臨床血液
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62 巻, 10 号
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Picture in Clinical Hematology
総説
  • 伊藤 悦朗, 土岐 力, 神尾 卓哉, 照井 君典
    2021 年 62 巻 10 号 p. 1455-1464
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり

    遺伝性骨髄不全症候群(IBMFS)は,骨髄不全,外表奇形,発がん素因を特徴とする遺伝性疾患の総称である。次世代シークエンス法の進歩により,IBMFSの原因遺伝子が次々と明らかにされている。最近,我々はDiamond-Blackfan貧血(DBA)に似た骨髄不全症症例のエクソーム解析から,TP53de novo活性化変異によって起こる新たなIBMFSを見出した。この発見は,IBMFSの発症にp53の活性化が関連しているという従来の仮説を裏付けるものであった。さらに,Fanconi貧血(FA)に似た再生不良性貧血患者のエクソーム解析から,二つのフォルムアルデヒド解毒酵素ADH5とALDH2が同時に欠損する新たなIBMFSであるaldehyde degradation deficinecy(ADD)症候群が見出された。この総説では,DBA,FAとその関連疾患に関する本邦の最近の研究成果を紹介する。

  • 岡本 康裕
    2021 年 62 巻 10 号 p. 1465-1473
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり

    ダウン症候群に合併する急性リンパ芽球性白血病(DS-ALL)を世界の臨床研究グループから収集した653例の解析では,DS-ALLの8年無病生存率は64%で,同時期の非DS-ALLの81%より悪かった。DS-ALLでは,予後良好である高二倍体やETV6-RUNX1異常などが少ないこと,Ph-like ALLの割合が高いこと,感染合併症などによる副作用死亡が多いことが理由と考えられている。微小残存病変を指標として治療強度を適正化すること,副作用対策を強化することで,DS-ALLの治療成績が向上しつつあることが報告されている。DS-ALLの発症頻度は非DS-ALLの20倍とされる。機序としては,21番染色体上にあるHMGN1によってリンパ系の増殖が起こり,さらにP2RY8-CRLF2融合などによるCRLF2の過剰発現により,JAK-STATの活性化が起こり,ALL細胞が増殖することが推定される。このCRLF2の異常はDS-ALLの30~60%に認められる。今後はCRLF2に対する治療,その下流のJAKを標的とした治療,さらにはblinatumomabやCAR-T療法がDS-ALLの治療に組み込まれていくものと考えられる。

臨床研究
  • 塚田 和佳, 稲村 純季, 五十嵐 将, 佐藤 一也
    2021 年 62 巻 10 号 p. 1474-1481
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり

    背景:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大に伴い,悪性疾患を有する患者も感染のリスクが少なくない状況が続いている。COVID-19は固形腫瘍より血液悪性腫瘍の患者の方が重症化すると報告されているが,それらの前治療が及ぼす影響に関しては明確になっていない。方法:当院の院内感染で発症した血液悪性疾患を有するCOVID-19の17例を対象とし,重症群と非重症群に二分して前治療を含む重症化に寄与する因子に関し後方視的に解析した。結果:全死亡率47%と非常に高率であった。重症群は17例中7例で,非重症群と比較し有意に死亡率が高かった(odds ratio(OR)18.44,95% confidence interval(CI)1.27~ 1223.17,P=0.02)。単変量解析では,重症化に寄与する有意な因子として,前治療として2レジメン以上の化学療法(OR 17.34,95%CI 1.15~1165.33,P=0.03),ヘモグロビン低値(P=0.02)が同定されたが,COVID-19発症3ヶ月以内の前治療は有意な因子とはならなかった(P=0.54)。結論:多重治療歴のある血液悪性疾患患者ではCOVID-19重症化リスクがあり注意が必要である。

症例報告
  • 安心院 千裕, 鈴木 優里, 堀米 顕久, 土田 裕子, 高砂 聡志, 瓜生 英子, 山中 純子, 七野 浩之
    2021 年 62 巻 10 号 p. 1482-1487
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり

    縦隔原発胚細胞腫瘍と血液悪性腫瘍の合併は発症から中央値6ヶ月で死亡すると報告される予後不良な症候群である。我々は生存例に倣い化学療法と造血細胞移植を行った。症例は15歳男児でAFPとhCG上昇を伴う切除不能の縦隔腫瘍と急性巨核芽球性白血病を同時発症していた。腫瘍学的緊急症のために縦隔腫瘍に対する化学療法を先行した後,白血病に対する寛解導入療法を行い完全寛解を得た。強化療法からはCDDPを併用したが縦隔腫瘍増大を認め全摘出困難と判断して,busulfan+melphalanを前処置としたHLA半合致同胞ドナーから骨髄移植を施行した。移植後44日目に白血病の中枢神経再発を来し,その後種々の移植後合併症を認め感染症に伴う臓器不全により死亡した。剖検では骨髄は生着不全の所見で芽球は認めず,縦隔腫瘍は一部に未熟奇形腫成分があったがほぼ壊死組織であった。縦隔腫瘍残存は白血病再発と関連する可能性もあり,腫瘍切除と大量化学療法が早期に可能である治療戦略が必要と思われるが,より一層の症例蓄積と治療法の開発が望まれる。

  • 村上 賢, 山口 優太, 紀田 侑子, 森川 陽一郎, 氏家 秀敏, 菅原 浩之, 金倉 譲
    2021 年 62 巻 10 号 p. 1488-1492
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり

    COVID-19はacute respiratory distress syndrome(ARDS)に類似したサイトカインストームを特徴とするウイルス性感染症である。血液腫瘍を合併する患者ではCOVID-19が重症化しやすいことが報告されているが,再生不良性貧血患者におけるCOVID-19の報告はほとんどなく,再生不良性貧血がCOVID-19の経過にどのような影響を与えるのかは明らかではない。今回,再生不良性貧血の患者で高IL-6血症を認めたにも関わらず軽症で経過したCOVID-19の1例を経験した。ARDSにおいては好中球や単球が組織障害に重要な役割を果たすことが知られており,本症例においては再生不良性貧血により好中球や単球が著減していたことにより,2次性の細菌感染が重症化するリスクはあったもののCOVID-19の重症化を防いだ可能性が考えられた。

  • 丸山 ゆみ子, 錦井 秀和, 松岡 亮太, 槇島 健一, 栗田 尚樹, 日下部 学, 横山 泰久, 加藤 貴康, 坂田(柳元) 麻実子, 小 ...
    2021 年 62 巻 10 号 p. 1493-1498
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり

    Bing-Neel症候群(BNS)は,リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)の経過中に腫瘍細胞の中枢神経浸潤を伴い,多彩な神経症状を呈する稀な病態である。今回我々は,髄液細胞の遺伝子変異から診断に至ったIgG型BNSの1例を報告する。症例は74歳男性。2012年にIgG型LPLと診断後,rituximub-bendamustine(RB)療法が奏効して経過観察中であった。2019年に両側下肢の脱力感と痙性歩行が緩徐に進行した。髄液細胞診では診断に至らなかったが,髄液細胞のDNAでMYD88 L265P変異を検出したことからIgG型BNSと診断し,RB療法に加え髄腔内投与を施行したところ,劇的な神経症状の改善を認めた。MYD88 L265P変異陽性LPL症例における神経症状出現時にはBNSを鑑別にあげ,髄液細胞DNAでの遺伝子変異解析を行うことが重要であると考えられた。

  • 清原 千貴, 菅原 教史, 前田 峻大, 宮島 真理, 高野 幹, 西谷 匡央, 西谷 真来, 佐々木 了政, 岡野 良昭, 上原 さつき, ...
    2021 年 62 巻 10 号 p. 1499-1504
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり

    成人T細胞白血病リンパ腫の67歳女性。化学療法後の部分奏効後にHLA適合同胞間末梢血幹細胞移植を施行した。Day120にcyclosporine(CS)を中止し,その後に全身性に皮疹が出現し,慢性移植片対宿主病(GVHD)と診断した。ステロイド外用剤で増悪なく経過した。Day212に汎血球減少を認め,入院後,肺門部リンパ節のEBウイルス関連移植後リンパ増殖症(PTLD)と診断した。PrednisoloneとCS投与により皮膚GVHDの改善を認めたがPTLDと血球減少は改善しなかった。その後,4サイクルのrituximab(375 mg/m2/週×4)の投与によりPTLDは改善したが,輸血依存性の血球減少は改善しなかった。二次生着不全と診断し,顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)およびeltrombopag(100 mg/日)の投与を行ったところ血球減少は次第に回復した。本症例における血球減少は慢性GVHDによる二次生着不全が原因と考えられ,G-CSFおよびeltrombopag投与が有効であることが示唆された。

  • 畑中 奈保子, 佐多 弘, 草壁 信輔, 安見 正人, 烏野 隆博
    2021 年 62 巻 10 号 p. 1505-1509
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり

    症例は関節リウマチ(RA)に対してmethotrexate,etanerceptによる治療歴のある66歳の女性。RAの症状悪化によりtocilizumab(TCZ)に治療変更し経過良好であったが,1年6ヶ月後,発熱が出現し,頸部・傍大動脈リンパ節腫脹と肝臓・脾臓の腫瘤性病変が認められた。リンパ節生検の結果,classical Hodgkin lymphoma(mixed cellularity), CSIVと診断した。免疫組織化学ではCD5(−), CD15(−), CD20(+), CD30(+), PAX-5(+), EBNA2(−), LMP-1(+), PD-L1(+), EBER(+)であった。TCZ中止後も発熱・リンパ節腫脹は改善しなかったため,ABVd療法を施行し寛解となった。TCZに関連した免疫不全関連リンパ増殖性疾患の報告は限定的であり,その関連性において貴重な症例と考えられる。

  • 奥野 真吾, 橋本 健, 清水 里恵, 高木 えり奈, 梶口 智弘
    2021 年 62 巻 10 号 p. 1510-1514
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり

    症例は75歳女性。肺腺がん術後再発に対する抗がん剤治療歴と特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対するHelicobacter pylori除菌治療歴がある。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン接種の2週間後に貧血を指摘され,血液・腫瘍内科を受診した。直接・間接クームス陽性の正球性正色素性貧血を認め,LDH・間接ビリルビン・網赤血球が高値であり,自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と診断した。BNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン接種の他には明らかな誘因を認めなかった。Prednisolone療法により速やかに病勢の改善が得られた。COVID-19の感染拡大抑制のためワクチン接種が非常に重要であると考えられているが,ワクチン接種の広がりとともにITPの発症・増悪が報告されている。一方でAIHAの報告は希少である。今後のワクチン接種事業の進展に際しAIHAの発症についても注意すべきと考えられた。

短報
  • 宮﨑 詩織, 西田 愛恵, 朝霧 正, 重留 一貴, 木田 和伸, 久川 浩章, 砥谷 和人, 小島 研介
    2021 年 62 巻 10 号 p. 1515-1518
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり

    We report a case of pseudo-prolongation of activated partial thromboplastin time (APTT), which was suspected to be caused by an animal-derived phospholipid. A 78-year-old woman was referred to our hospital because of an unexplained APTT prolongation. She had compensated alcoholic liver cirrhosis, with modestly decreased platelet count and normal prothrombin time, and no bleeding tendency. The APTT was 66 seconds in a test using phospholipid extracted from rabbit brain but was 34.9 seconds with synthetic phospholipids. The artifactual pseudo-prolongation of the APTT was seemingly attributable to the susceptibility of the test reagents to low factor XII levels. Thus, tests with different APTT reagents would be useful to physicians in the diagnosis of similar cases.

  • 柴田 浩気, 田中 晴之, 大谷 惇, 久保 政之, 長谷川 淳, 天野 逸人
    2021 年 62 巻 10 号 p. 1519-1521
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/03
    ジャーナル 認証あり

    Because the coronavirus disease 2019 (COVID-19) pandemic is still rampant, vaccination is being promoted worldwide. However, the safety of various COVID-19 vaccines remains poorly understood. We herein report the case of a 37-year-old woman who experienced thrombocytopenia following BNT162b2 mRNA COVID-19 vaccination. The patient presented with purpura on the extremities 10 days after the first vaccination. She had marked thrombocytopenia and no thrombosis. Thrombocytopenia resolved spontaneously. Given the possibility of occurrence of post-vaccination thrombocytopenia, vaccinated persons should be instructed to consult a medical institution if they experience bleeding symptoms.

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