臨床血液
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39 巻, 11 号
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臨床研究
  • 浜田 恭子, 高橋 功, 松岡 美鈴, 雑賀 智子, 溝渕 詔子, 依光 聖一, 滝本 秀隆
    1998 年 39 巻 11 号 p. 1079-1084
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
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    末梢血を37°C, 5時間フラン器内に静置後作成した塗抹標本を用い,MDS 9例(RA 3例,RARS 2例,RAEB 4例),鉄欠乏性貧血(IDA) 10例,特発性血小板減少性紫斑病(ITP) 10例,正常健康人10例における末梢白血球アポトーシス(アポ)について検討した。アポ細胞の同定は核の断片化など形態学的特徴により,顆粒球並びにリンパ球アポ細胞率は顆粒球,リンパ球を各々300個観察し,算出した。まず,MDS, 正常健康人における経時的観察ではMDSで顆粒球アポ細胞の時間依存性の増加を認めたが,正常健康人における増加は低率であった。5時間目の顆粒球アポ細胞出現率はIDA, ITP, 正常健康人に比較し,MDSで有意に高く(MDS 15.7±8.0%, IDA 2.8±1.2%, ITP 2.3±1.7%, 正常健康人0.7±0.6%, p<0.005),リンパ球アポ細胞出現率は各群に有意差を認めなかった。DNAの断片化を検討したMDSの1例では37°C, 5時間フラン器内に静置後検体でDNA断片化を認めた。また,MDSでは末梢顆粒球率と顆粒球アポ細胞率との間に負の相関傾向が認められた。これら成績はMDS末梢顆粒球は易アポ状態にあり,MDS末梢顆粒球減少に末梢血における顆粒球の早期細胞死の関与を示すものと考えられた。
  • 沢田 仁, 森本 浩章, 和気 敦, 山崎 嘉宏, 和泉 洋一郎, 黒岩 三佳, 長部 誠志, 今村 豊, 江上 康一郎, 塚本 敦子, 真 ...
    1998 年 39 巻 11 号 p. 1085-1091
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    血液疾患の30例にHLA一致あるいは1抗原不一致のドナーから末梢血幹細胞を採取し未処理で同種移植を施行した。患者の年齢は中央値32歳(範囲6∼61歳)で,急性リンパ性白血病7例,急性骨髄性白血病6例,慢性骨髄性白血病8例,骨髄異形成症候群3例,他疾患6例に対し骨髄破壊的治療後に移植を行った。ドナーにgranulocyte colony-stimulating factor (G-CSF)を投与し,1∼3回のアフェレーシスで末梢血幹細胞を採取した。graftには平均11.3×108(範囲3.8∼17.2)/kgの有核細胞,6.7×106(範囲1.3∼16.7)/kgのCD34陽性細胞が含まれていた。graft-versus-host disease (GVHD)予防はcyclosporin A+methotrexateあるいはFK506+methotrexateを使用した。全例が移植後G-CSFの投与を受けた。1例がday 6に肺炎で死亡したが,残りの29例で速やかな生着が得られた。好中球500/μl以上の回復は中央値13日(範囲8∼21日),血小板20,000/μl以上の回復は中央値14日(範囲1∼23日)であった。評価可能例の急性GVHD grade II∼IVの発症率は33%で慢性GVHDは57%であった。生着不全や拒絶は認められなかった。19例(63%)が移植後147∼839日(中央値560日)完全寛解で生存中である。今後,慢性GVHDとgraft-versus-leukemia (GVL)効果についてのさらなる研究が必要である。
  • —小児癌白血病研究グループ(CCLSG)の新プロトコールNHL960の治療成績—
    鶴沢 正仁, 片野 直之, 廣田 貴久, 伊藤 仁也, 柳瀬 卓也, 浅見 恵子, 小泉 晶一, 中山 雅彦, 宮脇 利男, 鈴宮 淳司, ...
    1998 年 39 巻 11 号 p. 1092-1098
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
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    小児非Hodgkinリンパ腫に対するCCLSGの新しい治療研究NHL 960の治療戦略と治療成績を報告した。本研究では患者を病期と組織型により,(1) 限局例,(2) 進行例・リンパ芽球群,(3) 進行例・非リンパ芽球群:large cell型,(4) 進行例・非リンパ芽球群:Burkitt型の4群に分けて異なるプロトコールで治療した。(1)∼(3)群に対しては従来のNHL 890プロトコールに改良を加えた治療方法を用いた。すなわち,(1)群と(3)群にはCOPADMの5剤で寛解導入後,前者には維持療法のみを,後者にはMTX+Ara-C併用療法を中心とした強加療法を行った。(2)群にはMTXの替わりにLASPを加えた5剤で寛解導入後,地固め・強化療法を行った。一方(4)群に対しては,新たにCOPADMの短期集中投与法を用いた。現在まで本プロトコールで治療されたNHL 37例(I/II期12例,III/IV期25例)中,寛解導入中の死亡2例を除き全員が初回完全寛解を維持しており,観察期間19カ月でのEFSは95% (SE 3%)と優れた成績を示した。
  • 内田 立身, 松野 恵, 井出 眞, 河内 康憲
    1998 年 39 巻 11 号 p. 1099-1102
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    組織鉄欠乏は鉄欠乏性貧血固有の身体的症状であり,舌の変化,口角・口内炎,爪の変化,Plummer-Vinson症候群,異食症を呈する。これらの組織鉄欠乏の頻度はわが国では不明である。鉄欠乏性貧血353名において発現頻度を検討したところ,なんらかの組織鉄欠乏を有するもの6.8%, 舌乳頭萎縮5.4%, 扁平・匙状爪5.4%, 口角・口内炎1.1%, Plummer-Vinson症候群1.7%, 異食症0.06%であった。また,鉄欠乏性貧血が進展し貧血が重症になるほど発現頻度が増加した。以上から,組織鉄欠乏は晩期鉄欠乏性貧血の特徴的所見と考えられた。
症例
  • 山田 古奈木, 森 健, 入江 誠治, 松村 万喜子, 中山 勝司, 平野 隆雄, 須田 耕一, 押味 和夫
    1998 年 39 巻 11 号 p. 1103-1108
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は41歳男性。平成7年10月発症の急性骨髄性白血病(M1)。2回の寛解導入療法に不応であったが,3回目の治療後寛解を得て,平成8年4月HLAの一致した兄をドナーとして同種骨髄移植を行った。移植後好中球数は20日目に500/μlまで回復し,その後さらに増加したが,移植前より合併していた真菌症が急速に悪化し移植後31日目に死亡した。剖検では,全身性真菌症の所見を呈し,心筋刺激伝導系への真菌の浸潤が死亡の直接の原因と考えられた。急性GVHDはみられなかった。剖検時に採取した患部組織の培養より,Aspergillus flavus (A. flavus)が検出され,アフラトキシン産生株であることが判明した。アフラトキシン産生性のA. flavusが臨床検体から分離されたのは本例が初めてである。
  • 高柳 典弘, 三比 和美
    1998 年 39 巻 11 号 p. 1109-1114
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は88歳,女性。全身リンパ節腫脹と貧血,血小板減少のため当科入院となった。入院時の末梢血液検査では,RBC 146×104l, Hb 6.9 g/dl, Plt 5.0×104lであり,血清検査で多クローン性高γグロブリン血症,Coombs試験(直接,間接)陽性,寒冷凝集素の上昇およびPA-IgG高値より血球自己抗体の産生を認めた。また血清サイトカインではIL-6が高値を示していた。リンパ節生検の結果,IBL様T細胞性リンパ腫と診断され,VP-16, ステロイドによる治療を開始したところリンパ節の縮小,貧血,血小板減少および高γグロブリン血症の改善がみられた。これらのことは,本症例の場合,T細胞系の腫瘍細胞によるIL-6の産生により,B細胞および形質細胞の分化,増殖を促進し多クローン性に自己抗体産生が惹起された可能性が示唆された。
  • 山田 俊樹, 鶴見 寿, 原 武志, 澤田 道夫, 大山 正巳, 森脇 久隆
    1998 年 39 巻 11 号 p. 1115-1120
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例1は61歳男性。de novo acute myelogenous leukemia with trilineage myelodysplasia (M2)の症例でcytarabine (Ara-C)/etoposide少量持続点滴療法(AV療法)にて2度完全寛解を得た。2回目の再発後再度AV療法を施行したところ治療開始11日目より発熱,13日目より前胸部痛が出現し,心嚢液の貯留を認めた。症例2は65歳男性。MDSからAML (M2)への移行症例で,AV療法2コースにて完全寛解を得た。地固め療法としてcytarabine ocfosfate/etoposide経口療法後,血球数回復の後,症例1と同様に心嚢液貯留を認めた。2症例とも穿刺液に成熟好中球を多数認めたが各種培養などは陰性で,心嚢液持続ドレナージとステロイドパルス療法にて軽快。いずれの症例もAra-Cの過敏反応によるAra-C induced pericaditisと診断した。当科にて経験したAra-C症候群の検討も含め報告した。
  • 山雄 久美, 近藤 栄治, 三浦 亮, 水野 晴光, 弓削 征章
    1998 年 39 巻 11 号 p. 1121-1126
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は19歳,男性。右上腹部痛を主訴に受診。1997年10月精巣摘出術をうけBurkittリンパ腫(BL), 臨床病期IIBと診断しVABCOP-M療法で完全寛解に到達したが,治療中に中枢神経症状で再発した。化学療法をICEつづいてCHASEに変更し全脳照射を併用,同時にOmmayaリザーバーを留置してMTX, Ara-Cの髄腔内投与をくりかえし,再び完全寛解に到達した。その後CY, TBIを前処置として自己末梢血幹細胞移植術を施行し,以降完全寛解を維持している。予後不良因子である中枢神経浸潤をきたした再発BLに対する有効な治療法の報告は本邦で貴重と考え報告する。
  • 岩間 博士, 岩瀬 理, 林 重文, 中野 優, 外山 圭助
    1998 年 39 巻 11 号 p. 1127-1130
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    アルコール多飲者では葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血,鉄芽球性貧血などが,ビタミンB6欠乏では鉄芽球性貧血や環状鉄芽球と無関係の小球性貧血も報告されている。われわれは,75歳のビタミンB6欠乏を伴うアルコール多飲者に,赤血球大小不同を伴う大球性貧血を認めた。骨髄に巨赤芽球性変化や環状鉄芽球を認めなかった。ビタミンB6依存性酵素であるALA合成酵素活性の減少とそれに伴う鉄導入酵素活性の異常,あるいは鉄の還元異常が推測された。禁酒にてMCVは低下し,飲酒と関係するPappenheimer小体は消失した。その後のビタミンB6投与にて,赤血球大小不同と貧血は消失した。
  • 伊勢 美樹子, 酒井 力, 辻村 秀樹, 熊谷 匡也, 武内 利直, 高木 敏之
    1998 年 39 巻 11 号 p. 1131-1136
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル 認証あり
    症例は75歳男性。1995年6月肋骨の悪性リンパ腫(組織型不祥)を発症。CHOP療法と局所照射で完全寛解となった。1996年8月発熱,血小板減少,肝障害が出現。骨髄所見よりhemophagocytic syndrome (HPS)と診断された。悪性リンパ腫再発に伴うHPSを強く疑ったが,明らかな病変は発見できなかった。HPSはMEVP療法で制御できず,1997年1月よりCPT-11·ADM併用療法を開始したところ著明に改善,以後3週毎の治療で10カ月間部分寛解を維持できた。11月副鼻腔腫瘍が出現,1998年2月死亡。剖検で全身臓器の小血管内皮に付着する大型のリンパ球様異型細胞(B細胞性)が認められ,intravascular lymphomatosis (IVL)と診断された。HPSを合併したIVLに対してCPT-11·ADM併用療法が奏功した貴重な症例と考えられた。
短報
  • 加藤 康幸, 中村 香織, 原口 京子, 安島 厚, 藤田 浩, 富山 順治, 工藤 秀機, 小野澤 康輔, 大西 健児, 梅北 信孝
    1998 年 39 巻 11 号 p. 1137-1139
    発行日: 1998年
    公開日: 2009/04/28
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    A 31-year-old man presented with a 3-month history of petechial hemorrhages. Physical examination revealed no splenomegaly. The patient's platelet count was 1.0×109/l and bone marrow aspiration showed an elevated number of megakaryocytes. A diagnosis of HIV-associated thrombocytopenia was made on the basis of HIV seropositive results. The CD4 cell count was 400×106/l. No opportunistic infections indicating AIDS were detected. Initially the patient was treated with predonisolone, but showed only a transient response. He also failed to respond to zidovudine, lamivudine, or indinavir. Following splenectomy, however, his platelet count rose above 80×109/l (normal level: 150-350×109/l).
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