臨床血液
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64 巻, 6 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
総説
短報
特集:臨床血液学2023 ―病態理解の深化と今後の展望(赤血球系疾患)―
  • 張替 秀郎
    2023 年 64 巻 6 号 p. 465
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり
  • 西村 純一
    2023 年 64 巻 6 号 p. 466-473
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり

    2007年に初の抗補体薬として抗C5抗体eculizumabが,溶血性貧血である発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)に対して承認された。Eculizumabの適応が他疾患に拡大する一方で,新規抗補体薬の開発がさまざまな疾患において精力的に展開されている。PNHにおいては,eculizumabの改良版である抗C5リサイクル抗体ravulizumabが開発され,投与間隔が2週間から8週間に延長されたことにより,利便性が大いに向上した。PNHを終末補体阻害薬(eculizumab,ravulizumab)で治療することにより,血管外溶血という新たな課題が発生した。この課題を克服するために,近位補体阻害薬であるC3阻害薬pegcetacoplanが欧米で承認され,さらに,増幅ループ阻害薬であるB因子阻害薬iptacopan,D因子阻害薬danicopanなどが開発途上にある。昨年,自己免疫性溶血性貧血の一病型である寒冷凝集素症の治療薬として,抗C1s抗体sutimlimabが承認された。本稿では,溶血性貧血に対する新たな抗補体治療薬について概説する。

  • 鈴木 隆浩
    2023 年 64 巻 6 号 p. 474-481
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり

    再生不良性貧血(AA)は自己免疫による造血幹細胞の傷害によって成熟血球の産生障害をきたす疾患であるが,一部の症例には遺伝子変異を伴うクローン性造血が潜在する。PIG-A変異やBCOR/BCORL1変異,HLAクラスIアリルの異常を伴う症例は,免疫抑制療法が奏効しやすく予後良好とされているが,DMNT3AASXL1変異などMDS関連変異を持つ症例は,それ以外の症例と比較してMDSへの移行リスクが高い。本稿ではAAに認められるクローン性造血に注目し,その臨床的意義や病型移行について解説するとともに,AAの境界疾患と言われる免疫抑制療法が有効なMDS症例についても考察する。

  • 栗田 良
    2023 年 64 巻 6 号 p. 482-488
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり

    近年,試験管内における赤血球大量生産法を確立し,新しい血液製剤として開発しようとする試みが国内外で行われている。赤血球の人工生産ソースとしては,造血幹/前駆細胞,多能性幹細胞,不死化赤血球前駆細胞株,の3つが候補として挙げられており,いずれの細胞ソースを用いた場合でも,機能を有する赤血球の生産が可能となっている。すでに海外では,造血幹/前駆細胞から人工生産した赤血球について臨床研究が行われており,生体内半減期についても通常の赤血球と遜色ないことが示されている。このように,人工生産赤血球を用いた輸血への応用は,一歩一歩着実に前進している。一方で,赤血球輸血はほかの細胞移植治療と異なり,一度の移植(輸血)に莫大な細胞数が必要となる。このため,今後はいかに高密度培養法を用いて小スケールかつ低コストに,赤血球を大量生産できるかが大きなポイントになる。本稿では,このような赤血球人工生産の現状や課題点,今後の展望について概説する。

特集:臨床血液学2023 ―病態理解の深化と今後の展望(リンパ系疾患)―
  • 楠本 茂
    2023 年 64 巻 6 号 p. 489
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり
  • 宮崎 香奈
    2023 年 64 巻 6 号 p. 490-496
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり

    びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の予後はrituximab導入により劇的な改善をもたらした。しかしながら中枢神経系(CNS)再発をきたすと極めて予後不良であることから,CNS再発をいかに低減させることができるか,重要なclinical questionが残っている。CNS再発予後予測モデルとしてCNS-International Prognostic Indexが同定された。ほかにもいくつかCNS再発高リスク因子の報告はあるが,完全にCNS再発を事前に予測できる因子は明らかではない。CNS再発を低減させるため,実臨床ではmethotrexate(MTX)の髄腔内投与や大量MTX療法などが行われているが,DLBCLのCNS再発予防としての至適治療はまだない。本稿ではDLBCLにおけるCNS再発リスク評価とCNS再発予防に関連する臨床試験結果を中心に概説する。

  • 吉満 誠
    2023 年 64 巻 6 号 p. 497-503
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり

    成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma, ATL)は極めて難治性の末梢性T細胞リンパ腫である。近年初発ないしは再発難治ATLを対象にいくつかの新規薬剤が承認されたが,十分に予後の改善を実感できていない。ATLにおいても次世代シークエンスをはじめとした技術革新により,網羅的なゲノム解析を中心に病態解明が飛躍的に進歩している。本稿では最近の病態解明がもたらした新規治療開発や予後指標の同定について,最近の話題を中心に紹介したい。特に,新規EZH1/2阻害薬の開発から承認,網羅的遺伝子解析の深化,網羅的な遺伝子ノックダウンやノックアウト技術により見いだされた分子病態と治療標的としての可能性,スーパーエンハンサー領域の解析結果から見いだされた最新知見,網羅的遺伝子解析から抽出された予後因子候補について概説する。

  • 蒔田 真一
    2023 年 64 巻 6 号 p. 504-513
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり

    古典的ホジキンリンパ腫(classic Hodgkin lymphoma, cHL)は,欧米においては比較的高頻度に認められるリンパ腫であるが,日本におけるその発症頻度は欧米の約1/3であり,悪性リンパ腫全体の5~7%程度を占めるまれな組織型である。過去50年の間に多剤併用化学療法と放射線治療の臨床開発により,cHLは最も予後良好な悪性腫瘍と言われるまでに治療成績は向上した。一方で,長期生存者における晩期毒性の問題が議論されるようになり,毒性の最小化と治療成績の最大化を両立させるべく,中間PETによる層別化治療や,新規薬剤の初回治療への導入が検討されている。本稿では,cHLに対する初回治療戦略の変遷と,現在の到達点,および今後の展望について概説する。

特集:臨床血液学2023 ―病態理解の深化と今後の展望(造血幹細胞移植)―
  • 豊嶋 崇徳
    2023 年 64 巻 6 号 p. 514
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり
  • 杉田 純一
    2023 年 64 巻 6 号 p. 515-523
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり

    移植後cyclophosphamideを用いたHLA半合致移植(PTCyハプロ)は世界的に増加しており,日本では2020年についにハプロ移植の件数が血縁者間HLA適合移植を上回った。日本のレジストリーデータを用いた後方視的研究ではPTCyハプロはHLA一致の非血縁者移植や臍帯血移植と同等の成績であることが示され期待がもたれる。PTCyハプロは当初,骨髄非破壊的前処置後の骨髄移植で開発されたが,最近は末梢血幹細胞移植や骨髄破壊的前処置でも使用され,特に末梢血幹細胞移植では移植成績を向上させる可能性が示唆されている。輸注CD34陽性細胞数,ドナー年齢,HLAクラスIIミスマッチ,HLA-Bリーダー,PTCy投与量の減量も,PTCyハプロの成績に影響を与える可能性がある。さらにPTCyはHLA一致移植においても有効性が報告され,日本でも前向き第II相試験が進行中である。PTCyを用いてGVHDを十分に抑制することで,より安全性の高い同種移植に期待したい。

  • —GVHDとSOS/VOD—
    森 康雄
    2023 年 64 巻 6 号 p. 524-532
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり

    近年,分子標的薬や新規の抗体製剤・抗体薬剤複合体に加え,免疫細胞療法が次々と臨床現場に登場し,同種造血細胞移植前後に使用可能な状況が整いつつある。これらの新規薬剤を用いて移植前の原疾患コントロールを一層強化し,可能な症例においては移植後に維持療法を継続することで,再発率の低減ひいては移植成績の向上が期待されている。さらに一部の新規薬剤は,依然として同種移植後の致死的合併症の一つであるステロイド抵抗性の急性・慢性GVHDに対する2次治療薬としての役割も期待されている。一方で,新規薬剤のoff-target効果として重症免疫反応の惹起やSOS/VODの発症リスク増加など新たな懸念点も指摘されている。本稿では,新規薬剤時代における移植後合併症(GVHD,SOS/VOD)のリスク評価やそのマネージメントに関して解説する。

  • 吉本 五一, 宮本 敏浩
    2023 年 64 巻 6 号 p. 533-546
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり

    同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)は疾患再発のリスクの高い患者の生存率向上に寄与している。しかしながら,allo-HSCT後に疾患が再発した場合,従来の化学療法やドナーリンパ球療法を行っても十分な治療成績が得られず,治療不成功・死亡の主な要因となっている。allo-HSCTの疾患再発を減らすために,微小残存病変に基づいた先制治療や,再発リスクの高い患者に対する維持療法は有望な治療戦略と考えられる。近年,抗腫瘍効果が高く,毒性の少ない新規薬剤や細胞治療の開発が進み,allo-HSCT後の状況下でも使用可能であり,治療開発が進んでいる。本稿では,主に急性骨髄性白血病および急性リンパ性白血病におけるallo-HSCT後維持療法に関する現状と今後の戦略について概説する。

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