臨床血液
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58 巻, 11 号
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Picture in Clinical Hematology
臨床研究
  • 賀川 久美子, 前田 悠作, 大浦 雅博, 曽我部 公子, 藤野 ひかる, 髙橋 真美子, 丸橋 朋子, 岩佐 昌美, 宇高 憲吾, 原田 ...
    2017 年 58 巻 11 号 p. 2197-2204
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/06
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    ALアミロイドーシスは,多発性骨髄腫やMGUS(monoclonal gammopathy of undetermined significance)などのモノクローナルな形質細胞が産生する免疫グロブリン軽鎖および重鎖が,アミロイド線維として組織に沈着し,臓器障害を惹起する難治性疾患である。なかでも心アミロイドーシス(以下CA)は,心不全症状が出現してからは,無治療の場合極めて予後不良であるため,その管理・治療が重要である1)。ALアミロイドーシスに対しては,自家末梢血幹細胞移植併用メルファラン大量療法(以下ASCT)の有効性が報告されているが,CAにおいては治療関連毒性が強く,その適応を慎重に検討する必要がある2, 3)。近年,多発性骨髄腫において,ボルテゾミブ(Bor)や,免疫調節薬であるサリドマイド(Thal)やレナリドミド(Len)などの新規薬を用いた治療により,治療成績が向上している。ALアミロイドーシス症例においてもこれらの新規薬の有効性が示され,CAに対しても,重篤な有害事象の発生率が低く,有効であったとの報告がある4~6)。しかしながら,その長期の治療成績や予後については,十分な情報がない。そこで我々は,当科において治療し,長期生存が得られた心不全合併CA例について,後方視的に検討した。

  • 小林 武, 大橋 一輝, 原口 京子, 奥山 美樹, 日野 雅之, 田中 淳司, 上田 恭典, 西田 徹也, 熱田 由子, 高梨 美乃子, ...
    2017 年 58 巻 11 号 p. 2205-2212
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/06
    ジャーナル 認証あり

    わが国でも2010年に非血縁者間で末梢血幹細胞移植(PBSCT)が開始されたが,非血縁者ドナーからの末梢血幹細胞(PBSCs)の事前採取と凍結保存は認められていない。一方,血縁者ドナーついての制限はなく,国内でのその実態は明らかでないため,国内123の移植施設にアンケートを実施した。結果,PBSCsの事前採取と凍結保存は81.3%の施設で施行され,その処理や管理は「院内における血液細胞処理のための指針」に基づいて概ね適切に行われていた。一方で,PBSCsの保存期間の設定や解凍時の品質管理などに改善すべき点や,患者やドナーへの廃棄の可能性を含めた説明などの倫理面で十分でない点が認められた。1施設当たりのPBSCsの不使用または廃棄件数は平均1.09件で,全移植件数に対する不使用または廃棄率は2.67%であった。

  • 枝廣 陽子, 高久 智生, 小西 博応, 築根 豊, 藤岡 功, 高須 清, 後藤 明彦, 代田 浩之, 小松 則夫
    2017 年 58 巻 11 号 p. 2213-2218
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/06
    ジャーナル 認証あり

    Dasatinibの重篤な副作用として,肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension, PAH)が挙げられるが,これまで本邦でのまとまった報告はない。当施設においてdasatinibで加療された慢性骨髄性白血病76症例を後方視的に解析したところ,6例で推定肺動脈収縮期圧(estimated pulmonary artery systolic pressure, sPAP)高値を認め,右心カテーテル検査で3例(3.9%)がPAHの確定診断となり,診断確定および疑い症例の5例でdasatinib中止によりBNP低下および症状の改善を認めた。これらの結果から,dasatinibによるPAHは既存の報告よりも高頻度に合併する可能性があり,PAHが疑われた際には速やかにdasatinibの中止を考慮すべきと考えた。

  • 安藤 潔, 張 高明, 鈴木 憲史, 品川 篤司, 内田 俊樹, 谷脇 雅史, 平田 大二, 石澤 賢一, 末永 孝生, 岡本 真一郎, 大 ...
    2017 年 58 巻 11 号 p. 2219-2226
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/06
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    造血幹細胞移植非適応の未治療多発性骨髄腫患者に対するlenalidomideとdexamethasoneの併用(Rd)療法の本邦第II相臨床試験(MM-025)では,追跡期間中央値14.2ヶ月の時点で同療法の有効性および安全性が確認された。今回,本試験の追跡データを含めて解析を行った。追跡期間中央値31.3ヶ月の時点で全26例が治療を終了しており,治療期間中央値は約25ヶ月であった。全奏効率は87.5%,complete response率は20.8%であった。奏効期間および無増悪生存期間の中央値はそれぞれ30.7ヶ月,31.6ヶ月で,全生存期間は中央値に未到達であった。23例(88.5%)にグレード3/4の有害事象が発現し,18例(69.2%)に重篤な有害事象が認められた。治療関連死は認められなかった。以上より,移植非適応の日本人の未治療多発性骨髄腫患者に対するRd療法の有効性および安全性が今回の追跡期間においても確認された。

症例報告
  • 手島 和暁, 大八木 秀明, 久米 正晃, 高橋 さつき, 齊藤 昌宏, 高橋 直人
    2017 年 58 巻 11 号 p. 2227-2231
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/06
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    79歳,男性。全身リンパ節腫脹で発症したT細胞受容体β鎖遺伝子再構成陽性,CD20陽性末梢性T細胞性リンパ腫(peripheral T-cell lymphoma, PTCL), NOSに対してR-CHOP療法6コース施行し部分寛解を得た。2ヶ月後に早期再発を来たし,頸部リンパ節および皮膚の再生検でCD20陰転化を確認した。リンパ節病変はCCR4陽性であった。救援療法のGDP療法は奏効しなかった。皮膚病変に対してvorinostatを投与したが骨髄抑制のため中止,その後さらに皮膚病変は増悪した。増大した頸部リンパ節の生検を再度行ったところ,CD20再発現を認めた。CCR4陽性に対してmogamulizumabを投与したが病勢増悪し,再発から8ヶ月で死亡した。本例はCD20の発現がrituximab,vorinostat,gemcitabine治療の経過中に変化した興味深い症例と考えられる。

  • 武井 智美, 石田 禎夫, 池田 昌弘, 新垣 清登, 宮崎 寛至, 吉識 由実子, 阿部 有, 岡塚 貴世志, 壹岐 聖子, 塚田 信弘, ...
    2017 年 58 巻 11 号 p. 2232-2237
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/06
    ジャーナル 認証あり

    IgE型多発性骨髄腫は,骨髄腫の中でも稀なタイプであり予後不良である。本症例は53歳男性で,右肋骨痛を契機にIgE-κ型多発性骨髄腫と診断された。Bortezomib,lenalidomideを含む多剤化学療法,自家末梢血幹細胞移植を行い,最終的にpomalidomideによりcomplete responseに至った。IgE型骨髄腫を新規薬剤で治療した報告は少ないが,過去の報告では治療抵抗性となってから投与されている症例は治療効果を認めず,本症例の様に初期治療から新規薬剤を含むレジメンで治療をしている症例,自家末梢血幹細胞移植を施行した症例で長期生存例を認めた。予後不良と報告されているIgE型骨髄腫も,他の型と同様にfirst lineとして新規薬剤を含むレジメンを選択し,移植を含む総合的な治療を行うことで長期予後が期待できると考えられる。

  • 伊藤 勇太, 野田 健太郎, 相羽 惠介, 矢野 真吾, 藤井 常宏
    2017 年 58 巻 11 号 p. 2238-2242
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/06
    ジャーナル 認証あり

    症例は59歳,女性。びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫に対しR-CHOP(rituximab, cyclophosphamide, doxorubicin, vincristine, prednisolone)療法を導入した。化学療法後の発熱性好中球減少症発症抑制目的にpegfilgrastimを使用し化学療法を行った。3コース目・4コース目に各々pegfilgrastim投与後原因不明の発熱・胸痛・頸部痛を繰り返し,画像検査より,大動脈とその分枝に血管炎の所見を認めた。2度にわたるpegfilgrastim投与により同様の血管炎症状を来したことからpegfilgrastimによる薬剤誘発性血管炎の可能性が高いと思われた。

  • 古舘 和季, 沖本 由理, 安藤 久美子, 種山 雄一, 落合 秀匡, 角田 治美
    2017 年 58 巻 11 号 p. 2243-2249
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/06
    ジャーナル 認証あり

    先天性白血病は小児白血病の稀少なサブグループである。白血病細胞のlineage switchは比較的稀な事象であるが,先天性白血病での報告も散見される。先天性白血病のlineage switch症例は,転帰が示された既報に生存例を認めず,その予後は極めて悪い。症例は日齢0の女児で,MLL-AF4陽性B前駆細胞性急性リンパ性白血病(BCP-ALL)と診断されたが,寛解導入療法後に急性単球性白血病(AMoL)へのlineage switchを生じた。一時的に形態上は寛解となったが,早期再発したため,生後4ヶ月時に非寛解でHLA半合致の父親から骨髄移植を施行した。移植片対宿主病(GVHD),成長障害および精神運動発達遅滞に難渋しているが,移植後3年7ヶ月を経過し,寛解を維持している。本症例ではHLA半合致移植による強力なgraft-versus-leukemia(GVL)効果が示唆される。先天性白血病のlineage switch症例は寛解導入後早期に移植を実施する必要があり,非寛解例においては時期を逸しないHLA半合致移植が有効な選択肢となる可能性がある。

  • 片山 雄太, 許 鴻平, 岩戸 康治, 岡谷 健史, 今中 亮太, 板垣 充弘, 勝谷 慎也, 麻奥 英毅
    2017 年 58 巻 11 号 p. 2250-2255
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/06
    ジャーナル 認証あり

    症例はHLA一致同胞より血縁者間骨髄移植を施行されたPh陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)の54歳女性。移植後にchronic graft versus host disease(GvHD)を発症し加療を行っていた。Day697に発熱を認め,受診10時間後にショック状態に移行した。Day699に初回血液培養にてAchromobacter xylosoxidansを認めmeropenem hydrate(MEPM, Meropen®)を開始するも全身状態は悪化し,day701に同じ初回血液培養より2菌種目としてCorynebacterium striatumを認めた。Vancomycin hydrochloride(VCM, Vancomycin®)を追加投与したが状態改善せず,day702に永眠された。2012年1月から2016年12月までで,当院でのAchromobacter xylosoxidansの検出は9症例と少なく,うち血液悪性疾患で5症例であり,敗血症は本症例のみであった。同期間に,当院でCorynebacterium speciesが血液培養から検出された症例は39症例認め,うち血液悪性疾患は31症例であった。Achromobacter xylosoxidansCorynebacterium striatumの2菌種はとも多くの薬剤に耐性を持つことが報告されており,敗血症となった場合には血液悪性疾患などの免疫不全患者にとって致死的となることも報告されており,今後も詳細な症例の蓄積が望まれる。

  • 鎌田 雄輝, 藤原 悠紀, 水原 健太郎, 望月 直矢, 久保西 四郎, 平松 靖史
    2017 年 58 巻 11 号 p. 2256-2260
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/06
    ジャーナル 認証あり

    症例は76歳女性。2011年に直腸がんに対する手術歴ありその後外来で定期的に経過観察されていた。2013年より白血球数の減少が見られ,2015年には貧血の進行も伴っており,精査目的に当院当科を紹介受診した。血液検査で芽球を認めたため骨髄検査を施行したところ,骨髄異形成に関連した変化を有する急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia with myelodysplasia-related changes, AML/MRC)の診断に至った。寛解導入療法を開始したが血球減少期に肺炎と化膿性脊椎炎を発症した。副作用として血球減少の少ないazacitidine(AZA)による化学療法と化膿性脊椎炎の治療を並行して行うことで,寛解状態を維持しながら化膿性脊椎炎を治療することに成功した。血球減少期に化膿性脊椎炎を発症したがAZAは感染制御とAMLコントロールを併行して行う上で有用であった。

第77回日本血液学会学術集会
学会奨励賞受賞論文
  • 櫻井 政寿, 岡本 真一郎
    2017 年 58 巻 11 号 p. 2261-2267
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/06
    ジャーナル 認証あり

    日本人発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者の臨床的特徴およびQOLを明らかにするため,国際PNHレジストリの登録時データを用いて,日本人症例(Japanese cohort: N=116)と全世界症例(International cohort: N=3,457)の比較を行った。本研究の結果では,日本人PNH患者の特徴として,骨髄不全症の合併が多いこと(67.4%vs 56.8%),血栓塞栓症が少ないこと(6.4%vs 13.3%)が示された。臨床症状としては腹痛・嚥下障害・勃起不全は日本では少なかった。また患者自身が記入するQOL調査では,多くの項目で日本のほうがより良いQOL数値を示した。しかし,本研究での純粋な人種間比較には限界があり,今後,日本人におけるPNHの臨床的特徴をより明らかにするため,国際PNHレジストリのさらなる継続と発展が期待される。

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