臨床血液
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56 巻, 11 号
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Picture in Clinical Hematology
第75回日本血液学会学術集会
学会奨励賞受賞論文
  • 武藤 朋也, 指田 吾郎, 大島 基彦, 岩間 厚志
    2015 年 56 巻 11 号 p. 2287-2294
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/12
    ジャーナル 認証あり
    近年の次世代シーケンサーの発達により,急性骨髄性白血病,骨髄異形成症候群,骨髄増殖性腫瘍といった骨髄系腫瘍において,多くのエピジェネティック制御遺伝子変異が同定されると共に,それらの遺伝子の血液細胞における機能解析が精力的になされ報告されている。注目すべき事に,前白血病幹細胞においてもDNMT3A, TET2, ASXL1などのエピジェネティック制御遺伝子の変異が同定され,これらの変異血液細胞の機能解析を通じ,前白血病幹細胞を標的とした新規治療の開発が今後期待される。本稿では,骨髄系腫瘍におけるエピジェネティック制御異常の最新の知見を紹介すると共に,今後の展望について考察する。
  • 正木 彩子, 石田 高司, 前田 康弘, 鈴木 進, 伊藤 旭, 滝野 寿, 戸谷 治仁, 吉田 嵩, 木下 史緒理, 小椋 啓加, 成田 ...
    2015 年 56 巻 11 号 p. 2295-2304
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/12
    ジャーナル 認証あり
    Indoleamine 2,3-dioxygenase 1 (IDO1: IDO)はトリプトファン(Trp)をキヌレニン(Kyn)に異化する経路の酵素で,抗腫瘍免疫応答を抑制する腫瘍微小環境内の重要な因子の一つである。本研究では成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATL)においてATL細胞および腫瘍微小環境中の細胞がIDOを産生し,腫瘍微小環境のみならず血液中においてもKyn/Trp比およびKyn濃度の上昇をもたらし,血清Kyn/Trp比およびKyn濃度高値はATLにおける独立した予後不良因子であることを明らかにした。このように血清中のKynおよびTrp濃度の測定は,個々のATL患者の予後を予測するために有用である。さらにIDOは現在,さまざまながん種においてがん免疫療法の有望な標的と考えられている。本研究はATLにおいてもIDOが新規がん免疫療法の標的分子として有望であることを示すものである。
  • ―非線形顕微鏡の生体への応用―
    西村 智
    2015 年 56 巻 11 号 p. 2305-2310
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/12
    ジャーナル 認証あり
    80年のヒトの一生のうちに,せいぜい数回しかおきない心血管血栓イベントを正しく理解するにはどうすればいいのだろうか。ただ,マウスをながめていても,血栓イベントはおきない。一つの答えは,生体で血栓を誘発し,形成過程を観察することである。我々は二光子顕微鏡をはじめとする非線形顕微鏡を用いたバイオイメージング技術と,血栓形成を促す光操作技術を生かし,生体での血栓過程にアプローチしている。本稿では,in vitroの理解を超えて,生体での血小板の活性化機構と血栓止血機能,さらに多彩な生命生理現象との関わりについて最近の知見を紹介する。
臨床研究
  • 井上 純子, 池田 昌弘, 新垣 清登, 宮崎 寛至, 飯塚 聡介, 阿部 有, 関根 理恵子, 塚田 信弘, 服部 豊, 鈴木 憲史
    2015 年 56 巻 11 号 p. 2311-2317
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/12
    ジャーナル 認証あり
    骨髄腫細胞はCD138を強発現すると考えられてきたが,一部の症例で骨髄腫細胞中のCD138+細胞比率の低下が確認される。本研究は,診断時CD138+細胞比率が50%以上を占めていた患者において,治療経過中にCD138+細胞比率が低下した群(12名)とCD138+細胞比率が維持していた群(105名)に分類し,CD138+細胞比率が低下することの臨床的意義を検討した。この2群間で全生存期間に有意差はなく,低下群において観察期間中に死亡した9名(75%)のCD138+細胞比率の低下確認後の生存期間は中央値25ヶ月と比較的短期間であり,すべてが腫瘍死であった。死亡例の内,7例はCD138+細胞比率が低下した状態で死亡していた。一方,生存例3例の内,2例で治療後CD138+細胞比率の再上昇が見られた。低下群においてCD138+細胞比率の低下後に,一部の症例では髄外病変や予後不良な細胞遺伝学的異常[del(17p), t(4;14), c-MYCの増幅]が検出された。以上より,CD138+細胞比率の低下は骨髄腫細胞の更なる悪性形質の獲得と関係があることが示唆された。CD138+細胞比率の低下が予後や薬剤耐性に寄与する因子であるかは不明だが,治療で比率の改善が見られない場合には予後は短期間となる可能性がある。
症例報告
  • 山本 和彦, 三道 康永, 新谷 勝美, 長田 有生, 池内 一廣, 山本 宜和, 塩手 康弘, 牧田 雅典, 今城 健二
    2015 年 56 巻 11 号 p. 2318-2323
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/12
    ジャーナル 認証あり
    66歳男性。口腔内出血,紫斑を認め,APTT延長,FVIII活性低下,FVIIIインヒビターを認め,後天性血友病A (AHA)と診断し,prednisoloneの内服を開始した。8か月後にAPTTの再延長,血小板減少,溶血性貧血の併発を認めた。Evans症候群の合併と考え,γグロブリン大量療法を施行したが,血小板減少,貧血の回復は見られず,第12病日にせん妄症状を認め,ADAMTS13活性の低下,インヒビターを検出し,血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と診断した。血漿交換療法(PE)を開始し,血液データ,精神症状も劇的に改善したが,PEを一時休止すると再燃を認め,難治性としてrituximabを併用した。その後,血小板値は素早く回復し,PEから離脱することができた。計3回のrituximab治療後,両インヒビターは検出されず,約3年が経過するが,AHA, TTPともに寛解を維持している。
  • 佐藤 貴之, 上田 恭典
    2015 年 56 巻 11 号 p. 2324-2328
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/12
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    症例は56歳女性,貧血精査で紹介となり網状赤血球の著明な低下,骨髄血での赤芽球数の著明な減少を認め赤芽球癆と診断した。また,免疫グロブリンの著明な低下を認めていたが免疫電気泳動では血中,尿中に単クローン性蛋白を認めなかった。骨髄穿刺,骨髄生検では形質細胞の増殖を認めず,CTで溶骨性病変や腫瘤形成は認めなかったため多発性骨髄腫は除外された。薬剤性赤芽球癆の可能性を考え紹介元の病院で処方されていた漢方薬を中止したところ,中止7日後には網状赤血球数とヘモグロビン濃度の増加傾向を認め,中止73日後にはヘモグロビン濃度とIgGは基準範囲となった。被疑薬はサンヤクまたはブクリョウが最も考えられた。これまでに漢方薬による赤芽球癆の報告はなく,低ガンマグロブリン血症の報告もない。漢方薬内服中の患者における赤芽球癆や低ガンマグロブリン血症においては,薬剤によるものを鑑別する必要がある。
  • 下山 紗央莉, 黒田 裕行, 吉田 正宏, 宇佐美 信, 坂本 拡基, 山田 充子, 藤井 重之, 前田 征洋, 藤田 美悧, 仲野 龍己, ...
    2015 年 56 巻 11 号 p. 2329-2335
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/12
    ジャーナル 認証あり
    症例は75歳,女性。2014年1月に両側手背・肘・肩・膝の関節痛のため前医へ受診した。RS3PE症候群の診断で低用量プレドニゾロンによる治療を受け関節痛は改善したが,同年4月に右頸部リンパ節腫脹を自覚し当科へ紹介となった。加齢性EBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(EBV陽性DLBCL)の診断が得られ,下部消化管内視鏡で早期大腸がんを認めた。なお,リンパ腫と大腸がんはともにvascular endothelial growth factor (VEGF)染色が陽性であった。R-CHOP療法2コース後に完全寛解が得られ,RS3PE症候群の再燃は認めなかった。本症例はRS3PE症候群の発症機序にEBV関連DLBCLから産生されたVEGFの関与が示唆された。
  • 山本 起代子, 服部 行紀, 島田 幸輝, 荒木 葉子, 足立 達哉, 津下 圭太郎
    2015 年 56 巻 11 号 p. 2336-2340
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/12
    ジャーナル 認証あり
    症例は35歳,ダウン症の女性。食欲低下,嘔吐の訴えがあり近医を受診したところ,貧血(Hb 7.4 g/dl)と血小板減少(0.5×104l)を指摘され,精査目的で紹介された。末梢血スメアで破砕赤血球を認め,LDH上昇,クームス試験陰性であることから血栓性血小板減少性紫斑病を疑い,ステロイド併用で血漿交換を開始した。ADAMTS13活性は0.5%以下で,インヒビター(0.8 Bethesda U/ml)が検出された。第6病日(血漿交換4回後),血小板13.0×104lまで回復したが,第7病日には急激に低下(1.8×104/μl)した。その後,血漿交換を続けたが効果を認めず,第21病日に突然ショック状態に陥り死亡した。病理解剖の結果,心筋壊死や冠動脈の血栓は認めなかったが,心筋内細静脈優位に細血管に多数の血小板血栓を認め,臨床所見と合わせて心筋障害による心原性ショックが死因と考えられた。
  • 水野 秀明, 半下石 明, 斎賀 真言, 森岡 健彦, 安藤 弥生, 木田 理子, 臼杵 憲祐
    2015 年 56 巻 11 号 p. 2341-2345
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/12
    ジャーナル 認証あり
    症例は25歳女性と77歳男性のLDHが正常域を示した自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia, AIHA)の2例。Hb低下,T-Bil上昇,ハプトグロビン低下,直接Coombs試験陽性で診断されたが,診断時のLDHはそれぞれ218, 187 IU/lと正常域を示した。いずれもPSL 1 mg/kgによる治療で貧血の改善を認め,AIHAに典型的な経過であった。AIHAの診断においては,溶血の指標としてLDH高値などが用いられるが,2001年1月から2012年8月までに当院でAIHAと診断された24例の血清LDHについて調査したところ,25%でLDHが正常であった。AIHAの診断においては他の検査値も併せた総合的な判断が必要と考えられる。
  • 枝廣 陽子, 市川 訓基, 角南 義孝, 小池 道明, 小松 則夫
    2015 年 56 巻 11 号 p. 2346-2350
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/12
    ジャーナル 認証あり
    TAFRO症候群は,原因不明の血小板減少,全身浮腫,発熱,骨髄線維症,腎機能障害,肝脾腫とリンパ節腫大などの多彩な症状を示す全身炎症性疾患であり,自己免疫疾患をしばしば合併する。今回我々は,自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia, AIHA)を合併したTAFRO症候群の症例を経験した。患者は過多月経を主訴に受診し,血小板減少,胸腹水,肝腫大,多数の腫大リンパ節を認めた。その後,発熱,胸腹水の増悪を認め,さらにAIHAを合併した。ステロイドパルス療法を施行後,後療法としてprednisolone (PSL)の投与を行ったところ,TAFRO症候群の症状とともに,溶血は改善した。TAFRO症候群の報告は未だ少なく,さらにAIHA合併の報告はないため,貴重な症例と考え,ここに報告する。
  • 林 友豊, 佐多 弘, 芥田 敬吾, 戸田 淳, 草壁 信輔, 上田 智朗, 植田 康敬, 藤田 二郎, 田所 誠司, 前田 哲生, 西村 ...
    2015 年 56 巻 11 号 p. 2351-2356
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/12
    ジャーナル 認証あり
    症例:69歳男性。2008年11月,貧血にて近医を受診したところ,原発性マクログロブリン血症(WM)と診断された。R-CHOP療法を施行され,血清IgM値は6,215 mg/dlから1,000 mg/dl台まで低下,以降2,000 mg/dl弱で推移した。2011年11月,視力障害と羞明が出現し,頭部MRIで左視神経腫大と視神経鞘の造影効果があり,脊髄液中リンパ球にκ/λの偏りをみとめたため,WMの中枢神経浸潤(Bing-Neel syndrome)と診断された。R-MPV療法7クール施行され,症状軽快したためPRで経過観察となった。2014年5月,血清IgM値は3,081 mg/dlと再上昇し全身性リンパ節腫大を認めたため,鼠径部リンパ節生検を施行しDLBCLの病理所見を得た。ASO-PCR法を用いたクロナリティー解析によりWMからDLBCLへの形質転換と診断した。持続する中枢神経浸潤を伴ったWMに発症したDLBCL例は希少であり,文献的考察を加えて報告する。
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