臨床血液
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45 巻, 10 号
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総説
臨床研究
  • 土岐 典子, 星野 匠臣, 入澤 寛之, 佐倉 徹, 宮脇 修一
    2004 年 45 巻 10 号 p. 1090-1094
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    同種造血幹細胞移植後のvaricella zoster virus (VZV)感染症について検討するため,1998年1月より2003年4月までに当科で移植を受けた71例を対象に,VZV感染症の有無,発症時期,合併症,発症の危険因子などをretrospectiveに解析した。Herpes simplex virus (HSV)感染症予防は,全例でday-7より+35までacyclovir 1000mg/day/bodyの内服を行った。
    71例中28例(39.4%)にVZV感染症が認められ,発症時期はday77∼980(中央値day182)で,28例中21例(75%)がday300までに発症していた。また,22例(78.5%)が免疫抑制剤の投与を受けていた。発症回数は1回が26例,2回が2例であった。発症部位は,21例(75%)は皮膚の1神経支配領域で,1例が2神経支配領域,5例(17.8%)が汎発性,1例(3.6%)は内臓播種性であった。25例がacyclovirの点滴もしくは内服で改善し,2例がvidarabineの点滴で改善,acyclovirの点滴にても改善しなかったのは,内臓播種性の1例であった。
    免疫抑制剤使用中のVZV感染症の発症頻度が高く,内臓播種性の発症は低頻度であったが,致命的であった。
症例
  • 横井 崇, 森 眞一郎, 杉本 博是, 小宮山 豊, 植村 芳子, 谷尻 力, 中井 邦久, 松本 憲明, 全 勝弘, 尼川 龍一, 岸本 ...
    2004 年 45 巻 10 号 p. 1095-1099
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は61歳女性。帯状疱疹発症後,発熱および著明なAPTT延長を認め当科紹介となった。入院時巨大な脾腫を認め,ループスアンチコアグラントが陽性であった。血清学的検査でIgM型のM蛋白を認め,抗カルジオリピン抗体および抗プロトロンビン抗体を検出した。また,凝固第IX, 第XI, 第XII因子活性やラテックス凝集反応系などの検査で異常を認めた。sIL-2R高値などを認め悪性リンパ腫を疑い脾摘を施行し,脾辺縁帯B細胞リンパ腫(SMZL)と診断された。抗リン脂質抗体陽性であったが血栓症状は認めず,凝固検査異常を認めたが脾摘術も前処置なしで合併症なく施行できた。さらに,脾摘後全ての検査値異常は正常化または改善したことから,腫瘍産生抗体による見かけ上の凝固・免疫系検査値異常と考えられた。脾摘後早期に増悪したため,リツキシマブ併用自己末梢血幹細胞移植を施行し完全寛解を維持している。
  • 立元 千帆, 川上 清, 永山 淳, 河野 弘恵
    2004 年 45 巻 10 号 p. 1100-1104
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    急性リンパ性白血病(ALL)の5歳男児にメソトレキセート(MTX)による間質性肺炎を発症した症例を経験した。低容量のMTXと6-mercaptopurineによる寛解維持療法中,発熱,咳嗽,呼吸困難と低酸素血症のために入院した。臨床症状とウイルス学的検査,生化学検査,微生物学的検査と胸部エックス線写真によりMTXによる間質性肺炎と診断した。MTX投与中断により患児の間質性肺炎は改善した。成人関節リウマチでは,MTXによる間質性肺炎はよく知られており,その頻度も0.3∼7.5%と推定されている。しかし白血病においては本副作用は文献的には少ない。さらに小児白血病ではMTXによる間質性肺炎の症例は極めて少ない。小児のALLにおいて低容量MTXによる寛解維持療法中は,われわれ臨床医はこの稀な合併症があることも念頭におくべきと思われた。
  • 守田 玲菜, 橋野 聡, 曽我部 進, 太宰 昌佳, 小野澤 真弘, 泉山 康, 近藤 健, 太田 秀一, 小林 寿美子, 今村 雅寛, 浅 ...
    2004 年 45 巻 10 号 p. 1105-1110
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
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    Imatinib mesylate(以下imatinib)の慢性骨髄性白血病治療においての有用性は数多く報告されているが,血液毒性のために休薬・減量を余儀なくされる症例が散見される。われわれは慢性骨髄性白血病急性転化の症例に対してimatinibとgranulocyte-colony stimulating factor(以下G-CSF)の同時併用を行い,好中球減少を抑え重篤な感染症を合併することなくimatinibを減量・休薬せずに投与でき,予後の改善をみた。G-CSFとimatinibの併用療法についての報告は少ないが,G-CSFの使用により感染リスクを抑制しつつimatinibを高用量で継続的に投与できる可能性がある。
  • 高井 和江, 新國 公司, 倉崎 桃里
    2004 年 45 巻 10 号 p. 1111-1114
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
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    症例は42歳女性。2002年9月心嚢液・胸腹水,傍大動脈リンパ節腫脹を指摘され,精査を受けるも原因不明にて経過観察。2003年3月浮腫,胸腹水増加,発熱,両下肢痛,運動障害が出現し再入院。肝脾腫,剛毛,皮膚色素沈着あり。免疫電気泳動で血清にIgA-λ, 尿にBJP-λのM蛋白あり,骨髄に異型性のある形質細胞を5%認めた。IgA 585mg/dl, VEGF 10,900pg/ml, IL-6 12.5pg/ml, prolactin 50.45ng/mlと増加。神経伝導速度遅延と振幅低下を認めた。
    POEMS症候群と診断,VAD療法では胸水のコントロールが得られず,神経障害が進行した。胸腔ドレナージを併用し,CYで末梢血幹細胞(PBSC)を採取,melphalan 100mg/m2 2日間を前処置としてPBSCTを施行した。骨髄はすみやかに回復し,心嚢液・胸腹水は消失,寝たきり状態から自力歩行可能にまで回復している。POEMS症候群に対するauto-PBSCTの高い有効性が報告されているが,長期予後については症例の蓄積と長期経過観察が必要である。
  • 小山 幹子, 松岡 賢市, 國崎 祐哉, 竹内 正美, 末永 孝生
    2004 年 45 巻 10 号 p. 1115-1118
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
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    症例は45歳女性。急性骨髄性白血病(AML-M6)に対し,2002年6月HLA一致同胞間造血幹細胞移植を施行した。Graft-versus-host disease (GVHD)予防には,cyclosporine (CsA)とshort-term methotrexateを使用した。急性GVHDは認めず,移植後day145にてCsAを中止した。しかし,結膜炎,口内炎,高コレステロール血症を伴う肝機能障害が出現し,慢性GVHDと診断した。CsAとprednisoloneを開始したが,肝機能障害と高コレステロール血症は遷延した。Atorvastatinは効果なく,ursodeoxycholic acidを含む免疫抑制療法により徐々に改善した。他の肝内胆汁うっ滞性疾患に伴う高コレステロール血症と同様の脂質代謝所見を得たが,その改善には原因であるGVHDの治療が必要と考えられた。
  • 辻岡 貴之, 和田 秀穂, 末盛 晋一郎, 定平 吉都, 杉原 尚
    2004 年 45 巻 10 号 p. 1119-1123
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は51歳の女性。扁桃腫大を主訴に当院受診。両口蓋扁桃生検を施行されCD56陽性T細胞リンパ腫と診断された。腫瘍細胞は小型から中型で,免疫組織学的にはCD3, CD8, CD56陽性。CD20, CD5, CD10陰性。TIA-1, granzyme B陽性であった。フローサイトメトリー法ではCD56陽性を示し,Southern blot法でTCRJγの遺伝子再構成を認めた。扁桃原発のstage II Bと診断し自家末梢血幹細胞移植を併用したMCEC療法を行い,完全寛解を確認したが,2カ月後,小腸穿孔にて再発。敗血症を併発し永眠された。扁桃にCD56陽性T細胞リンパ腫を発症することは稀であり,経過中,小腸病変がみられたことからCD56陽性腸管症型T細胞リンパ腫の扁桃初発例としての可能性もあり,貴重な症例と思われたため報告する。
  • 北村 香奈, 竹内 仁, 神戸 栄美子, 岡 秀昭, 斎木 実, 相川 真吾, 蔵 良政, 八田 善弘, 山崎 哲男, 伊藤 武善, 沢田 ...
    2004 年 45 巻 10 号 p. 1124-1128
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は52歳,女性。平成14年6月から右下腹部,鼠径部痛が出現し,当院婦人科を受診した。骨盤MRI上,右下腹部腫瘤を指摘され同年7月29日入院し,汎血球減少とLDH高値を認めたため当科を受診した。骨髄穿刺で形質細胞を63.8%認め,免疫電気泳動からIgD-λ型myelomaと診断し当科転科となった。同年8月22日からVAD療法を行い,骨髄の形質細胞はほぼ消失したが,下腹部腫瘤は不変で,右前胸部にも皮下腫瘤が出現したため,同年11月1日からROAD療法を開始した。Thalidomideの内服や,右鼠径部の放射線照射も併用した。同年12月16日に突然構語障害,意識低下,嘔吐が出現し,12月18日の髄液検査で細胞数368/μl, 形質細胞93%を認め,髄膜浸潤と診断した。MTX+PSLの髄腔内注射を6回行い,形質細胞は消失した。化学療法を再開したが,平成15年2月14日に髄膜浸潤の再発を来たし,全身にも腫瘤が出現し,同年3月17日死亡した。
  • 井口 具隆, 宮澤 啓介, 岡部 聖一, 川久保 建, 嶋本 隆司, 栗山 謙, 伊藤 良和, 木村 之彦, 大屋敷 一馬, 芹沢 博美, ...
    2004 年 45 巻 10 号 p. 1129-1134
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    60歳,男性。1999年5月に頚部リンパ節腫脹と胸部X線の左肺門部異常陰影にて受診。左頚部リンパ節生検施行し,悪性リンパ腫(NHL, diffuse large B cell type, Stage III B)と診断。表面マーカーはCD11a, 19, 20, 23, 25, 45, IgM, IgD, λが陽性,CD5陰性であった。CHOP療法8コース後,寛解となった。2002年10月に再発し,減量CHASE療法2コース後,rituximab 600mg/week×4の追加投与を行い,再寛解を得た。しかし,rituximab終了後10日で多発性皮膚腫瘤が出現し,皮膚生検の結果,CD20陰性NHLの皮膚浸潤と診断。High dose MTXを含む種々の化学療法に対し治療抵抗性を示し,2003年8月に死亡。病理解剖では全身臓器の微小血管内にCD20陰性NHLの浸潤を認めた。本例はrituximabにてCD20陰性クローンが選択・拡大したと考えられた。
短報
  • 半田 智幸, 新井 幸宏, 三谷 絹子
    2004 年 45 巻 10 号 p. 1135-1137
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    A 55-year-old man with advanced myelodysplastic syndrome was hospitalized prior to undergoing an allogeneic bone marrow transplantation. Immediately before hospitalization, he had suffered from phlegmon in both lower extremities and right forearm as well as genital and oral ulcers. After admission, he developed an esophageal ulcer and was thus diagnosed as having intestinal tract-type Behçet disease. HLA-B51 was not present. Within a month, he died of pulmonary hemorrhage associated with pneumonia, possibly because of a low platelet count, and vasculoendothelial damage related to Behçet disease. This is a rare case of myelodysplastic syndrome that developed Behçet disease with a severe esophageal ulcer.
  • 小原 陽子, 永井 正, 森 政樹, 大嶺 謙, 外島 正樹, 小松 則夫, 小澤 敬也
    2004 年 45 巻 10 号 p. 1138-1140
    発行日: 2004年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    A 56-year-old woman with acute myeloid leukemia had two rapidly growing necrotizing nodules with ulcer formation on her head after the first course of consolidation therapy. Clinical features corresponding to sepsis (e.g., fever) appeared following the development of the skin lesion. Pseudomonas aeruginosa was isolated from the blood as well as pus of the lesion. Based on these findings, a diagnosis of ecthyma gangrenosum was made. Treatment with ciprofloxacin and γ-globulin dramatically improved the patient's clinical features. Since Pseudomonas sepsis with ecthyma gangrenosum is associated with a high mortality rate, it is important to start immediate treatment with appropriate antibiotics.
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