臨床血液
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44 巻, 10 号
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総説
臨床研究
  • 松島 孝文, 半田 寛, 横濱 章彦, 佐倉 徹, 岡本 潔, 河村 俊英, 積田 由紀, 村山 佳予子, 磯田 淳, 神保 貴宏, 平林 ...
    2003 年 44 巻 10 号 p. 1004-1009
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    1987年1月以降2003年5月までに当科ならびに当科関連施設で診断した60歳以下のde novo MDS 92例の治療成績をretrospectiveに検討した。診断時のIPSS分類ではLow, Int-1, Int-2, Highは各々7例,34例,24例,27例であった。このうち30症例に同種造血幹細胞移植(alloSCT)を実施し,その他の症例は支持療法単独あるいはその他の治療を実施した。診断時LowとInt-1グループでは診断後10年で約50%の症例が生存可能であり,alloSCT (+)群と(-)群に差は見られなかった。Int-2およびHighグループでのalloSCT (+)群と(-)群の50%生存期間は各々23.9カ月と10.4カ月で有意な差を認めた。急性骨髄性白血病(sAML)移行後の生存はalloSCT (+)群で若干生存期間が延長したものの有意差は認められなかった。alloSCT (+)群30例中17例が既に死亡し,その死因は急性白血病と移植関連合併症が同程度であった。移植後の生存に関与する因子として抽出されたものは年齢とsAMLであった。急性・慢性GVHDはともに生存,再発に関与せず,むしろ急性GVHD≥IIの症例の予後は統計学的に有意差を認めないものの不良であった。SCT後の白血病再発に関しては有意にsAML症例で高率に認めその後全例死亡した。一方非白血病症例では21例中9例が死亡し,うち白血病化は2例であった。MDSに対してalloSCTは唯一の根治療法であるが,移植関連死亡率を低下させること,予後不良群ではsAMLへ移行する前にalloSCTを行う必要があることが示唆された。
症例
  • 松縄 学, 川上 恵一郎, 久武 純一, 鈴木 順子, 中牧 剛, 日野 研一郎, 友安 茂
    2003 年 44 巻 10 号 p. 1010-1014
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は21歳,男性。原因不明の急性肝炎で入院した。安静で徐々に肝障害は改善したが,入院約2カ月後より再度肝機能の悪化,高熱がみられ,汎血球減少が進行した。血清のTNFα, IFNγ, IL-6, M-CSFが高値で,骨髄に血球貪食像を伴い,血球貪食症候群類似の病態を示した。プレドニゾロン,γグロブリン,G-CSFの投与後,解熱し,肝障害も徐々に軽快したが,汎血球減少は改善しなかった。その後の骨髄検査で血球貪食細胞が残存していたが著明な低形成を示し,肝炎後再生不良性貧血と診断した。ATG, シクロスポリン,G-CSFによる免疫抑制療法を行い,造血能の回復がみられた。骨髄中のリンパ球のCD4/CD8比は改善し,TNFαやINFγなどのサイトカインも減少した。血球貪食症候群様の病態に伴う活性化T細胞およびINFγ, TNFαの増加が肝炎後再生不良性貧血の発症に関与したと考えられた。
  • 山崎 二郎, 波多 智子, 渕上 健吾, 戸上 勝仁, 本多 幸, 福島 卓也, 宮崎 泰司, 陣内 逸郎, 栗山 一孝, 朝長 万左男
    2003 年 44 巻 10 号 p. 1015-1019
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は52歳の男性。29歳時に慢性腎不全のため血液人工透析療法を開始,39歳時に同胞より生体腎移植を受けた。腎移植14年後の2002年1月,血液検査にて白血球増多,貧血,血小板減少を指摘され当科に入院した。骨髄検査を施行し急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia with multilineage dysplasia without antecedent myelodysplastic syndrome)と診断した。移植腎の拒絶予防にミゾリビン,メチルプレドニゾロン,シクロスポリンAが投与されていたが,腎機能を含め全身状態が良好であったためJALSG AML-97プロトコールに準じた多剤併用,強力化学療法を選択した。感染症の合併を認めたが,治療中に免疫抑制剤を減量し,顆粒球コロニー形成刺激因子(G-CSF)の併用により寛解導入療法および地固め療法を施行できた。臓器移植後のAMLに対して,患者状態や移植臓器機能が良好であれば,十分な支持療法によって強力化学療法も施行可能であると考えられた。
  • 川口 康久, 宮崎 泰司, 栗山 一孝, 朝長 万左男
    2003 年 44 巻 10 号 p. 1020-1025
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は37歳男性。2000年3月16日発熱,四肢の皮疹と右下腿腫脹にて某病院入院。白血球数19,800/μl, 好酸球61%と著明な好酸球増加あり。胸部CTにて左肺に肺炎像を認めたが,自己抗体,寄生虫抗体などは陰性。プレドニゾロン80 mg/dayを開始し,劇的な症状,好酸球増加の改善を認めた。診断および精査加療のため,3月28日当科紹介入院。プレドニゾロンを漸減し,4月15日に中止した。好酸球増加はみられなかったが,再び四肢の皮疹および右下腿の腫脹を認めた。皮膚生検を行い,真皮の軽度の浮腫,好酸球浸潤を認めたため,好酸球性血管性浮腫(EAE)と診断した。1984年Greichらは血管性浮腫,蕁麻疹,著明な好酸球増加などを繰り返す4症例をEAEとして報告した。その後,本邦でも50例以上の報告があるが,そのうち男性例は4例しかない。本例は男性例で興味深い病理像を認めたため,報告する。
  • 成松 宏人, 森下 剛久, 河野 彰夫, 齊藤 繁紀, 島田 和之, 尾関 和貴, 舟橋 恵二, 加藤 幸男
    2003 年 44 巻 10 号 p. 1026-1031
    発行日: 2003年
    公開日: 2009/07/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は57歳女性。平成13年6月発症,急性リンパ性白血病。寛解導入療法後19日目より抗生剤に抵抗性の高熱が持続。胸部単純レントゲンおよびCTで肺野に一部空洞化を認める散布性の肺炎と,全身性の皮下結節および甲状腺内の結節性病変が出現し,両部位よりAspergillus flavus (A. flavus)が培養同定された。amphotericin Bとitraconazoleによる治療を行ったものの治療抵抗性であり,好中球の回復後も熱型は改善せず,重度の肝障害から多臓器不全に至った。血漿交換と持続的血液透析濾過により危機的状態を離脱した後は,平成14年5月に死亡するまでアスペルギルス感染は消失しなかったもののindolentに経過した。A. flavusによる全身感染症の頻度は低く,本例はまれな経過をとったと考えられた。
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