臨床血液
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64 巻, 4 号
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Picture in Clinical Hematology
症例報告
  • 安見 正人, 白石 貫馬, 上條 公守, 釜江 剛, 烏野 隆博
    2023 年 64 巻 4 号 p. 245-249
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル 認証あり

    症例は93歳女性。貧血の精査のため当院受診し,末梢血に腫瘍細胞増加を伴ったリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)と診断された。8ヶ月後には貧血が進行し,末梢血腫瘍細胞が66%と増加した。副作用によるQOL低下の懸念から,tirabrutinibを80 mg/日の低用量で開始した。治療開始3週間後には輸血依存から離脱し,末梢血腫瘍細胞も減少した。その後,tirabrutinibに対して忍容性がみられたため240 mg/日まで漸増した。治療開始13ヶ月後の現在,副作用なく経過し部分寛解を得ている。Tirabrutinibはブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)に高い選択性を有するBTK阻害薬でLPL症例に対し高い有効性を示すが,高頻度に皮膚障害が報告されておりQOL低下が危惧される。高齢者に対しては,副作用を考慮した低用量tirabrutinibの導入も有効である可能性があり報告する。

  • 中村 侑平, 川村 俊人, 松見 信平, 松本 和久, 田中 里奈, 石川 拓斗, 松岡 あかり, 米野 友啓, 河村 匡捷, 竹下 絢子, ...
    2023 年 64 巻 4 号 p. 250-254
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル 認証あり

    34歳男性。KMT2A-MLLT1陽性急性骨髄性白血病の第1寛解期で,busulfan/高用量cyclophosphamideを前処置としてHLA適合の妹より同種末梢血幹細胞移植を施行した。Day14に生着し以降は寛解を維持した。重篤な移植片対宿主病も認めなかったが,経口cyclosporin(CsA)10 mg/dayまで減量した移植後6ヶ月の時点で間質性肺炎を発症した。間質性肺炎に対して投与したprednisolone(PSL)の効果は一時的で,間質性肺炎は急速に増悪した。追加精査にて抗MDA5抗体陽性が判明したためcyclophosphamide+PSL+CsAによる3剤併用療法を開始して奏効が得られた。しかし,後遺症の呼吸不全で人工呼吸器管理を要したため,弟と妹より生体肺移植を施行した。3剤併用療法と生体肺移植により呼吸状態の改善を得た抗MDA5抗体陽性急速進行性間質性肺疾患の症例を経験したため,ここに報告する。

  • 松本 周平, 髙橋 宏通, 濱田 高志, 三浦 勝浩, 中川 優, 栗原 一也, 遠藤 聖英, 小池 隆, 飯塚 和秀, 入山 規良, 中山 ...
    2023 年 64 巻 4 号 p. 255-259
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル 認証あり

    症例は70歳の女性。食思不振と黒色便を主訴に受診した。7年前に多発性骨髄腫と診断されたが,再発難治のため1ヶ月前よりKRd療法(carfilzomib,lenalidomide,dexamethasone)が施行されていた。来院時検査にて,破砕赤血球を伴う溶血性貧血,血小板減少,腎機能低下を認め,carfilzomibによる血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy, TMA)を疑い入院となった。Carfilzomibを中止し,血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenia purpura, TTP)の可能性も考慮してステロイドパルス療法を開始した。血漿交換,血液濾過透析,絶食で臨床所見は改善した。既報ではcarfilzomibによるTMAの初発症状は,発熱や消化器症状(嘔気・嘔吐,下痢),腎機能障害(下腿浮腫,尿量減少)である。本症例は既報にない出血症状を主訴としたTMAであり,carfilzomib治療中に出血症状を呈した場合はTMAを考慮する必要があると考えられた。

  • 中谷 綾, 長手 泰宏, 戸田 淳, 山下 勇大, 廣瀬 由美子, 森 清, 柴山 浩彦
    2023 年 64 巻 4 号 p. 260-264
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル 認証あり

    症例は多発頭部腫瘤と圧迫骨折を主訴に来院した75歳男性。血液検査でIgG上昇を認め,免疫固定法でIgGκ型M蛋白を同定した。骨髄検査で形質細胞は1.2%であり形態学的に異常細胞を認めなかったが,PET/CTでは多発性骨病変が認められ,頭部腫瘤の生検標本から,形質芽球性リンパ腫(PBL)と診断した。PBLは,B細胞抗原の発現を欠きながら形質細胞の表現型を示すアグレッシブB細胞性リンパ腫である。腫瘍細胞形態は形質芽球様であり,多発性骨髄腫のサブタイプである形質芽球性骨髄腫との鑑別は難しい。免疫表現型や臨床経過は酷似している。本症例は多発骨病変,M蛋白が認められ,多発性骨髄腫と酷似する臨床所見であったため診断に苦慮した。最終的にはEpstein-Barr virus陽性を根拠としてPBLと診断した。Dose-adjusted(DA)-EPOCHによる治療を行い,完全奏効を達成した。

  • 鷲見 千紘, 土岐 康通, 船山 拓也, 齋藤 豪志, 畑山 真弓, 山本 昌代, 進藤 基博, 湯澤 明夏, 谷野 美智枝, 奥村 利勝
    2023 年 64 巻 4 号 p. 265-270
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル 認証あり

    53歳男性。発熱と眼瞼浮腫が出現し,血小板減少を認め当科紹介となった。免疫性血小板減少症と診断し,prednisolone(PSL)0.5 mg/kg/dayを開始したところ血小板数や発熱は改善し,PSLを終了した。その1ヶ月後,発熱と全身性浮腫が出現し,血小板減少,急速な腎機能の悪化を認め,CT検査では全身に腫大リンパ節,肝腫大,胸腹水貯留を認めた。骨髄生検では細網線維化を認め,頸部リンパ節生検では混合型のCastleman病の診断となった。以上の結果より,TAFRO症候群と診断した。重症度はgrade 5であった。ステロイドパルス,tocilizumabに反応せず,rituximabにより病態の改善を認めた。TAFRO症候群の標準治療は確立していない。二次治療としてtocilizumabの治療効果が不良であった場合,rituximabへの変更が有用な可能性が示唆された。

  • 麻生 智愛, 前田 智也, 山口 央, 岡村 大輔, 石川 真穂, 郡 美佳, 塚崎 邦弘, 松田 晃, 麻生 範雄, 佐藤 次生, 茅野 ...
    2023 年 64 巻 4 号 p. 271-276
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル 認証あり

    多発性リンパ節腫脹や骨髄浸潤により悪性リンパ腫との鑑別を要した胸部SMARCA4欠損未分化腫瘍症例を報告する。52歳の男性で,2ヶ月前より血痰,リンパ節腫脹,食欲不振,疲労感,発熱,発汗を自覚した。FDG-PET/CT検査で右上葉肺腫瘤,多発性リンパ節腫脹,骨病変を認め,肺がんを疑われて当院を受診。LD 11,977 U/l,可溶性IL-2受容体2,152 U/mlと高値であった。骨髄に大型の異常細胞を認め,悪性リンパ腫が疑われた。急速に呼吸状態が悪化し,第11病日に死亡した。胸水のセルブロックの免疫染色より胸部SMARCA4欠損未分化腫瘍と最終診断された。胸部SMARCA4欠損未分化腫瘍は,2021年版WHO胸部腫瘍分類において新しく組み込まれた喫煙歴のある男性に多い予後不良な疾患単位である。多発性リンパ節腫脹や骨髄浸潤を伴い,悪性リンパ腫との鑑別を要する疾患として留意すべきである。

  • 田中 茜, 川口 岳晴, 今留 謙一, 原 暁
    2023 年 64 巻 4 号 p. 277-282
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル 認証あり

    【背景】EBウイルス関連リンパ増殖性疾患(EBV-LPD)はEBウイルスが感染したリンパ球が体内で増殖する疾患の総称であり,稀少かつ難治性の疾患である。【症例】79歳男性。2021年6月にBNT162b2 mRNA COVID-19ワクチンを接種し,翌日に発熱し,2週間以上持続したため当院受診した。血液検査で肝酵素上昇,汎血球減少,凝固異常,フェリチン,sIL-2R高値を認め,全身CTで肝脾腫を認めた他リンパ節腫脹はなかった。骨髄生検,肝生検とランダム皮膚生検を施行したが悪性所見はなかった。一方末梢血EBV-DNAは5.19 Log IU/mlと高値で,EBV感染細胞はNK細胞であり,EBV-NK-LPDと診断した。Prednisolone, immunoglobulin大量療法,etoposideを投与したが効果がなく2021年9月に永眠した。【考察】BNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン接種後の発熱を契機に診断したEBV-LPDの1例を経験した。ワクチン接種後に発熱が遷延した場合EBV定量検査を実施し,高値の場合感染細胞同定解析など詳細な解析による鑑別が必要である。

  • 堀 太貴, 安井 沙耶, 細木 美苗, 山上 紘規, 乙田 敏城, 湯浅 智之, 粟飯原 賢一, 滝下 誠, 安倍 正博, 中村 信元
    2023 年 64 巻 4 号 p. 283-289
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル 認証あり

    症例は55歳,男性。1ヶ月前からの咽頭痛の精査目的で紹介された。意識障害と項部硬直,口腔内の多発性有痛性潰瘍,全身に米粒大の紅斑を認めた。白血球数7,910/µl(異常リンパ球2%),LDH 203 U/l,補正カルシウム11.2 mg/dl,可溶性IL-2受容体11,800 U/ml,サイトメガロウイルス抗原(C10,C11)43/49.末梢血や骨髄,皮膚にCD4,25陽性の異常リンパ球あり,末梢血でHTLV-1プロウイルスDNAのモノクローナルな組み込みを確認し,成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)と診断した。CTで,脳実質内にリング状造影効果を有する腫瘤が多発し,髄液検査で細胞数1,320/mm3(フローサイトメトリー法でATLL細胞が79%),蛋白244 mg/dl,HHV-6 DNA陽性を認めた。ヘルペスウイルス属感染症に対する治療や髄注を併用してmodified LSG15療法を行うも,意識障害が急速に進行し,入院21日目で死亡した。ATLLでは,中枢神経浸潤のさらなる病態の解明と標準治療の確立が求められる。

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