臨床血液
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55 巻, 11 号
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Picture in Clinical Hematology
ガイドライン
臨床研究
  • 安達 昌子, 塚田 唯子, 近藤 咲子, 朝倉 敬子, 松木 絵里, 川越 正平, 橋口 さおり, 野中 博, 武田 純三, 岡本 真一郎
    2014 年 55 巻 11 号 p. 2262-2270
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/13
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    血液疾患患者における在宅医療の実態とその問題点を明らかにする目的で,4都県の病院と在宅医療施設の3,591施設を対象にアンケート調査を実施した。1次アンケートでは,病院医療者の81.7%が血液疾患の在宅療養支援の「経験あり」と回答したが,在宅医療者の経験者は24.9%にとどまり,病院医療者が限られた在宅医療者と連携をしていることが推測された。医療者1,202人を対象とした2次アンケートでは,病院・在宅ともに,「患者家族の介護力不足」,「終末期における療養方針の決定が困難」,「輸血を施行できる近隣病院の確保が困難」,「経済的問題」が血液疾患領域における在宅療養支援体制の構築を妨げていることが明らかとなった。
  • 舘越 鮎美, 佐藤 勉, 井畑 壮詞, 橋本 亜香利, 神原 悠輔, 堀口 拓人, 小野 薫, 高田 弘一, 井山 諭, 瀧本 理修, 小船 ...
    2014 年 55 巻 11 号 p. 2271-2276
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/13
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    これまで,多発性骨髄腫における骨病変の予防や治療にはビスホスホネートであるゾレドロン酸が用いられてきた。一方,receptor activator of nuclear factor-κB ligand (RANKL)抗体であるデノスマブも使用可能となったが,両者の使い分けに関しては不明な点が多い。当科において前者から後者へ切り替えを行った多発性骨髄腫10例を後方視的に検討した。観察項目は骨吸収マーカー,骨形成マーカー,及び補正カルシウム(Ca)値やM蛋白とし,切り替え前後の値を比較した。骨吸収マーカーは切り替え後に有意な低下を認めた。一方,骨形成マーカーに上昇は認めなかった。切り替えに際し重篤な低Ca血症は出現しなかった。1例において切り替え後にM蛋白の上昇を認め,ゾレドロン酸の再開によって横ばいとなった。切り替えにより破骨細胞の更なる抑制が期待できるが,原病増悪の可能性に注意すべきと考えられた。
症例報告
  • 初瀬 真弓, 淵田 真一, 岡野 晃, 村頭 智, 島崎 千尋
    2014 年 55 巻 11 号 p. 2277-2282
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/13
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    症例は61才男性,多発性骨髄腫IgG-κ型と診断され,寛解導入後に自家末梢血幹細胞移植を実施しVGPRを達成した。しかし移植4カ月後,アデノウイルス性出血性膀胱炎とニューモシスチス肺炎にて入院。PSLおよびST合剤にて加療し軽快したが,その後abnormal protein band (APB)の出現を認めた。APBはIgG-λ型,IgM-λ型で腫瘍細胞由来のM蛋白とは異なった。1カ月後IgGは2,771 mg/dlまで上昇,アデノウイルス抗体価も4,096倍に上昇した。本症例はその後9カ月目にAPBが消失し,自家移植後約5年無治療でsCRを維持している。自家移植後のAPBの出現は,腫瘍細胞の消失とともに,免疫再構築のサロゲードマーカーと考えられ予後良好なマーカーと考えられている。免疫再構築期におけるアデノウイルス感染による過剰な免疫応答が腫瘍細胞の駆逐に繋がったと推測された。
  • 石原 敏道, 金川 実千代, 古山 準一, 長谷川 公範, 鈴木 隆司, 平山 泰生, 照井 健
    2014 年 55 巻 11 号 p. 2283-2287
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/13
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    症例は73才女性。63才で濾胞性リンパ腫を発症しR-CHOP療法で完全奏効をえた。その後8年間に4回再発しrituximab単独療法,rituximab併用fludarabine療法(2回),CHASE-R療法でいずれも完全奏効をえた。初発時のHBs抗原は陰性でHBs抗体HBc抗体は未測定である。第2回再発治療前に陰性だったHBs抗体が第3回再発治療前に陽性化した。第4回再発時のCHASE-R療法前のHBV-DNAは陰性を確認したがCHASE-R療法終了16カ月後に肝炎を発症し,HBV-DNAは陽性であった。劇症化せず,entecavirでコントロール可能であった。本例はrituximabを含む化学療法後HBs抗体が陰性化したHBV既往感染例と推察され,最終化学療法後にde novo B型肝炎を発症するという特異な経過をとった。B細胞性リンパ腫治療に伴うde novo B型肝炎の劇症化率は高く予後は不良である。B細胞性リンパ腫サルベージ治療例では初回治療例とはHBV再活性化のリスクと臨床経過が異なると考えられる。
  • 安藤 弥生, 木田 理子, 斎賀 真言, 遅塚 明貴, 半下石 明, 浦部 晶夫, 臼杵 憲祐
    2014 年 55 巻 11 号 p. 2288-2293
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/13
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    37歳女性のエクリズマブ投与のPNH合併出産例を経験したため報する。19歳時にPNH-AA症候群と診断された。35歳時にエクリズマブを導入した。以降,溶血発作は出現していなかった。2年後に妊娠し,エクリズマブの投与を継続した。出産までの期間,溶血増悪所見は認めず,妊娠37週3日に帝王切開にて女児を出産した。産後,抗凝固療法を併用し,軽度の溶血所見とFDP/D-dimerの上昇があったが,明らかな血栓症状は認めなかった。産後10日目に母子ともに退院した。また,臍帯血と初回の母乳中から微量のエクリズマブを検出し,臍帯血中に溶血阻害活性が検出された。
  • 川口 晃司, 松原 康策, 内田 佳子, 齋藤 敦郎, 宮田 憲二, 長谷川 大一郎, 小阪 嘉之, 岩田 あや, 仁紙 宏之, 小林 正夫
    2014 年 55 巻 11 号 p. 2294-2299
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/13
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    症例は造血幹細胞移植(HSCT)時4歳の男児。生後6ヵ月より細菌感染症を反復し,1歳4ヵ月時に100/μl未満の好中球減少が判明した。ELANE遺伝子exon 3にp.Q73P, g.2253 A>Cをヘテロ接合性に認め,重症先天性好中球減少症(SCN)と診断した。本変異は新規でde novoの変異であった。G-CSFに不応で診断時以後感染症による入院を反復したため,血清型6座一致ドナーからの同種非血縁HSCTを行った。骨髄非破壊的前処置にfludarabine/melphalan/抗胸腺細胞グロブリン/低線量全身照射を,GVHD予防にtacrolimus+短期methotrexateを用いた。移植12日後に拒絶なく生着し,混合キメラなく15ヵ月以上経過している。G-CSF不応で頻回の感染症を合併するSCNでは,白血病顕在化前のHSCTが有効である。至適前処置や長期予後については症例の蓄積が必要である。
  • 早川 佳奈, 田村 志宣, 義間 大也, 早川 隆洋, 栗原 稔男, 大浦 真紀, 中野 好夫, 惣宇利 正善, 一瀬 白帝, 藤本 特三
    2014 年 55 巻 11 号 p. 2300-2305
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/13
    ジャーナル 認証あり
    症例は62歳男性。3年前に多発性嚢胞腎,急性大動脈解離(Stanford A型)の既往あり。急性大動脈解離の手術以降,慢性腎不全が進行し透析導入となった。透析開始から間もなくして,シャント穿刺部位の止血困難・後出血を認めたため,当科受診となった。血液検査上,軽度の血小板減少と線溶系マーカーの上昇を認め,慢性播種性血管内凝固が疑われた。さらに,第XIII因子活性の低下も認めたが,そのインヒビターは検出されなかった。造影CTでは,解離性大動脈瘤の増悪を確認した。以上より,解離性大動脈瘤に合併した慢性播種性血管内凝固ならびに二次性出血性第XIII因子欠乏症と診断した。治療として,維持透析中であったこと,手術までの期間があることより,遺伝子組み換えトロンボモジュリンを選択。その定期投与を繰り返すことで,止血機能は改善に転じ,術前まで良好なコントロールを得ることができた。
  • 西川 拓朗, 岡本 康裕, 丸山 慎介, 田邊 貴幸, 倉内 宏一郎, 児玉 祐一, 中川 俊輔, 新小田 雄一, 河野 嘉文
    2014 年 55 巻 11 号 p. 2306-2310
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/13
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    症例は維持療法中の急性リンパ性白血病の4歳女児。21回目のmethotrexate髄注(it-MTX)の投与を受けた日から頭痛と腰痛,翌日からは両足の痺れと痛みが出現した。次第に手の痺れも出現し,発熱して髄注後8日目に入院となった。抗菌薬投与で翌日には解熱したが,下肢は麻痺し尿閉となった。髄注後12日目には上肢も麻痺し,終には痙攣し,意識障害となった。MRI検査では大脳皮質,脊髄前角に異常信号を認め,臨床経過と合わせてMTX髄注関連の急性脳脊髄炎と診断した。人工呼吸管理をしながら大量γグロブリン療法,ステロイドパルス療法,血漿交換療法,dextromethorphan投与と治療したが,1年経過後も意識障害,呼吸不全,四肢の弛緩性麻痺を認めている。MTX髄注後に上行性の運動神経障害を合併した時はMTX髄注による急性脳脊髄炎の可能性を考慮する必要がある。
  • 金城 泰幸, 吉村 和晃, 鈴木 隆史, 篠澤 圭子, 仲宗根 啓, 吉俣 哲志, 西平 守樹, 平安山 英達
    2014 年 55 巻 11 号 p. 2311-2315
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/13
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    第V因子インヒビターは稀な疾患であり,発症の誘因や重症度が症例により大きく異なり,手術で使用するフィブリン糊が原因となることが多い。今回我々は,誤嚥性肺炎の治療目的で使用した抗菌薬によると思われた後天性第V因子インヒビターを経験した。症例は80歳代,男性。既往歴には心房細動,脳梗塞と腰部脊柱管狭窄を有する。誤嚥性肺炎の治療後に凝固能異常となり入院となった。凝固能検査ではPTとAPTTの異常な延長を認めた。脳梗塞の再発予防のワーファリン投与中であったため,これを直ちに中止しビタミンKを投与したが,延長したPT, APTTは改善しなかった。クロスミキシングテストでインヒビターパターンが示されたため検索したところ,第V因子の著明な低下とべセスダ法で第V因子に対するインヒビターを検出し,後天性第V因子インヒビターと診断した。出血症状がなかったため経過観察していたところ,8カ月後にPT, APTTは自然に正常化した。
短報
  • 荒川 ゆうき, 康 勝好, 青木 孝浩, 久保田 泰央, 大山 亮, 森 麻希子, 林 真由美, 花田 良二
    2014 年 55 巻 11 号 p. 2316-2319
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/13
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    Clofarabine, one of the key treatment agents for refractory and relapsed acute lymphoblastic leukemia (ALL), achieves a remission rate of approximately 30% with single-agent clofarabine induction chemotherapy. However, a remission rate of approximately 50% was reported with a combination chemotherapy regimen consisting of clofarabine, etoposide, and cyclophosphamide. We treated two cases with refractory and relapsed ALL with combination chemotherapy including clofarabine; one was an induction failure but the other achieved remission. Both cases developed an infectious complication (NCI-CTCAE grade 3) and body pain with infusion. Prophylactic antibiotic and opioid infusions facilitated avoiding septic shock and pain. Further investigation of such cases is required.
  • 菊池 拓, 森 毅彦, 甲田 裕也, 佐分利 益穂, 小橋 澄子, 外山 高朗, 加藤 淳, 橋本 統, 中塚 誠之, 海老沼 浩利, 岡本 ...
    2014 年 55 巻 11 号 p. 2320-2323
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/13
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    We retrospectively evaluated the safety and utility of transjugular liver biopsy (TJLB) in allogeneic hematopoietic stem cell transplant (HSCT) recipients. Ten patients underwent HSCT between 1991 and 2013. Eight patients with thrombocytopenia received platelet transfusions before and/or during TJLB. No complications associated with TJLB were observed. Samples adequate for a pathological diagnosis were obtained in 9 of the 10 patients, and the diagnoses made by TJLB were graft-versus-host-disease in eight patients and non-specific hepatitis in one. These results suggest that TJLB is a safe and effective procedure for the evaluation of liver injury in HSCT recipients.
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