臨床血液
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57 巻, 11 号
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Picture in Clinical Hematology
臨床研究
  • 扇屋 大輔, 柴山 浩彦, 中谷 英仁, 安藤 潔, 鈴木 憲史, 黒田 芳明, 内田 俊樹, 丸山 大, 松本 守生, 末永 孝生, 飯田 ...
    2016 年 57 巻 11 号 p. 2311-2318
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル 認証あり

    自家移植の適応とならない未治療の多発性骨髄腫患者に対して,2008年7月から2011年3月に本邦で実施されたmelphalan, prednisolone, bortezomib併用(MPB)療法の第I/II相試験(JPN-102)ではVISTA試験と同等の奏効率が示された。本研究では,MPB療法の長期予後を検討するためJPN-102試験に参加した患者の予後について調査した。JPN-102試験に登録された101人中,経過観察データが得られた92人を対象とした。観察期間中央値は50.8(0.9~66.1)ヶ月,年齢中央値は72(48~84)歳で,無増悪生存期間の中央値は25.7(95%信頼区間:21.3~33.9)ヶ月,1年,3年および5年生存率は各々98%,86%,76%であった。Bortezomib総投与量に関して,39 mg/m2未満と39 mg/m2以上での比較では無増悪生存期間や全生存期間に有意な差は認めなかった。以上より,本試験のMPB療法の無増悪生存期間や生存率は,VISTA試験と比較し劣る成績ではなく,良好な成績を示した。今後多発性骨髄腫日本人患者におけるMPB療法の至適投与方法を確立するためには前向き試験による検証が必要である。

症例報告
  • 大地 哲朗, 岩戸 康治, 片山 雄太, 土石川 佳世, 岡谷 健史, 今中 亮太, 許 鴻平, 板垣 充弘, 勝谷 慎也, 麻奥 英毅, ...
    2016 年 57 巻 11 号 p. 2319-2323
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル 認証あり

    症例は18歳男性。発熱を主訴に当科を受診し,末梢血液中にCD42a,CD61陽性の芽球を認めたことから急性巨核芽球性白血病(AML M7)と診断した。寛解導入療法により完全寛解(CR)を達成し,発症143日目にHLA-DR 1座不一致非血縁者間同種移植術を施行した。急性移植片対宿主病(graft versus host disease,GvHD)を認めず骨髄はCRを維持していたが,day134に末梢血WT-1 mRNAの上昇を認めた。day141の骨髄検査で再発所見を認めず,骨髄液WT-1 mRNAは末梢血のものより低値であった。移植後髄外再発を疑い精査をしたところ,PET-CTでFDGの異常集積を伴う胸腺腫大,胃腫瘤を認め,いずれも生検によりAML M7の髄外再発と病理診断された。局所放射線療法後に再寛解導入療法を施行し,第2寛解となりday256に血縁者間HLA半合致同種末梢血幹細胞移植術を施行した。移植後にGvHDを認めず,CRで現在も生存している。骨髄液と比較して末梢血WT-1 mRNAが高値であれば髄外再発も疑われ,その際の全身検索においてPET-CTが非常に有用である。

  • 三谷 早智子, 大久保 友紀子, 西 克幸, 高橋 慧, 多田 浩平, 畑中 一生, 金子 仁臣, 右京 直哉, 水谷 知里, 今田 和典
    2016 年 57 巻 11 号 p. 2324-2328
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル 認証あり

    症例は73歳女性。汎血球減少の精査目的に当科紹介受診となった。異形成のない骨髄過形成,網状赤血球および網状血小板の増加,直接クームス試験陽性,溶血所見等の検査結果よりEvans症候群の診断に至った。また骨髄検査で成熟好中球の相対的減少を認め,自己免疫性好中球減少症(autoimmune neutropenia,AIN)の可能性を考え,6 cell-lineage immunofluorescence test(6 cell lineage IFT)法により抗好中球抗体を証明しえた。本症例は基礎疾患を持たず,特発性自己免疫性汎血球減少症と考えられた。急速に血球減少が進行したためprednisolone(PSL)0.5 mg/kgの内服を開始し,3系統の血球は速やかな回復を認めた。

  • 酒井 俊郎, 小沼 祐一, 下山 紗央莉, 幸田 久平
    2016 年 57 巻 11 号 p. 2329-2333
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル 認証あり

    症例は58歳男性。CML,移行期と診断。Dasatinib投与,6ヶ月で分子生物学的完全寛解に至るも,同治療開始後17ヶ月目に汎血球減少を契機に精査したところ,Ph陰性かつ正常核型のAMLと診断した。2回の寛解導入療法後,第一寛解期で同種造血幹細胞移植を行った。Tyrosine kinase inhibitor(TKI)はCMLの治療成績を飛躍的に向上させた。しかしCMLに対するTKI治療中にPh陰性で,モノクローナルな染色体異常細胞を認める症例が約10%程度存在するとされ,ごく稀ではあるがMDSやAMLに移行する症例も報告されている。さらに本症例と同様にCMLに対してTKI治療中にPh陰性かつ正常核型のAMLを発症した症例が報告されている。CMLに対するTKI治療中の注意深い経過観察と,同様な症例の蓄積と,さらなる解析が重要と考えられた。

  • 池川 俊太郎, 名島 悠峰, 佐野 直樹, 堀口 慎一郎, 海渡 智史, 黒澤 修兵, 阪口 正洋, 原田 介斗, 日野 裕太郎, 山本 圭 ...
    2016 年 57 巻 11 号 p. 2334-2338
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル 認証あり

    60歳男性。2010年に骨髄異形成症候群に対し女性ドナーからの臍帯血移植施行後,再発なく経過していた。2015年2月左大腿骨病的骨折のため入院。がん骨転移を疑い精査中に血球貪食症候群(HPS)を合併し,当科転科。骨髄穿刺にて骨髄壊死を認め,HPSの原因を特定できなかった。HLH2004プロトコールを開始し改善したが,血球回復後末梢血に形態的に異常な血球細胞の増多を認めた。表面抗原はCD33(+),再検した骨髄は免疫染色でミエロペルオキシダーゼ(+),CD117(+)であり,46XX,+1, der(1;7)(q10;q10)とドナータイプで新たな染色体異常を認め,ドナー細胞白血病(DCL)と診断した。寛解導入療法を施行したが,骨髄抑制期に肺炎と敗血症を発症し,第68病日に永眠された。病的骨折と骨髄壊死を伴った重度HPSが先行し,DCLの診断に難渋した稀な症例と考え,報告する。

  • 木田 理子, 平尾 理子, 飯塚 浩光, 半下石 明, 臼杵 憲祐
    2016 年 57 巻 11 号 p. 2339-2344
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル 認証あり

    67歳男性。骨髄腫腎による急性腎不全で発病した。一時は透析を要したが,bortezomibとdexamethasoneの併用(BD)療法でvery good partial responseに到った。3年後に再燃しthalidomideを追加したが薬疹のため中止した。骨病変および複雑核型異常が出現し,血清free light chainの増加とともに腎不全が増悪したため維持透析を導入した。Lenalidomideを開始したが不耐容で不応であった。BD療法を再開したが両肺の間質性陰影および胸水が出現し中止した。透析下にpomalidomideと低用量dexamethasoneの併用(PD)療法を開始した。7サイクルまでstable diseaseを維持したが,血球減少のため用量調節を要し効果持続のためには4 mg/日の投与が必要と思われた。PD療法は透析を要する高度腎不全を伴った進行期の再発難治性骨髄腫に対しても有用であるが,慎重な用量調節と支持療法が必要と考えられた。

特集:がん免疫療法の最前線
  • 大嶺 謙
    2016 年 57 巻 11 号 p. 2345
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル 認証あり
  • 藤岡 優樹, 西川 博嘉
    2016 年 57 巻 11 号 p. 2346-2354
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル 認証あり

    近年,がんの新たな治療法としてがん免疫療法が脚光を浴びている。固形がんにおいては抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体が承認され,血液がんの領域でもHodgkinリンパ腫等に対する抗PD-1抗体やCD19陽性急性リンパ性白血病等に対するCD19キメラ抗原受容体導入T細胞療法の早期臨床治験での有用性が報告されている。これらのがん免疫療法は,従来の殺細胞性の抗腫瘍製剤と異なり,生体に本来備わっている免疫系の働きを調整し,がん排除を担う抗腫瘍免疫応答を高めることによってがんを治療する。この“免疫系の働きによりがんを排除する”という概念が医薬品になったことは,これまでのがん治療に新たな選択肢をもたらした。一方で免疫応答を強めることにより特徴的な副作用がみられることも明らかになってきており,十分な対応が求められる。本稿では,がん免疫療法の全体像について概説し,今後のがん免疫療法の進展について考察する。

  • 谷本 一史, 藤原 弘
    2016 年 57 巻 11 号 p. 2355-2364
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル 認証あり

    免疫学と遺伝子工学を融合させた合成免疫学(synthetic immunology)は腫瘍免疫学理論の実証(proof-of-concept)として,がん抗原を選択的に認識する受容体遺伝子をTリンパ球に導入した遺伝子改変T細胞を利用する細胞免疫療法を実現した。数々の技術革新によって長期間持続する臨床的に明らかな抗腫瘍効果を達成する一方で,より強力なエフェクター細胞への希求は重篤な治療関連有害事象も引き起こしている。本稿では,我々の白血病抗原Wilms Tumor 1(WT1)特異的T細胞受容体(T cell receptor, TCR)遺伝子導入T細胞(TCR-T細胞)を用いた急性骨髄性白血病・骨髄異形成症候群に対する細胞免疫療法の臨床試験を交えて,免疫チェックポイント阻害剤の登場で急速な変化を遂げつつあるがん免疫療法における「がん抗原特異的TCR-T細胞療法」の現状を概観する。

  • 翁 家国, 翁 由紀子, 大嶺 謙
    2016 年 57 巻 11 号 p. 2365-2372
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル 認証あり

    CD19に対するキメラ抗原受容体を発現させた遺伝子改変T細胞が再発・難治性のB細胞性腫瘍に対して有効であることが注目を集めている。2011年にCLLをはじめとした進行の遅い腫瘍のおよそ半数に有効であることが報告された。2012年にはB-NHLのおよそ8割に対しても同様に有効であることが報告された。2013年には治療が最も難しいと考えられていたB-ALLのおよそ9割に劇的な効果が報告された。つい最近では,通常CD19を発現していない多発性骨髄種に対しても自家移植と併用すると分子生物学的寛解を期待できる治療であることが報告された。一方で,サイトカイン放出症候群と中枢神経毒性は重篤な副作用として認識されている。本邦での臨床試験は昨年始まったばかりであるが,この分野の大きなブレークスルーになると期待されている新規治療法である。

  • 中沢 洋三, 鈴木 哲, 西尾 信博
    2016 年 57 巻 11 号 p. 2373-2380
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル 認証あり

    キメラ抗原受容体導入T細胞を用いる養子免疫療法(CAR-T療法)の登場により,血液腫瘍の治療は大きく変わろうとしている。日本においても,B細胞性腫瘍に対するCD19 CAR-T療法の早期導入が待たれる。また,他の血液腫瘍に対する新規CAR-T療法の開発も期待される。今後,国内でCAR-T療法を導入・開発するにあたっては,平成26年に施行された2つの法律「再生医療等安全性確保法」と「改正薬事法」を十分に理解する必要がある。「再生医療等安全性確保法」に基づいて製造された細胞製剤は,「特定細胞加工物」と呼ばれ,「臨床研究」に使用される。「改正薬事法」に基づいて製造された細胞製剤は,「再生医療等製品」と呼ばれ,「治験」で使用され,治療薬として上市され得る。本稿では,重要な2つ法制に基づいた養子免疫療法のレギュレーションについて概説したい。

  • 丸山 大
    2016 年 57 巻 11 号 p. 2381-2387
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル 認証あり

    がんに対する新たな治療法として,T細胞による免疫応答を利用する免疫療法が注目されている。免疫チェックポイント阻害薬によるがん免疫療法は複数の治療抵抗性固形腫瘍に対する有効性が示され,造血器腫瘍に対する臨床開発も進んでいる。特に抗PD-1抗体による再発・治療抵抗性ホジキンリンパ腫に対して,単剤による高い治療効果が報告された。他のリンパ腫病型や多発性骨髄腫などのリンパ系腫瘍への免疫チェックポイント阻害薬単剤あるいは抗体薬・免疫調整薬などとの併用療法の臨床開発も進行中であり,今後の造血器腫瘍に対する治療開発の流れを変えうることが期待されている。

  • 奥山 奈美子, 玉田 耕治, 田村 秀人
    2016 年 57 巻 11 号 p. 2388-2395
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/10
    ジャーナル 認証あり

    近年,がん免疫療法の進展は目覚ましく,がん治療におけるパラダイムシフトへとつながった。特に,キメラ抗原受容体発現T(chimeric antigen receptor-T, CAR-T)細胞療法や免疫チェックポイント阻害薬は,従来のがん免疫療法では到達し得なかった臨床効果と予後の改善を達成し,現在,種々のがんを対象に多くの臨床試験が実施されている。その一方で,これらの免疫治療に奏効しないがん種や患者,奏効後の再発例も存在し,さらに治療効果を向上させるための研究開発が進んでいる。また,がん免疫療法の安全性,利便性,そして経済性の改善と向上も今後の課題である。本稿では,がん新生抗原の同定およびそれを標的とした個別化がん免疫療法,高い機能性と生存性を備えたCAR-T細胞の作製,非自己細胞や細胞株を用いて製剤化するoff-the-shelf製剤,さらに複合的免疫療法を中心に今後の展望を論述する。

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