後天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)はADAMTS13を阻害する自己抗体により惹起される重篤な疾患である。発症直後に迅速かつ十分な血漿交換(PEX)を施行しなければ致死的な経過をたどる。我々は,TTPの急性期に詳細な病勢モニタリングを行い,かつPEX施行回数を極力抑制し得たことにより,inhibitor boostingも生じずに良好な転帰をたどれた症例を経験したので報告する。72歳の男性。腹部動脈瘤切迫破裂で人工血管置換術を施行された。周術期に高度血小板減少(最低値0.6万/μ
l)あり,血小板輸血を受けた。その後,急激に進行する意識障害と多発脳梗塞を認め,当科転院。深昏睡でICU管理とし,経過からTTPと判断してPEXとステロイドパルスを開始した。ADAMTS13活性<0.5%, インヒビター1.0 BU/m
lよりTTPと確定診断。PEX 5日間連続施行後に血小板の正常化を確認したのでPEXは中止し,PSLを継続した。第2病日には意識レベル改善,第10病日にはインヒビターが消失した。以降,PSLを漸減したが,再燃なく,全身状態も安定した。
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