臨床血液
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34 巻, 12 号
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臨床研究
  • 赤塚 美樹, 都築 忍, 杉原 卓朗, 南 三郎, 小寺 良尚, 平林 紀男
    1993 年 34 巻 12 号 p. 1517-1524
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    HLA一致同胞より同種骨髄移植を受けた15歳以上の59例につき慢性GVHDの発症頻度,侵襲臓器,予後について検討した。慢性GVHDの発症頻度は65.3%であった。移植時年齢,原疾患,GVHD予防法(MTX単独群,CSP群)の相違は慢性GVHDの発症頻度に有意な影響を与えなかった。臓器侵襲の程度でみるとCSP群において軽症例が多い傾向にあり,とくに眼乾燥症状は有意に少なかった。慢性GVHDの臓器別の侵襲頻度は口腔(粘膜・唾液腺)が87%ともっとも高率で,次いで肝臓(74%), 皮膚(52%), 眼(30%)の順であった。口腔単独侵襲例が6例に認められたが予後は概ね良好であった。慢性GVHDの多臓器侵襲例の予後は不良で,主な死因は間質性肺炎および敗血症であった。慢性GVHD非発症例でも移植後100日前後における眼や口腔の乾燥症状は約4分の1の症例に認められ,診断には生検や慎重な経過観察が必要と考えられた。
  • 葛山 由布子, 薗田 精昭, 坂部 秀明, 中川 均, 藤井 浩, 阿部 達生
    1993 年 34 巻 12 号 p. 1525-1531
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    成人造血器腫瘍17例において,自家末梢血幹細胞移植術(PBSCT)を目的とした効率的な末梢血幹細胞(PBSC)の採取法を検討した。PBSC採取前化学療法として,Ara-C大量療法あるいはetoposide大量療法を用いた。nadirから250 μg/body/日のG-CSFを3∼12日間連日投与し,apheresisは白血球数の回復期にCS-3000を用いて約15lの血液を処理した。採取した細胞は,Percoll二層法により分離凍結保存し,メチルセルロース法にて幹細胞を定量した。Ara-C大量療法あるいはetoposide大量療法において,採取した幹細胞の量,クラスに差異を認めなかった。17回の初回apheresisのうち14回で,1回のapheresisにより安全な移植に必要な2×105/kg以上のCFU-GM (Eo)が採取できた。7例において21∼79日の間隔で2回目のapheresisを行った結果,回収されるPBSC数は2例を除き初回に比べ著減した。採取前化学療法を工夫することで,抗腫瘍効果を得るとともに,効率的なPBSCの採取が可能と考えられた。
  • 三橋 彰一, 二宮 治彦, 渋谷 彰, 小島 寛, 長澤 俊郎, 大坂 顯通, 渡辺 達郎, 河内 重人, 渡辺 則通, 石田 裕, 岡田 ...
    1993 年 34 巻 12 号 p. 1532-1539
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    65歳以上の高齢者悪性リンパ腫に対して1990年4月より1992年6月までに多施設共同治療研究を行った。対象は38例で初発例30例(年齢中央値;72歳),再発例8例(79歳)であった。治療プロトコールは初発例に対してはpirarubicin (30 mg/m2; day 1), cyclophosphamide (500 mg/m2; day 1), vindesine (1.5 mg/m2; day 1), prednisolone (40 mg/m2; days 1∼5), 再発例に対しては初発例のプロトコールにetoposide (100 mg/m2; day 1∼5)を加え,3週間毎に投与した。完全寛解(CR), 部分寛解(PR)は初発例でそれぞれ50.0%, 40.0%, 再発例で50.0%, 0%であった。50%生存期間は初発例で25.9カ月,再発例で18.0カ月であった。重篤な副作用はなく,またperformance statusの増悪を認めたものは1例のみだった。以上の成績より本プロトコールは高齢者悪性リンパ腫に対して有効で安全な治療法であると考えられる。
  • 北村 聖, 浅野 茂隆, 溝口 秀昭, 高久 史麿
    1993 年 34 巻 12 号 p. 1540-1549
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    われわれは,再生不良性貧血および骨髄異形成症候群の患者を対象として,GM-CSFの第III相試験を実施した。GM-CSFは,1日1回,3時間の点滴静注により14日間以上投与することとした。有効性は,再生不良性貧血25例,骨髄異形成症候群19例が評価可能であった。両疾患とも本剤の投与により顆粒球数,特に好中球数および好酸球数が増加した。骨髄異形成症候群では15例が,再生不良性貧血では19例が有効であった。骨髄異形成症候群では用量依存的に奏効率が上昇したのに対して,再生不良性貧血では用量と奏効率とに関連性は認められなかった。副作用としては,発熱,全身倦怠感,食欲不振などのインフルエンザ様症状が多く認められたが,一過性であった。本剤は,再生不良性貧血および骨髄異形成症候群に対して有効であると考えられる。
症例
  • 桐戸 敬太, 進藤 弘雄, 千葉 直彦, 飛内 賢正, 下山 正徳, 木下 朝博
    1993 年 34 巻 12 号 p. 1550-1555
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は79歳男性。1989年10月に白血球増多を主訴に当科へ入院。全身リンパ節腫大ならびに肝脾腫を認めた。一般検査では,白血球増加(腫瘍細胞87.5%),LDH上昇,高Ca血症がみられた。末梢血中の腫瘍細胞は,核の分葉が著明であり,一部の細胞では花冠状の核が認められた。腫瘍細胞の表面マーカーはCD4(+), CD8(-)であり,末梢血単核球より抽出したDNAを用いたSouthern blot解析によりTcR-β鎖遺伝子のクローナルな再構成も認められた。一方,抗HTLV-I抗体は陰性であり,Southern blot法並びにPCR法にても患者末梢血中にHTLV-Iプロウイルスは検出されなかった。化学療法を施行するも寛解が得られず,肺炎を併発し死亡。本症例は,急性型の成人T細胞白血病(ATL)の所見を示すが,HTLV-I感染が証明されず,下山らの提唱したHTLV-I陰性のATLと考えられる。
  • 小中 義照, 波内 俊三
    1993 年 34 巻 12 号 p. 1556-1561
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は47歳の男性。発熱,咳嗽,胸痛を主訴として来院。縦隔腫瘤と全身リンパ節腫脹を認めたが,脾は触知せず。白血球数16,400/μl, 好塩基球増加と幼若顆粒球の出現あり。骨髄には芽球の増加なく,Ph1染色体陽性。リンパ節でもPh1染色体とbcr遺伝子の再構成を認め,リンパ節細胞の多くはCD7とCD33陽性で,CD5, CD7, CD33各単独陽性細胞も混在。T細胞受容体遺伝子の再構成は認めず。T前駆細胞と骨髄系細胞との分岐点近くを起源とする慢性骨髄性白血病の髄外性急性転化(急転)と診断,多剤併用療法と放射線療法を行ったがリンパ節腫脹は残存した。etoposide 50 mg/日の連日経口投与を試みたところ,リンパ節は縮小し,白血球数も良好にコントロールできた。2年半後に付加的染色体異常を伴うクローンの進展により骨髄単球性の血液学的急転を生じ死亡。腫瘤形成で初発したこと,T細胞系を含む急転であったこと,etoposide少量投与が奏効し長期間生存し得たことなど,興味深い症例である。
  • 林 達之, 宇藤 浩, 野中 泰延, 鈴木 恒道, 野村 武夫, 笹島 ゆう子, 森 茂郎
    1993 年 34 巻 12 号 p. 1562-1567
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は59歳男性,肺結核のため左人工気胸術を施行後膿胸を発症,42年後に左側胸壁に有痛性腫瘤を生じた。生検組織はびまん性大細胞型非Hodgkinリンパ腫であり,免疫組織学的にpan-B, pan-T, マクロファージマーカーとも陰性で,null細胞性と診断した。化学療法(CHOP-Bleo) 7コースおよび放射線照射(45 Gy)を行い,一時胸部腫瘤は縮小したがやがて再発し,発症から14カ月,診断確定から9カ月後に肺炎で死亡した。血液生化学的所見ではLDHおよびIAPが病勢の活動性と並行して変動し,治療効果判定の指標となることが示唆された。結核性膿胸に合併する悪性リンパ腫はほとんどがB細胞性で,null細胞性格を示すものはまれである。今後症例の集積が必要と思われた。
  • 吉田 均, 森山 康弘, 立川 豊吏, 冨永 信彦, 手島 博文, 平岡 諦, 中村 博行, 正岡 徹, 吉永 哲男
    1993 年 34 巻 12 号 p. 1568-1572
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    急性骨髄性白血病の寛解導入療法中に,Bacillus cereusに原因すると考えられる敗血症を発症した2例を経験した。症例1: 43歳,男性。地固め療法終了直後に,下痢,腹痛と38.1°Cの発熱が出現し,施行した2回の血液培養からB. cereusが分離された。2日後に脳出血にて死亡した。症例2: 15歳,男性。寛解導入療法後,好中球数が0/μlになったときに,下痢と39.5°Cの発熱が出現し,血液培養からB. cereusが分離された。翌日クモ膜下出血にて死亡した。両症例には,著明な出血傾向を伴い,これにより急速に死に至るという共通点がみられ,これらの出血傾向はB. cereusと関連がある可能性が考えられた。また,B. cereusが血液より分離された場合汚染菌と安易に判断せず,臨床経過も考え合わせ原因菌として考慮する必要があると考えられた。
  • 塩原 正明, 小池 健一, 沢井 信邦, 笠井 慎治, 楊 逢春, 藪原 明彦, 中畑 龍俊, 小宮山 淳
    1993 年 34 巻 12 号 p. 1573-1578
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    Hemophagocytic syndromeの3歳女児において,血中サイトカイン濃度,末梢血リンパ球マーカー,およびnatural killer (NK)活性の経時的変化を観察した。初診時,汎血球減少,トランスアミナーゼ,ferritinの高値を認め,骨髄および胸水中で組織球が増殖していた。prednisoloneにより臨床症状,検査所見は一旦改善したが再び憎悪し,VP-16, THP-adriamycinを投与したが死亡した。憎悪期の血中TNF-α, IL-1β, GM-CSF濃度は正常あるいは軽度の上昇にとどまったのに対し,interferon-γ (IFN-γ)は病期により増減し,急性期,憎悪期には著明な上昇を示した。また末梢血リンパ球のCD4/8比,NK細胞活性も病期により変動した。以上より,本例ではIFN-γが組織球の活性化にもっとも重要な役割を演じていたことが示唆された。
  • 富山 順治, 米野 琢哉, 南木 敏宏, 金子 礼志, 工藤 秀機, 寺谷 俊雄, 守矢 和人
    1993 年 34 巻 12 号 p. 1579-1583
    発行日: 1993年
    公開日: 2009/04/25
    ジャーナル 認証あり
    症例は30歳女性で妊娠と血小板増多症を主訴に入院した。白血球数10,000/μl, Hb 11.7 g/dl, 血小板181.9×104lで,骨髄巨核球数は255/μlと増加を認めた。Ph1染色体およびbcr遺伝子再構成陰性で,妊娠を伴った本態性血小板血症(ET)と診断した。aspirin 150 mg/day投与し,妊娠経過は順調であった。過期妊娠にて再入院。帝王切開にて3,672 g, 血小板数25.5×104lの健常男児を出産。しかし子宮収縮不全,弛緩出血をきたし子宮全摘術施行。その後腹腔内大量出血をきたし,血小板輸血にて止血した。組織学的には子宮梗塞が認められた。ETを合併した妊娠症例では,経過中plateletpheresisやinterferon-αなどにより積極的に血小板数を減少させることが重要と思われた。
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