織学的診断では乳腺管状腺腫であった.吸引細胞診において管状腺腫が変性したり梗塞を起こしていると悪性と誤診されやすいため,外科的治療において臨床症状,検査等を慎重に考慮して決定するべきである.
  • 山田 貴, 渡辺 明彦, 佐道 三郎, 西沼 亮, 鶴井 裕和, 渡部 高昌
    2000 年 61 巻 4 号 p. 898-901
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    リンパ節転移を伴った男性嚢胞内乳癌を経験したので報告する.症例は70歳男性で右乳房腫瘤を主訴に来院した.右乳房に50mm大の球状可動性良好な腫瘤を触知し,超音波検査にて嚢胞内に10mm大の結節像を認めた.嚢胞内容は血性で細胞診断はclass IIIであった.摘出生検病理組織診で嚢胞内乳癌と診断し,非定型乳房切除術を施行した.組織学的診断は嚢胞内乳癌で,腋窩リンパ節に2個の転移を認めた.これまで本邦では男性嚢胞内乳癌でリンパ節転移を伴う症例は報告されておらず,リンパ節郭清を省略した十分な腫瘍の切除で満足のいく結果が期待されているが,症例によりリンパ節郭清の適応を決定する必要があると考えられた.
  • 宇田 憲司, 金 仁洙, 室 雅彦, 井谷 史嗣, 金子 晃久, 佐々木 寛, 渡辺 和彦, 成末 允勇
    2000 年 61 巻 4 号 p. 902-905
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    乳腺に他臓器の癌が転移する事は稀であり,なかでも大腸癌の乳腺転移は極めて稀である.今回われわれは,大腸癌乳腺転移の1例を経験したので報告する.患者は72歳,女性で1996年6月,下行結腸癌(stage IV)に対し左半結腸切除術を受けた. 1997年9月,肺転移を認めた. 1998年9月,右乳房に急速に増大する境界明瞭な腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診でclass V (adeno carcinoma)であった.大腸癌乳腺転移を疑い1998年9月,腫瘍を摘出した.腫瘍は直径1.8cmで被膜を有していた.病理組織学的には中分化型腺癌で乳管や小葉内に癌の増殖はなく転移性乳癌と診断した.さらに病理組織像が前回手術した大腸癌と類似していたこと,乳腺腫瘍と大腸癌で免疫組織化学染色所見が一致したことから大腸癌乳腺転移と診断した.患者は,肺転移の増悪により1999年4月死亡した.
  • 竹元 伸之, 森 康昭, 羽田 原之, 小檜山 律, 阿部 典文, 目黒 浩昭, 山田 茂樹, 宮田 道夫
    2000 年 61 巻 4 号 p. 906-910
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,女性.健診で右中下肺野の異常陰影を指摘され,精査加療目的で当センター紹介入院となった.胸腹部CT上,右胸腔下半分を長径20cmの腫瘤が占拠しており,肝臓にも腫瘤を認めた. MRI前額断では,肝腫瘤は胸腔内腫瘤と横隔膜を越えて繋がっており,肝臓への直接浸潤も疑われた.血管造影上,腫瘤表面には下横隔動脈が分枝していた.下大静脈,右下肺動静脈,右肝静脈へは圧排所見のみであり,浸潤所見は認めなかった.経皮下の腫瘤生検よりfibrous tumor of the pleuraと診断された.手術は胸骨正中+右肋弓下切開でアプローチし,横隔膜胸膜原発の腫瘍を該当部位の横隔膜を含め,胸腔内・肝内の腫瘍を一塊として摘出した.肝内への突出部は浸潤所見なく,核手術で対処出来た.摘出された腫瘍は19.5×16.5cm, 2056gで,術後の病理診断も同様であった.免疫染色ではDesmin, cytokeratinは陰性であったが, vimentin, CD34は陽性であった.
  • 朝戸 裕, 下山 豊, 田村 明彦, 坂田 道生, 橋口 尚子, 向井 美和子
    2000 年 61 巻 4 号 p. 911-915
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は発熱,脱力感を主訴に来院し,肺炎の診断で入院した91歳の女性.
    入院後に右肩甲骨部に弾性硬の皮下腫瘤を触知した.同腫瘤は急速に増大し9cm大で隆起性となった.細胞診診断はclass IV,非上皮性悪性腫瘍疑い.右鎖骨上窩,腋窩に硬い腫瘤を触知し,リンパ節転移を疑った.胸部CT画像にて右肺S6分岐部に腫瘤影を認め肺癌を疑った.高齢を考慮し,全麻下に背部腫瘤切除,鎖骨上窩リンパ節生検と気管支鏡検査を行った.組織学的には背部悪性線維性組織球腫(以下MFH),通常型,リンパ節転移と肺原発の腺癌の診断であった.その後,鎖骨上窩の遺残腫瘍が急速増大した.鎖骨下動脈よりのpirarubicin50mg/body動注治療を2回行ったが無効であった.多発肺転移も出現し,死亡し,剖検が施行された. MFHと癌の重複例は照射療法により誘発されたMFHと,放射線に無関係のMFHとに大別される.本邦の後者の重複例は30例報告されており,文献的に検討したが,本症例は偶然の合併と思われた.
  • 入江 秀明, 山本 篤志, 河野 博光
    2000 年 61 巻 4 号 p. 916-920
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    重篤な症状を呈したMorgagni孔ヘルニア2症例を経験したので報告する.症例1は63歳,女性.呼吸困難を主訴に来院.分娩歴3回. 60歳より気管支喘息・肺炎で入退院を繰り返していた.胸部X線上,右心横隔膜角にガス像を含む腫瘤影を認め,注腸にて胸骨後部より右縦隔内に嵌入し右肺を圧迫する結腸が描出され,本症と診断した.ヘルニア内容による圧迫が気管支喘息・肺炎の憎悪因子として考えられたため,本症に対し手術を行うこととした.経腹的に修復術を施行し,ヘルニア内容は回腸および盲腸であった.症例2は83歳,女性.嘔吐・腹痛を主訴に来院.分娩歴4回.胸部X線にて症例1と同様の所見を認め, CT・消化管透視・超音波にて本症と診断した.本症によるイレウスと判断し,症例1と同様の手術を施行した.ヘルニア内容は胃,横行結腸,大網であった.本症は稀な疾患であるが発見され次第手術を行うべきと考えられた.
  • 梅澤 久輝, 一和多 雅雄, 五島 雅和, 梅澤 英正, 梅澤 理依
    2000 年 61 巻 4 号 p. 921-925
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    臓器軸性胃軸捻転に伴う全胃,広範囲横行結腸非還納性食道裂孔ヘルニアに対して手術を施行し,良好な経過をたどった1例を経験したので報告する.症例は, 70歳の女性で,主訴は食後の前胸部痛,胸部圧迫感および呼吸困難である.上記を主訴に梅澤医院受診し,胸部単純X線像で後縦隔に鏡面像を形成するガス像を認めた.上部消化管造影検査,上部消化管内視鏡検査を施行し,臓器軸性胃軸捻転を伴った非還納性食道裂孔ヘルニアと診断され,当院に紹介入院となった.その後CT,注腸造影検査を施行.臓器軸性胃軸捻転を伴った全胃,広範囲横行結腸非還納性食道裂孔ヘルニアと診断した.手術は,開腹による食道裂孔右脚縫縮術, Nissen fundoplication, 幽門形成術を施行した.術後経過良好であり食後の症状も消失し,第18病日軽快退院した.
  • 小田 泰崇, 立山 健一郎, 角 泰廣, 吉田 直優, 尾関 豊
    2000 年 61 巻 4 号 p. 926-931
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は29歳,男性. 1990年7月,検診で胸部X線の異常陰影を指摘され,下部食道粘膜下腫瘍の診断で経過観察されていた. 1997年12月,腫瘍の増大を認めたため当院へ紹介された.食道造影で下部食道左壁に約5cm大の陰影欠損を認めたが内視鏡検査では潰瘍は認めなかった.胸部CT検査では下部食道左壁中心に馬蹄型を呈する低吸収域を認めた.食道平滑筋腫と診断し手術を施行した.左第7肋間で開胸すると,腫瘤は食道の左壁中心に馬蹄型を呈し胸腔内に突出していた.周囲組織への浸潤は認めず粘膜を損傷することなく核出術を施行しえた.摘出標本は大きさ7.5×5.0×5.Ocm,割面は淡黄色充実性であった.病理組織学的に平滑筋腫と診断した.
    下部食道の馬蹄型を呈する粘膜下腫瘍は平滑筋腫に特徴的な所見と考えられ,食道・胃機能温存のため可能な限り核出術を試みるべきと思われる.
  • 中村 寿彦, 吉田 貢一, 森下 実, 持木 大, 和田 真也, 森田 克哉, 山村 浩然, 八木 真悟, 山田 哲司, 北川 晋, 中川 ...
    2000 年 61 巻 4 号 p. 932-935
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃軸捻転症は乳幼児に好発する疾患で,成人発症例は比較的稀である.今回その1例を経験したので報告する.症例は71歳,女性.主訴は上腹部痛,嘔吐.胃内視鏡検査では,変形強く,幽門部まで到達できず,腹部CTにて胃が著明に拡張しており胃軸捻転症と診断した.内視鏡的整復を試みたが,不完全であり,手術治療を行った.胃は短軸,長軸共に捻転していた.食道裂孔ヘルニアは認めなかった.胃を整復し腹壁に固定した.内視鏡により整復され以後再発をみないとの報告もあるが,本症例のように整復困難な症例では,今回採用しなかったが,腹腔鏡下整復術も念頭に置くべきであると考えた.
  • 二村 直樹, 廣田 俊夫, 市橋 正嘉, 多羅尾 信
    2000 年 61 巻 4 号 p. 936-939
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹部鈍的外傷による腸管損傷では小腸の頻度が高く,胃の損傷は稀である.今回,腹部鈍的外傷による胃破裂の1例を経験したので報告する.症例は62歳の男性.夕食の約2時間後に自動車運転中,自動車同士の衝突事故で受傷した.シートベルトを装着していた.来院時,腹痛を認めたが,腹膜刺激症状はなく,腹部CTで異常を認めなかった.右大腿部に最も強い痛みを認め,頭部打撲,顔面挫創,胸部打撲,腹部打撲,右股関節脱臼骨折の診断で入院した.翌日も心窩部中心に腹痛が持続した. Blumberg徴候を認めたが筋性防御はなかった.翌日の腹部CT検査で腹腔内遊離ガス像があり,腸管破裂の診断で手術を行った.胃角部小彎後壁に約1cm大の破裂を認めた.その他の臓器に損傷は認めなかった.損傷部を縫合し,大網で被覆した.術後に創感染を認めたが軽快し,右股関節臼骨折の治療のために整形外科へ転科した.
  • 降籏 正, 佐久間 敦, 伊藤 生二, 門脇 淳, 小暮 洋暉, 藤盛 孝博
    2000 年 61 巻 4 号 p. 940-944
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃平滑筋肉腫または胃嚢胞の診断で開腹手術を施行した.触診上嚢胞性腫瘤を認め,胃嚢胞ど診断し,核出術を施行した.組織学的にはenterogenous cystであった.術後経過は良好で第12病日に退院し,現在まで再発はみられていない.胃の隆起性病変の中では,嚢胞性疾患は比較的稀であり,分類,治療方針は未だ確立されていない.われわれは胃enterogenous cystの1治験例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 石川 真, 宮原 利行, 後藤 全宏, 飯田 辰美
    2000 年 61 巻 4 号 p. 945-948
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性,急激な上腹部痛と腹部膨満にて来院した.上部消化管内視鏡検査にて胃体上部大彎に胃潰瘍が認められた.腹部CTにて上腹部に腹腔内出血が疑われ,肝左葉と脾門部に挟まれて,内部にhigh densityを伴う径8cmの腫瘤影が認められた.腹腔内出血,腹部腫瘤の診断で緊急手術を施行した.開腹すると腹腔内に約1,000mlの出血を認め,胃体上部大彎に連続する胃外に発育した手拳大の腫瘤が存在し,腫瘤から腹腔内に出血した状態であった.胃全摘術, D1廓清, ρ-Roux en Y吻合にて手術を終了した.摘出標本で,腫瘤は胃体上部大彎にあり,胃粘膜面に小潰瘍を形成し,主に胃外に発育し,腫瘤の一部が自潰し被膜が裂けた状態であった.腫瘤の病理診断は胃平滑筋肉腫であった.胃外発育型胃平滑筋肉腫の術前正診率は非常に低い.発見発悸として,腫瘤からの腹腔内出血を契機に発見された例はめずらしく,過去の報告をまとめ,その臨床病理学的検討を加え報告する.
  • 森 直樹, 堀見 忠司, 岡林 孝弘, 森田 荘二郎, 寺田 紘一
    2000 年 61 巻 4 号 p. 949-953
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    今回われわれの経験した残胃の平滑筋肉腫の報告は本邦では,わずか32例の報告を数えるに過ぎない.症例は62歳の女性で,主訴は食欲不振であった. 51歳時(11年前)に早期胃癌(L, O-IIc, m, n0, P0, H0, M0, stage I A, tub1, ly0, v0)にて幽門側胃切除(D2郭清Billroth I法)施行.平成10年7月頃(62歳)より食欲不振,左背部のすくみ感を自覚し,諸検査の結果,残胃に発生し,肝外側区域,膵体尾部に浸潤した平滑筋肉腫と診断された.同年10月23日,残胃全摘(D2郭清),胆嚢摘出,膵体尾部切除,脾摘,肝外側区域切除,肝S5の腫瘍核出術を行い, ρ-Roux-Yにて再建を行った.摘出標本の大きさは20×15×12cm,重量は1730gと巨大なものであった.術後10ヵ月現在,患者は肝転移治療を行っているが健在である.
  • 船井 和仁, 金丸 仁, 横山 日出太郎, 白川 元昭, 橋本 治光, 吉野 吾朗
    2000 年 61 巻 4 号 p. 954-957
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    早期胃癌穿孔は稀であるが,今回,早期胃癌の穿孔例に対し,二期的手術により根治術を施行した症例を経験したので報告する.
    症例は59歳,女性.心窩部痛を主訴に当院を受診し,胸部立位単純X線写真で,両側横隔膜下にfree airを認めた. CTで穿孔部と思われる胃壁の断裂を認め,胃穿孔と診断し,大網充填術を施行した.手術では,胃体上部前壁小彎側に8mmの穿孔を認めた.第10病日に施行した内視鏡検査では,胃体上部小彎の「O' (III+IIc) T2」の進行胃癌と診断した.生検診断では印環細胞癌であった.第24病日に胃全摘,脾臓合併切除, D2郭清を施行した.病理組織学的には深達度mの早期胃癌であった.患者は術後7ヵ月経過した現在,再発の兆候なく健在である.
    われわれは胃穿孔症例に対しては,潰瘍病変の治療としてまず大網充填術を行い,術後の胃内視鏡で悪性の診断がついた場合には,二期的に根治術を行うのが良いと考えている.
  • 星野 光典, 石井 博, 大山 祥, 太田 篤, 村井 紀元, 新谷 隆, 横川 京児, 草野 満夫, 鈴木 博, 新井 一成
    2000 年 61 巻 4 号 p. 958-962
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    CA19-9産生胃粘液癌の1例を経験したので報告する.症例は46歳,男性.検診でCA19-9高値を指摘され,精査により,胃幽門前庭部の1型進行胃癌と診断された. 1996年7月12日幽門側胃切除,リンパ節郭清術を施行し,病理所見では癌部の本体は粘液結節からなり,免疫組織学的にも抗CA19-9抗体に染色されCA19-9産生胃癌と診断された.血清CA19-9は胃切除と共に急速に低下し, 3年経過した現在に至るまで正常値であるが, CA19-9高値群は予後不良であるため今後も厳重な経過観察が必要であるものと考えられた.
    CA19-9産生胃癌の本邦報告例は, 9例しかなくまたCA19-9産生胃粘液癌は自験例も含め2例とまれな症例と考えられたため報告した.
  • 礒垣 淳, 小林 利彦, 吉田 雅行, 川辺 昭浩, 和田 英俊, 数井 輝久
    2000 年 61 巻 4 号 p. 963-967
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性.既往歴として甲状腺癌にて甲状腺全摘術を受けている.末端肥大症の診断にて当院内科通院中黒色便を自覚し胃内視鏡検査にて異常を指摘され入院となった.胃噴門部小彎側に大きさ5×5mmの陥凹性病変が認められ,生検にて低分化腺癌の診断を得た.本人の強い希望もあり開腹下の胃部分切除術が施行された.病変は大きさ7×5mmのIIc型であり病理組織学的には一部に印環細胞癌を伴う低分化腺癌であった.末端肥大症では,成長ホルモンにより腫瘍発生が促進される可能性が示唆されている.大腸腫瘍との合併例は多く報告されているが胃癌との合併例は本邦では比較的少なかった.末端肥大症をもつ患者においては,悪性腫瘍の合併は重要な予後決定因子であり,その長期経過観察において常に留意すべき合併症であると考えられる.
  • 足立 格郁, 山本 達人, 安藤 静一郎, 佐藤 仁俊, 都志見 睦生, 都志見 久令男
    2000 年 61 巻 4 号 p. 968-971
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    患者は59歳,女性.全身倦怠感と黒色便を主訴に近医受診,上部消化管出血の疑いにて当科紹介,入院となった.上部消化管内視鏡検査および低緊張性十二指腸造影により,十二指腸第2部に有茎性の巨大ポリープが発見され同部位からの出血が確認された.生検の結果と合わせてBrunner腺腫と診断され,巨大腫瘍に対して外科的切除がなされた.摘出標本は70mm×36mm×19mm (茎部は20mm)で,病理組織学的診断はBrunner腺腫であった.近年Brumer腺腫に対する内視鏡的治療例の報告が増加しているが,外科的切除の適応症例も含まれ,手術を厭うべきでないと考えられた.
  • 中川 国利, 鈴木 幸正, 桃野 哲
    2000 年 61 巻 4 号 p. 972-976
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性で,全身倦怠感と貧血を主訴として来院した.低緊張性十二指腸造影検査では,十二指腸第2部に陰影欠損像を認めた.上部消化管内視鏡検査では, Vater乳頭口側に易出血性で深い潰瘍を伴う隆起性病変を認めた.腹部超音波検査, CT検査, MRI検査では径5.5cm大の腫瘤を認め,選択的動脈造影では腫瘍濃染像を伴っていた.腫瘍の表面は平滑で,リンパ節転移も認めなかったため,幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行した.病理組織学的には紡錘形細胞が増殖し,核分裂像を400倍率10視野で6個認めた.また免疫組織化学的にSMA, desmin, NSE, S-100蛋白が共に陰性であったことから,十二指腸stromal tumorと診断した.術後4ヵ月現在,外来にて経過観察中であるが,再発所見は認めていない.しかし,腫瘍径が5.5cmと大きく,核分裂像が多いことから,悪性の可能性が高く,慎重なる経過観察が必要である.
  • 北田 正博, 中山 一雄, 小久保 拓, 長谷川 聡, 笹嶋 唯博
    2000 年 61 巻 4 号 p. 977-980
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Meckel憩室の多くは無症状に経過するが腸閉塞,憩室炎,穿孔等の急性腹症として外科的治療の対象となることもある. Meckel憩室を起因とした腸閉塞に対する手術を2例経験したので,文献的考察を加え報告する.
    症例1, 19歳男性,過去数回,原因不明の腸閉塞症状があり,保存的治療で軽快していたが,今回,改善を認めず手術となった.回腸に狭窄部位があり腸切除を施行, Meckel憩室を先進部とした腸重積であった.
    症例2, 18歳男性,右下腹痛にて受診,過去手術の既往はなかった.急性腹症,腸閉塞の診断で手術を施行した. mesodiverticular vascular bandを起因とした絞扼性イレウスであったが,腸管の虚血性変化は少なく,憩室切除のみを施行した.
    腸閉塞症状を呈する比較的若い年代の症例に遭遇した場合,本疾患の可能性がある事を念頭におくべきと考えられた.
  • 和田 有子, 金子 源吾, 疋田 仁志, 堀米 直人, 神頭 定彦, 千賀 脩, 宮川 信, 原田 大
    2000 年 61 巻 4 号 p. 981-985
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    小腸gastro-intestinal stromal tumor(以下GIST)の2例を経験したので報告する.症例1は64歳,女性で下血を主訴に来院.腹部超音波で下腹部正中に腫瘤を主訴に来院.腹部超音波で下腹部正中に腫瘤を認め精査の結果,空腸腫瘍と診断.空腸部分切除を施行した.摘出標本60×50×35mm大の灰白色調,広範な出血巣を伴う充実性の粘膜下腫瘍であった.症例2は72歳,女性.吐血および下血を主訴に来院.上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚に易出血性の粘膜下腫瘍を認めた.十二指腸良性腫瘍と診断し十二指腸部分切除術を施行した.摘出標本は35×35×25mm大の黄白色~褐色調の粘膜下腫瘍であった. 2症例とも病理組織学的には異型に乏しい紡錘形細胞の束状増生を主体としており,各種免疫染色によりGIST, neural typeと診断された.出血を契機に小腸粘膜下腫瘍が発見されることは少なくないがその際GISTの可能性を念頭におき,精査をすすめる必要があると考えられた.
  • 花岡 俊仁, 鈴木 栄治, 藤井 徹也, 高橋 寛敏, 石田 数逸, 三原 康生
    2000 年 61 巻 4 号 p. 986-990
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,女性.頭痛,動悸,全身倦怠感を主訴に受診し,高度貧血を認め精査を行った.腹部超音波, CT, MRI検査にて子宮腹側に接して径7cm程の充実性腫瘍を認め,小腸透視では明らかな狭窄や腫瘤影は指摘できなかった.開腹すると,回腸末端から70cmの回腸より管腔外性に発育した手拳大の腫瘍を認め,回腸切除術を施行した.病理組織学的に腫瘤は紡錘形細胞の密な増殖よりなり, storiform patternが明瞭に認められ,通常型の悪性線維性組織球腫と診断した.手術後3年6ヵ月を経過し,再発の徴候なく健在である.
    小腸原発悪性線維性組織球腫は極めて稀な疾患で,本邦報告例は14例である.中高年者の男性に好発し,腸閉塞と出血をきたして発症する場合が多く,術前確定診断は困難である.腹膜播種,血行性転移例は予後不良であるが,リンパ節転移と周囲浸潤に対しては根治的手術により長期生存が得られる可能性があると考えられた.
  • 大楽 耕司, 西 健太郎, 久我 貴之, 善甫 宣哉, 江里 健輔, 亀井 敏昭
    2000 年 61 巻 4 号 p. 991-994
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    魚骨が原因と思われる急性虫垂炎の稀な1例を経験したので報告する.症例は21歳,女性.右下腹部痛,下痢を主訴に当院を受診.受診時,右下腹部に限局性の疼痛,圧痛および軽度の筋性防御を認めた.血液検査では白血球数13900/μl, CRP 1.Omg/dlと上昇していた.腹部CT検査では右下腹部において,虫垂の腫脹と線状のhigh density areaが認められ糞石が疑われた.以上の所見より急性虫垂炎の診断のもとに手術を施行した.術後の病理診断は蜂窩織炎性虫垂炎で,摘出標本における虫垂内腔には1cm長の魚骨を認めた.虫垂炎は虫垂内腔の閉塞およびそれに併う細菌感染より生じると考えられている.今回の症例では,魚骨が虫垂内腔の閉塞をきたし虫垂炎を惹起したと考えられた.
  • 内田 正昭, 木許 健生, 大野 智, 鈴木 喜雅, 東儀 公哲, 三島 巌
    2000 年 61 巻 4 号 p. 995-999
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    発見契機が異なる虫垂粘液嚢胞腺腫3例を報告し,最近5年間の自験例を含む本邦報告64例の術前診断および治療の現況を考察した.[症例1]69歳,男性.食欲不振の精査中血清CEA高値を指摘される.これを契機に各種画像検査で本症と診断した.[症例2]85歳,女性.大腿ヘルニア根治術施行時,ヘルニア嚢にゼリー状物質が付着していた.病理組織所見で腹膜偽粘液腫が疑われ精査したが,卵巣嚢胞と鑑別つかず術中本症と診断した.[症例3]68歳,女性.検診の腹部超音波検査で偶然右下腹部に嚢胞性腫瘤認められ,これを契機に精査し本症と診断した.以上の全例に盲腸部分切除術を施行した.今回の集計で,本症の術前診断率は向上しているが,良性と悪性の鑑別は依然困難であり,半数以上に回盲部切除術以上の術式が選択されていた.本疾患に対しては再手術の可能性を説明して初回の手術侵襲は最低限にとどめるべきと思われた.
  • 館花 明彦, 福田 直人, 永山 淳造, 吉良 邦彦, 酒井 滋, 山川 達郎
    2000 年 61 巻 4 号 p. 1000-1004
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    Ogilvie症候群は,器質的狭窄のない結腸の急性仮性閉塞である.
    (症例1) 57歳,男性.高血圧,癲癇に対し内服治療中. 1997年10月に腹痛と腹満感を主訴に当院受診し,腸閉塞の診断にて入院.結腸の穿孔が危惧され,内視鏡的治療が困難なためS状結腸に人工肛門を造設し軽快した.術前検査および術中所見にて大腸には器質的狭窄を認めず, Ogilvie症候群と診断した.
    (症例2) 75歳,男性.既往歴はない. 1998年7月,腹満感を主訴に当院受診,腸閉塞の診断にて入院.各種検査にて大腸の器質的狭窄を認めず, Ogilvie症候群と診断した.大腸内視鏡的減圧術が効を奏し軽快・退院した.
    Ogilvie症候群の治療に際し,穿孔の危険性がある場合は姑息的手術が施行されることもあるが,大腸内視鏡的減圧術が有効な症例が報告されている.今回初期治療に際し,内視鏡的減圧術を行うも手術治療に至った1例と,有効であった1例を経験した.
  • 四万村 司, 山田 恭司, 正木 ルナ, 桜井 丈, 伊崎 友利, 山口 晋
    2000 年 61 巻 4 号 p. 1005-1008
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    結腸癌による空腸結腸瘻は比較的まれな合併症である.今回われわれは空腸結腸瘻を形成した横行結腸癌の症例を経験したので報告する.
    症例は50歳,男性,食欲不振,体重減少を主訴に精査治療目的にて入院.注腸造影,上部消化管造影,腹部CT検査を施行し横行結腸癌による空腸結腸瘻の術前診断のもと手術を施行した.手術所見は横行結腸左側に小児頭大の腫瘤を認め,空腸の一部と膵体尾部に浸潤を認めたため横行結腸切除,空腸部分切除,膵体尾部,脾合併切除術を施行した.また,術前検査にて胆石胆嚢炎も認めていたため胆嚢摘出術を施行した.横行結腸癌の組織学的診断は高分化型腺癌, si. n(-). P0. H0. M(-). stageIIIaであった.結腸癌による内瘻形成例は,文献的に検索した限りでは88例で,小腸結腸瘻形成例はそのうち23例であった.結腸癌による消化管内瘻形成例は組織学的には悪性度が比較的低いことが多く積極的な合併切除により治癒切除が期待される.
  • 内山 隆, 小谷野 憲一, 松田 巌, 阪口 周吉
    2000 年 61 巻 4 号 p. 1009-1012
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性,主訴は下痢である.初診時血液検査で貧血があり精査したところ,上部消化管造影,注腸造影で結腸十二指腸結腸瘻を認めた.大腸内視鏡では肝彎曲部付近の上行結腸に2'型の隆起性病変を認めた.十二指腸結腸瘻を伴った進行結腸癌と診断し拡大右半結腸切除術,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術, S5肝部分切除術を施行した.病理診断ではA, 8×6cm, si (十二指腸), P0, ly3, v3, h1, n0, ow(-), aw(-)であった.術後48カ月を経過した現在も再発の徴候はなく健在である.十二指腸結腸瘻を伴う進行結腸癌は限局浸潤型であれば拡大手術により長期生存がえられる可能性がある.
  • 山中 幸二, 臼井 隆, 曳田 知紀
    2000 年 61 巻 4 号 p. 1013-1017
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性,気尿,糞尿,下痢と発熱にて受診し,膀胱瘻の精査と治療のため入院となった.軽度の下腹部痛を訴え,腹部CTでは著明な結腸壁と膀胱壁の腫脹があり,その周囲に炎症所見を伴っていた.注腸,膀胱造影では,瘻孔は描出せず,大腸内視鏡を用いての瘻孔造影にて瘻孔が描出された.大腸内視鏡では瘻孔部の狭窄のため,その奥にある結腸癌は確認できず,瘻孔形成の原因として大腸憩室炎を疑った.手術時に瘻孔部の結腸に腫瘍が触知されS字状結腸癌であることがわかった.結腸と膀胱は強く癒着していたが,剥離は可能であった,手術は, S字状結腸切除と膀胱部分切除を行った.癌部の肛門側の近傍に瘻孔開口部がみられ,病理組織検査で瘻孔開口部まで癌浸潤がみられるのだが,瘻孔壁には著明な炎症細胞浸潤がみられた.従来考えられてきた膀胱に直接浸潤した癌の潰瘍中心部からの瘻孔形成ではなく,結腸癌の近傍にあったS状結腸憩室炎による膀胱瘻の合併を否定できないと思われた.
  • 川嶋 寛, 石田 秀行, 猪熊 滋久, 山田 博文, 藤岡 正志, 出月 康夫
    2000 年 61 巻 4 号 p. 1018-1021
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    直腸脱は高齢者に好発することから,非侵襲的な術式が選択されることが多いが,若年者に対する術式については,一定の見解はない.今回,若年者完全直腸脱に対し,前方切除・仙骨固定術を行い,良好な結果を得たので報告する.症例は22歳,男性. 3年前より直腸の肛門外脱出を認めたが,自分で用手的に還納していた.今回,約6cmの直腸の肛門外脱出を自分で還納できなくなり,当科に入院.入院後の画像診断で,下部直腸の著明な拡張・直腸壁の肥厚・ Douglas窩の異常低位を認めた.開腹時,口側直腸が肛門側にきわめて容易に重積する状態であり,前方切除(側端吻合)・仙骨固定術を行った.術後経過は良好で,術後合併症なく,術後2年の現在,再発の兆候は認めていない.本術式は直腸脱の成因からみて最も根治的な術式であり,若年者完全直腸脱の術式として選択肢の一つとして考慮してもよいと考えられる.
  • 野沢 直史, 大谷 剛正, 国場 幸均, 相原 成昭, 井原 厚, 柿田 章
    2000 年 61 巻 4 号 p. 1022-1026
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の男性.主訴は粘血便.他院の大腸鏡検査により直腸悪性リンパ腫を指摘され,当院に紹介入院となった.術前精査で他臓器病変はなくNaqviの病期分類でStage IIを疑い,化学療法前に手術を施行することになった.
    手術は,膀胱機能を考慮し,直腸癌の手術に準じた腹会陰式直腸切断術,上方D3・側方D2郭清を施行した.病変は11.2×11.0×3.0cm大の2型様であり,近接臓器への浸潤は認めなかった.病理組織所見はa1で,上方n3側方n2であった.術後30日目にCHOP療法を開始し2クール施行したが,効果を認めず術後80日目に会陰部に再発を認め,腹膜播種が進行し術後140日目に死亡した.
    今回の症例を経験して,化学療法の効果の有無が予後を左右する因子ではないかと思われた.また,全身的化学療法の効果が無いと判断したとき,動注化学療法や放射線療法も考慮すべきと反省させられた.
  • 小村 憲一, 小村 哲也, 増田 英樹
    2000 年 61 巻 4 号 p. 1027-1030
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は32歳女性. 1ヵ月前より,肛門部にしこりを自覚し,当院外来を受診する.初診時肛門縁近くの1時方向皮下に直径1cmの円形隆起性の結節を認め,軽度の圧痛を伴っていた.切開を加えたところ断面が白色の円形の腫瘤が認められたため,局部麻酔にて切除術を施行した.病理診断にて,顆粒細胞腫との診断を得たが,断端近くに腫瘍細胞の残存が疑われたため,瘢痕部を広範囲に含めた追加切除術を施行した.再度の病理診断では腫瘍細胞の残存は認められなかった.顆粒細胞腫はほとんどが良性腫瘍であるが, 2%に悪性化を認めるといわれている.肛門の診察が手術に際し,皮下や粘膜下に存在する硬結がみられる場合は,顆粒細胞腫も念頭において治療することが重要と思われた.
  • 柴原 弘明, 前田 光信, 三田 三郎, 早川 英男, 亀井 桂太郎
    2000 年 61 巻 4 号 p. 1031-1034
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は39歳男性. 1997年10月に胃上部粘膜下腫瘍の診断で噴門側胃切除を施行,術後病理組織学的に胃gastrointestinal stromal tumor (GIST), uncommitted typeと診断された. 1998年10月の腹部CT検査で肝臓に多発性腫瘤像を認め,さらに腹部超音波検査・腹部MRI検査で胃GIST術後の多発性肝転移と診断した. 12月に肝右葉切除,肝S1・S3・S4部分切除,肝動注リザーバー留置を施行した.病理組織学的には胃原発巣と同様の腫瘍細胞であり,胃GIST, uncommitted typeの肝転移と診断された.肝切除後約1年を経過したが,再発を認めていない.胃GIST肝転移に対しては,胃平滑筋肉腫肝転移と同様,積極的な肝切除が望ましいと思われる.
  • 泉 俊昌, 岡田 章一, 斉藤 貢, 牧本 和生, 田口 誠一, 石田 誠, 山口 明夫
    2000 年 61 巻 4 号 p. 1035-1039
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    肝動脈TAEと肝動注の併用後に切除し組織学的に完全壊死を確認した直腸癌多発性肝転移の1例を報告する.症例は62歳女性.直腸癌で高位前方切除術を施行も,術後3ヵ月にて肝右葉に2個の転移巣が出現した. ADR30mg, MMC10mgおよびLipiodol 5mlにて肝動脈TAEを施行,その後リザーバーを留置し間歌的動注療法を施行した (5-Fu 2,000mg/m2/48hrs qwを4回, 5-Fu 1,000mg/m2/5hrs qwを5回,さらに5-Fu 1,000mg/m2/5hrs qwにCDDP20mgを加え4回施行し,総投与量は5-Fu21.3g, CDDP80mgであった).しかしCT所見上有効な肝転移巣の縮小は得られず肝切除術を施行した.組織学的検索では肝転移巣はいずれも著明な変性壊死像を示しviableな腫瘍細胞は認めなかった.肝切除後4年10ヵ月を経過し,再発なく健在である.本症例では肝転移巣の画像上の縮小率と組織学的効果の解離が認められ,肝動注療法での効果判定の困難さが示唆された.
  • 真々田 裕宏, 恩田 昌彦, 田尻 孝, 秋丸 琥甫, 有馬 保生, 吉田 寛
    2000 年 61 巻 4 号 p. 1040-1043
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    教室では原発性肝癌に対し,腹腔鏡下肝切除術を施行した2例を経験した.両腫瘍とも孤立性で, 1例は肝内側区域(S4),他の1例は右後下区域(S6)に存在していた.トロッカーを計4本挿入し,腫瘍の占拠部位と主要血管との関係を術中超音波検査にて同定した.肝実質の切離は出血量軽減のためマイクロ波凝固を組み合わせ, laparoscopic coagulating shearsで行った.術後,患者は早期の回復が得られた.本術式は,患者にとって良いQOLが得られるが,長期予後の評価についてはより長い期間の経過観察が必要である.
  • 西江 浩, 水澤 清昭, 小川 東明, 渡部 博昭, 坂谷 貴司
    2000 年 61 巻 4 号 p. 1044-1047
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胆道系内分泌腫瘍は稀な疾患であるが,なかでも胆管原発の内分泌細胞癌は極めて稀である.症例は67歳男性で,閉塞性黄疸にて入院.経皮経肝胆道ドレナージ(以下, PTCD)施行後,下部胆管癌の診断にて幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行.組織学的検索にて胆管原発の内分泌細胞癌と診断された.術後1年9ヵ月後に, PTCD経路の肝および皮下に播種性転移をきたし再手術を施行した.通常内分泌細胞癌は予後不良な疾患であるが,再手術から2年2ヵ月経過した現在再発の兆候なく,良好な経過をたどっている.また, PTCD後の播種性転移は稀ではあるが,原疾患が予後の期待できる場合には瘻孔部の再発予防処置および播種性転移による再発に留意した経過観察が必要である.
  • 新居 利英, 矢吹 英彦, 唐崎 秀則, 富田 一郎, 稲葉 聡
    2000 年 61 巻 4 号 p. 1048-1052
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近経験した3例の膵頭十二指腸切除術後の膵消化管再吻合症例を報告した.症例1は膵頭十二指腸ガストリノーマにてPpPD-IV C法(膵胃吻合)施行後の繰り返す腹痛のため膵胃吻合離断,膵空腸吻合施行.膵管の開口は確認されていたため,初回手術の際に膵の切断部位および胃後壁の吻合部位に問題があったと考えられた.症例2は下部胆管癌にてPpPD-II法施行.膵空腸吻合縫合不全による出血のため膵空腸吻合離断,膵胃吻合を行った.全胃温存症例での膵胃吻合は容易であった.症例3は膵頭部粘液産生腫瘍にて10年前PpPD-II法施行後の膵空腸吻合部狭窄およびSMA周囲再発例. SMA周囲郭清ならびに胆管空腸,膵空腸吻合の再吻合を施行した.良性例でも積極的に膵頭十二指腸切除術を施行している今日,急性期,慢性期を問わず膵消化管吻合のトラブルは積極的な再手術により改善でき得るものと考える.
  • 藤田 利枝, 小原 則博, 天野 実, 宮田 昭海, 河合 紀生子
    2000 年 61 巻 4 号 p. 1053-1057
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腹部CT検査にて上腸間膜静脈血栓症と診断し,血栓溶解剤動注療法を行い症状は軽快したが,約2カ月後に小腸狭窄を呈し開腹手術を施行した1例を報告する.
    症例は68歳男性.上腹部不快感と腹満感の精査目的で入院後,イレウス症状を呈し,当科紹介となった.腹部CT検査にて上腸間膜静脈血栓症と診断し,上腸間膜動脈より経動脈的にウロキナーゼを1日24万単位, 5日間持続動注した.
    症状は軽快し経口摂取も可能となったが, 2カ月後に嘔気・嘔吐を生じ,再びイレウス症状を呈したため開腹手術を行った.開腹時,回腸に壊死性変化を伴った約5cmの狭窄部を認めた.小腸部分切除術を施行し,術後経過は良好である.病理組織所見では潰瘍形成および小腸間膜への穿通を認め虚血性慢性期狭窄の像と診断した.
  • 広松 孝, 小林 建仁, 所 昌彦, 太田 俊介, 近松 英二, 徳丸 勝悟
    2000 年 61 巻 4 号 p. 1058-1061
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    症例は64歳女性. 1997年1月より左腰部痛出現.整形外科受診するも異常なしと言われた.当科受診し腹部CT施行したところ,左腎下極付近に8.0×7.0cm大の腫瘤を認めたため,精査目的にて入院.血管造影にて,左結腸動脈の圧排所見を認め,腹部MRIにて後腹膜にT1強調像で低信号, T2強調像で比較的高信号の腫瘤を認めた. US下腫瘍生検にて平滑筋肉腫の診断を得た. 1998年9月7日腫瘍摘出術を行った.腫瘍は下行結腸間膜に覆われ後腹膜に存在し,他臓器浸潤はみられず,栄養動脈である卵巣動脈を取り囲むように存在していた.腫瘍と卵巣動静脈を合併切除した.病理所見は紡錘形細胞が渦巻き状構造をとっており,平滑筋肉腫と診断された.化学療法は施行していない.術後経過は順調で第16病日に退院した.後腹膜平滑筋肉腫は本邦でも100例程しか報告例がなく,その発生母地に関しては興味深い.若干の文献的考察を加え報告する.
  • 平 成人, 曽我 浩之, 宮口 直之, 小島 茂嘉
    2000 年 61 巻 4 号 p. 1062-1065
    発行日: 2000/04/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    患者は88歳の女性.右下腹部痛と嘔吐を主訴に来院した.過去に2回,右閉鎖孔への腸管のヘルニア嵌頓による腸閉塞の既往があり,いずれもイレウス管による腸管減圧で嵌頓解除されている.今回は3回目の右閉鎖孔への腸管嵌頓であり,手術を施行した.開腹すると回腸末端より約100cm口側の小腸が右閉鎖孔へ嵌入していた.還納は容易であり,腸管に虚血所見を認めなかった.ヘルニア門径は8mmであり,ヘルニア嚢を腹腔側へ反転し,切開を加え閉鎖孔を明らかにした.ヘルニア修復はBard® Marlex® meshをトリミングの後,閉鎖孔を覆うように縫着固定して修復するinlay graft法で行った.術後経過は良好で合併症なく14日目に退院した.本法は周囲組織に全く緊張をかけることなく,また閉鎖動静脈や閉鎖神経を圧迫することのない安全確実で容易な修復法であり,極めて有用と考えられた.
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