11q23異常はDNA topoisomerase II阻害剤による治療関連急性骨髄性白血病(t-AML)においてしばしば認められる。また,paclitaxelは乳癌の化学療法におけるkey drugとしてすでに確立されているが,単剤でt-AMLを発症した報告はほとんどない。われわれはpaclitaxelによる乳癌治療後にその骨髄転移と共存して発症した,11q23異常を有するt-AMLの1例を経験したので報告する。症例は61歳,女性。54歳時に乳癌を発症し,切除4年後に肺転移と骨転移をきたしたためにpaclitaxel 80 mg/m
2を毎週,計10クール投与され(総投与量1,200 mg),放射線治療が追加された。その後も骨転移は広がる一方,paclitaxelの投与から3年後に汎血球減少が出現した。骨髄検査により,t(11;19)(q23;p13)染色体異常を伴うAML-M4と診断し,また,病理組織学的には同一骨髄内に乳癌の骨髄転移が認められた。本症例は他に抗癌剤の使用歴はなく,臨床経過からpaclitaxel投与にともなうt-AMLと推測された。
抄録全体を表示