症例は75歳男性。数ヶ月前より継続する下腹部不快感を主訴に受診。CT上,小腸壁肥厚及び腸管拡張,下行結腸に腫瘤を認めた。小腸・結腸左半切除術では空腸と下行結腸上皮内に中型の異型リンパ球の均一な増殖を認め,核のクロマチン凝集,小型核小体を認めた。細胞免疫形質はCD3, CD8, CD56, TIA-1, granzyme B, TCRβ陽性,CD4, CD5, CD20, CD30, EBER-ISH陰性で,II型腸管症関連T細胞性リンパ腫(Type II EATL; Lugano分類,Stage IIE)と診断した。2/3 dose CHOP療法を6コース施行し,完全寛解となり,無治療で経過観察としていたが,12ヶ月前後より見当識障害,高次機能障害を認め,頭部MRI上,ガドリニウムで不均一に造影される多発性脳腫瘍を認めた。腫瘍生検では壊死を伴うCD3, CD8, CD56, TIA-1, granzyme B, TCRβ陽性,CD4, CD20, EBER-ISH陰性の異型リンパ球の集族を認めた。全身再発はなく,EATLの孤立性中枢神経(CNS)再発と診断,大量methotrexate療法を施行したが,CNS病変の改善なく死亡した。EATLは予後不良な疾患で,標準治療は確立されていない。CNS再発は極めて稀で,症例蓄積による病態解明が望まれる。
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