臨床血液
Online ISSN : 1882-0824
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56 巻, 6 号
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Picture in Clinical Hematology
第76回日本血液学会学術集会
Asian Joint Panel Discussion
  • 鈴木 隆浩
    2015 年 56 巻 6 号 p. 577-585
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    鉄過剰症患者においてキレート療法後の血球回復例が多数報告されているが,鉄過剰症が造血系に与える影響についてはほとんど分かっていない。そこで我々は鉄過剰症マウスを作成し,過剰鉄が造血組織に与える影響について解析を行った。  鉄過剰マウスはコントロールと比較して末梢血血算に有意な変化を認めなかった。鉄過剰マウスの骨髄では,骨髄球系前駆細胞の増加が認められたが,赤芽球系細胞や造血幹細胞の数,活性に変化は認められなかった。しかし,鉄過剰マウスは骨髄移植後の血球回復が有意に遅延しており,骨髄ストローマ細胞におけるいくつかの造血支持サイトカイン(CXCL12, VCAM-1, Kit-ligand, IGF-1)の発現低下が認められた。血中エリスロポエチンや肝臓トロンボポエチン量の低下も認められており,骨髄・肝臓では酸化ストレスの増大が確認されたため,過剰鉄はおそらく骨髄や肝臓などの酸化ストレス増大を介して造血支持能を傷害すると考えられる。
Presidential Symposium
  • 上岡 裕治, 水野 礼, 松田 道行
    2015 年 56 巻 6 号 p. 586-593
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    多数のケミカルメディエイターが炎症組織への好中球浸潤を制御している。個々のケミカルメディエイターが好中球に及ぼす影響については解析が進んでいるが,それらのケミカルメディエイターが,総体として生体内で協調的あるいは競合的に作用する機構はほとんどわかっていない。好中球が生体内でどのような動きをするかを知るためには,細胞内情報伝達系の活性を生きた組織で可視化する必要がある。この目的のために,遺伝子にコードされるフェルスター共鳴移動(FRET)の原理に基づくバイオセンサーを用いることができる。この総説においてはまずFRETバイオセンサーについて概説し,ついで,好中球内の情報伝達分子が血管外遊出過程においてどのように制御されているかをFRETバイオセンサーを使って解析した結果について述べる。これに関連して,FRETバイオセンサーを発現するトランスジェニックマウスの開発と多光子顕微鏡を用いた生体イメージングについても言及する。
  • 水野 紘樹, 菊田 順一, 古家 雅之, 石井 優
    2015 年 56 巻 6 号 p. 594-600
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    近年,生きたままの細胞や組織の生命現象を観察する「ライブイメージング技術」が注目されている。特に,組織深部の観察が可能な「二光子励起顕微鏡」の登場により,個体・組織を生かしたままで生きた細胞の“動き”を観察することが可能となった。我々は生体二光子励起イメージング系を駆使することで,マウスを生かしたまま骨髄内を観察する方法を確立した。この技術を用い,破骨前駆細胞の骨への遊走・骨髄内での位置決めのメカニズムを明らかにした。さらに,骨表面上での生きた成熟破骨細胞の骨吸収過程を可視化することにも成功し,破骨細胞の骨吸収制御機構を明らかにした。新たな取り組みとして,破骨細胞と骨芽細胞のカップリングの可視化や白血病細胞の骨髄内での動態解析を行っている。本稿ではこれらの研究成果の解説に加え,イメージング技術の応用と将来性について実際の画像を紹介しながら概説する。
Symposium 5
  • 平尾 敦
    2015 年 56 巻 6 号 p. 601-605
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    サイトカイン,増殖因子,アミノ酸などの各種栄養素は,細胞の増殖,生存,分化のプロセスにとって重要な因子である。これらの因子の変動を感知する栄養センサーシグナルにおいて中心的役割を果たしているのが,mammalian/mechanistic target of rapamycin (mTOR)である。古くより,ラパマイシンを用いたmTORの機能解析が行われてきたが,従来の薬理学的なアプローチで得られた知見が,必ずしも,本来の役割を反映していないことも指摘されるようになった。それを補うように,最近は遺伝子改変マウスを用いた機能解析が次々に発表され,mTORは,幹細胞,発がん,寿命制御など,多彩な生物学的役割を果たしていることが明らかになってきた。今後,mTORシグナルの詳細を理解することにより,造血および白血病幹細胞の動態制御を司る分子機構が明らかになり,白血病根治のための新規治療法が開発されると期待される。
  • 國崎 祐哉
    2015 年 56 巻 6 号 p. 606-613
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    造血幹細胞は,定常状態において,細胞周期静止期にあるが,需要に応じて自己増殖または,すべての血球系統に分化する機能を持つ造血器特異的幹細胞である。このような造血幹細胞の運命決定は,「造血幹細胞ニッチ」と呼ばれる機能的に特殊な骨髄微小環境によって厳格な制御を受けていると考えられている。これまでの多くの研究により,様々な非血液細胞がニッチを構成していることが明らかとなっているが,骨髄内における静止状態にある造血幹細胞の局在は,議論の的であった。我々は,レーザースピニングディスク共焦点顕微鏡を用いた骨髄ホールマウントイメージング技術を開発し,静止状態にある造血幹細胞は,骨髄中の骨内膜下に多く存在する細動脈周囲に存在していること(細動脈性ニッチ)を明らかにした。この新しいイメージング技術を用いて得られた知見とこれまでの報告をふまえ,造血幹細胞ニッチの新たなモデルについて議論する。
Symposium 7
  • 亀田 拓郎, 幣 光太郎, 下田 和哉
    2015 年 56 巻 6 号 p. 614-622
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferative neoplasm, MPN)では,driver mutationと考えられているJAK2, MPL, CALRの変異が90%以上に排他的に認められる。それに加えTET2, DNMT3Aなどのエピゲノム制御関連遺伝子の異常も報告されている。エピゲノム制御関連遺伝子の正常造血における機能は報告されているが,MPNにおける役割は不明であった。代表的なdriver mutationであるJAK2V617F変異とエピゲノム異常であるTET2欠損の,単独異常と2重異常のマウスモデルを解析し,JAK2変異MPNにおけるTET2欠損の2つの役割,即ち『JAK2変異造血幹細胞の機能を強化しMPN発症を支持する役割』と『MPNを重症化させる役割』を明らかにした。リスク評価法,治療法などに関して,単独のみならず,複数の遺伝子異常を考慮した新しい戦略が必要である。
Symposium 9
  • 嶋 緑倫
    2015 年 56 巻 6 号 p. 623-631
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    血友病Aの未解決の課題は,頻回の経静脈投与,インヒビター陽性例の治療と高額な医療費である。これらの課題を解決するためにヒト型バイスペシフィック抗体(ACE910)が開発された。本抗体は一方がFIXa, もう一方がFXを認識して両因子を反応しやすい位置関係に維持することによりFVIII代替作用を有する。サル後天性血友病AモデルにおいてACE910は進行中の出血のみならず自然関節出血に対しても有効であった。最近,ACE910の薬物動態,薬効および安全性を明らかにするために健常人計64名,血友病A患者18名を対象に第1相臨床試験が我が国で実施された。半減期は約30日で,ACE910に関連する重篤な有害事象は見られなかった。さらに,ACE910の週1回の皮下投与により出血回数はインヒビターの有無にかかわらず激減した。ACE910は長時間作用するために1~2週毎の皮下投与で,インヒビターの有無に関係なく出血を予防できる長所があるため,血友病患者のQOLが著明に向上する可能性がある。
  • ―新しい遺伝性血栓性素因―
    小嶋 哲人, 高木 明, 村田 萌, 高木 夕希
    2015 年 56 巻 6 号 p. 632-638
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    静脈血栓塞栓症は様々な先天的/後天的リスクにより発症する多因性疾患で,従来欧米人に多く日本人には少ないとされてきたが,診断技術の向上や食生活の欧米化などにより日本人にも決して少なくないことが明らかにされている。遺伝性血栓症の原因として様々な凝固関連因子の遺伝子異常が同定されているが,いまだに原因不明な遺伝性血栓症もある。我々は長らく原因不明であった遺伝性静脈血栓症家系において,通常は出血症状を示すプロトロンビン異常症で逆に血栓症の原因となる遺伝子変異を発見した。詳細な解析結果から,この変異由来トロンビンは凝固活性がやや弱いものの,アンチトロンビン(AT)による不活化に抵抗性を示すため長時間活性が残存するため血栓症の原因となることが判明し,新しい血栓性素因・ATレジスタンス(ATR)として報告した。本稿では,新しい遺伝性血栓性素因・ATRについて最近の知見も踏まえて概説する。
Symposium 11
  • 山口 素子
    2015 年 56 巻 6 号 p. 639-644
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型(extranodal NK/T-cell lymphoma, nasal type; ENKL)はわが国の全悪性リンパ腫の3%未満である。2つの臨床試験の結果により日本のENKL治療は過去10年間で大きく進歩した。日本臨床腫瘍研究グループは限局期例を対象として同時併用化学放射線療法の第I/II相試験(JCOG0211-DI)を実施した。RT-2/3DeVIC療法の5年全生存割合は70%と良好で,有害事象は許容範囲内であった。NK腫瘍研究会はアジアの研究者と共同で,初発IV期・初回治療後再発・治療抵抗性ENKLに対するSMILE療法の臨床試験(SMILE-PI & PII)を行い,第II相試験の評価可能38例におけるSMILE療法2コースの奏効割合は79%であった。造血器腫瘍診療ガイドライン(2013)は,未治療IE期と頸部リンパ節浸潤のIIE期ENKLに対してはRT-2/3DeVIC療法を,そのほかのENKLではSMILE療法などL-asparaginaseを含む化学療法を推奨治療とした。これら新世代治療の実態把握のための大規模後方視的研究が進行中である。ENKLのより良い初回治療の開発には,放射線腫瘍医と血液腫瘍医の緊密な協同と国際共同研究が鍵である。
  • 石田 文宏
    2015 年 56 巻 6 号 p. 645-650
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    アグレッシブNK細胞白血病(ANKL)は成熟NK細胞の白血病で,生存期間中央値が3か月以内と予後不良である。東アジアに多く,8割以上がEBウイルスと関連する。最近実施した34例のANKL07研究では年齢中央値40歳で2相性分布を示した。ANKLの細胞はLGL様から高度異型まで多彩であり,また,三分の一の例では末梢血・骨髄の腫瘍細胞が20%未満であり,診断に留意する必要がある。臨床所見として発熱,肝障害,血球貪食症候群と進行性の経過を認めた。一部の症例ではL-アスパラギナーゼを含む化学療法と同種造血幹細胞移植(HSCT)が有効で治癒可能性が示唆された。節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型(ENKL)に対するHSCTは臨床病期II期以上の症例で完全奏効時に施行された場合には生存期間の延長や治癒につながる可能性があるが,至適な幹細胞ソース,実施時期,前処置等今後更に検討する必要がある。
第74回日本血液学会学術集会
学会奨励賞受賞論文
  • 武藤 秀治, 坂田(柳元) 麻実子, 千葉 滋
    2015 年 56 巻 6 号 p. 651-656
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    TET (Ten Eleven Translocation)ファミリータンパク質はメチルシトシンをヒドロキシメチルシトシンに変換する酵素であり,DNAの脱メチル化に重要な役割を果たしている。中でもTET2遺伝子異常は,骨髄異形成症候群,骨髄増殖性腫瘍,慢性骨髄単球性白血病,急性骨髄性白血病などの骨髄球系造血器腫瘍のみならず,血管免疫芽球性T細胞性リンパ腫,分類不能型末梢性T細胞性リンパ腫の一部といった濾胞性ヘルパーT細胞の特徴を有するT細胞性リンパ腫において高頻度に認められることが報告されてきた。これまで様々な種類のTet2 knockout/knockdownマウスの解析が報告されており,Tet2遺伝子異常は造血幹細胞の自己複製能,競合的再構築能の亢進を導き,ヒト同様,骨髄球系造血器腫瘍およびT細胞性リンパ腫を発症することが明らかとなってきた。TET2遺伝子異常は多様な造血器腫瘍の発症に関与する一方,一部の健常な高齢者にも見られることから,造血幹/前駆細胞に前がん状態を形成するfounder mutationであると考えられる。一旦TET2が障害を受けると,疾患特異的な変異が加わることで様々な造血器腫瘍に進展するところ,これを未然に防ぐゲートキーパーとしての役割を果たしている可能性がある。
  • 幣 光太郎, 亀田 拓郎, 下田 和哉
    2015 年 56 巻 6 号 p. 657-665
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    骨髄系腫瘍では,TET2を始めとするエピジェネティクス制御分子に高頻度に変異が生じている。TET2は5-methylcytosineから脱メチル化に必須の中間産物である5-hydroxymethylcytosine (5-hmC)への変換を触媒する酵素である。我々はgene trap法により作製されたTET2ノックダウンマウスを用いてTET2不全のin vivo表現型を解析した。このマウスでは,骨髄細胞ゲノムDNA中の5-hmC量が減少していた。TET2不全マウスは生後早期に死亡し,TET2が生存に重要な遺伝子を制御している可能性が示唆された。造血系ではTET2不全マウスの胎児肝由来血液細胞を移植したマウスは,軽度の骨髄系細胞の増加や髄外造血を認めたが,致死的腫瘍の発症は認めなかった。一方,コロニー継代実験や野生型細胞との競合・継代移植実験ではTET2不全造血幹細胞の自己複製能亢進が示唆された。
臨床研究
  • 石塚 賢治, 山野 嘉久, 宇都宮 與, 内丸 薫
    2015 年 56 巻 6 号 p. 666-672
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    Human T-lymphotropic virus type-I (HTLV-1)は成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL),HTLV-1関連脊髄症/熱帯性痙性脊髄麻痺などの原因ウイルスで,主に授乳や性交渉によって感染が成立する。本研究では国内4施設におけるHTLV-1感染者(キャリア)対応の実態を調べた。キャリア外来標榜施設では,献血時もしくは妊娠時の検査でHTLV-1感染を知り,HTLV-1関連疾患発症の有無についての検査やHTLV-1感染に伴う不安への説明や相談,関連疾患に対する説明を希望し受診する場合が多かった。受診者の約半数はHTLV-1感染を2年以上前に告知されており,近年のHTLV-1やキャリア外来への社会での認知から,キャリア自身の意識が変わったことが受診につながったものと考えられる。一方で,HTLV-1高度浸淫地域においてはかかりつけ医によって十分な対応がなされている可能性が高いと考えられた。HTLV-1非浸淫地域にある2施設ではHTLV-1キャリアと診断された受診者の50%以上が両親とも出生地は九州以外であり,HTLV-1キャリアは九州出身者に多いとされてきた事実の変貌が明らかになった。今後HTLV-1キャリア数は減少するものの,居住地の偏在は少なくなると考えられ,医療ニーズに適切かつ効率よく対応する体制の構築が重要である。
  • 宇佐美 信, 黒田 裕行, 吉田 正宏, 坂本 拡基, 下山 紗央莉, 嘉成 悠介, 山田 充子, 安部 智之, 藤井 重之, 前田 征洋
    2015 年 56 巻 6 号 p. 673-680
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    当院において造血器悪性腫瘍(急性白血病・悪性リンパ腫)に合併したDICに対する遺伝子組換え可溶型トロンボモジュリン(rTM)の治療成績について後方視的に解析した。造血器悪性腫瘍全39例中29例(74.36%)において,rTMの投与後にDICの改善を認めた。再発治療抵抗性急性前骨髄球性白血病(APL) 1例のみ経過中に脳出血のため死亡したが,その他38例で出血関連有害事象を認めなかった。急性白血病群ではDIC前駆段階でrTMを開始することによりDICの改善率が向上した。造血器悪性腫瘍36例中26例(72.22%)においてrTMの投与後CRPが低下した。特に悪性リンパ腫群ではCRPが有意に低下した。rTMは出血関連の有害事象の頻度が低く,造血器悪性腫瘍に合併したDICに対して有効性・安全性に優れた治療薬と考えられ,かつ抗炎症作用をもつ可能性も示唆された。
症例報告
  • 藤井 総一郎, 三浦 偉久男, 田中 英夫
    2015 年 56 巻 6 号 p. 681-686
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    症例は78歳,男性。CKDと慢性心不全の治療中に白血球増多を指摘され当科を受診した。Ph染色体と付加的染色体異常を持ち芽球が12%, FISH検査でBCR/ABL融合シグナルを認め,RT-PCR法ではm-BCR/ABLが高値であったためm-BCR/ABL陽性CML(移行期)と診断した。Imatinibに治療抵抗性であったため治療をnilotinibへ変更した。貧血と心不全が悪化したためnilotinibを間欠投与した。8ヶ月後にPCyRを得たが,17ヶ月後に白血球数が増加し末梢血中の骨髄芽球が83%へ増加した。骨髄性急性転化と考え,治療をdasatinibへ変更したが反応せず,肺炎のため化学療法を導入できずに死亡した。染色体検査は正常核型で,FISH検査でもBCR/ABL陰性であったためPCyRのCMLに合併したPh陰性AMLと診断した。Tyrosine kinase inhibitor (TKI)治療の経過中は骨髄に異形成変化はなくAMLは正常核型であったことから,TKIによる二次性AMLではなくde novo AMLと考えられた。
  • 小橋 澄子, 森 毅彦, 甲田 祐也, 菊池 拓, 加藤 淳, 清水 隆之, 杉田 香代子, 長谷川 直樹, 村田 満, 岡本 真一郎
    2015 年 56 巻 6 号 p. 687-691
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    ヒトの消化管粘膜の常在菌であるRothia mucilaginosa (R. mucilaginosa)による菌血症の報告は少ない。我々は骨髄系腫瘍に対する化学療法後の好中球減少期に発症した3例のR. mucilaginosaによる菌血症症例を経験した。最終的に3例はいずれも抗菌薬投与により軽快したが,1例は経過中に肺と軟部組織に播種性病変を形成した。R. mucilaginosaは粘膜障害や歯科疾患が侵入経路となることが報告されているが,我々の症例ではこのような合併症はなかった。既存の進入路がなくともR. mucilaginosaは好中球減少期の菌血症の起因菌となり,また播種性病変を形成する可能性がある。R. mucilaginosaによる菌血症を発症する危険因子,発症例の臨床像,的確な抗菌療法については未だ不明な点が多く,さらなる症例および菌株の蓄積が望まれる。
  • 西田 浩子, 遠藤 聖, 波多野 まみ, 立川 伸雄, 間嶋 絵梨, 橋田 里妙, 堀 眞佐男, 小原 克之
    2015 年 56 巻 6 号 p. 692-698
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    症例は75歳男性。数ヶ月前より継続する下腹部不快感を主訴に受診。CT上,小腸壁肥厚及び腸管拡張,下行結腸に腫瘤を認めた。小腸・結腸左半切除術では空腸と下行結腸上皮内に中型の異型リンパ球の均一な増殖を認め,核のクロマチン凝集,小型核小体を認めた。細胞免疫形質はCD3, CD8, CD56, TIA-1, granzyme B, TCRβ陽性,CD4, CD5, CD20, CD30, EBER-ISH陰性で,II型腸管症関連T細胞性リンパ腫(Type II EATL; Lugano分類,Stage IIE)と診断した。2/3 dose CHOP療法を6コース施行し,完全寛解となり,無治療で経過観察としていたが,12ヶ月前後より見当識障害,高次機能障害を認め,頭部MRI上,ガドリニウムで不均一に造影される多発性脳腫瘍を認めた。腫瘍生検では壊死を伴うCD3, CD8, CD56, TIA-1, granzyme B, TCRβ陽性,CD4, CD20, EBER-ISH陰性の異型リンパ球の集族を認めた。全身再発はなく,EATLの孤立性中枢神経(CNS)再発と診断,大量methotrexate療法を施行したが,CNS病変の改善なく死亡した。EATLは予後不良な疾患で,標準治療は確立されていない。CNS再発は極めて稀で,症例蓄積による病態解明が望まれる。
  • 飯塚 聡介, 鈴木 憲史, 井桁 之総, 河合 繁夫, 熊坂 利夫, 塚田 信弘
    2015 年 56 巻 6 号 p. 699-704
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    26歳男性。発熱,腰痛,下肢不全対麻痺を主訴に入院となった。全身リンパ節腫脹,多発硬膜外病変,多発骨病変を認め,進行期Hodgkinリンパ腫と診断した。ABVD療法は無効であり,完全対麻痺へと進行した。放射線照射とICE療法6コース後,自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法(自家移植)をしたが部分奏効であった。Brentuximab vedotinを投与し完全奏効となり,臍帯血移植を施行した。本報告は,自家移植に抵抗性の難治性Hodgkinリンパ腫に対する新しい治療戦略を示唆する重要な症例である。
  • 辻 隆宏, 平野 太一, 山崎 浩, 津田 弘之
    2015 年 56 巻 6 号 p. 705-710
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    症例は67歳女性。2001年10月に慢性リンパ性白血病(CLL)と診断。2004年8月から,FC (fludarabine, cyclophosphamide)療法を3コース施行。腫瘍細胞は減少したが,貧血は進行した。骨髄検査で,赤芽球勞(PRCA)と診断し,cyclosporin A (CsA)療法で軽快した。2008年10月より,CLLの増悪に伴って貧血が進行したため,fludarabine療法を施行したところ,腫瘍細胞は減少したが,貧血は遷延した。骨髄検査で,PRCAの再燃と診断し,CsA療法で軽快した。CLLにおけるPRCAは,稀な病態で,背景にあるT細胞を介した免疫異常が原因と考えられている。CLL患者に対するfludarabine療法後に発症したPRCAは,これまで6例報告されており,fludarabineの制御性T細胞障害に起因する自己寛容の破綻が要因と考えられている。CLLに対するfludarabine療法後の進行する貧血に際しては,PRCAの可能性を念頭に入れておくことが重要である。
  • 貝梅 紘子, 住 昌彦, 桐原 健彦, 武田 航, 栗原 太郎, 佐藤 慶二郎, 植木 俊充, 廣島 由紀, 上野 真由美, 市川 直明, ...
    2015 年 56 巻 6 号 p. 711-715
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/07
    ジャーナル 認証あり
    症例は32歳女性で寛解導入不能の急性骨髄単球性白血病。Fludarabine (Flu) 125 mg/m2+melphalan 140 mg/m2+total body irradiation (TBI) 4 Gyの前処置にて臍帯血移植を行った。好中球が回復せずday 21の異性間FISHで99%レシピエントタイプであり,生着不全と診断しday 29に臍帯血再移植を行った。前処置は‘one-day’ regimen変法,すなわちFlu 30 mg/m2 (day-3~-1) + cyclophosphamide (CY) 2 g/m2 (day-1) + TBI 2 Gy (day-1)で行った。Day 18に好中球生着し,その後extensive type慢性GVHDを合併しているが,全身状態は安定し18か月寛解を維持している。再移植グラフトによる強力な移植片対白血病効果が発揮されていると考えられる。
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