臨床血液
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39 巻, 9 号
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臨床研究
  • 上田 賢弘, 高梨 美乃子, 坪倉 兌雄, 井出 武夫, 岩井 しのぶ, 岡井 幹, 赤座 達也, 中島 一格, 田所 憲治, 十字 猛夫
    1998 年 39 巻 9 号 p. 625-630
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
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    現在,いくつかの赤十字血液センターでは末梢血幹細胞移植(PBSCT)研究協力を実施しているが,まだ施設間における手技,試薬等の統一標準化には至っていない。中でもコロニーアッセイの技術レベルは臨床判断にも影響をおよぼすと考えられるのでアッセイ法の手順,試薬,算定基準の標準化が必要である。このため,試薬の赤十字施設内標準化のための試みとして,自家試薬および各メーカー(A社,B社,C社の3社)市販キットの比較評価試験をおこなった。その結果,A社キットがもっとも良好な結果を示した。すなわち,他試薬に対し有意(P<0.05)に高い形成コロニー数を認めた。また,検定項目CFU-GM, BFU-E, 総コロニー数のすべてについて自家試薬との良好な相関(r=0.738, r=0.802, r=0.969)を示した。同時再現性には問題が認められず,仕様表示有効期間も-20°C, 2年と検定試薬中最長であり,本試薬の有用性を示唆した。
  • 森本 克, 服部 欽哉, 矢部 普正, 矢部 みはる, 日野原 知之, 清水 崇史, 松本 正栄, 萩原 政夫, 辻 公美, 加藤 俊一
    1998 年 39 巻 9 号 p. 631-639
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    HLA一致同胞を持たない小児35例に対して,HLA不一致血縁者から同種骨髄移植を施行した。ドナーは父母18例,同胞14例,その他3例で,HLA一致度では表現型一致12例,1座不一致17例,2座以上不一致6例であった。35例中32例においてTBIを含む前処置を行い平均4.09×108/kgの無処理骨髄細胞を移植した。GVHD予防にはMTX+短期CsAを投与し,15例にATGを加えた。早期死亡2例を除き33例中28例が生着(84.8%)した。5例が拒絶されそのうち4例が非腫瘍性疾患であった。II度以上の急性GVHDは48.4%に認め,HLA一致同胞ドナーからの移植と比較し有意に高頻度であり(p<0.01), GVHDによる死亡は3例(8.8%)であった。HLA表現型一致例と1座不一致例ではGVHDの出現頻度に差はなかった。MLCの結果によるII度以上のGVHDの頻度は陽性例60.0%, 陰性例28.6%と差を認めた。また,ATG投与例ではGVHDは軽度であった。全体の無病生存率は40.8±8.5%であった(腫瘍性疾患(N=22); 32.9±10.5%, 非腫瘍性疾患(N=13); 53.8±13.8%)。HLA表現型1座不一致までの血縁者からの無処理骨髄移植はGVHDが重症化するものの予後不良な疾患に対しては有効な治療法と考えられる。
  • 大西 俊介, 中川 学, 小林 直樹, 小笠原 正浩, 木山 善雄, 直原 徹, 比嘉 敏夫, 笠井 正晴
    1998 年 39 巻 9 号 p. 640-644
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
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    再生不良性貧血の免疫抑制療法として,抗ヒト胸腺細胞グロブリン(ATG)の有用性が示されてきている。今回われわれは,再生不良性貧血に対してシクロスポリンを併用したATG療法を試みた9例を対象とし,その有効性,Tリンパ球の変動,合併症について検討した。対象は男性4例,女性5例で年齢中央値は55歳。重症が8例で,中等症が1例であった。初回治療例が3例,治療抵抗例が6例であった。投与直後から急速に著明なTリンパ球の減少,消失がみられ,CD4, CD8陽性細胞ともに減少した。1例は肺出血で死亡したが,6か月以上の観察期間で著効は3例,やや有効は2例,無効は3例であった。ATGによる薬物有害反応としては,一過性の発熱,掻痒感,皮疹等がみられたが,重篤な症状は認められなかった。初回治療例のみならず,治療抵抗性の再生不良性貧血に対しても,シクロスポリンを併用したATG療法は有用であり,安全に施行しうることが示唆された。
  • 八田 善弘, 伊藤 武善, 馬場 真澄, 和泉 徹, 佐々木 巌, 下島 ひろみ, 宮嶋 剛, 相沢 信, 竹内 仁, 堀越 昶, 大島 照 ...
    1998 年 39 巻 9 号 p. 645-651
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
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    骨髄移植(BMT)前後で胸部X線,臨床所見に異常を認めない患者21例の移植後早期の肺機能を検討した。1秒率(FEV1.0%)とV25, V50/V25は放射線照射,GVHDの有無に拘わらず,BMT前後とも正常範囲を保っていた。%肺活量(%VC)と%CO肺拡散能力(%DLco)は移植後9カ月目まで進行性に低下していく傾向がみられた。両者とも全身放射線照射(TBI)の肺線量と線量率の高い群,およびGVHD合併群では,それぞれ低線量群,低線量率群,GVHD非合併群より早期から低下し,その程度も強い傾向がみられた。以上より,われわれは移植後早期に潜在的な肺機能障害が生じ,その状態が移植後少なくとも9カ月まで進行していくことを見いだした。さらにその原因として,BMT前の治療,TBI, GVHDが関与している可能性を示した。
  • 兼子 裕人, 木村 貴文, 津田 昌一郎, 大川原 康夫, 阿部 達生, 薗田 精昭
    1998 年 39 巻 9 号 p. 652-657
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
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    術後再発乳癌2例,進行期術後の乳癌,卵巣癌各1例の計4例においてhigh-dose CAF, またはVIC-E療法の後,G-CSFを投与して末梢血幹細胞を動員した。採取した細胞より,免疫磁気分離システム(Isolex 300)を用いてCD34陽性細胞のpositive selectionを行った。分離後のCD34陽性細胞の回収率は平均62.0%, 純度89.5%と比較的良好な成績であった。しかし,造血前駆細胞(CFC)の回収率でみると,平均10.9%と極めて低値であった。この原因として,リリース用ペプチドを用いる磁気ビーズの分離あるいは分離操作中の4回の遠心操作(800 G, 10分間)による細胞損傷などが示唆された。またCD34陰性分画中に,BFU-Eを中心に約30%のCFCが失われていた。近年,長期の造血を支持する未分化幹細胞がCD34抗原を発現していない可能性も指摘されており,本法による移植後の長期の造血維持について,今後慎重な経過観察が必要であると考えられた。
症例
  • 笹井 ゆり, 中川 均, 藤井 浩, 兼子 裕人, 堀池 重夫
    1998 年 39 巻 9 号 p. 658-664
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は60歳,女性。1993年6月,紫斑を主訴に入院しAML with trilineage myelodysplasia, M2と診断された。G-CSF併用Ara-C少量療法を行いpartial remissionに到達。その後,G-CSF併用Ara-C少量療法,BHAC+ACR, BHAC+DNRを行ったがCRに到達しなかった。1994年10月,白血球数,芽球数,赤芽球数が増加し,BHAC+MXT, BHAC+ACR, Ara-C中等量療法を行ったが不応性となり,12月に敗血症性ショック,肺炎,心不全で死亡した。初診時の核型分析は46, XX, t(3;5)(q21;q31), 1994年1月には付加的異常としてX染色体の欠失を新たに認めた。初診時と1993年11月の骨髄細胞よりDNAを抽出し,polymerase chain reaction-single strand conformation polymorphism法にてp53遺伝子の解析を行ったところ,後者の検体でp53遺伝子,exon 6, codon 220にTATからTGT(TyrからCys)への一塩基置換を認めた。経過中,染色体の核型進展,p53遺伝子の異常とともに病型進展を認め,相互の関連が考えられた。
  • 川原 誠司, 森本 幸治, 中沢 弘企, 熊谷 理夫, 斎藤 孝, 相川 真吾, 壷井 功, 沢田 海彦, 堀江 孝至
    1998 年 39 巻 9 号 p. 665-669
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は16歳女子。1995年11月,溶血性貧血の精査目的で入院となった。Hb 9.1 g/dl, RBC 272×104l, 網赤血球89‰, 総ビリルビン1.46 mg/dl, LDH 812 IU/l, ハプトグロビンは10 mg/dl以下,末梢血液像で多数の涙滴赤血球や少数の有棘赤血球などの赤血球形態異常を認めた。GOT 71 IU/l, GPT 44 IU/l, ヘパプラスチンテスト45%と肝機能障害を認めたため,さらに検索を行った結果血清銅43 μg/dl, セルロプラスミン4 mg/dlと低下し,尿中銅排泄量は345 μg/日と上昇を示した。両眼にカイザー・フライシャー輪を認め,肝生検標本中の銅含有量は湿重量183 μg/g, 乾重量535 μg/gと増加していた。患者は2人姉妹で,妹に同様の代謝異常を認めた。以上の結果より,本症例の溶血性貧血の原因はウイルソン病における銅代謝異常によるものと考えられた。
  • 水野 石一, 井関 治, 中原 尚子, 河本 邦彦, 恩賀 能史, 松岡 広, 杉本 利嗣, 松井 利充, 伊東 宏, 千原 和夫
    1998 年 39 巻 9 号 p. 670-675
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は44歳,男性。11年前に進行胃癌にて胃亜全摘術を施行されている。1996年2月,下腿,臀部に紫斑を認めたため近医を受診。高ALP血症,血小板減少を指摘され,当院に入院した。骨髄生検で骨髄内にムチン産生性の中分化型管状腺癌細胞がみられ,腺癌の骨髄転移と診断した。原発巣を検索したが残胃,大腸,前立腺等に病巣は認めず,11年前の胃癌の再発を疑った。microangiopathic hemolytic anemia, DICを合併しており,抗凝固療法による治療を行ったが改善は得られなかった。その後,肺の癌性リンパ管症による呼吸不全にて死亡した。剖検では残胃の胃粘膜に再発はみられなかったが,残胃のリンパ管内の一部に腺癌細胞が認められ,11年前の胃癌の転移と考えた。11年もの長期にわたり,なぜ残胃のリンパ管内および骨髄に腺癌細胞が顕在化せず潜んでいたかは不明である。
  • 池田 和彦, 三田 正行, 石橋 敏幸, 七島 勉, 丸山 幸夫
    1998 年 39 巻 9 号 p. 676-679
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
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    症例は59歳,男性。慢性骨髄性白血病(CML)慢性期と診断され1997年7月29日当科に入院した。入院時,白血球数55,400/μlでhydroxyurea (HU) 1,500 mg/日を開始し,8月5日からは天然型インターフェロンα (IFNα) 600万単位/日の連日投与を併用した。8月18日に白血球数が8,100/μlになったところでHUを中止した。その後,白血球数が10,100/μlに増加し9月19日HUを再投与したところ6時間後に39.2°Cの発熱と大腿部筋痛が出現しHUを中止した。白血球数が増加傾向にあったので9月25日HUを再々投与したが再び6時間後39.8°Cの発熱と大腿部筋痛が出現しHUを中止した。筋原性酵素が上昇しHUに対するリンパ球刺激試験も陽性であったことから,HUによる薬剤性筋炎と診断した。これまでHUによる薬剤性筋炎は報告がない。
  • 兵頭 隆幸, 岩政 喜久恵, 中谷 臣吾, 柳澤 浩介, 長谷川 均, 安川 正貴, 藤田 繁
    1998 年 39 巻 9 号 p. 680-685
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は84歳,女性。発熱,全身リンパ節腫脹にて発症。白血球数60,900/μl, 異型形質細胞を末梢血中80.5%, 骨髄にて26.4%認めた。総蛋白は9.3 g/dl(γグロブリン62.4%)で,IgG, IgA, IgMいずれも高値を示し,多クローン性高γグロブリンを認め,免疫固定電気泳動にて抗IgA, λ型のMバンドが検出された。JHとJλ遺伝子には,単クローン性に再構成が認められた。形質細胞性白血病と診断し,急性リンパ性白血病に準じた多剤併用化学療法にて寛解状態を得ることができたが,アスペルギルス敗血症を併発して死亡した。化学療法後γグロブリンは低下し,IgGとIgMは正常化,IgAは軽度上昇を示すのみとなった。また,IL-6は治療前34.3 pg/dlから10.2 pg/dlに減少した。形質細胞性白血病に多クローン性高γグロブリン血症を伴った報告例はなく,極めて稀な症例である。
  • —縦隔胚細胞腫-血液悪性腫瘍症候群?—
    北詰 浩一, 臼杵 憲祐, 遠藤 光絵, 大沢 まゆみ, 壹岐 聖子, 千葉 滋, 平井 久丸, 松谷 章司, 浦部 晶夫
    1998 年 39 巻 9 号 p. 686-691
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は36歳,男性。1992年10月に縦隔原発の混合型胚細胞腫瘍(stage II)のため,腫瘍摘出術およびVP16を含む多剤併用化学療法を施行した(VP16総投与量;1,500 mg/m2)。以後,再発なく経過したが,1995年9月に白血球数増加(15,700/μl)とペルオキシダーゼ陰性の芽球(37%)の出現,血小板数減少を認めた。骨髄に高度のreticulin fibrosisと幼若な異形細胞を多数認め,これらの細胞はFactor VIII+/CD42+/CD61+であり,急性巨核芽球性白血病(M7)と診断した。11q23染色体異常やMLL遺伝子の再構成を認めないことから,縦隔原発胚細胞腫—血液悪性腫瘍症候群と診断した。また,神経特異エノラーゼ(NSE: 95.9 ng/ml)の高値を認めた。化学療法でいったんは完全寛解に至ったもののまもなく再発し,白血病の全経過3カ月で死亡した。本症例は本症候群として本邦3例目の報告であり,また,血中NSEが高値を示した第一例目である。
  • 磯部 泰司, 川又 紀彦, 佐藤 尚武, 入江 誠治, 加藤 淳, 森 健, 平野 隆雄, 押味 和夫
    1998 年 39 巻 9 号 p. 692-697
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は72歳男性。表在リンパ節腫脹,脾腫,著明なリンパ球増加を認め,当科を受診。白血球数は54,300/μl。大型で核にくびれを持った核小体の明瞭な異型リンパ球を89.6%認めた。頚部リンパ節生検からmantle cell lymphoma (MCL)と診断した。リンパ節の細胞は白血化した細胞とは異なり,中型で核の切れ込みの少ない,より成熟傾向を示す形態だった。表面マーカーは両者ともCD5+ CD10- CD19+ CD20+で同じJH遺伝子再構成バンドを認め,同じ起源の細胞と考えた。白血化した細胞はCD23+ CD38+ CD43- CD44+ FMC-7+で,μおよびκが陽性だった。染色体検査では多彩な核型異常を呈したが,t(11;14)を認めず,cyclin D1蛋白の異常発現も認めなかった。CHOP療法6コース終了後,部分寛解のため以後COP療法を継続している。本症例は初診時より著明なリンパ球増加を呈し,白血化した細胞がリンパ節の細胞と異なる形態を示し,MCLとしては非典型的な特徴を持った症例と思われた。
  • 伊東 俊夫, 為金 現, 大前 義文, 中山 志郎
    1998 年 39 巻 9 号 p. 698-702
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    von Recklinghausen病に合併した悪性リンパ腫の65歳の男性の症例を経験した。患者は全身のリンパ節が腫大しているために精査目的にて当院内科外来を受診した。患者は全身に神経線維腫とcafe au lait斑を多数存在し,表在性リンパ節を認めた。CT検査にて縦隔と腹部大動脈周囲にリンパ節の腫大を認めた。右頚部のリンパ節生検の結果はT細胞型非Hodgkinリンパ腫(diffuse mixed type, LSG分類,stage III)であった。化学療法を行なったところ,部分寛解の状態になったが,肺炎にて死亡した。von Recklinghausen病に悪性リンパ腫を合併するケースは非常にまれにしか報告されていない。その文献的考察を加えた。
  • 小磯 博美, 金 佳虎, 楢原 伸裕, 田村 遵一, 成清 卓二, 唐沢 正光, 村上 博和, 服部 幸夫, 大庭 雄三, 佐藤 浩
    1998 年 39 巻 9 号 p. 703-708
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    15歳,男性。1996年4月検診で赤血球増多を指摘され近医受診。RBC 597×104l, Hb 13.1 g/dl, Ht 40.8%, MCV 70 fl, MCH 22 pg, WBC 5,700/μl, Plt 32.4万/μl, T-Bil 3.2 mg/dl (ID-Bil 2.2)と小球性低色素性赤血球の増加,間接型優位の高ビリルビン血症を認め溶血を疑われ当科入院。間接ビリルビンの上昇と網赤血球増加以外に溶血を示唆する所見はなく,GOT, GPT, LDHは正常でその他の肝機能にも異常は認められなかった。Parpart法による浸透圧抵抗試験では,膜浸透圧抵抗性の亢進があり,母・妹に同様の小球性低色素性赤血球を認め,遺伝子解析の結果,三者共にαサラセミア・トレイトと診断した。また,ICG試験正常,低カロリー食試験陽性,bilirubin UDP-glucuronosyltransferase 1 (B-UGT1)遺伝子の異常などより,間接ビリルビンの上昇はGilbert's syndromeによるものと診断した。両者の併発はサラセミア発症の頻度の少ない本邦では特に希有と考えられる。
  • 八木田 正人, 尾西 理栄, 小中 義照, 山形 昇, 島崎 千尋, 工藤 英之, 小林 優, 引地 一昌
    1998 年 39 巻 9 号 p. 709-715
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例:41歳男性。1994年7月発症のAML-M3。染色体分析では46, XY, t(15;17)と47, XY, idem, +8をそれぞれ50%ずつ認めた。BHAC-DMP療法(Daunomycin 660 mg使用)施行にもかかわらず,寛解が得られず,ATRA 45 mg/m2を投与した。ATRA開始後17日目にATRA症候群と思われる両肺の間質性肺炎を併発(ステロイドで軽快)したが寛解を得た。ATRAは計26日間投与した。地固め療法後,1995年4月PBSCTを施行。採取幹細胞分画中にPML-RARαキメラmRNA(competitive RT-PCR法による)は認めなかった。その後,寛解を維持していたが,1996年7月外耳道に腫瘤形成あり。生検の結果,myeloblastomaであった。同年9月骨髄でもAPLの再発を確認。この時の染色体分析では47, XY, t(15;17), +8を認めた。ATRA 45 mg/m2を再開,再寛解導入に成功し,外耳道部には30Gyの放射線療法を施行した。近年,ATRA治療APL例に外耳道腫瘤形成等の髄外再発の報告が多いが,PBSCT後の髄外再発例は過去に報告がなく,本症例はATRA使用APL例における髄外再発を考える上で貴重な症例と思われる。
短報
  • 烏野 隆博, 中村 博行, 福田 ヒロ子, 岡島 裕, 前田 哲生, 手島 博文, 平岡 諦, 正岡 徹
    1998 年 39 巻 9 号 p. 716-718
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
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    We analyzed the distribution of two T cell subsets, CD8+ CD11a+ (CD8+ cytotoxic effector population) and CD8+ CD57- cells, in the peripheral lymphocytes of 3 post-operative patients with post-transfusion graft-versus-host disease (PT-GVHD) and 5 post-operative patients without PT-GVHD. The percentage of CD8+ CD11a+ cells in the PT-GVHD-negative control was 19±4%, and in the 3 patients with PT-GVHD, 69%, 66%, and 59%, respectively. The percentage of CD8+ CD57- cells in the PT-GVHD-negative control was 19±6%, and in the 3 PT-GVHD patients, 59%, 58%, and 55%, respectively. Significantly higher proportions of the two T cell subsets were consistently observed in the patients with PT-GVHD than in the PT-GVHD-negative control. These results suggest that the analysis of CD8+ T cell subsets may be useful for the simple and rapid laboratory diagnosis of PT-GVHD.
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