患者は76歳の女性。平成元年10月頭部,背部の形質細胞腫にて発症したIgG・λ型・StageIIAの多発性骨髄腫(MM)。MCNUおよびMP療法により寛解を維持していたが,平成3年1月より腹水貯留のため入院。腹水は滲出性で多数の骨髄腫細胞を認め,VAD療法を施行したが無効で,2月23日死亡した。同細胞の表面抗原解析は形質細胞関連抗原であるCD38, PCA-1, BL 3以外にCD33, CD45, CD45RA, CD63, CD71陽性。接着分子ではCD11a/CD18 (LFA-1)やCD29 (VLA-β
1), CD44 (H-CAM), CD49d (VLA-4), CD54 (ICAM-1), CD56 (N-CAM), CD58 (LFA-3)が陽性であった。腹水中のIL-6値は91.0 pg/m
lと高値で,腫瘍細胞は
in vitroでIL-6に増殖反応を示し,抗IL-6抗体,抗IL-6受容体抗体で増殖が抑制された。MMで腹水中に腫瘍細胞が出現することはまれである。本症例はIL-6がオートクライン機構により骨髄腫増殖因子として作用し,急激な経過をとった興味深い症例と思われた。
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