臨床血液
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40 巻, 4 号
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第40回総会
教育講演5
教育講演4
シンポジウム6
造血幹細胞の分子制御
臨床研究
  • 高橋 豊, 馬止 裕
    1999 年 40 巻 4 号 p. 290-298
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    鉄欠乏性貧血(IDA)患者の血清エリスロポエチン(EP)値をRIA法で測定し,治療経過を追いその変化を分析した。治療前123例につきEP値を対数変換し,対Hb不足量(d-Hb)三次式回帰法で基準値EPcを求め,治療開始後はEPcからの偏差値δ-EPで検討した。δ-EPは網赤血球分離(RC)と密接に関連し,RC開始と共に下降,次時期(nxRC期,約3週後)で偏差は最も顕著となり,その後は0に近づいた。症例毎に求めた偏差最大期δ-EPmxの値は治療開始前の貧血と鉄欠乏状態の指標,殊に後者と相関が高く,治療開始後のEP濃度の顕著な落差と関連した。治療中止後に再発した21例の経過は,共通して治療過程の逆経路は辿らず終了点から再発時のd-Hbに対応するEPc域内の値につき直結する別経路を辿った。以上,IDAでは貧血と鉄欠乏状態によりEPは付加的高値をとり,鉄供給の開始でEPが急速に利用・消費されてEP値は超過下降するが,その後の変化は過剰産生を防ぐ産生調節の観点上合目的的と解された。
  • 岡山 直子, 服部 幸夫, 定光 大海, 中野 かおり
    1999 年 40 巻 4 号 p. 299-304
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    過去4年間に当病院検査室にマラリアの診断を依頼された13例中8例でマラリア原虫が同定された。日常検査では炎症反応とともに肝機能障害,血小板減少症,LDH高値が目立ち,また異型リンパ球が全例に見られた。異型リンパ球の出現はマラリアとの情報のない場合に検査室でマラリアが気付かれるきっかけとなる可能性がある。マラリアの疑いとの情報が与えられている場合は顕微鏡法に遺伝子診断を併用することにより,顕微鏡法で難しい種別,マラリア原虫の混合感染の有無,血中からの消失をマラリア全症例で正確に知ることができた。マラリア標本3例,非マラリア3例につき,マラリアに習熟していない若手技師9名のマラリア原虫同定技能を計ったところ,マラリアの疑いとの情報なしではマラリア全例の正解者は皆無であったが,情報があれば4名が全例正解を出した。顕微鏡によるマラリア原虫の検出は技師の技量に左右されるが,僅かな臨床情報と遺伝子診断の併用で著しく診断精度が高まると思われる。
症例
  • 角熊 俊也, 菊田 武久, 平位 秀世, 須藤 良和, 山形 昇, 芦原 英司, 後藤 秀夫, 稲葉 亨, 藤田 直久, 村頭 智, 春山 ...
    1999 年 40 巻 4 号 p. 305-310
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    患者は58歳の男性で1992年11月発熱と関節痛を主訴に来院し,Ph1陽性のALL (L2)と診断された。Ad-VP療法でCRを獲得後,2回の地固め療法,Ara-C大量療法を施行したが,1993年9月髄液検査で白血病細胞の浸潤を認めた。MTX, Ara-C, PSLの髄注を8回施行し髄液中の白血病細胞消失後PBSCTを実施した。造血機能の回復は順調であったが,移植後,9日頃より異常行動,意識消失などが出現。白血病細胞の脳への浸潤を疑い1H-CSIによるMRSを施行した。MRSにおけるNAAとCholineのパターンから,前頭葉に白質脳症による高度の壊死と側脳室周囲に白血病細胞の浸潤を疑わせる所見を認めた。造影MRIでは側脳室周囲が造影された。CNS白血病の再発と同時に前頭葉の壊死を認めることから放射線照射は断念し経過観察としたが,骨髄再発を認め死亡した。病変部の代謝障害を捉えることのできるMRSは白質脳症と白血病細胞の浸潤との鑑別に有用と考えられた。
  • 澤田 道夫, 鶴見 寿, 山田 俊樹, 原 武志, 大山 正巳, 森脇 久隆
    1999 年 40 巻 4 号 p. 311-317
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例1は42歳女性。1995年12月汎血球減少の精査目的にて入院。末梢血は汎血球減少を呈し,骨髄血では88.0%にミエロペルオキシダーゼ陽性芽球を認め,骨髄生検上cellularityは5%と低下。染色体検査では8;21転座陽性,RT-PCR法(従来の方法に従い,35サイクル施行。理論上の限界感度は10-5である)にてAML1-MTG8再構成を認め,8;21転座陽性低形成性白血病と診断。Ara-C/VP-16少量持続療法1コースにて寛解に導入。地固め療法以後は通常のAMLに準じた化学療法を施行し,地固め療法2コース以後はAML1-MTG8再構成も消失。症例2は67歳男性。貧血精査のため当院紹介入院。末梢血は汎血球減少を示し,骨髄穿刺では41.5%に芽球を認め,骨髄生検上cellularityは20%と低下。症例1と同様8;21転座,AML1-MTG8再構成を認めた。Ara-C/VP-16少量持続療法2コースにて寛解に導入。以後症例1と同様に通常の化学療法を行い,地固め療法3コース以後AML1-MTG8再構成は消失。なお,2例とも3年寛解を維持。8;21転座陽性低形成性白血病に対し通常の化学療法を行い,遺伝子学的寛解を得た2例を経験した。
  • 島野 俊一, 村山 佳予子, 横濱 章彦, 村田 直哉, 土屋 純
    1999 年 40 巻 4 号 p. 318-323
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    35歳の女性が第三子妊娠中に血小板減少(6.4×104l)を指摘され,1995年1月に当院外来を受診した。骨髄の巨核球数338/μl, PAIgG 40.8 ng/107 cellsなどよりITPと診断され無治療で通院していた。1996年6月7日,妊娠9週で来院し人工中絶を希望した。この時,血小板数(Plt) 6.3×104l, 白血球数(WBC) 8,600/μl, Hb 13.7 g/dlであった。同日より400 mg/kg/日のグロベニン-Iを5日間投与した。投与5日目,Pltは0.9×104lと著減していた。その時のPlt, WBCとHb濃度の治療前値に対する減少率はそれぞれ85.8%, 46.6%と11.7%であった。グロベニン-I投与終了後6日目のPAIgGは181.2 ng/107 cellsであったが,この時高ガンマグロブリン状態が推定された。6月24日からプレドニソロンの投与を開始し,Pltが7.7×104lとなった7月29日に他施設で手術を行った。本例の血小板減少の機序は不明だが,ポリエチレングリコールで処理した薬剤であるグロベニン-Iによる骨髄機能の抑制も可能性の一つと考えられた。
  • 魚嶋 伸彦, 赤荻 照章, 林 英夫, 小林 裕, 近藤 元治
    1999 年 40 巻 4 号 p. 324-329
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は50歳,男性。白血球増多と腰痛を主訴に1997年7月当科入院。白血球数329,400/μl, Ph1染色体陽性,腰椎MRIにて第1, 4腰椎に髄外腫瘤を認め,慢性骨髄性白血病移行期と診断した。ビンクリスチン,プレドニソロン,ハイドロキシウレア,Ara-Cの投与および腰椎に対する放射線療法により,血液学的効果および髄外腫瘤の縮小を認め,その後インターフェロン(IFN)-α 300∼600万単位の投与を開始。開始8週後より,感覚神経優位の軸索障害型末梢神経障害が出現,免疫学的検査にて低補体価とIII型混合型クリオグロブリン(CG)血症を認めた。メチルプレドニゾロンパルス療法を行うことにより症状は軽減,CGも減少傾向を示した。本症例は慢性骨髄性白血病とCGが合併し,IFN-αの投与によりCGの増加をきたし,末梢神経障害が生じたと推論され,IFN-αによる副作用の一つである末梢神経障害の成因を考える上で興味ある1例であると考えられた。
  • 藤田 充啓, 宇野 久光, 日野 理彦, 中川 浩美, 長岡 恵子, 佐々木 なおみ
    1999 年 40 巻 4 号 p. 330-335
    発行日: 1999年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    88歳,女性。貧血と胃部圧迫感の精査目的で当院紹介入院となる。腹部で肝を右季肋下3横指,脾を左季肋下4横指触知した。血液検査ではRBC 310×104l, Hb 10.1 g/dl, Ht 30.6%, Plt 9.8×104l, WBCは4,470/μlで異常リンパ球を38%認め,このリンパ球は,細胞表面に偏在する短い細胞突起を有し,酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ陰性で細胞表面マーカーはCD19, CD20, IgG, κ, HLA-DRが陽性,CD5, CD10, CD11c, CD23, CD25, CD38, CD103は陰性でIg (H) JHの再構成を認めた。末梢血染色体分析では46, XX, del(7)(q32)を含む異常を認めた。骨髄検査でも同様の異常リンパ球を11.2%認めた。脾臓摘出術を施行した。病理組織学的には白脾髄を中心にリンパ腫細胞の増生がみられたSLVLの診断が確定した。現在無治療で外来経過観察中である。
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