臨床血液
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41 巻, 6 号
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第41回総会
シンポジウム1
血小板減少症の病態と治療
シンポジウム6
造血細胞移植の治療関連合併症とその対策
臨床研究
  • 沢田 仁, 和気 敦, 山崎 嘉宏, 和泉 洋一郎
    2000 年41 巻6 号 p. 500-506
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    同種末梢血幹細胞移植(Allo-PBSCT)が骨髄移植(BMT)に代わりうる方法として行なわれている。われわれはgranulocyte colony-stimulating factor (G-CSF)に対する動員不足(poor mobilization)の症例について検討した。16例の患者が骨髄破壊的治療後に血縁ドナーから移植を受けた。患者は平均年齢34歳(範囲6∼61歳)で,9例がstandard riskで7例がhigh riskだった。ドナーの平均年齢は37歳(範囲15∼68歳)であった。ドナーは10 μg/kg/day, 4∼6日間のG-CSFの皮下注射を受けた。1∼3回のアフェレーシスで末梢血幹細胞が集められ直ちに輸注された。患者は全員移植後G-CSFの投与を受けた。15例がAllo-PBSCTを受け,1例がAllo-PBSCT+BMTを受けた。Allo-PBSCTを受けた15例のCD34陽性細胞数は平均6.32×106/kg(範囲1.28∼14.20)だった。生着の結果を同じ治療を受けた9例のAllo-BMTと比較したところ,好中球500/μl以上,血小板20,000/μl以上の中央値は,Allo-PBSCT群はそれぞれ14日(範囲10∼17日)と15日(範囲11∼50日),Allo-BMT群ではそれぞれ17日(範囲13∼29日)と20日(範囲16∼160日)であった(p=0.0177, p=0.003)。3人のドナーがCD34陽性細胞が2×106/kg以下のpoor mobilization例と考えられた。3人のうち2人はCD 34陽性細胞が3回のアフェレーシスで1.28と1.78×106/kgだった。これらの患者の好中球の生着は速かったが,1例は血小板の生着が遅れ,1例は血小板が20,000/μl以上に達する前にgrade IVの急性GVHDで死亡した。残り1例はCD 34陽性細胞が0.17×106/kgのpoor mobilizationのために骨髄の追加採取が必要だった。Allo-PBSCTはより早い生着をもたらすが,完全生着のための最小CD 34陽性細胞数がさらなる規模の研究で明らかにされる必要がある。
症例
  • 安藤 恵子, 嶋本 隆司, 林 重文, 伊藤 良和, 川西 慶一, 宮澤 啓介, 木村 之彦, 芹沢 博美, 海老原 善郎, 大屋敷 一馬
    2000 年41 巻6 号 p. 507-512
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は55歳,女性。胸腹水,腹腔内リンパ節腫脹精査にて1998年8月入院。腹水細胞のDNA分析でIgJHの再構成を認めB細胞性リンパ腫を疑い治療開始。DICE療法,CHOP療法施行し臨床症状は著明に改善した。1999年3月より中枢神経症状が出現。MRIで白質を中心としたびまん性の浸潤像を認め,悪性リンパ腫の脳内浸潤もしくは進行性多巣性白質脳症(PML)の可能性が考えられたため,放射線療法と抗ウイルス剤による治療を開始。頻回の髄液検査の結果,CD30陽性の多核巨細胞が出現し,悪性リンパ腫の中枢神経浸潤と診断した。放射線療法後,中枢神経浸潤は一時改善したが,その後全身播種をきたし死亡。剖検時の形態学,免疫染色,分子生物学等の多角的解析でびまん性大細胞Bリンパ腫と診断した。PMLとの鑑別が問題となった中枢神経浸潤の診断には頻回の髄液検査によるサイトスピン標本を用いた免疫染色が有用と考えられた。
  • 福野 賢二, 鶴見 寿, 山田 俊樹, 大山 正巳, 森脇 久隆
    2000 年41 巻6 号 p. 513-518
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は67歳,男性。血小板減少のため1998年3月入院。WBC 4,900/μl, 芽球3.5%, Hb 10.1 g/dl, Plt 1.8×104l, LDH 3,570 IU/l, IgG 653 mg/dl, IgA 64 mg/dl, IgM 49 mg/dl, IgD 674 mg/dl。血清免疫電気泳動でIgDλ型のM蛋白陽性。骨髄には骨髄腫細胞を79.2%認めた。大部分が形質芽球型の形態を呈し成熟型の形質細胞は認めなかった。Cytarabine (Ara-C) 20 mg/bodyとetoposide (VP-16) 50 mg/bodyの持続点滴治療を7日間行った。治療20日目の骨髄穿刺で形質芽球型の骨髄腫細胞はみられず,成熟型の形質細胞を2.1%認めた。治療19日目に血小板は10×104lを越え,IgDは210 mg/dlとなった。治療23日よりmephalan, methylprednisolone, vincristineによる治療を開始。治療7カ月後に免疫電気泳動でM蛋白は陰性となった。2000年4月現在,完全寛解を維持。
  • 水谷 友弥子, 岩政 喜久恵, 新井 潤子, 酒井 郁也, 安川 正貴, 藤田 繁
    2000 年41 巻6 号 p. 519-523
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は72歳,女性。臀部の皮下腫瘤を主訴として当科に入院した。同部位の組織学的検査の結果,subcutaneous panniculitic T-cell lymphoma (SPTCL)の特徴とされる脂肪織炎の像を認め,細胞形態学的検査にて腫瘍細胞はlarge granular lymphocytes (LGL)の形態を示した。表面マーカー解析の結果CD3+ CD4- CD8+ CD56+とcytotoxic T cellsの表現型を示し,サザンブロット解析でT細胞レセプターβ鎖遺伝子の単クローン性再構成を認めた。染色体分析では,t(1;6)(q11;p21)を含む複雑な異常が認められた。SPTCLの細胞形態や染色体解析についての報告例はほんどなく,これらの点を明らかにする上で貴重な症例と考えられた。
  • 吉本 寿美, 柳邊 安秀, 水上 智之, 石橋 史成, 足立 尚登, 高木 一孝, 布井 博幸
    2000 年41 巻6 号 p. 524-529
    発行日: 2000年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    Dyskeratosis congenita (DKC)は皮膚の網状色素沈着,爪の萎縮,粘膜白板症を3主徴とする稀な遺伝性疾患で,約9割の症例が伴性劣性遺伝の形式を呈する。10歳までに約半数の症例で汎血球減少が認められ,死亡原因の多くを占めている。われわれは,3主徴と進行する汎血球減少,および小脳萎縮を有する11歳男児を経験し,末梢血リンパ球培養によりmRNAを得て遺伝子解析を行った。その結果,DKC1遺伝子の1,150番目のCがTに置換したミスセンス変異を呈した症例であることが明らかになった。これは,Knightらが報告したX-linkedのDKC症例でもっとも多く認められた変異(21例中11例)と同じ変異であり,この領域はX-linkedのDKCにおけるホットスポットになっていると考えらる。典型的なDKCである本症例の臨床経過と遺伝子解析結果について報告する。
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